- 546 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/18(金) 19:10:35
ID:mEkcAgWAO
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終章「殺し屋」
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- 547 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/18(金) 19:13:39
ID:mEkcAgWAO
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(#;メ゚ -゚)「だ、誰!?」
( 、 トソン「(でぃさんじゃない、となると……誰だ?)」
でぃさんが、すぐに後ろを振り向いた。
私もそれにつられて動くので、横目でだが、ちらりとその声の持ち主を見ることができた。
( メA`)「おや、テンさん、久しぶりだな」
( <○><○>)「!!」
(;><)「で、出たな、武怨!」
前髪の生え際から顎にいたるまでの、右目部分を経由した、それはおおきな傷痕が特徴的な、青年だった。
黒髪に銀のメッシュをいれて、じゃらじゃらしたピアスに、唇にもリングが2、3個、つけられている。
和尚が着るような和服を着ていて、右手には長い刀、左手には牛刀よりもやや短めな刀が握られている。
その長い刀を、でぃさんの首筋にぴたりとつけている。
峰ではないので、少しでも動かせば、もちろん斬れる。
しかも、頸動脈の部位を狙って、ぴたりとつけているので、少しでも車体に揺れが起これば、危ない、そんな状況だった。
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- 548 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/18(金) 19:15:22
ID:mEkcAgWAO
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その、推定年齢19の、どう見ても一般人ではない男と刑事2人以外、皆が戸惑っていた。
当然だ、どこから入ってきたのか、いつからいたのか、まず誰なのか、なにをしているのか、さっぱりわからないからだ。
少なくとも、手にしている刀を見る限り、常識人でないのを理解するのは、容易い。
同じく、驚きを隠せない警部が、隣で、
どうしようもないくらいに焦燥感を剥き出しにしているワカッテマスさんに聞いた。
(;´・ω・`)「おい、彼と知り合いか?
あとムエンってなんだ?」
( <○><○>)「…………」
( <●><●>)「……あ、はい。お答えします」
( メA`)
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- 550 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/18(金) 19:20:17
ID:mEkcAgWAO
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( <●><●>)「彼の名が『武怨』、一言で言うなれば、殺し屋です」
「それも、私の知る限り、この国最強の」
そう付け加え説明したのち、警部の顔を確認すると、
やはり彼は、信じられないと言わんばかりの表情を見せている。
( <●><●>)「そして、少し前に言ったように、私と9が追っていた人でもあります」
(*><)「極秘事項なんですよねー!」
( <●><●>)「口を慎め。場を弁えろ」
ワカッテマスさんとワカンナインデスさんは、ここに乗り込んできてすぐ、妙なことを言っていた。
「殺し屋がいるかもしれない」と、言って、それを理由に捜査に踏み込んでいた。
一方で、またんき氏も「殺し屋に狙われているかもしれない」と、妙なことを口走っている。
ワカッテマスさんは、その「殺し屋」という語を聞いて、少なからずや狼狽していた。
そして、「殺し屋」が現れたことで、それらの謎が、一本に繋がったのだった。
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- 552 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/18(金) 19:25:43
ID:mEkcAgWAO
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皆が口を閉じたので、しびれをきらした彼は、冷静に、
そして耳に突き刺さる声で、皆に言った。
( メA`)「おいおい、漫才すんな。こいつ殺すぞ」
(#;メ゚ -゚)「わ、私!?」
私を抑え込んでいる、でぃさんの生殺与奪を握っている「武怨」と呼ばれる男。
彼の登場で、少なからずや、でぃさんは動揺していた。
( メA`)「そりゃ、そうだろう。
小生の獲物を奪った罪は、重いのだ」
(; <●><●>)「………武怨、もしかして、お前は……」
( メA`)「とある人に頼まれて、任務実行にあたっていたのサ」
(; <●><●>)「“獲物”とは、まさか斉藤またんき氏か?」
( メA`)「ほかに誰かいますかね」
(; <●><●>)「……!」
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- 553 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/18(金) 19:35:06
ID:mEkcAgWAO
-
今日、ここでは、奇跡としか言いようがない、とあるひとつ偶然が起きた。
ワカッテマスさんたちが追っていたという「殺し屋」
またんき氏が恐れていた「殺し屋」
更に、またんき氏が「殺し屋」の存在を危惧した事件があった。
(;・∀ ・)『は、はは……』
(;`・ω・´)『……くッ!』
影武者のモララー氏が、殺された一方で、
またんき氏は、シャキーンさんと交戦していた。
またんき氏は、シャキーンさんを知っていようといまいと、きっと同じような考えを抱くだろう。
(; ∀ )「(畜生……モララーは、殺されちまったのか?)」
またんき氏は、シャキーンさんを「殺し屋」と考えただろう。
そして、またんき氏の知らないところでモララー氏が死んで、またんき氏は、その推測を確信に変えた。
「殺し屋」は、2人いた事になっていたのだ。
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- 560 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 16:58:49
ID:isks7Q2AO
-
( メA`)「まあ、このアマのせいで、計画がぐっちゃぐちゃ」
(#;メ゚ -゚)「で、でもそれとこれとは……」
( メA`)「小生は無駄な殺しはしないのサ。建前上は、な。
でもお前、言ったよな?
『こいつのせいで計画が失敗した、だから報復する』とか」
(#;メ゚ -゚)「言ったけど…………
………え、ちょっとそれって……」
彼女が流した汗が、私の首筋についた。
私の腕を抑えている、彼女の手にかかる力も、大分弱まっている。
そして、武怨の言いたいことが、私にもわかった。
( メA`)「お前、殺してやろうか」
(#;メ - )「…………!」
すぐに、私を連れたまま彼女が武怨と向き合い、数歩下がって、
私を盾にするようにして、でぃさんは武怨と対峙した。
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- 561 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:01:03
ID:isks7Q2AO
-
(#;メ゚ -゚)「なんで……私には関係ないことじゃん!」
( メA`)「おやおや、どーした、怖じ気づいたか?
さっきまで死ぬ気じゃなかったのかよ」
(#メメ - )「………」
(#メメ゚ -゚)「人に奪われる命より自ら絶つ命。それとこれとは話が違うのです」
( メA`)「へっ知ったような口を……」
武怨の挑発にも動じず、彼女は、ゆっくり後ろに下がった。
警部たちと武怨のちょうど中間地点に、でぃさんと私が立つようになっていた。
距離をとっているからだろうか、でぃさんに、少し余裕が感じられた。
(#メメ゚ -゚)「………」
( メA`)「おいおい、そんなちょっと離れただけで勝ったつもりか?」
(#メメ゚ -゚)「……………」
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- 562 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:02:32
ID:isks7Q2AO
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( <●><●>)「……武怨」
( メA`)「んあ?」
( <●><●>)「我々がでぃと話を終えるまで、待ってくれないか?」
( メA`)「好きにやんな」
殺し屋相手なのに、やけにワカッテマスさんは丁重だ。
しかし、少しでも興奮させると、でぃさんはおろか私まで命の保証はなくなるかもしれない。
まさに一触即発、だから彼も迂闊に攻め込めないのか、と思うと合点がいった。
武怨が手をぷらぷらとさせ、ワカッテマスさんが礼を言った。
警部に眼くばせし、ワカッテマスさんは、一歩下がった。
満を持して、我らが警部が踏み込んだ。
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- 563 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:04:14
ID:isks7Q2AO
-
(´・ω・`)「……でぃちゃん」
(#メメ゚ -゚)「……」
少しずつ歩み寄り、彼女の前方2メートル弱、話すには丁度いい距離にまで、詰められた。
近づいたら、殺す。そう言っていたでぃさんなのだが、警部が歩んできても、握られたナイフが動く事は、なかった。
警部が、私をちらっと見て、なにかを訴えかけるような視線を、送ってきたのだが、
残念ながら、私がそれに応える事は、できなかった。
それ以上に、今から物事がどう転ぶかが、心配で、他のことを考えたくなかったのだ。
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- 564 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:06:02
ID:isks7Q2AO
-
(´・ω・`)「君の事情、少しはわかったつもりだ」
(#メメ゚ -゚)「…わかってないくせに」
(´・ω・`)「せっかく仕事を頑張ってきたのに、たった一人のエゴのせいで、まるまる潰されたんだもんな。
僕なら泣きわめくさ」
(#メメ゚ -゚)「私たちの血税でぬくぬくと生きてるくせによく言うよ」
と、でぃさんは、毒々しく言った。
(´・ω・`)「……仕事は、楽しかったか?」
(#メメ゚ -゚)「…………」
(#メメ゚ -゚)「またんきと会う日までは、楽しかった」
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- 565 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:11:15
ID:isks7Q2AO
-
でぃさんは、当時のことを思い出して言ったようで、少し、声のトーンがあがっていた。
しかし、その言いぐさを、警部は、少し不思議に思ったようだった。
(´・ω・`)「今は楽しんでないような物の言い方だな」
でぃさんは、最初は黙っていた。
口を閉ざし、じっと、警部をにらんでいる。
一分足らずして、彼女は、ゆっくり口を開いた。
警部は始終にこやかだった。
(#メメ゚ -゚)「先輩に言われたんだ。『頑張りは認めるが、全てが空回りしている』って」
(´・ω・`)「!」
のだが、でぃさんの言葉を聞いて、顔色をかえた。
彼は、ほんとうに驚いたようで、眉が動いた。
(#メメ゚ -゚)「私は仕事もてんでだめな凡人。ダメ人間」
(#メメ゚ -゚)「だから、殺人現場を、あろうことか職場であるはずのココで………」
(#メメ - )「ほんっと、ダメ人間。ダメダメ。クズ。これじゃあ人間のゴミだ」
(#メメ゚ -゚)「そうでしょ?」
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- 566 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:16:08
ID:isks7Q2AO
-
警部は応えなかった。
しばらくじっとしていたが、でぃさんは、動かない警部の姿を見かねたのか
先程より、更にドスを利かせた声で、言った。
(#メメ゚ -゚)「いくら、生き甲斐だった仕事場とはいえ、抵抗はない」
(´・ω・`)「その仕事場で、君は新しい罪を背負おうとしている」
( 、 トソン「……」
警部は、きっと私のことを指したのだろうが、
私はただ、俯いていることしかできなかった。
警部と視線をあわせるのが、怖かった。
(#メメ゚ -゚)「彼女の事ですか?」
(´・ω・`)「またんきとモララーまでは関係者だとしても、その子は全くの無関係者だ」
(´・ω・`)「なのに、その子まで殺そうとしている。職場で、だ」
(#メメ゚ -゚)「……うるさい!」
(#メメ゚ -゚)「だれも、私の仕事を認めてくれなかった!
職場を汚す事くらい、どうでも……」
(´・ω・`)「ちょっと待ってくれ」
警部は、早口になってきたでぃさんを一旦止め、おもむろにポケットに手を突っ込んだ。
しばらくごそごそして、中からキャンディでも出るのかな、と思って、微笑ましく見ていると、
出てきたのは、いつしか見かけた、赤箱だった。
.
- 567 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:18:35
ID:isks7Q2AO
-
そして、それはでぃさんにも見覚えのあるであろう物でもあった。
自慢げに掲げるでもなく、さっと自分の目の前に突き出した。
でぃさんが、訳が分からない、と言いたげに、警部を見た。
警部は、なかからチョコをひとつ取り出しては、口に放って、もごもごと動かしながら言った。
(´・ω・`)「……たかが車内販売で、あんなにセールストークされるとは思わなかったよ」
(´・ω・`)「あんな熱心な姿を見て、誰が君を『全てが空回りしている』って言うんだい?」
(#メメ゚ -゚)「……」
(´・ω・`)「僕にチョコひとつ売っただけで、それは業績として認められる。
僕はそのとき、『この鉄道の社員さんはいい人だ』って印象を持ったんだ。
そんな君を、誰が責めようものか?
いいや、まさか。寧ろ出世安泰じゃないか」
(#メメ゚ -゚)「………」
.
- 568 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:25:58
ID:isks7Q2AO
-
(´・ω・`)「今回は、たまたま、またんきのような汚い人間がいて、それに君が巻き込まれただけなんだ。
そして、その元凶はいなくなったし、君は、まだまだ若い。
罪を償うのに、時間はかかると思うけど、出所してもまだ三十だよ。
そのときに、あらためて生き甲斐を見つけることもできる。
僕ら警察は、そういう人たちを、社会復帰できるよう導くのが、役目のひとつでもあるんだ」
(#メメ゚ -゚)「……」
でぃさんは、唇を噛んでいた。
(´・ω・`)「君が出所したら、またオオカミ鉄道に就けるよう、僕からも頼むよ。あそこの総裁とは知り合いなんだ。
その帰りに、君があまり呑まなかったというお酒でも呑んで、互いに仕事の愚痴でもこぼしたいな」
.
- 569 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:27:52
ID:isks7Q2AO
-
(#メメ゚ -゚)「………」
(#メメ; -;)「ぁ………が……う…」
それは、ぽつりとこぼされた言葉であったが、その場にいる全員が聞き取れた。
彼女はへなっとその場に跪き、両手の甲で、決壊された涙のダムを抑えようとしていた。
嗚咽が絶えず漏れ続け、私はそのまま警部のもとへ逃げるように走っていった。
ぎゅっ、と、強く、抱擁された。
そのときの温もりが、私を閉じ込めていた氷を溶かし、その溶け水が、眼から溢れ出した。
頭を、乱暴に、わしゃわしゃと撫で回された。
.
- 570 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:31:19
ID:isks7Q2AO
-
( メA`)「こりゃめでてぇ。ははっ」
( <●><●>)「武怨! ここは密室だ、まして駅には大量の警官を配置している!
しんみ――」
( ><)「神妙にお縄につきなさい!」
( <●><●>)
⊂彡☆);><)
( メA`)「ほう、小生が捕まる、と」
( <●><●>)「なんなら試してみます?」
( メA`)「おいおい、丸腰のくせに小生と殺り合うつもりかい?」
( <●><●>)「………」
.
- 571 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:32:45
ID:isks7Q2AO
-
( ><)「そういや、どこにいたんですか?」
( メA`)「あ?」
( ><)「いや、ここに乗車してた人はみんなチェックしたはずなんですが……」
彼が一号車にいたのは、ほんの少しの間、彼はその隙に、乗車していた人を全員記憶した、というのか。
と言いたいのだが、彼が有能か無能か、それは今は語らない事にしておく。
それよりも、武怨は、彼の問い掛けに、口を尖らせて言った。
( メA`)「ふん。知ったところでメリットはない」
( ><)「あります!」
( <●><●>)「……9」
( ><)「はい?」
( <●><●>)「この前もそうだ。あいつは、変装して、場に紛れ込んでいた」
( ><)「……それは真っ先に考慮しました」
( ><)「しかし、さすがにこの面子では変装とかは……」
.
- 572 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:34:12
ID:isks7Q2AO
-
そう言って、ワカンナインデスさんは、車内を見渡した。
私の知っている限り、現在車内にいる、つまり武怨でない人は、
警察の3人、私、盛岡さん、くるうさん、シャキーンさん、でぃさん、ルカさん―――
(((;´・ω・`)))「のわっ!」
(((; <●><●>)))「今度はなんだ!」
(((#メメ; -;)))「……3度目の揺れです」
今までに味わってきた、今回の事件のキッカケともなった
おおきな揺れ、それは、駅が見えてきた段階で車体を襲った。
鳴り響く轟音、巨躯が跳ねるほどの揺れ、どれも、今までのを
凌駕する凄まじさだったため、ほとんどの人は床に倒れ込んだ。
ひとりを除いて。
.
- 573 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:35:24
ID:isks7Q2AO
-
( メA`)「お、もう到着か。じゃあお先に」
(((; <●><●>)))「待て!まだ扉は開いてな……」
( メA`)「フンッ」
揺れが徐々に落ち着いてきた頃に、ちょうど駅がよく見えた。
目を凝らすまでもなく、わかったのは、信じられないほどの量の警官が、盾を装備して待機していた事だ。
プラットホーム全域を埋め尽くす量の警官がいるのだが、
これを全く無関係な乗客が見て、パニックを起こさないわけがないだろう。
.
- 574 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:36:35
ID:isks7Q2AO
-
一方武怨。
唯一、この揺れでさえ微動だにしない男、
彼は、右手に持った、長い方の刀で居合いの構えに入り、掛け声とともにその刀を、横に振った。
するとどうだ。
片手で、しかもこの揺れのなか振るったというのに、刀はきれいな弧を描き、
同時に、扉の“上半分”は飛んでいった。
何事と思い、半ば反射的に扉を見ると、扉はきれいに真っ二つに斬られていた。
その一部始終を見ていた、待機中の警官たちは、ただ呆然と立ち尽くしていた。
(メA` )「あばよ」
≡(; <●><●>)「逃がすか!」
その扉に足をかけ、振り向いた武怨は言った。
体勢を整え終えた刑事2人が、一斉に奴に飛びかかったのだが、
そのほんの一瞬前に、武怨は列車から飛び降りた。
.
- 575 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:39:58
ID:isks7Q2AO
-
(; <●><●>)「あ、でぃ! あいつは……」
(´・ω・`)「逃げちゃないよ彼女は」
( <●><●>)「! でも、どこに……」
ワカッテマスさんは、すぐに外にいる警官に連絡をとった。
武怨の追跡を、外の警官に託したようで、刑事2人は、警部のもとへ戻ってきた。
扉が壊され、外からの声がもろ聞こえ、煩いと感じる私だが、
それ以上に気になったのが、でぃさんが、元いた場所からいなかったのだ。
それにワカッテマスさんも気づき、すぐに捜索にあたろうとした。
しかし、それを警部が止めた。
戸惑うワカッテマスさんが、彼の顔を二度見すると、警部は指をさした。
その先の床に、だれかが突っ伏している。
.
- 576 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:41:14
ID:isks7Q2AO
-
( #)「ぁ……ぅ……」
(; <●><●>)「……彼女は、いったい……」
(´・ω・`)「武怨が去った事で解放感に満ち、同時に絶望を改めて実感したから、精神的に苦痛……
まあ、そんなとこだろうな」
警部が粗方説明をいれると、ワカッテマスさんは無言で頷き、
一向に顔をあげないでぃさんに、そっと、手を差し伸べた。
しかし、それを、掠れた声が拒んだ。
.
- 577 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:42:47
ID:isks7Q2AO
-
( #)「ゃ……めて……」
( <●><●>)「まずは病院だ。君は危篤に曝されているのだぞ!」
頑なに拒む彼女に、いい加減苛々が募ったようで、彼は、がばっと彼女を起こした。
同時に、彼は飛び跳ね数メートル離れた。
(;`・ω・´)「……でぃ…!」
(´ρ;゙#)「……あ…あ…」
彼女は、度重なる精神的苦痛と、殺されなかったとは言え武怨に狙われたという恐怖、
更にこれから刑務所に入るという一連の流れを考えてしまったのか、見るからに精神が崩壊していたようだった。
涎は垂れ、腕は肩から脱力しきっている。
顔は、嘗てのあの美しさから一変、老婆と間違われてもおかしくないほどに、崩れていた。
ふらふらと車内をさまよい歩き、最終的に倒れた。
.
- 578 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:45:10
ID:isks7Q2AO
-
そして、減速中だった列車は、プラットホームの端から端までの間に、きれいにおさまっては停車した。
扉が機械的に開かれ、同時に、警官の多くが押し詰めてきた。
瞬く間に、列車のなかは、武装した警官で埋め尽くされた。
(`・д・)ゞ「刑事! 武怨はどちらに!」
( < >< >)「……」
ワカッテマスさんは、絶望したというより、完全に呆れかえっていた。
( <●><●>)「おい」
(`・д・)ゞ「はッ!」
( <●><●>)「伝達係をたこ殴りにしておけ」
(`・д・)ゞ「かしこまりました!」
(゚、゚トソン「(かしこまるなよ)」
.
- 579 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:47:47
ID:isks7Q2AO
-
―――と、まあ、ここからは、あまりにも順調に物事が進んだ。
停車前に言ったワカッテマスさんの「武怨を追え」という指示についてだが、
全然、警官たちに伝わっておらず、武怨を追ったのは、ほんの数人だった。
当然、逃げられたそうだ。
しかし、それでも、ワカッテマスさんは、あまり悔しそうでなかった。
間もなくしてでぃさんがすぐに保護され、そのまま連行された。
ワカッテマスさんとワカンナインデスさんは、それに同行したが、警部はなぜか同行を拒まれた。
その後すぐに列車は差し押さえられ、警察の捜査のメスがくわえられた。
鑑識課の人間で一号車、トイレ前があふれかえり、その姿を遠くから私は見ていた。
捜査を仕切っているのは、ワカッテマスさんでもワカンナインデスさんでもないのであれば、誰だ。
そう思って、興味本位で、見ていたのだ。
.
- 580 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:48:59
ID:isks7Q2AO
-
「あの……」
警部の後ろから、誰かが声をかけてきた。
不意に呼ばれたので、警部は内心焦って応対した。
私もそれに沿って、振り返った。
\(;^o^)/「警察の人、ですね?」
(´・ω・`)「! オワタ!」
\( ^o^)/「え、おれの名前知ってるんですか?」
(´・ω・`)「なにをとぼけて―――」
警部は、一瞬喉から出かかったものを、無理に呑み込んだ。
そして、目の前にいる人物をじろじろ見た。
男はそわそわして、警部の視線に耐えている。
\(;^o^)/「?」
(´・ω・`)「………」
(´・ω・`)「そうか……」
.
- 581 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:51:12
ID:isks7Q2AO
-
\(;^o^)/「なんなんですか! おれ何も悪い事してないですよ!」
(´・ω・`)「悪い悪い。で、どうしたんだ?」
半笑いのまま、警部は、訊いた。
その返答に、警部はにこやかに笑んだ。
\( ^o^)/「おれの知らぬ間に、乗車券が盗まれていて、
あれこれやり取りしていたらいつの間にかここにいたんです」
(´・ω・`)「トソンちゃん、武怨はこいつに化けていたんだ」
(゚、゚トソン
(゚、゚トソン「は?」
(´・ω・`)「列車のなかにいたオワタが、武怨だったんだ」
(゚、゚トソン「私、絶対に信じませんから」
.
- 582 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:52:55
ID:isks7Q2AO
-
なんの脈略もなしに、警部はいきなりそう断言した。
なんのこっちゃわからない、そう言いたげな目をして、オワタ(?)が警部を凝視している。
オワタの視線を完全に無視し、警部は、言った。
(´・ω・`)「武怨のいた場所、それはB−2だ」
(゚、゚トソン「でも、そこって……」
(´・ω・`)「おいオワタ、乗車前になにかトラブルはなかったか?」
\(;^o^)/「なんでそんな言い方されんだよ……
トラブルっつか、トイレで個室に入ったら、中に人がいて、鞄盗まれて挙げ句閉じ込められたぞ」
(´・ω・`)「そのあとはどうした?」
\( ^o^)/「駅員さんに言ったら、色々手配してくれた。だからここに来れた」
(´・ω・`)「つまり、それが武怨だ」
(゚、゚トソン「はぁ……」
.
- 583 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:53:59
ID:isks7Q2AO
-
(´・ω・`)「バカ曰く変装の名人らしいしな、こんな間抜け面だったら、なりきりも簡単だろ」
\(;^o^)/「おれがなにしたってんだ!
さっきからヒドいぞ!」
武怨が演じていたというオワタと、全く同じように、本物のオワタは手をじたばたさせた。
武怨がこれを真似たのか、それともバカは決まって手をばたばたさせるのか、そこはわからない。
.
- 584 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:55:15
ID:isks7Q2AO
-
―――ああ、そうか。
オワタから荷物を奪って、名前や「オワタとはどういう人物か」を調べ、乗車し、
武怨はオワタに変装して、見た儘バカを演じ、こっそりとまたんきの殺害の機会を、待ったのか。
席を立った時に殺す筈が、シャキーンさんが先にまたんきと交戦、
そのまま機会がなく、気がつけば先にでぃさんに、“獲物”を奪われた。
その“報復”に、彼女を襲おうとしたが、間一髪免れた、と。
(´・ω・`)「さて、担当刑事は誰だ?」
警部が、車内に入ろうとする。
私もついていき、扉から中を覗くと、鑑識がうようよいて、忙しなく動いていた。
その中に、刑事らしき人物が2人、いる。
.
- 585 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 17:57:29
ID:isks7Q2AO
-
( ゚д゚)「! だめですよー入ってきちゃ」
ワカッテマスさんとはまた違う、特徴的な目をした、灰色の渋いコートをまとう人が、警部を止めに入った。
しかし、その、眼力が強いまなこで警部を捕らえた時、男はぎょろ目を剥いて一歩下がった。
( ;゚д゚)「い、イツワリさん!?」
(´・ω・`)「お、出たなぎょろ目」
('、`*川「なに、どうしたのよ」
(´・ω・`)
('、`*川
('、`;川「警部! どうしてここに!」
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「2人まとめてぶち殺すぞ」
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- 586 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 18:01:51
ID:isks7Q2AO
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今度は、現場には似つかわしくない、白衣を着た女性がやってきた。
白衣のなかに、暗い紺色の制服が着込まれている。
彼女は、ぎょろ目と同じように、警部を一目見てオーバーに驚いていた。
白衣である以上、噂に聞く科学捜査官なのか、そう思って
彼女の服装を見ているときに、警部は不機嫌な声で言った。
(´・ω・`)「『千里眼のミルナ』に『吐かし屋のペニー』か、こりゃ懐かしい面子だ」
( ゚д゚)「イツワリさん、どうしてここにいるんですか」
('、`*川「ラウンジに行ったのでは?」
(´・ω・`)「戻ってきたんだって」
( ゚д゚) そ
Σ ('д`*川
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- 587 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 18:04:42
ID:isks7Q2AO
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(゚、゚トソン「警部はどんだけ人望ないんですか」
(´・ω・`)「と言われてもなぁ……」
しかし、今の通り名を言われ、ほんのり思い出した事がある。
男の方は、東風(ひがしかぜ)ミルナ刑事、両目とも視力が2を超えるという凄い人で、
聞き込みよりも、証拠物件をひとつ逃さず見つけ出すのが得意、という、ベテランの刑事だった。
『千里眼』という異名は、証拠を見つけだすのが非常に上手く、物をどこに隠しても発見できる有能さから(警部に)付けられた。
女の方、『吐かし屋のペニー』は、
その物腰が柔らかそうな見た目とは裏腹に、尋問が鬼ほど上手い。
別名強請り屋で、取調に彼女が担当した日には、証言を大漁に入手できるという。
その恐さから、部下からは姐さんと呼ばれていた(私もそう呼んでいる)。
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- 588 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 18:09:46
ID:isks7Q2AO
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2人が捜査に荷担すると、ミルナ刑事はありとあらゆる証拠物件を、
姐さんは関係者からありとあらゆる証言を掴み取るので、上の人からの信頼は厚い、と聞く。
ちなみに、言うまでもないが、ワカッテマスさんやワカンナインデスさんと同じように、
彼らも――仕事の面では尊敬は厚いが――警部の事を恐ろしく思っている。
('ー`*川「トソンちゃんはあまり変わってないね」
(゚、゚トソン「胸を見ないで言わないでください。セクハラで訴えますよ」
( ゚д゚)「とりあえず、お2人とも、事件の関係者なんですから、
はやく署に向かって事情聴取を受けてください。事件は解決したんでしょ?」
早く警部を追い返したい一心かはわからないが、事情聴取を口実に、実質帰れと言ってくる。
警部はそれに応じず、意味深な顔をして、ミルナさんに言い返した。
(´・ω・`)「いや、まだ解決していないんだ」
( ゚д゚)「はい?」
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- 589 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 18:11:46
ID:isks7Q2AO
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(´・ω・`)「トソンちゃん」
(゚、゚トソン「はい?」
(´・ω・`)「今回の事件で、いろいろな謎が、型にはまっていった。
香水、死体の移動、銃殺に……」
(´・ω・`)「しかし、ひとつだけ、不可解な証拠品があるんだ」
(゚、゚トソン「え? でも、そんなのは……」
(´・ω・`)「よし、ぎょろ目に渡すついでに、証拠品を全部思い出してみよう」
( ゚д゚)「困りますよ、勝手に保管されてちゃ」
(´・ω・`)「まあまあ、すぐ終わるから」
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- 590 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 18:13:15
ID:isks7Q2AO
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警部が一つ目に出したもの、それは写真だった。
ルミノール試薬で浮かび上がった血痕を撮ったもので、それらを提示してきた。
次に、説得のトドメになった、チョコのお菓子を取り出した。
その赤箱から、カカオの香りが仄かにする。
三つ目、絆創膏。
でぃさんが受けた弾丸を隠すために用い、
またそれが決め手となり、推理が成立した。
四つ目には、銃。
リボルバーをはずしてくれたので見てみると、一発撃たれたあとがある、
つまりこれはA−5、シャキーンさんの私物とされている銃か。
最後だ、と言って出されたのが、B−7の銃だった。
でぃさんの頬と、モララー。計2発撃たれ、でぃさんの私物だとシャキーンさんが言っていた。
(´・ω・`)「持っとけ」
( ゚д゚)「わっと……」
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- 591 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 18:14:56
ID:isks7Q2AO
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全ての物件をミルナさんに押しつけ、警部は手帳を取り出して、
今度は、物件としてではなく、データとして存在する証拠を見せてきた。
一項目目、香水。
ワゴンから香ったのがキッカケだが、調べるとでぃさんがこぼしたと主張。
しかし使われた動機は定かではない。
その次に、計3度起こる事になった、揺れ。
1度目にシャキーンさんが発砲、2度目はなにもなく、3度目がキッカケで武怨を逃がした。
轟音を伴っている。
散乱されたお菓子、その現場を警部だけが知らない。
だから、お菓子の件は、全て証言からなるデータだった。
次には、水で濡れたモララーの服、お茶で濡れたまたんきの服をはじめ、
入れ替わった2人に関する身なりや状態を細かく書いてある。
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- 592 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 18:15:44
ID:isks7Q2AO
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(´・ω・`)「このどれかが、未だに《偽りの香り》に包まれているんだけど、わかる?」
(゚、゚トソン「?」
警部に問われ、私は考えた。
(゚、゚トソン「……」
(゚、゚トソン「あれ?」
そういえば、アレは―――
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- 593 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 18:16:27
ID:isks7Q2AO
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- 594 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 18:19:49
ID:isks7Q2AO
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◆
10月23日、オオカミ鉄道が贈った、2時間にも満たない短いながらの大事件、
それは、一人の人間としての、仕事、恋愛、社会、そして育まれたストレスという名の憎悪。
これが、2人の命と1人の人生を奪ったというのに、列車は、通常運行で、今日も敷かれたレールの上を走っている。
よく「定められた道筋を歩くのはごめんだね」という意見を聞く。
しかし、定められた道筋を歩むからこそ、人は平凡でいられるものなのだ。
というのに、今回の被害者も加害者も、ともに道を踏み外してしまったのだ。
理由はわからない、しかし、唯一の救いは、裏で、情報規制でも
敷かれたのか、事件が、概要しか明るみに出なかったのだ。
アンモラルは他人の手に渡り、営業方針もがらっと替わった。
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- 595 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 18:21:59
ID:isks7Q2AO
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そうそう、関係者の「あれから」を聞くと、実に面白かった。
常識人に見えた盛岡さんは、無事にオフ会に――という訳ではなく、
せっかく身体は無事で到着したというのに、事情聴取でまる1日を潰され、結局参加できず終いだったらしい。
通信対戦していた、オフ会先の友人にどやされただとか。
事情が事情ゆえ、話せないのが逆に向こうのかんに障ったという。
つくづく、不幸だなぁ、と思う。
シャキーンさんは、またんきを切ったという事、でぃさんに発砲したという事、
現場の工作をした挙げ句、銃刀法と、決して潔白のまま終わるわけではなかった。
しかし、彼は、これから罪を償い、改めて人生をリスタートすると言っている。
まあ、でぃさんには事故、またんきには正当防衛が適用されるので、思っているほど罪は重くないという。
私は、少し、ほっとした
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- 596 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 18:26:26
ID:isks7Q2AO
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くるうさんは、わからない。
いつの間にか忽然と姿を消していて、武怨同様に彼女の「あれから」を知っている人はいないそうだ。
警部、ワカッテマスさんの二人は、彼女に見覚えがある、そう言っていた。
警部から以前聞いたのだが、刑事を勤めていると、扱った事件の関係者、特に犯人に関しては
事件が終わって、幾多の歳月が過ぎていっても、覚えているものらしいのだ。
もしかしたら、以前別の事件にもいたのではないか、と少し不思議に思っていた。
まあ、彼らも、いつかは思い出すだろう。
肝心のでぃさんだが、今回の一件で、やはり精神が崩壊していて、
尋問にも答えられず、しばらくの間は治療に専念するらしい。
弾丸の摘出は無事に終え、怪我の方は軽くないのだが、彼女の心の傷は、誰にも癒せないだろう。
おそらく、彼女が事件で一番の被害者だと思う。
何事にも全力を尽くして生きてきたのに、それが誰にも認められず、
そして、またんきに、いいように使われてしまったのだから。
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- 597 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 18:28:34
ID:isks7Q2AO
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一方で、事情聴取にも参加せず、捜査にもまったく荷担しないで
そのままどこかへ行ったワカッテマスさんとワカンナインデスさん、
彼らは、当初は、この列車に武怨が乗るという情報を聞きつけたらしく、
その場で、武怨を逮捕するために乗車したらしい。
事件が起こったのちは現行犯、そうでなくともとりあえずとっ捕まえる、とのことだとか。
だから捜査道具を一式持っていたのだ。
シャキーンさんが暴れた時、手錠をかけなかったのは、
おそらく、武怨に使おうと思っていたからだろう、と警部は言っていた。
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- 598 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 18:33:48
ID:isks7Q2AO
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十月二十七日、時計を見ると、針は一四時〇七分を差していた。
VIPの所轄の警察署、そこの正面玄関に私は立っていた。
(´・ω・`)「あいつら、武怨を捕まえるために、一号車に盗聴器をつけていたらしい」
(゚、゚トソン「盗聴器?」
(´・ω・`)「ああ。だから、すぐに駆けつけた、と」
(゚、゚トソン「なるほど、だから明かさなかったんですね」
というのも、私は、警部に呼ばていたのだ。
すっかり冷え込む季節だと言うのに、署内は暖房が効いていなかった。
また、署内は、職員と思わしき人物や、一般人が、忙しなく動いている。
指名手配のポスターも貼られ、落とし物の保管場所も完備されている。
食堂からは、人の出入りがめっきり減っていた。
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- 599 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 18:35:07
ID:isks7Q2AO
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(゚、゚トソン「そういや、どうして私は呼ばれたんですか?」
(´・ω・`)「ん? いやぁ、実を言うと、僕も呼ばれててねぇ」
(゚、゚トソン「VIP復帰の手続きとかじゃないんですか?」
(´・ω・`)「違う違う。どうやら、待ち人がいるとの事だけど……」
髭の生えていない顎をさすり、首を傾げてみせた警部だが、
直後、後ろから聞こえた声に、彼はすぐに反応した。
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- 600 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 18:37:31
ID:isks7Q2AO
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从*゚ーノリ「警部さぁん!」
(´・ω・`)「!」
後ろから、長い前髪が嫌でも(いろんな意味で)目に入る女性がやってきた。
そういえば、事件には彼女――橘ルカさんもいたな、と、
私は、遠い昔のことでも思い出したかのような、そんな気持ちになっていた。
ただ、事件当時とは違い、やけにきれいなスーツを――
(゚、゚トソン「――って」
(゚、゚;トソン「(これは、警察の服!?)」
いやにスタイルのいい彼女は、私に目をくれる事も全くなく、警部に飛びついた。
自称オンナ好きの警部が、たじろいでいる。
从*゚ーノリ「待ってましたよ」
(´・ω・`)「はい? もしかして、僕を呼んだのは……?」
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- 601 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 18:39:08
ID:isks7Q2AO
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从*゚ーノリ「はい! 私です!
約束、果たしにきました!」
きゃぴきゃぴしていて、警部に無邪気なまなざしを送っている。
まさか、警部に気があるわけではあるまい。
すると、警部は頭を掻きながら、回想に浸っていた。
(;´・ω・`)「あ、そういやこの前、言ってたなぁ……」
(´・ω・`)『なんて?』
从*゚ーノリ『……刑事って、いいなぁ、って』
(´・ω・`)『なりたければ、いつでもなればいい。歓迎するよ』
从*゚ーノリ『ほんとうですか!?』
(゚、゚トソン
(゚、゚トソン「あー、そういやありましたね」
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- 602 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 18:44:44
ID:isks7Q2AO
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从*゚ーノリ「早速警察官になっちゃいました」
(゚ー゚;トソン「!?」
(;´・ω・`)「いやいや、『なっちゃいました』って!
一朝一夕でなれるモノじゃないよ警察!
国家公務員嘗めるな!」
从*゚ーノリ「もともと興味はあったんですけど、事件を解決する警部がかっこよくて、つい」
(;´・ω・`)「『つい』って!
あと警察学校はどうした!
訓練っ!」
从*゚ -ノリ「ほら、国家公務員なんとか試験とか言うのですか?
それ、受けたんです。訓練はこれからなんでしょうね」
(;´・ω・`)「きゃ、キャリア――」
从*゚ーノリ「ショボーンさんがいるという、VIP県警の刑事部に配属される日を、楽しみに待ってるんです」
从*゚ーノリ「やっぱり、殺人事件の捜査を担当したいもんですよ」
(;´・ω・`)「しかも考え方が過激!」
从*゚ーノリ「正式に配属されたら、その時はよろしくお願いしますね、警部!」
(;´・ω・`)「ぜーったい、やだ! 僕は適当な人間は嫌いなんだ!」
(-、-トソン「(よく言うよ……)」
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- 603 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2011/11/23(水) 18:48:45
ID:isks7Q2AO
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押しに強く、強引な警部をもやりこめてしまう、ルカさん。
ひょっとすると、彼女は化けるかもしれない、私はそうひしひしと思っていた。
つきあっていると、相当疲れるようで、警部は、額の脂汗を拭わないまま、逃げるようにその場を去った。
彼女はビシッと敬礼をして、早足で去る警部を、無垢な笑顔で見送っていた。
私が置いていかれそうだったので、一度ルカさんに一礼をし、そのまま、警部のあとを追いかけた。
イツワリ警部の事件簿
File.1
(´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです
終章
「殺し屋」
おしまい
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