- 103 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 19:06:57
ID:lYKs073oO
-
4章「アンモラル」
.
- 104 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 19:08:40
ID:lYKs073oO
タオルがめくられた時、場は騒然とした。
血の付いたナイフは、あって当然なのだ。
本人がそう主張し、それの確認も含めての検査だから。
そしてのちに、このナイフについて
署ででも取り調べがなされたことだろう。
しかし、もう一つくるまれていたのだ。
輪胴式の弾倉を持つ、拳銃が。
それを発見するや否やシャキーンさんは絶叫した。
予期せぬ事態が起きたときにあげる声に、それは似ていた。
当然列車内も騒がしくなる。
発砲事件の犯人が見つかった、そして警部も
用意周到なワカッテマスさんも
手錠をたまたま持っていなかったと言う。
つまり、シャキーンさんがその気になってしまうと、止める術がない。
.
- 105 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 19:11:28
ID:lYKs073oO
しかし、シャキーンさんは。
(;`・ω・´)「違う! それは俺のではない!」
素性が出てしまっているというのに
往生際が悪いというか、拳銃が見つかっていながら
それでもなお、否定している。
私物ではない、そう連呼する。
しかしながら警部はそれに耳を貸さず、ジッと拳銃を見ている。
彼の代弁でもするのか、でぃさんが前に出た。
(#゚;;-゚)「あなたのカバンの奥底に、丁寧にタオルで包まれていて、
更にカバンにもチャックとボタンでしっかりと閉まっていたのにですか?」
(;`・ω・´)「そ、そうだ!」
(#゚;;-゚)「おかしいですね、ではこの拳銃はどなたの?」
(;`・ω・´)「ぐぬぬぬぬ……」
(#゚;;-゚)「まさか、このカバンが“自分のものではない”、と仰います?」
(;` ω ´)「………ぐおおおおおおおッ!
このアマァァ!」
.
- 106 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 19:13:55
ID:lYKs073oO
でぃさんが、ありとあらゆるシャキーンさんの主張を全て
これ以上ないであろう程の正論で打ちのめした。
シャキーンさんは汗がかなり垂れている。
息遣いは荒く、見た感じ動揺がひどい。
言い返す言葉を無くしたか、シャキーンさんは立ち上がり
目の前にいるでぃさんに、襲いかかろうとした。
―――が。
(`゚ω゚´;)「いででデデっ!」
(゚-;;゚*)「言い返せずに暴力とは、なんと滑稽な」
素早い身のこなしで、シャキーンさんの腕に関節技らしき技をかけた。
それは華奢な体つきである女性の見て呉れからは到底考えられぬ動きで、
大男がすっかり押さえつけられていた。
その一連の動きを見ていたワカッテマスさんが止めに入る。
.
- 107 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 19:15:18
ID:lYKs073oO
(; <●><●>)「あなたたち、落ち着いてください!」
(`゚ω゚´;)「わかった、殴らないから離せ!」
(#゚;;-゚)「………刑事さん」サッ
(; <●><●>)「……はい」
ワカッテマスさんの仲介に応じ、組んでいた手をさっと解いたでぃさん。
シャキーンさんは力尽きたかのように椅子にぐったりと座り込む。
若干困り顔のワカッテマスさんに、でぃさんが言った。
(#゚;;-゚)「今の態度を見てわかったでしょう?」
(#゚;;-゚)「発砲事件の犯人、確実に彼です」
( <●><●>)「まあ……そうなりますね」
(;`・ω・´)「違うと言っているだろうが……」
(#゚;;-゚)「とにかく、発砲事件の容疑者が見つかった以上
捜査は切り上げていただけませんか?」
「それはまだできないな」
(#゚;;-゚)「……はい?」
.
- 108 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 19:17:22
ID:lYKs073oO
発砲事件の犯人は見つかった、だから捜査を切り上げろ。
そう、筋の通った事をでぃさんがワカッテマスさんに要求すると、異議を申し立てる者がいた。
でぃさんがシャキーンさんを見るも、首を振る。
もう一度、声がした。
(´・ω・`)「おい、これはどういうことだ」
( <●><●>)「警部。どうかなさいました?」
異議を唱え、声を発したのは警部。
彼の掌に載っている拳銃、弾倉が見える状態になっていた。
それをワカッテマスさんが見た上で、警部は弾倉部分に指をさした。
(´・ω・`)「……なんで、空きがふたつもあるんだよ、シャキーンさん」
(;`・ω・´)
(`・ω・´)「え? ふたつ?」
.
- 109 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 19:18:54
ID:lYKs073oO
その輪胴式拳銃は6弾詰められるタイプの、私たち一般市民がよく知る拳銃だ。
リボルバーがずらされているが、そこに詰まれている弾丸は4つ。
空いている2つの空間に指をさし、警部はシャキーンさんに訊いたのだ。
でぃさんを睨んでいたシャキーンさんが
警部の問い掛けに気づき、拳銃を見たとき。
実に情けない声、顔をして聞き返した。
(´・ω・`)「見ての通りだ」
弾倉にふたつ空きがあるということ。
つまりそれまでに2発撃たれた、ということを意味する。
それはわかるのだ。
けど、実に不可解だった。
(#゚;;-゚)「え、発砲は一度だけじゃないんですか?」
そう、私たちは一度しか聞いていないんだ、銃声は。
.
- 110 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 19:21:07
ID:lYKs073oO
(´・ω・`)「……ワカッテマス」
( <●><●>)「はい」
(´・ω・`)「僕は、一号車で銃声は一度しか聞いていない。おまえはどうだ?」
( <●><●>)「私も、ここの発砲しか聞いていません」
(´・ω・`)「……フム」
警部がまたも推理に徹している。
拳銃を見つめ、唸っている。
(#゚;;-゚)「はじめから一発だけ余所で撃ったのでしょう」
(´・ω・`)「否」
でぃさんの推理も尤もだ。
というより、普通は誰しもがそう考える。
しかし、それを警部は受け入れない。
(´・ω・`)「さっきのシャキーンさんの顔を見たろう?」
ふたつの空白を見たとき、シャキーンさんはというと
まるで状況が呑み込めていない様子だった。
あの時の顔は、私に言わせてみても
とても嘘をついているような顔には見えなかった。
が、それでもでぃさんは食い下がる。
.
- 111 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 19:23:31
ID:lYKs073oO
(#゚;;-゚)「納得いきません。発砲事件の犯人の言うことなんて」
(`・ω・´)「………」
ふたりのやり取りを皆が見つめる。
シャキーンさんも黙って聞いている。
(´・ω・`)「そもそも、シャキーンさんはさっきから言動が変なんだ。
本来銃を隠し持っていたら持ち物検査を断るだろう、なんとしてでも。
しかしあっさりと許したし、それに拳銃が見つかった時のあの慌て様も妙だ」
(#゚;;-゚)「もともと、彼の拳銃を誰かが見つけ出し、
彼の鞄にこっそり戻した、というわけでもなく?」
(´・ω・`)「それだと“誰が”“いつ”彼のカバンに入れたんだ?
しかもどうしてそれがシャキーンさんのだと判別できた?
いろいろと謎ができるのだよ」
(#゚;;-゚)「……」
.
- 112 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 19:25:13
ID:lYKs073oO
(´・ω・`)「そして、仮に発砲したのが彼とすると、様々な妙なことが起こる」
σ(´・ω・`)「どうして警察がいるのに堂々と発砲できたんだい?」
(`・ω・´)
警部は、自分を指差してそう言った。
でぃさんは少し考えて、それに返す。
(#゚;;-゚)「警察だってのを知らなかったのでしょう」
(´・ω・`)「いいや違うね、彼は僕が警部やってるのを知ってる。
ねートソンちゃん?」
(゚、゚トソン
(゚、゚トソン「え?」
.
- 113 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 19:26:29
ID:lYKs073oO
何の前触れなく、警部は私に話を振った。
こちらを真剣な眼差しで見つめる警部は、私に同意を求めている。
しかし何のことか心当たりがない。
(゚、゚トソン「なんのことですか?」
(´・ω・`)「ほら、この人と会話したじゃん、お茶の件で」
(#゚;;-゚)「お茶?」
一瞬悩んだが、私は左の掌に右拳をたたいた。
お茶の人が彼とは思えないのだが、位置関係的に彼がお茶の人だ。
確かにあの人は知っていておかしくない。
(゚、゚トソン「あーあー!」
(゚ー゚トソン「そういえば、警部は自己紹介してました!」
(・ω・トソン「おれはけいさつだーもんくあっかー?」
(゚、゚トソン「……って」
(;´・ω・`)「そんな紹介してないよ……」
.
- 114 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 19:28:15
ID:lYKs073oO
私が実に似ている警部の物真似をすると、
あまりにうますぎて恥ずかしいのか
顔を赤らめる警部だが、一度咳払いをして本題に戻った。
(´・ω・`)「警察の前で堂々と発砲?
捕まりたいのかって話よ」
(#゚;;-゚)「でも……」
(´・ω・`)「それに、標的がわからない。
発砲する以上、的は絶対にあるんだ」
一度警部は俯き、深呼吸した。
ワカッテマスさんに一瞥を与え、彼は続ける。
(´・ω・`)「とまぁ、ここまでおかしいことが生まれる以上……見いだせる答えはひとつ」
(´・ω・`)「まだまだ捜査をしないと、真相が暴けない、という事だ」
(#゚;;-゚)「……」
(´・ω・`)「認めてくれるね? 捜査を」
(#゚;;-゚)「………」
.
- 115 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 19:30:04
ID:lYKs073oO
暫くの間でぃさんは考えた。
静まり返り、車輪の音だけが響くこの空間で、でぃさんは言った。
(#゚;;-゚)「……わかりました。
しかし、この人の疑いが晴れたわけではありませんことをお忘れなく」
(´・ω・`)「わかってるさ、刑事に監視させる」
( <●><●>)「了解です」
(`・ω・´)「……逃げねぇよ」
警部が首を回して関節をぽきぽき鳴らし、肩も回す。
スイッチを切り替え、捜査に徹底しようということだ。
ストレッチを終えた頃、ワカッテマスさんも警部に付き合う。
(´・ω・`)「というわけで捜査を再開するぞ」
.
- 116 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 19:36:23
ID:lYKs073oO
(´・ω・`)「そうだ、ワカッテマス」
( <●><●>)「なんなりと」
(´・ω・`)「あれ、できたか?」
( <●><●>)「アレ?」
(´・ω・`)「位置取り書くって言ってたじゃん」
( <●><●>)「あ、書けてます。起きていた人には名前も伺いました」
そういうと、彼はポケットにしまってあった手帳を取り出した。
ぱらぱらとページがめくられ、特定のページで指が止まった。
そこには微妙な字体で見取り図が描かれており、それを警部に手渡す。
直線が数本ひかれ、またいくつか名前も書いてあった。
まず右列、B-1が空席、その後ろに人生オワタと書いてある。
その後ろも空席、B-4には素直くるう、ふたつ空席が続いてB-7には、本田シャキーン。
年齢や職業も、それぞれに書かれていた。
ちなみにB-8も空席だ。
.
- 117 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 19:41:41
ID:lYKs073oO
-
続いて左列、A-1には橘ルカ、続いてA-2には盛岡デミタスとある。
ひとつ空けて、B-4とB-5だが、前者には不在、後者にはハテナが書かれていた。
この件に、警部もワカッテマスさんに問いかける。
(´・ω・`)「ほう。ところでこのハテナはなんだ?」
( <●><●>)「ああ、それは」
ハテナに指を突きつける警部に、ワカッテマスさんは
なんて事ない、と言いたげな口振りで答える。
( <●><●>)「その後ろの方が眠っていらして、
起きたときに聞こう、と」
(;´・ω・`)「だから起こせよ!」
( <●><●>)「まあ、あとで起こしますけどね」
最後に、A-7には警部、A-8が私だ。
( <●><●>)「そして前の方が、席をはずしているのか
荷物だけ残してもぬけのからなのです」
(´・ω・`)「どれ……」
.
- 118 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 19:46:13
ID:lYKs073oO
警部が進行方向に向かって歩き、そのふたつの席へ向かった。
私も椅子の上から膝で立ち、身を乗り出してそこを覗いた。
惜しくも様子は見えなかったものの、警部が見えない分まで細かく語ってくれた。
(´・ω・`)「アタッシュケースと帽子、あとテーブルには小説も置いてあるな。
こいつの行方は?」
( <●><●>)「追々捜すつもりでした。どういう人物が乗っていたのかまでは……」
(´・ω・`)「じゃあ、こっちの寝坊助さんは……」
( <●><●>)「さあ?」
(;´・ω・`)「あのなぁ……」
(#゚;;-゚)「ああ、そちらの人は」
未だ眠りについているこの人物について、
警部とワカッテマスさんがあれやこれや言っていた時
「そういえば」と前置きして、でぃさんが話に参加した。
振り向く警部にでぃさんは言った。
(#゚;;-゚)「ご存知ないですかね、
そちらはかの有名な、斉藤またんきさんですけど」
(´・ω・`)「斉藤またんき?」
.
- 120 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 19:50:00
ID:lYKs073oO
(#゚;;-゚)「またんきというよりこう言った方がいいかな……」
(#゚;;-゚)「株式会社『アンモラル』の二代目社長です」
( <●><●>)「あの大手会社の?」
(´・ω・`)「詳しく」
( <●><●>)「『アンモラル』とは、言わば
今をときめく注目の会社ですよ?」
そう前置きし、ワカッテマスさんは無知な警部に説明を施した。
曰く、もともとはちいさな食堂だったのだが、ある日
グルメライターの目に掛かり雑誌に載ったのを契機に、
その食堂は最後尾で二時間待ちすらあり得た大行列に見舞われた。
そこで大ヒットしたメニューが、大手冷凍食品メーカーの目にも掛かり
そのお偉い人が店長に商品化を提案、店長は喜んで承諾した。
すると毎月入ってくる金がとてつもない数字に。
貯蓄もみるみる貯まり、店を改装することに決行する。
.
- 121 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 19:53:08
ID:lYKs073oO
そしてリリースするメニューがどれも売れに売れて
気がつけば、二号店、三号店とチェーン展開がはじまる。
もともと自営の食堂だったのが、店長の提案で雑貨もリリース、するとこれがまた大ヒット。
ちいさな店を従える店長から大手チェーン店の社長となった
一代目社長、斉藤ウララーは、一生かかっても使い切れないだろう金を手にする。
しかしそれで買った贅沢品は時計や車を数個だけ、というのは有名な話だ。
残りは全部新しい商売につぎ込んだ。
研究費に事欠くということは全くなく、
雑貨の次に手を出した家具、インテリアも
雑貨ほどではないがやはり売れる。
そしてほぼブランドと化したその株式会社『アンモラル』は
ついに遊園地、ホテルなども経営し始めた。
しかし、その商売にトコトン貪欲なウララー氏を妬ましく思う連中が増え、
某日、遊園地設立の土地見学の際狙撃される。
.
- 122 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 19:55:57
ID:lYKs073oO
そこで二代目に就いたのが、彼の一人息子のまたんき氏だ。
当初、そのカリスマ性や腕の良さを人々が疑った。
しかし、またんき氏もまた商売に貪欲で、テーマパーク設立の次は
ケータイにも手を出し、やはり人々はそれを失敗だと睨んだ。
しかし意外や意外、ケータイにおいての「Un
Moral」は
嘗てない業績を誇るビジネスとなり、三大ケータイ会社に仲間入りした。
こうして親子二代揃って経営手腕が優れていたため、株式会社『アンモラル』は
知らない人はいないという程有名な会社となったという。
以上をワカッテマスさんは説明した。
私も無論知っていたのだが、こんな成り立ちなどは知らなかった。
警部も(わかっているかは知らないが)うんうん頷いている。
.
- 123 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 19:58:55
ID:lYKs073oO
( <●><●>)「そんな社長様がどうして民間の列車に……」
(´・ω・`)「そんな社長だったら、早く事件を
なんとかしないと、また警察の評判が落ちるぞ」
( <●><●>)「……そのうち、狙撃されるかもしれませんからね」
そのまたんき氏に関して、誰も異変を突っ込まなかった。
普段の警部やワカッテマスさんなら
「ボディガードや側近もつけずに」
「自家用車やチャーターしたジェット機に乗らず」
「狙われやすい長距離走行の」
「それも一般人が乗る普通の列車に乗った」
のかを不審に思い、推理合戦でもはじまるだろうに。
本人を起こさない限りは、話にならないからか。
( <●><●>)「しかし、よく気づきましたね」
(#゚;;-゚)「車内販売の際話しかけられ、興奮しちゃって。そのときわかりました」
.
- 124 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 20:00:31
ID:lYKs073oO
( <●><●>)「それはいつの事か覚えてます?」
(#゚;;-゚)「ええと……」
ウキウキしているでぃさんにワカッテマスさんが訊いた。
ちゃっかり捜査を続けちゃっている警部を尻目に、でぃさんは返した。
(#゚;;-゚)「ごめんなさい、興奮しすぎて覚えてないです」
( <●><●>)「まあ……気持ちはわからなくもないです」
「30分以降だよ?」
肩を落とすワカッテマスさんに、でぃさんでも
シャキーンさんでも警部でもない男の人がそう言った。
一瞬誰が言ったのかと焦るも、声の方向を向いたとき、彼はこちらを見ていた。
( <●><●>)「あなたは……盛岡さんですね?」
(´・_ゝ・`)「はい」
.
- 125 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 20:03:07
ID:lYKs073oO
左列で前から二番目、A-2に座る彼は座席から顔を乗り出して
ワカッテマスさんたちに、その目映い視線を送っている。
席を立とうとはしないのか、そのまま話をしてきた。
(´・_ゝ・`)「車内販売がはじまったのが12時30分くらいだから、
彼女が会うとしたらそれ以降でしょうね、刑事さん」
(#゚;;-゚)「え、あ、そうなりますね」
不意にニューフェイスが現れたためか、でぃさんはやや動揺している。
盛岡と呼ばれた男は、そう言い切って、紙コップに注がれていたコーヒーを飲みきった。
すると、態度が変わった。
(´・_ゝ・`)「……」
(*´・_ゝ・`)「くぅ~! 一度言ってみたかったんだ、ドラマみたいに!」
(; <●><●>)「………はぁ」
(゚、゚トソン「(今のはかっこつけかよ)」
.
- 126 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 20:05:26
ID:lYKs073oO
満足感で満たされている盛岡さんに、ついでと言わんばかりに
ワカッテマスさんが聞き込みに移行した。
盛岡さんは、握り拳をつくってにやにやとしている。
(; <●><●>)「えーと……確かあなたはずっと寝てたんでしたっけ?」
(´・_ゝ・`)「え? それは」
「それは私ですよ?」
盛岡さんの返事を遮るように、その人は言い切った。
私が「今度は誰だ」と思い声のする方向を見ると(といっても
盛岡さんの方角から聞こえたのだが)、座席の上から
顔を覗かせ、ひとりの女性がこちらを見ていた。
从*゚ -ノリ「ちょうど、車体ががったーん!…と揺れるときまで寝てました」
( <●><●>)「あなたは橘ルカさん、ですね」
从*゚ーノリ「はーい」
.
- 128 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 20:07:09
ID:lYKs073oO
片目が長い前髪(揉み上げ?)で隠れている女性が笑顔で返事した。
こんな髪型を見ると、嘗ての事件で見かけた
あの人に似ている、性格は真逆だが。
すると、ワカッテマスさんがでぃさんの方を向き、彼女に関しての補足を加えた。
( <●><●>)「彼女は白で間違いなさそうですよ」
(#゚;;-゚)「なぜ言い切れるのです?」
( <●><●>)「実際、二度目の大きな揺れまでは寝てたんですから。
それまではなにがあったのか全く知らず、
その後もシャキーンさんの傷を見て以来失神してましたから」
从*゚ーノリ「さっき刑事に起こされました」
でぃさんは疑心暗鬼になっているのか
疑いの眼で彼女を見るが、私は犯人とは思えない。
実際、よだれのあとが残っていて目に垢もついている。
まあ、寝起きなのは間違いない。
.
- 129 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 20:09:26
ID:lYKs073oO
ワカッテマスさんもそれを見て判断したのか
ルカさんを白と確信した、その旨を説明し
続いて盛岡さんについても言及した。
( <●><●>)「彼もおそらく白です」
(#゚;;-゚)「なにを根拠に?」
( <●><●>)「彼は発車してから事件に至るまで、ゲームに熱中していたそうで」
( <●><●>)「その履歴を見せてもらったところ、とてもゲームしながら発砲なんて
できそうなものではありませんでしたからね。内容的にも」
そうワカッテマスさんが言うと、
そのゲーム機だろうか、盛岡さんがそれを見せてきた。
電源をオフにしているのか画面は黒い。
.
- 130 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 20:12:43
ID:lYKs073oO
(´・_ゝ・`)「オンラインゲームでリアルタイムで遊んでたからね」
( <●><●>)「……というわけです」
(#゚;;-゚)「そうですか」
(゚、゚;トソン「あー……刑事?」
( <●><●>)「はい、なんでしょう」
取り調べを一旦中断させるのは悪いとは思うが、
それ以上に気になる光景が目の前に広がっている。
だから、恐る恐るワカッテマスさんの話を止め、話題をソレにした。
(゚、゚;トソン「その、うちの警部は、なにしてるんでしょう?」
(<●><●> )「え?」
私から警部と空席を挟んだ先の席で寝ていると聞くまたんき氏の前で、警部が固まっていた。
おそらく起こそうとでもしたのだろう、しかしそれをせずにただまたんき氏を見つめていた。
私が身を乗り出して警部に指差し、ワカッテマスさんもそっちを見る。
(;´゚ω゚`)「……」
( <●><●>)「け、警部どうしました!」
.
- 131 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 20:14:04
ID:lYKs073oO
(;´゚ω゚`)
(;´・ω・`)「ん! ああ、え、ちょ……」
警部が明らかに動揺しているのを察し、ワカッテマスさんが彼のもとに駆けた。
それと同時に、盛岡さんとルカさんが席から顔を乗り出して警部の視線にあわせた。
すると、どうだ。
(;´・_ゝ・`)「うおっ……!」
从*;Дノリ「きゃあああああああッ!」
从* -ノリ「……」パタ
(; <●><●>)「ど、どうし……」
( <●><●>)「……!」
(;´・ω・`)「あの時、あんたがこいつを起こそうとでもしておけば……!」
.
- 132 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 20:15:21
ID:lYKs073oO
(#゚;;-゚)「え……ちょ」
(゚、゚;トソン「ど、どうしたんですか!」
明らかな異変に気が付き、私とでぃさんも同時に駆けだした。
シャキーンさんも席からでようとしないものの、立ってその光景を見ている。
私が足を挫きながらもその光景を目の当たりにしたとき、目を疑った。
(゚、゚トソン「きゃっ――!?」
(;ー;トソン「うぎゃわあああああああ!
ち、ち、血ィィ!!」
.
- 133 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/09/08(木) 20:17:28
ID:lYKs073oO
(´・ω・`)「見るな……
ところで、ワカッテマス、これって……」
( <●><●>)「……弾痕、ですね」
座席にもたれ、俯いている男性の胸には、
直径2センチにも満たないであろう穴が、あった。
警部がコートをめくったようで、なかから血が溢れている。
( ∀ )
(´・ω・`)「弾痕……見つけたぞ……!」
イツワリ警部の事件簿
File.1
(´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです
4章
「アンモラル」
おしまい
.
戻る