372 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 18:55:54 ID:vlIOG62AO
 


9章「もうひとつの入れ替わったもの」


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373 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 18:56:53 ID:vlIOG62AO
 

名指しされ、畏縮することもなく、彼女は堂々とワカッテマスさんと向き合っていた。
少し流れる、沈黙の、そして張り詰めた空気。
それはとても重苦しくて、私は思わず息を止めていた。
酸素を吸い込んだ時、でぃさんが、強気になって、言った。


(#゚;;-゚)「あなたは、確か彼が犯人だ、と再三言ってたではありませんか」

( <●><●>)「それは新たな真実が発覚したから、撤回されたのです」

(#゚;;-゚)「それに加えて、私が殺した、という証拠……あるんですか?」

( <●><●>)「まずワゴンだ、あなたが一号車にワゴンを運んだとき、既に中に死体は眠っていた」

(#゚;;-゚)「……」


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374 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 18:59:45 ID:vlIOG62AO
 

ワカッテマスさんもだが、意外にもでぃさんも全く退かないで、お互いに強気で言葉を発している。
それは警部とシャキーンさんとの諍いのようなものではなく、たとえるなら、
法廷で味わえる弁護士と検事とのバトル、それに近いものが感じられた。


( <●><●>)「いくら死体でも成人男性だ、60キロほどの重さはワゴンにのしかかるはずです」

( <●><●>)「もし犯人でないなら不思議に思うはず」

( <●><●>)「それを何ら顔色変えず運搬……不自然ですね」


(#゚;;-゚)「ワゴンは、元々、あんな構造ですからね、すごく重量があるんですよ。
     高々60キロ程度の重さ、違和感なんて」

(; <●><●>)「いやいや、60キロですよ!?」


ワカッテマスさんが、あまりの不意を突いた意外な一言に一瞬戸惑った。
そこをでぃさんが見逃すわけもなく、突いた。


(#゚;;-゚)「あら、運んだことがないのに、よく重量に関してあれこれ言えますね」

(#゚;;-゚)「普段はココにお弁当が山ほど積まれるんです。それの差し引き、ざっと数十キロ……」


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375 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 19:02:21 ID:vlIOG62AO
 

(´・ω・`)「! お弁当、か……」

(#゚;;-゚)「!」


呆れただけか、言いくるめられたのか、
俯いてぶつぶつ呟くワカッテマスさんに代わり、警部が咄嗟にその一言に反応した。
急に、黙っていた警部が言葉を発したので、でぃさんも少し驚いている。


(´・ω・`)「おっかしいなーって思ってたんだ、もうお昼の12時なのに、お弁当が積まれてないなんて」

(#゚;;-゚)「お弁当は……」



先程までの優勢は一転、今度はでぃさんが静かになった。
予想外な指摘だからか、それとも語るに語れない事情があるのか。
理由は知らないが、でぃさんは反論を必死に考えている、そんな風に窺えた。


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376 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 19:11:03 ID:vlIOG62AO
 


(´・ω・`)「お弁当について、詳しく聞かせてくださいな」

(#゚;;-゚)「……」



(#゚;;-゚)「発車前に、運び込まれたお弁当入りのワゴンを、あちらに待機させるのです。
     そのまま、いろいろ作業して。たまたま、今日は中身が降ろされていたのでしょう」

( <●><●>)「あちらとは?」

(#゚;;-゚)「乗務員室、兼車販準備室です」

( <●><●>)「あそこですか……」


ワカッテマスさんは一度、その場所を訪れている。
2個目の拳銃の発見に、事態の真偽を追究すべく、ワカッテマスさんが機転を利かせて、すぐにでぃさんを連れ戻した時のこと。
うっかり転んでなかから死体が……ということらしいが。


(#゚;;-゚)「………まず、車内販売が行われる頃には既に死体がワゴン内部に入っていた、
     そう決めつける時点でおかしいのでは?」

( <●><●>)「『ワゴンを乗務員室に返したあと、第三者が本件と無関係な殺人を犯してワゴンに押し込んだ』、そう言いたいのですか?」

(#゚;;-゚)「可能性の話ですが、大いにあり得……」

(´・ω・`)「ないな」



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377 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 19:15:05 ID:vlIOG62AO
 

警部が、すぐにでぃさんの声を掻き消して、言った。
あり得ないと決め付けた時の表情は、なんともいえない難しい顔だった。
そして、渋い顔をしてワカッテマスさんが突っ込む。


( <●><●>)「弁護するわけではないですが、別にあり得ない話ではないでしょう、警部」

(´・ω・`)「匂ったんだよ、香水が。
      車内販売の時には既に、な」

(゚、゚トソン「あっ……」

(´・ω・`)「僕の横を通った時、すぅーっと、ね。それはトソンちゃんも知ってる」

(゚、゚トソン「はい、間違いないです ワカッテマスさん」


警部に言われるまで気づかなかった、とは言えないが。
もし、あれが、血と香水の混じった匂いだとすれば、だが
一発で香水と嗅ぎ分けられなかったのにも納得がいく。
私の嗅覚が衰えているわけではない。


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378 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 19:17:04 ID:vlIOG62AO
 

(゚、゚トソン「彼女がシャキーンさんと話をしている時に、そっと匂おうとしたけど、この警部が……」

(´・ω・`)「いくらなんでも人の話を盗み聞きはだめだよ」




(`・ω・´)「…………え?」



私の何気ない一言に、誰よりも過敏に反応したのは、シャキーンさんだった。
彼は、威厳さをまるで感じさせない、間抜けさ丸出しの声をあげ、私の顔をまじまじと見ていた。



(`・ω・´)「私が、この女と話をした、だと?」

(゚、゚;トソン「え? でも…… ねぇ、警部」

(´・ω・`)「え? 僕に聞かれても……」

(`・ω・´)「私は席に着いている時は、誰とも話などしてないぞ」

(゚、゚;トソン「え、いや、でも……」


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379 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 19:22:59 ID:vlIOG62AO
 


なぜ、ここでこのような矛盾が顔を出したのか、わからない。
私は嘘は吐いてないし、かといってシャキーンさんの言いぐさからすると
彼も、恐らくではあるが虚偽の発言をしている訳ではなさそうだ。
すると、警部がいきなり声を張り上げた。



(´・ω・`)「! そうか、トソンちゃん、先入観を捨てろ!」

(゚、゚トソン「せんにゅー?」

(´・ω・`)「君は勘違いをしている。
      それは……」




(´・ω・`)「君が聞いた声は、シャキーンさんではない。
      ………またんき氏、声の主は彼だ」

(゚、゚トソン「え? え?」


警部曰く、
まず最初に、B−7にいたまたんき氏との間で起こったお茶のトラブル、そこで私はまたんき氏の声を聞いた。
そして、次にB−7を見ると、シャキーンさんが座っていた。
ここで「お茶の人はシャキーン」と思いこみ、同時に「あの甲高い声の持ち主ははシャキーン」とも錯覚した。
その甲高い声の持ち主がでぃさんと話をしていたのだが、甲高い声の持ち主は、シャキーンさんではなくまたんき氏だ。
だから、君は勘違いをしている。
あの時でぃさんと話したのはまたんき氏だ、と。
そう言った。


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380 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 19:49:37 ID:vlIOG62AO
 

(´・ω・`)「そしてトソンちゃん、その時B−7は見た?」

(゚、゚トソン「横目で見ても、ワゴンがあったから見えにくくて、
     身体を乗り出して見ようとしたら警部が止めたんじゃないですか」

(´・ω・`)「まあ見えなくとも、僕には当時B−7には誰がいたかを知っている。
      あの話し声が聞こえたのは、30分より後だ。ワゴンがきてたからな」

(´・ω・`)「……シャキーンさん、その時は既にB−7に?」

(`・ω・´)「…………ああ」

(゚、゚トソン「……」




(゚、゚;トソン「え!?」


話を整理すると、こうなる。
私は、一度、でぃさんとまたんき氏の揉めあいらしき会話を聞いている。
あの甲高い声とお茶の人は同一人物(またんき氏)なのだから、私は、またんき氏がB−7にいるものだと思っていた。
しかし、当時B−7にいたのは、シャキーンさんであることは間違いない。
つまり、私の“勘違い”は決定付けられた。


(゚、゚トソン「しかし、それがなにか?」

(´・ω・`)「……」



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381 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 19:51:31 ID:vlIOG62AO
 



(´・ω・`)「犯人が、わかった」



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382 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 19:53:17 ID:vlIOG62AO
 


静かに、いつにもまして真剣味を増した声で、言った。




(゚、゚;トソン「え!?」

(; <●><●>)「警部、ほんとうですか!」

(;´・_ゝ・`)「誰なんだ!」

\(;^o^)/「俺じゃねえからな!?」

川 ゜々゚)「真実とじっちゃんはいつもひとつ! きゃっきゃ!」



数名場違いもいるが、当然ながら、場が騒然とした。
一気に騒がしくなり、またんき氏が発見された時以上にざわついている。
私も盛岡さんも動揺を隠せないなか、冷静を装っていたのは警部除く3人だけだった。


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383 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 19:54:55 ID:vlIOG62AO
 


( <●><●>)「警部、我々はただデサえ推理を何度もはずしています。
         当てずっぽうな推理をしていると、また……」


ひとりは、まあ、ワカッテマスさんだった。
一瞬声がひっくり返ったものの、顔はいつものポーカーフェイスのままだ。
否、今日は、結構表情の変動が多いと思われる。

そして、彼らは、言われた通り何度も推理をはずしてきつつある。
それはシャキーンさんの嘘のせいだったり、状況が変わったから
取り消されたものだったりも含まれているが、事実は事実だ。



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384 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 19:56:57 ID:vlIOG62AO
 


(`・ω・´)「今度は誰を犯人に仕立て上げるんだ? そこの娘か?」

从 ‐ノリ


同じくして――声は少し揺れているが――至って落ち着きを保っているのはシャキーンさんだ。
毒を吐き、皮肉ったことを言う彼は
警部に少なからずや抱きようのない恨みを持っているというのは言うまでもない。
彼が指差した先の人物は、ルカ。橘ルカという名前だったと記憶している。
度重なる気絶のせいで、彼女は事件の件もあまり知らず、ある意味今日一番の被害者と言える。


いや、一番の幸せ者かもしれない。



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385 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 19:58:23 ID:vlIOG62AO
 


そして、警部はそのシャキーンさんの人差し指を見るまでもなく、首を振った。
しかし、そこで、なら誰だ、という問いかけは誰もしなかった。
というのも、ここに来てシャキーンさんでもルカさんでもなく、
盛岡さん、オワタさん、くるうさん、私の4人は無関係とくれば、自ずと答えは見えてくるからだ。



(#゚;;-゚)「今度は、どんな茶番で、私たちを楽しませてくれるのですか」


全く動揺を見せず、平静を保っている彼女、でぃさんもまた、警部に対して皮肉った言い方をした。
顔に貼られた数多くの絆創膏が、まるで仮面の役割でも果たしているのか、表情が全く掴めない。
その冷淡さに、私は寒気さえも感じた。


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386 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:01:25 ID:vlIOG62AO
 


(´・ω・`)「………でぃさん、お名前は確か…」

(#゚;;-゚)「……椎名、でぃ」

(´・ω・`)「そうだった、そうだった。
      で、椎名というと、あの歌手と一緒の名字ですか?」

(#゚;;-゚)「………木遍にふるとりで名前の名、です」

(´・ω・`)「一緒だね、うん」


ふと取り出した手帳に、サラサラとその名前をメモする。
名前をど忘れしたのか、漢字を確認しておきたかっただけか。
とりあえずはそれをポケットにしまい、ペンを挟んで、警部は深いため息をした。


(´・ω・`)「椎名、でぃ」





(´・ω・`)「お前を、本件、両者の殺人事件の犯人として逮捕する」




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387 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:04:51 ID:vlIOG62AO
 


その一瞬だけは、空気がまるで凍ったかのように、
非常に静かで、ほんとうに寒いと感じるまでに、冷たくなった。
声はあげずとも、顔だけで充分驚きを表現しているのが私と盛岡さん、
常に落ち着かず、捜査が核心を突いても尚煩かったふたりは、今じゃ漸く静かになっていた。
あんぐりと口を広げ、一瞬自我を失ったであろう人が、ワカッテマスさん。


でぃさんだけ、彼女だけがなにも変わってなかった。
告発を受けても、嗤いも悔やみもせず、立ちすくんでいた。
しかし顔色を窺う限り、さほどショックを受けていないのもわかる。


(#゚;;-゚)「侮辱罪……でいいのかな。
     とにかく、証拠不十分などで釈放となれば、私はあなたを訴えますよ」

(´・ω・`)「構わんさ」


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388 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:07:45 ID:vlIOG62AO
 


(#゚;;-゚)「なら、私が殺した、という証拠でも提示してください」

(´・ω・`)「…それは検事がするもんだ。
      とりあえず、話を聞け」

そして、私が警部にも恐れを抱くほどに、あまりに順調すぎるほど淡々と物事が手早く進んでいた。
告発に否定をせず、犯人だと言うなら証拠を出せ、と強気のでぃさん、
負けじと立ち向かい、推理を展開する、ショボーン警部。
ワカッテマスさんが間に入るに入れないほど、ふたりの間の空気はほかと違っていた。
違い過ぎていた。


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389 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:15:11 ID:vlIOG62AO
 

(´・ω・`)「まず、今回の一連の流れをおさらいしようか。
      おい、ワカッテマス!」

( <●><●>)「そういう雑用は私が担当なんですか……」


ワカッテマスさんが、ちょくちょく、私たちに表紙だけを見せている手帳を、取り出した。
ぱらぱらと開き、目的のページのところで指を挟み、止めた。
しばしの間手帳を凝視し、脳内にその一連の流れを叩き込んでいる。
何回か独りでに頷き、誰に応答するでもなく、ふむふむと言っている。



(´・ω・`)「トソンちゃんの“勘違い”もふまえて、ね」

( <●><●>)「というと?」

(´・ω・`)「『でぃさんが話をしたのはシャキーンさんではなくまたんき氏だった』事実を、ね」

(゚、゚トソン「…?」

( <●><●>)「はい」


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390 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:18:03 ID:vlIOG62AO
 

( <●><●>)「本日、10月23日の0時3分、オオカミ鉄道、オオカミ中央ラウンジ線、
         中央ラウンジ−北VIP区間の二本目の列車が出発」

( <●><●>)「12分頃に、線路の設備の不備による、発車後1度目のおおきな揺れが当列車を襲撃」

( <●><●>)「20分頃に、警部が当時B−7に座っていた斉藤またんき氏にお茶をかける事故が起こる」

( <●><●>)「20分頃から30分までの間に、二号車と三号車の間のトイレ前のスペースにて、
         予め現場にいたシャキーン氏とトイレに向かったまたんき氏がナイフで交戦、両者ともに軽傷を負う事件が起こった」

( <●><●>)「その時にまたんき氏には脇腹、シャキーン氏には右腕の傷が確認され、
         シャキーン氏はトイレにてまたんき氏の持っていたアーボンオレンジを使用し、応急処置を施しています」


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391 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:21:24 ID:vlIOG62AO
 

( <●><●>)「またんき氏はその足でA−5に着席、
         その後シャキーン氏はトイレ前付近を徘徊したと思われます」

( <●><●>)「そして彼が物陰に隠れたと同時に都村氏がトイレに訪れる、トイレから出たのちシャキーン氏と会う」

( <●><●>)「シャキーン氏と都村氏が一号車に戻った時、シャキーン氏はまたんき氏が自分の席に座っている事を知るも、
         なにくわぬ顔をしてB−7に着席、以後お互いに席を立っていない」

( <●><●>)「31分頃にサービスワゴンとでぃ氏が一号車に到着、
         警部と都村氏が当時ワゴンから香水を感じ取っています」

( <●><●>)「一号車先頭まで進み、折り返しで戻ってくる際にシャキ……
         じゃない、またんき氏とでぃ氏が対談、そのすぐあとに銃声が…………」

( <●><●>)「……」


( <●><●>)「ん?」


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392 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:23:50 ID:vlIOG62AO
 


黙々と話すワカッテマスさんが、その下りを説明する時少し腑抜けな声を発した。
すっかり聴き入っていた乗客の皆は戸惑うも、すぐに警部が鶴の一声をあげた。
「構わず続けろ」という警部の声に従い、若干躊躇するワカッテマスさんだが、すぐ元のペースに戻った。


( <●><●>)「……銃声が鳴り、私こと若手と稚内が一号車に駆けつけ、捜査開始」

( <●><●>)「44分頃に当列車を襲う2度目の揺れを確認」




( <●><●>)「………こんなもんですか」


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393 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:27:12 ID:vlIOG62AO
 


一度に長らく話し続けたので、一旦深く息を吸い込むワカッテマスさん。
思い返すと、この一時間にも満たない時間にて、様々な事件が起こったものだ。
最初のお茶の一件が、実に可愛らしく思える。しかし、それのお陰でシャキーンさんの移動のトリックが見破れた。
結局、今のところ「だからなんだ」という問い掛けには答えられないものの、それでもシャキーンさんのアリバイを崩せたのだ。



2度に渡るおおきな揺れは、一度はそれが殺害の証拠にも用いられそうになったが、今のところはノータッチで進められている。
当初は大騒ぎになったシャキーンさんとまたんき氏の交戦も、今じゃちっぽけな事件として扱われている。
時とは残酷なもので、当時強烈に思えたインパクトを徐々に弱めていくのだ。



(#゚;;-゚)「………で、話、とは」

(´・ω・`)「さっき刑事も困惑したから、またんき氏の件から話そう」


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394 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:29:09 ID:vlIOG62AO
 

(´・ω・`)「銃声の少し前……と言っても、1分もないかな?」

(´・ω・`)「トソンちゃんと僕は、その時に君とまたんき氏との諍いを聞いている」

(#゚;;-゚)「それは証拠にはなりません」

(´・ω・`)「問題は、だ。その時近くにいた、ということだ」



(´・ω・`)「消去法でいくと、当時シャキーンさんは既にB−7にいた、から銃殺は不可能。
      オワタとくるうちゃんは銃がない、ルカちゃんは寝ていた、デミタスさんはアリバイがある」

(´・ω・`)「僕とトソンちゃんは言わずもがな除外する。残ったのは?」



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395 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:31:50 ID:vlIOG62AO
 



(# ;;- )「警部さん!」

(´・ω・`)「ん」



(#゚;;-゚)「………もうひとり、いますよ。犯人候補が」

( <●><●>)「なんですって? しかし、もうほかに現場には……」

(#゚;;-゚)「またんきさん自身です」

(; <●><●>)「!! 自殺か!」

(´・ω・`)「ばーか」

(#゚;;-゚)「え?」


先刻まで深刻な、そして重苦しい空気だったのに、警部の罵りで一瞬にして雰囲気が変わった。
ワカッテマスさんは唖然としている。


(´・ω・`)「銃はどうすんだ。彼の周りには、拳銃なんてなかったぞ。
      まして、焦げ痕をみる限り、1メートルは離れている」

( <●><●>)「……ところで警部、またんき氏に使われた拳銃、それは……」

(´・ω・`)「A−5、元シャキーンさんの銃だ。これでおわかりだろう」


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396 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:33:33 ID:vlIOG62AO
 

「よっ」という掛け声に伴い、彼はA−5、またんき氏の眠る席の前に向かった。
そして、身振り手振りで、今から述べる推理に味を加えようとしている。


(´・ω・`)「言うまでもないが、何度も言うように彼女は一度またんき氏と揉めていた」

(´・ω・`)「そして、互いにヒートアップし、でぃさんは我を失った!
      すぐに、またんき氏の隙を突いて、鞄から銃を抜き取った」

(´・ω・`)「―――瞬間ッ!」




「パァン!」


……と、警部が指でっぽうで撃つ素振りと一緒に、擬音語を言い放った。
少しして、警部は指でっぽうをやめ推理に戻った。


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397 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:35:07 ID:vlIOG62AO
 

(´・ω・`)「しかし、はっと気づく彼女、すぐに銃を鞄のなかに突っ込む、服装を正す」

(´・ω・`)「そこで刑事たちが乱入、と」

( <●><●>)「ちょっと待ってください、どうしてでぃさんは
         A−5、シャキーンさんの鞄に銃があるのを知ってるのです?」

(´・ω・`)「それは、言い換えるとこうだ。
      『でぃは予めシャキーンが拳銃所持であることを知っていた』」

( <●><●>)「いや、だから……」


「ちょっと待った」と、警部は掌をワカッテマスさんに向ける。
頭を書きながら、不機嫌そうな顔をして、警部は言った。


(´・ω・`)「使われたからだ」

(; <●><●>)「はぁ!?」


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398 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:37:17 ID:vlIOG62AO
 

(´・ω・`)「……最初から、不思議だったんだ。
      シャキーンさんの銃、またんき氏の銃、あわせて3発撃たれている」

(´・ω・`)「なのに、弾は2発までしか見つかっていない」

(´・ω・`)「『シャキーンが一度でぃに使ってみせた』『だからでぃはシャキーンが銃を所持しているのを知っている』
      そう考えれば、謎の3発目の弾丸の説明も付くし、今の僕の推理も……」




(#゚;;-゚)「その推理だと、私が知っている銃はB−7のものであって、A−5の銃ではありませんが」

(´・ω・`)「…………」




(;´・ω・`)「あっ!」


でぃさんは言った。
もし一度発砲したシーンを見たならば、それはシャキーンさんが持ち帰り、鞄にしまったはずだ、
だから、今の推理だと彼女が知っている銃はB−7の方の銃で、
咄嗟にA−5から銃を取り出して撃つ、というのは不可能だ、と。
そして、ここに来て警部が今までにない、驚きをふんだんに盛った声を発した。


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399 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:39:22 ID:vlIOG62AO
 


( <●><●>)「逆に考えてみなさい」

(´・ω・`)「!」

( <●><●>)「でぃさんが進んでバッグから銃を盗ったのではなく……」



( <●><●>)「またんき氏が、銃をでぃさんに向けた、と」


(# ;;-゚)「!」

( <●><●>)「なにも、でぃさんの自発的な犯行と決めつける必要はないのです」

( <●><●>)「またんき氏が銃を取り出し、でぃさんに突きつけた」

( <●><●>)「そこででぃさんが銃を奪い、咄嗟に撃った」

( <●><●>)「これなら、『なぜ銃声が聞こえたのか』『なぜでぃさんは発砲できたのか』の説明が付きます」

(´・ω・`)「……そうか、その手があったか」

(#゚;;-゚)「………」


でぃさんは、黙った。
急遽助け舟を出してくれたワカッテマスさんに礼を言いつつ、
警部は調子をを取り戻して、でぃさんに詰め寄る。


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400 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:40:56 ID:vlIOG62AO
 

(´・ω・`)「銃で撃ったのはいいが、なにぶん咄嗟の行動ゆえに銃声の対策がなってなかった」

(´・ω・`)「だから、すぐに鞄に銃を押しつけたんだ!」

(# ;;-゚)「………!」

(´・ω・`)「B−7の方の鞄には、鞄の奥底に銃があったのに対し、
      なぜかA−5の方は浅いところ……というか一番上にあったんだ。これにも説明がつく」

(#゚;;-゚)「でも、状況証拠だらけです。
     まず、それだと服装を正すことができ……」



(´・ω・`)「“入れ替えた”」

(#゚;;-゚)「えっ……?」


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401 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:42:00 ID:vlIOG62AO
 

警部は目を細め、
「信じられないことだと思うが」と前置きをし、
文字通り信じられないことを語り出した。


(´・ω・`)「でぃは、またんき氏を殺した」

(´・ω・`)「その時、銃を隠すと同時に咄嗟にとった行動、それが今回の事件の真相を示している!」

( <●><●>)「……“入れ替えた”、ですか?」




(´・ω・`)「なにも、入れ替わったのは座席ではない。
      もうひとつ、入れ替わっていたんだ」


.

402 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:42:54 ID:vlIOG62AO
 





(´-ω-`)「死体が、な」





( <●><●>)「……な」

(; <○><○>)「なんですってェェェェェェェェェェェェェェェ!?」



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404 名前:>>403訂正 ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:46:25 ID:vlIOG62AO
 



(´・ω・`)「椎名でぃ、彼女が銃殺の際とった行動は“3つ”だ!」

(; <●><●>)「み、3つも……」


すっかり高揚してきたからか、整わない呼吸のために一旦警部は話をとめた。
目を瞑って静かに深呼吸し、くわっと見開いて、再び大声で続けた。



(´・ω・`)「1つ! 銃を鞄に押し込んだ」

( <●><●>)「それは拳銃の位置が物語っています。リュックのような構造ですから、押し込むのは簡単だ」




(´・ω・`)「2つ! 左手でワゴン内部の死体を持ち、右手でA−5の死体を持ち上げ、
      交錯するようにして、死体を入れ替えた!」

(; <●><●>)「そこですそこ! あり得ない!」

(´・ω・`)「なぜだ」



.

405 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:47:42 ID:vlIOG62AO
 


(; <●><●>)「そりゃ確かに、シャキーンさんのような腕っ節のいい人なら
        できるかもしれない。片手で人を持ち上げるのは」

(; <●><●>)「しかし、でぃさんです! 細腕の彼女が……」




(# ;;- )


(´・ω・`)「考えようによっては、最初にワゴン内部から死体を取り出し、座席の上に乗っけてから
      ひっそりワゴン内部にもう片方の死体をいれることもできるはずだ」


.

406 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:50:00 ID:vlIOG62AO
 




(´・ω・`)「………そして、彼女は力持ちなんだ」

(゚、゚トソン「あ!」



思い返せば、私が乗車した時。
でぃさんにぶつかったのはいいが、私は尻餅を付くほどの大転倒をしたのに対し、彼女はびくともしなかった。
ワゴンにもたれていて、倒れなかった、あの時はそう思っていたが、いま考え直せばわかることだ。
なぜなら―――



(´・ω・`)「こんな重いワゴンを軽々と運び、
      『60キロなんて』と言うほど、人外な感性をしていらっしゃる」



そもそもがおかしいんだ。
仮に彼女が犯人でないとしても、ただでさえ重量が半端なさそうなワゴンを、
なかに成人男性の死体が入っていても、まるでなにも入ってないかのように楽々と運べる。
そしてその一件については、彼女自身が証言している。
「重くてもふつうに運べる」と。



.

407 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:51:29 ID:vlIOG62AO
 


(# ;;-゚)「…………め…」

(´・ω・`)「そうして片手にひとりずつ死体を持ち上げ、入れ替えた」




(´・ω・`)「そして、3つ目!」

(; <●><●>)「まだなにか……?」

(´・ω・`)「水をかけた」

( <●><●>)

(´・ω・`)

( <●><●>)

( <●><●>)「はい?」

(´・ω・`)「水を、かけた」


.

408 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:53:03 ID:vlIOG62AO
 

(´・ω・`)「無論、またんき氏と向き合って話していたのは僕らの証言通り」

(´・ω・`)「その時に、彼女は見たのだろう、左肩にかかっている茶色の液体を」

(゚、゚トソン「お茶? でも……」

(´・ω・`)「トソンちゃんの言いたいことはわかっている。
      『この死体の左肩も濡れている』と」

(´・ω・`)「でぃさんが入れ替わり前の死体を見たとき、左肩は濡れていた」

(´・ω・`)「そこで咄嗟に、もう本能的に危機を感じ、入れ替えた先の死体の左肩にも
      同じように水をかけ、あたかも入れ替わってないかのように……」

( <●><●>)「しかし、証拠が……」

(´・ω・`)「紙コップとか容器はないね。ワゴン撤収時に処分したんだろう」



(´・ω・`)「しかし、証拠……もとい根拠は、ある」

( <●><●>)「……え?」



.

409 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:54:30 ID:vlIOG62AO
 


(´・ω・`)「今、僕が『水』って言ったわけ、わかる?」

( <●><●>)「いや……」

(´・ω・`)「もう一度、そっちの、椅子に座ってる死体を見てみろ」


そう言って彼は、またんき氏……いや、モラル氏、
……結局どっちだ?


A−7に座っている死体に指をさし、そう指示した。
ワカッテマスさんが丁寧に死体を傾け、左肩をみる。
そして、最初に見たときと同じ事を言った。


( <●><●>)「……濡れてますよ」

(´・ω・`)「ワカッテマスはまだ気づいていない」

(´・ω・`)「僕は、最初『茶色』っていった。麦茶のね」

( <●><●>)「! 少しお待ちください」



警部の言いたいことがわかったのか、再び死体を見た。
じっくり、食い入るように見て、ワカッテマスさんは言った。


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410 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 20:56:01 ID:vlIOG62AO
 

( <●><●>)「…………水です」

(゚、゚トソン「なぜわかるんです?」

( <●><●>)「白いコートにお茶がかかると、当然ですがその色……茶色?が染み付きます」

( <●><●>)「しかし私は、最初の取り調べの際乗客を見回った時も、茶色なんて気づかなかった」

( <●><●>)「気づいていたらそう報告しますから」



(´・ω・`)「僕の指示によって、はじめて濡れている事実がわかったくらいだ、
      そうとうきれいな無色透明の水で濡らしたんだろうなぁ」

( <●><●>)「しかし、なぜですか」

(´・ω・`)「……ごまかすためだよ、入れ替えたのを」


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411 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 21:00:37 ID:vlIOG62AO
 

(´・ω・`)「ワゴンの方の死体を見てみろ」

( <●><●>)「はい」


嫌いなはずの警部に指示される事に抵抗感を抱かず、
彼はワゴン側の死体の左肩をさっとチェックした。
しかし、うーんと長いこと唸り、諦めたのか、死体を元の形に戻して、警部に言った。


( <●><●>)「茶色……はあるのですが、乾いた血痕なのかお茶なのかの見分けはつかないです。
         のちほど、鑑識に調べさせます」

(´・ω・`)「まあ、犯行の際押し込んだんだしなぁ……血だまりのできたワゴン内部に」


残念そうに肩を落とす警部だが、口角をあげている。
それの意味するところ、警部には「死体が入れ替わった証拠」をまだ用意しているのだと見受ける。

でぃさんは、依然黙っていた。


.

412 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 21:02:22 ID:vlIOG62AO
 


(´・ω・`)「ところで、香水、覚えてる?」

( <●><●>)「ワゴンから匂うやつですね」

(´・ω・`)「そのワゴンから見つかった死体は、香水の香りがするのは当然だ。
      だが、この座席に座っている方の死体、彼から匂う香水はなんだ?」

(# ;;-゚)「!」

(´・ω・`)「これも証拠のひとつだ。ワゴン経由で入れ替わった……という」

(# ;;-゚)「や………て……」

(´・ω・`)「そして、ワカッテマス、度々すまないが、ワゴン側の死体の右わき腹を見てくれ」



(`・ω・´)「……わき腹!」

( <●><●>)「…………うーん……
         切り傷? がありますね」

(;`・ω・´)「なにッ! じゃああいつは……」

(´・ω・`)「ご名答」


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413 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 21:04:48 ID:vlIOG62AO
 


シャキーンさんは、一度警部からの尋問を受けている時、奇妙なことを口走っていた。
「コートの上から確かに斬ったのに、コートに切り傷がない」と。

そして、ワカッテマスさんは自発的に上着のポケット内部に手を突っ込んだのだが、
少しもぞもぞとさせたのち、難しい顔をして、なにかを取り出した。



( <●><●>)「………なんだこれ」


それはオレンジ色の、まるで爪を切った後の残骸みたいな、切り屑だった。
それを見てシャキーンさんは困惑した。


(;`・ω・´)「アーボンオレンジ!」

(´・ω・`)「よかったね、シャキーンさんは嘘をついてないって証明された」

(;`・ω・´)「………」



シャキーンさんは、嘘をついていなかった。
それは非常に喜ばしいことなのに、なぜか顔が笑っていない。
それを突っ込むことなく、警部は、肩を震わせるでぃさんの肩をたたき、言った。


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414 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 21:05:52 ID:vlIOG62AO
 


(´・ω・`)「でぃさん…?」

(# ;;- )


でぃさんは、先程までの威勢はどこへやら、すっかり縮こまってしまい、静かになっていた。
時折震わせる肩が、彼女の精神状態を物語っている。
幾度となく、こういう現場にはち合わせしてきた私だ、特に悩むことなく、確信した。


これで事件は終わった、と。




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415 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 21:09:59 ID:vlIOG62AO
 







  バリバリバリバリッ

(#ノシ;□;)ノッ「ああああああああああああああああああああああッッ!!!」

     バリバリッッ






(゚、゚;トソン「!?」


―――諦めた!

私がそう思った瞬間、でぃさんは、どうしたのか顔をかきむしり出した。
爪をたてて顔を引っ掻き回し、狂気なまでに叫んでいる。
絆創膏、テーピング、それらがぼろぼろと床に力なく落ち、彼女の顔には右頬の大きな絆創膏と
数多くの傷しか残ってなかった(おそらくは過去についたであろう傷で、本件とは関わりなさそうだ)。
涙を思いっきり流し、表情も本来の顔よりすっかり豹変して、顔の筋肉がほぐれた、そんなイメージがした。
現に、口角が伸びている。
これは笑っているのか、泣いているのか、私にはわからない。



.

416 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 21:13:14 ID:vlIOG62AO
 


(#メメ;ー;)「まだです!」

(´・ω・`)「!」

(#メメ;ー;)「香水の匂いが付着? お茶ではなく水が掛かっている?
      ばかばかしい、あくまでそれはワゴンを経由した死体の入れ替わりを証明しただけに過ぎない!」

(;´・ω・`)「死体の入れ替わりがあった以上、殺人をしたのは決定事項なんだぞ! 観念しろ!」

(#メメ;ー;)「それはA−5に限った話じゃん! 全部私じゃないじゃん!
      “モララー”の殺害は、そこの釣り眉毛が犯人だ!」

(;`・ω・´)「! 貴様、なんのつもりだ!」

(#メメ;ー;)「ああ、認めるよ!またんきを殺したのは、私だ!」


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417 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2011/10/21(金) 21:19:04 ID:vlIOG62AO
 

(; <●><●>)「警部、でぃさんが興奮状態にあります! 危険です!」

(;´・ω・`)「………ぐっ! ここで……」



(#メメ;ー;)「またんき、あいつは私が殺した!
      でもこれは正当防衛だ!」




「正当防衛なんだ!」
彼女は、大声で、そう、何度も何度も叫んだ。
誰もが口を閉ざすなか、彼女のその叫び声が、空しくもこだました。
彼女の声が、先程よりも増した、車輪がレールを蹴る音と協調しあって、ひどく騒がしく聞こえた。






 イツワリ警部の事件簿
 File.1

 (´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです

 9章
  「もうひとつの入れ替わったもの」

    おしまい



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