3 名前:悲しい一人暮らし :2006/11/25(土) 13:21:44.56 ID:mXKB2MtF0
第3話 「ドクオと最弱の力」前編


――――???

誓約の騎士団

数年前、二つの国間で戦争が起きた

その国は国土も人口も少ない小さな国だったが、接続者を数多く抱えていた

接続者は言うなれば強力な兵器のような物、故に

それを欲した隣国が狙ってきたのだ

戦火が迫る中

一人の男が我が国を必ず守り抜くと誓いを立てる

男は接続者にして管理者

炎の風を繰り、襲い来る者全てを打ち倒した

そんな彼の強さに惹かれたその国の一部の兵達は、彼の誓約に更に誓いを重ね
自らを誓約の元に集った騎士と叫び、敵を退けた

それがその騎士団の始まりである

4 名前:悲しい一人暮らし :2006/11/25(土) 13:23:18.73 ID:mXKB2MtF0
破壊の管理者

士気の高まったその国に一度は退いた燐国だったが

数ヵ月後、報復にその国を滅ぼすと宣言、もう一度戦争をしかけてきた

戦局は長引き、焦り始めた隣国の王は

炎の風を消しさえすれば勝利は手に入ると、自ら戦いを挑んで来た

黄金の管理者であった王と彼との戦いは半日にも亘ったが

天を焼く光と共に決着、同時に彼の国の勝利が決まった

こうして彼は二度、自分の国を護り抜いた

その事はすぐに世界中に知れ渡る

振れば全てを破壊する名も知れぬ剣の話と共に

それが破壊の管理者の由縁

5 名前:悲しい一人暮らし :2006/11/25(土) 13:24:35.20 ID:mXKB2MtF0
これが…大抵の者が知る話、改変された歴史

本当の歴史を知るのはそれを改変した人間達と

当時の兵士達と

一人の少女と

一人の接続者と……今は亡き一人の管理者

のみである
7 名前:悲しい一人暮らし :2006/11/25(土) 13:26:38.91 ID:mXKB2MtF0
――――ギコの家

太陽が落ち始め、辺りはオレンジ色に染まっていく
ドアが開いている部屋を覗くとクーが居た

背中を向けているので表情はわからないが
じっと窓の外を眺めている

('A`)「あー……ギコさんは?」

川 ゚ -゚)「用事があるから出かけるそうだ」

夕日を浴びて輝く髪をふわりとさせながら振り返る

一瞬、心臓が高鳴る

('A`)「…どこに行ったの?」

川 ゚ -゚)「ん?…まあ日課みたいなものかな

('A`)「つまりお城に?」

言い終わる前に言う

8 名前:悲しい一人暮らし :2006/11/25(土) 13:28:40.46 ID:mXKB2MtF0
川 ;゚ -゚)「……」

分かり易い反応をしてくれる

川 ゚ -゚)「そうか・・・もう知ったのか」

('A`)「うん…」

どうやらクーも何か知ってるらしい
でも女の子を問い詰めるのもどうかと思って
やはりギコの帰りを待つ事にした

川 ゚ -゚)「ちなみに今は城の方に行った訳じゃないからすぐに帰ってくると思うぞ?」

俺の考えを見透かすようにクーが話す
そういえばよくショボンに俺はすぐ顔に出るから分かり易いとか言われたっけ…

('A`)「へえ、どこに行ったの?」
別に何か考えがあった訳でもなく、何となく問う


9 名前:悲しい一人暮らし :2006/11/25(土) 13:30:54.52 ID:mXKB2MtF0

少し、間をおいて

「戦友に会いに行ったのだろう」

クーは俺から顔を背けるようにして答えた

('A`)「…そっか」
その意味を何となく悟った


外を見る
夕日が、遠くに見える山に吸い込まれていく
そんな様子を二人で黙ったまま眺める

言葉は発せない雰囲気だったが、すごく居心地が良かった

10 名前:悲しい一人暮らし :2006/11/25(土) 13:32:37.49 ID:mXKB2MtF0
完全に日が沈み、辺りが暗くなっていくと
クーが部屋の灯りを点けた

('A`)(電気通ってるんだここ…)
電線なんてあったかなぁ…?
そういえば町の様子とかあまり見てないんだよね
明日にでも散策してみよう


川 ゚ -゚)「まあ別に隠し通す気など無かっただろうし」
突然クーが切り出すと
川 ゚ -゚)「恐らくお前が聞きたがっている事の一つは教えてやろう」
そう言って語りだした


('A`)「…………以前にも別の世界から来た奴が居た?」

と言う、しかもここに住んでいたらしい

まあ…それなら俺の言い分をすぐに理解してくれるのも頷ける、かな

11 名前:悲しい一人暮らし :2006/11/25(土) 13:34:33.31 ID:mXKB2MtF0
('A`)「んで、その人は?ちゃんと帰れたの?」

川 ゚ -゚)「それは―――

ギィィ…
その時、風がドアを揺らした

続いて声
「ははは、今日は運がいいらしい」

川 ゚ -゚)「!!!!!!!」

('A`)「?????」

声は更に続く

「…新顔さんが居るというので来て見れば、ちょうどあいつが居ないばかりか…
  …こんな所においででしたか」


声の主がはいつの間にか入り口に立っている、そして…こう口にした


<ヽ`∀´>「国王様?」
13 名前:悲しい一人暮らし :2006/11/25(土) 13:37:58.96 ID:mXKB2MtF0
川 ゚ -゚))「っっっ………!!!!!」
クーが動揺しているのが分かる

っていうか待て、ちょっと待て……今何て言った?

<ヽ`∀´>「国王ともあろうお方が、護衛もつけずに…ちょーっと軽率ニダ
       …おっと、それともそこでアホ面してるのがそうでしたか?」

馬鹿にしたように笑う、いやしてるのだろう
でも今はそんな事より気になる事がある
('A`)「…国王…?」

クーを見ても、何も答えない
ただ、小さく震えているのが見えた

「さて、怖い人が帰ってくる前に済ませましょう」
そう言うと、そいつはこちらに歩み寄ってきた

そしてクーの前に立ち、言った
<ヽ`∀´>「一緒に来てもらいましょう、陛下」

抵抗したければご自由に、とクーの腕を掴み引っ張る

14 名前:VIP皇帝 :2006/11/25(土) 13:40:52.73 ID:mXKB2MtF0
川;゚ -゚)「ぁ………っ」
体制を崩しながら、クーがチラリと俺を見た

脅えて、今にも泣いてしまいそうなクーの表情

(;'A`)「ま…待て…」

必死に声を絞り出す
そいつは「ん〜?」と目線だけこちらに向ける

心臓がうるさい、これじゃ喋れない、黙れ黙れ黙れ黙れ…!!!!!

(♯'A`)「てめえ!!その手を離せ!!!」

<ヽ`∀´>「分かったニダ」

そう言うとクーから離した手を俺に向ける

('A`)「?なん…」

川 ゚ -゚)「!!!!!!!!!」
突然クーがその腕に組み付く

次の瞬間、突風が吹いた

体が一気に浮いて壁に叩きつけられた

ミシッ…と耳の奥で嫌な音が響く
16 名前:悲しい一人暮らし :2006/11/25(土) 13:43:00.48 ID:mXKB2MtF0
そのまま崩れるように跪く
(メ'A`)「ぃ…………づぅ…」
頭がクラクラする
痛い…腕を見ると血が手の甲に垂れた

(メ'A`)「………クー?」
意識が朦朧とする中で

目の前にクーが見えた
そしてどう見ても作り笑顔で
「もう、大丈夫だから       …すまない」

そう   聞こえた…





17 名前:悲しい一人暮らし :2006/11/25(土) 13:50:45.60 ID:mXKB2MtF0
  ドゴッ!!!
穴が開いた壁からパラパラと破片が落ちる

「…馬鹿か…俺は…っ」
捻り出したような声で

「馬鹿か俺は!!ドクオの存在に気付かないはずがないだろ!!」
「そしたら何かしら仕掛けて来る事くらいわかるだろ!!」
「う…うあああああ あ あ あ゛ あ゛  あ゛! ! ! !! !」

向ける先の無い怒りをそのままに自分に対して叫ぶ

目が覚めた
(メ'A`)「ん…あれ…?」

「・・・・・・ゆ る さ ん・・・」

(;゚A゚)「!?」
声を聞いた瞬間
背筋が凍った

ギコさん…?何をそんなに怒って…?
ん…?あれ?何か引っかかる…
(メ'A`)「!!!」
慌てて周囲を見渡す

見えるのはボロボロになった部屋………見えないのはクーの姿


27 名前:VIP賢者 :2006/11/25(土) 17:20:06.29 ID:mXKB2MtF0
3話「ドクオと最弱の力」中編


<ヽ`∀´>「ここで大人しくしているニダ」
薄暗い山小屋の中、クーの唇を指でなぞり、言う

<ヽ`∀´>「大人しくしてれば、今は…何もしないニダよ」
そのまま頬をさすりつつ…少しづつ撫でる位置を下げていく

首筋を撫でられ寒気が走る…だが、声など上げてやるものか、私は奴を睨みつけた

親指が服の中に侵入してきた所で、ようやく奴は私が睨んでいる事に気付いた

<;`∀´>「…ふん、可愛気の無い女ニダ!」

…ふん、小物め…最初のあの変な口調はどうしたんだ

奴が出て行くと私は一人取り残された


川 ゚ -゚)「……」
どこまで連れて行かれるかと思ったが、ここはギコの家からそう遠くない山の中だ

28 名前:VIP賢者 :2006/11/25(土) 17:21:31.61 ID:mXKB2MtF0
あれからどれくらい時間が経ったのだろうか?
ドクオはちゃんと生きているだろうか
「国王」と呼ばれた時、私はドクオの顔を見れなかった……怖かったんだ、どんな目で見られるんだろうと

でも、奴に腕を掴まれた時に少しだけ見てしまった、助けてと願いながら

「てめえ!!その手を離せ!!!」そう言ってくれた

嬉しかった、でも…同時に後悔した

あいつが私から手を離してドクオに向けた時、それこそ心臓が止まるかと思った

彼は普通の人なんだ、あんな状況で接続者と思われる相手に逆らえば殺される

あの程度で済んで良かった、良くないけど、良かった

あの時…………

29 名前:VIP賢者 :2006/11/25(土) 17:23:43.59 ID:mXKB2MtF0
(メ'A`)「ぃ…………づぅ…」

川;゚ -゚)「ドクオ!!」

駆け寄り声をかけるが…既に半分意識が無いようだ、俯いたまま反応しない

<ヽ`∀´>「全く、てめえなんて、誰に向かって言ってるニダかね」

「苦しいだろうから楽にさせてやる」
   後ろからそう聞こえた

私は泣きそうになるのを堪えて言った
川;゚ー゚)「もう大丈夫だからな、ドクオ…私は行くよ…本当に…すまない」
ドクオがこちらを見た気がした

そして振り向き告げる

「お前に従う、だからこの者にこれ以上手を出すな」

「最初からそうしてれば良かったニダよ」
奴はニヤニヤと笑いながら言った


そうして私は夕闇の中を連れ回され、気付けばここに居た

30 名前:VIP賢者 :2006/11/25(土) 17:26:00.73 ID:mXKB2MtF0
………私はどうなるんだろう、殺されるのだけは嫌だ

それ以外なら何だって耐えてみせる、どんな屈辱にも……例え、奴に抱かれようと

お飾りの王だとしても、生きて戻らなければならない

それが、彼等と誓った事だから、失ったあの人に誓ったから
必ず、生きて戻ってやる

だけど………ドクオは、彼は私の事をどう思うだろう

もう嫌われてしまっただろうか
あんな目にあって、私が何者かも知られてしまった
今やギコ以外では唯一…私と自然に接してくれたドクオ
それも終わってしまったのだろうか

川;-;)「く…何を泣いてるんだ私は!」
溢れる感情に堪えきれず、拭っても拭っても涙は止まらなかった

31 名前:VIP賢者 :2006/11/25(土) 17:28:20.77 ID:mXKB2MtF0
方や外では先程の男が手下らしき者に囲まれ盛り上がっている
「ニダー兄貴、やりましたね!!」

<ヽ`∀´>「まあ、楽勝ニダ!ギコなんざ恐れるに足りずニダ!」

「…んで、兄貴…?」
一人が興奮気味に話しかける

<ヽ`∀´>「…何だ?」

「あの女、当然犯っちまうんですよね!?俺、先に始めちゃっていいっすか?なんて」
<ヽ`∀´>「…全てが終わったらいいニダ」
「おおお」と声が上がる

<ヽ`∀´>「だがそれまでは近づく事も許さんニダよ」

「人質は無事だから人質と言えるのだ」と誇らしげに語る


32 名前:VIP賢者 :2006/11/25(土) 17:32:11.09 ID:mXKB2MtF0
―――ギコの家

(,,゚Д゚)「ドクオ!気がついたか!」

(メ'A`)「ギコさん…!俺は…くー…」
クーを、守れなかった…
脅えて救いを求めた女の子を俺は…!!

声に出して叫びたかった
でも…言えなかった、情けなさと悔しさが混じるような

それに…怒られるんじゃないかと言う不安も、あった

俺が口ごもっていると

(,, Д)「すまなかった、ドクオ…」
辛そうな顔で言う

33 名前:VIP賢者 :2006/11/25(土) 17:34:51.63 ID:mXKB2MtF0
(メ'A`)「……え?」

「……すまない」

クーの言葉を思い出す

(,,-Д-)「俺がもっと早く戻れば…いや、そもそも出かけなければ…
      お前をこんな傷つける事には…」

(メ'A`)「や、やめてください!ギコさん!俺は!!」
俺は…その先が出てこない、胸が苦しい

(;゚Д゚)「…ドクオ?大丈夫か?どっか痛むのか?」

(メ'A`)「クーも……そうだった…」

少しずつ自分の思いを紡いでいく
「自分だって辛い癖に、自分が一番辛い癖に、俺にすまないって言う」
「俺はあの時クーに情けないって思われても、恨まれても仕方ないのに」
「ギコさんにも情けないって言われても、不甲斐ないと怒られても仕方ないと思うのに」


これじゃあ…俺は、ただ…惨めなだけだ

34 名前:VIP賢者 :2006/11/25(土) 17:39:09.50 ID:mXKB2MtF0
既にまともな言葉になっていないドクオの泣き言を
ギコはただ黙って聞いていた
「お前は普通の人なんだから仕方ないんだよ」
言おうと思っていた言葉は呑み込んだ

(,,゚Д゚)(こいつ……)

(メ'A`)「ギコさん、俺クーを助けたい…だって、俺に

(,,゚Д゚)「…」ドクオの姿が、誰かと重なる

ミ,,゚Д゚彡(俺にさ、助けてって言ったんだ、あの子

(メ'A`)「それを守れないなんて

ミ,,゚Д゚彡(俺、そんなの嫌なんだよ

(メ'A`)「だから、行きましょう…」
ミ,,゚Д゚彡(なあギコ、行こう

(,,゚Д゚)「ああ…わかった」
そう言うとギコは力強く頷いた

遠い日の誓いをもう一度思い返す
それは二人で誓った事
その少女を、クーを守ると

つづく
66 名前: :2006/11/26(日) 11:51:01.90 ID:6pJitQIX0
3話「ドクオと最弱の力」後編

(メ'A`)「いっっ…」

(;゚Д゚)「おい、もう立って平気なのか?」
ギコが心配そうにしてくる

(メ'A`)「このくらい平気ですよ…」

腕はかなり痛いけど、とぼそっと呟く

…さて俺、何か格好いいこと言っちゃったけど

どこに行けばいいかさっぱりわからないんだよね、

(メ'A`)(どうしよう)

(,,゚Д゚)「それじゃあ…行くか?」

(゚A゚)「…………」

(゚Д゚)「こっちみんな」
(;゚Д゚)「はっ…!?俺何言ってんの?」


67 名前: :2006/11/26(日) 11:52:43.88 ID:6pJitQIX0
(メ'A`)「行く場所…わかるんですか?」

(,,゚Д゚)「お、おう…これを見ろ、丁寧に書置きしてってくれたよ」
破壊の管理者、ギコ様へと書き出された手紙
国王が大事なら名の無い剣を持って来るように、そして時間と場所が書かれている

最後に、一人で来いと添えて


(メ'A`)「罠ですか…」
(,,゚Д゚)「ああ、そうだろうな」


(,,゚Д゚)「……………ドクオ、ここに書いてある事だが…」

俺は…と、何から話すべきか悩んでいるように見える

(メ'A`)「分かってますよ、もう…大体の事は」

(,,゚Д゚)「……そうか、聞いたんだな」


68 名前: :2006/11/26(日) 11:55:23.58 ID:6pJitQIX0
(メ'A`)「詳しい事は、もう一度ここに戻ってきたら教えてくさい」
そう、3人で

そうだな、とギコの表情が引きしまる

(,,゚Д゚)「ドクオ、一緒に行くと言ったが…ここに書いてある通りだ、行く場合は俺と別行動になるだろう
      連中が何人居て、どんな用意してるかも分からない…中だ
      誰かに見つかったらそれで全部終わる」

脅すように話すギコ、それがどんなに危険な事であるか
正直、連れて行けないと言われるかと思った

(,,゚Д゚)「それでも、これから俺が言う事を守り」

「それを必ず果たせるか?」
そう問い、ギコは俺を真剣な表情で見つめる


(メ'A`)「……は、はい…」
やばい、正直不安だ、行くと決めたのに
そこまで聞いて俺は怖気づいている…失敗したら、俺も、クーも死ぬかもしれない
ギコさん一人の方が、とまで考えた


69 名前: :2006/11/26(日) 11:57:00.83 ID:6pJitQIX0
(,,゚Д゚)「ドクオ、それじゃ駄目だ、今は出来ると言う時だ」

そんな俺の考えを知ってか知らずか、ギコが続ける
「お前なら出来るさ、自分を信じろ、どんなに惨めでも、変でも」
「誓ったんだろ?お前が助けると」

クーの顔を思い出す

(メ'A`)「……はい!」
「出来る、必ず助けるんだ」

口にした言葉は、そのまま勇気になって、胸が熱くなる

(,,゚Д゚)「よし、じゃあ行くぞ…作戦と言えたもんじゃないが、いいか?」


70 名前: :2006/11/26(日) 11:59:04.93 ID:6pJitQIX0
    



「おい、来たぞ!ギコだ!」そんな声が暗い森の中に響く
周囲には結構な数が隠れているらしい

<ヽ`∀´>「待ってたニダ」

(,,゚Д゚)「お前か…」
怒りは氷に、冷え切った心で奴を睨む

<ヽ`∀´>「早速だが持ってきてもらえましたか?」

(,,゚Д゚)「ああ、こいつが欲しいんだろう?くれてやるから」
とっとと王を返せと、背負っていた箱を地面に落とす

すると周囲に隠れていた者が集まり、ギコを取り囲むようにした

その場に居たギコ以外の者はニヤニヤと笑みを浮かべる

72 名前: :2006/11/26(日) 12:00:18.14 ID:6pJitQIX0
<ヽ`∀´>「……まだですよ、ああ…国王様は、ほらあそこの小屋の中に居ます」
そう言って指を向け
「その箱の中身を確認したらここから引き上げますからね」

(,,゚Д゚)(ふん……わざとらしい)
どうせ手に入れたら俺を殺そうとするだけだろう

だがそんな事は問題じゃない

奴があの剣を手にしようと

敵が何十人居ようと

この場にクーとドクオが無事にここを離れられれば、それで全て解決だからだ

<ヽ`∀´>「さて、まずはその箱を開けて中を見せてもらえませんか?」

ギコはそれに大人しく従い、九つの鍵をゆっくりと開けていく


73 名前: :2006/11/26(日) 12:04:09.37 ID:6pJitQIX0
(メ'A`)「っ……はぁ、はぁ…」
息が上がる、何度も転びそうになる、道なんて言えない中を進むのは思ってたよりもきつい
暗く、足場も悪い中必死でギコの後を追う

ギコさんから言われたのは

「誰にも見つからない様にギコの後を追い、戦いが起きたらどうにか隙を見てクーを連れ出し二人でその場から離れろ」

それだけだった、作戦なんて言えないような作戦

(メ'A`)(ギコさんは、どうするんですか?)

(,,゚Д゚)(俺か?俺はただ向こうの要求を呑む、あの剣が欲しいならくれてやるのさ)
そして、「後は俺が全て片付ける」
何て言った………これじゃただの力押し

74 名前: :2006/11/26(日) 12:06:16.31 ID:6pJitQIX0
そうさ…
これはきっと作戦じゃない、俺が唯一できる事なんだ
(メ'A`)「信じるしか、ないよね」
そう自分に言い聞かせる

どうにか追いつくとギコの前に誰かが居るのが見えて立ち止まる
ギコが背負っていた箱を置く、するとその辺の茂みから人が出てくるのが見えた

「うっ……」進まなくて良かった、マジで

その場を避けて、こそこそと進むと「山小屋に居る」と声が聞こえた

うん、確かに前方に何か見える…俺はとりあえずそこを目指す事にした

75 名前: :2006/11/26(日) 12:08:04.12 ID:6pJitQIX0
<ヽ`∀´>「これが…!」
それを手に取り、翳す

波状の片刃は暗いはずの中で尚くっきりと輪郭を見せ
もう片刃は無く三角形の刀身が真っ直ぐに伸びた、奇妙な形

「名も無き炎の剣…?」誰かが言った

<ヽ`∀´>「!!!」
すぐに変化が起きた

波打つ刃が赤く変色していく、それを見て
ニダーは歓喜する「ニダは管理者に選ばれたんだニダ!!!」
今、あまりに有名な二つ名を手に入れた
自分が破壊の管理者となったのだ、と

ギコはそんな様を黙って見ていた
馬鹿にする様な瞳で


76 名前: :2006/11/26(日) 12:09:47.65 ID:6pJitQIX0
<ヽ`∀´>「さて…まあ分かってるとは思いますけど」
消えて貰いましょうか、ギコさん?

そう言うと周りの連中は腰の短刀を抜き、構える
「馬鹿なやつだ、こうなる事くらいわかってただろうにな」
「あんなお飾りの為に無駄死にしにくるくらいだ、頭イかれてるんだろ」

色々言われているがギコは何の反応もせず、ただニダーの方を見ていた
いや、ニダーの持つ剣をだ

生意気な態度に苛立ち、ギコに詰み寄る

<♯`∀´>「せめて自分の剣でくたばるニダ!!!!」


ギコの目の前で赤く発光する剣を大きく振りかぶると刀身から炎が漏れる



抵抗する素振りも見せないギコに向けて、それを振り下ろした

(,,゚Д゚)「自分の剣…ね」ぽつりと言った

77 名前: :2006/11/26(日) 12:11:56.64 ID:6pJitQIX0
どうにか、小屋の近くまで来れた
ギコさんの事も心配ではあったけど…
信じよう、そう思い進んだ

茂みの中から様子を覗く
小屋の前にはやはり人が見える

えーと…2, 3, 5, 7…もっと居るみたいだ

これじゃあ近づけない、どうしよう

今ほどステルス迷彩が欲しいと思った事は無い
こんな事ならケロタンを全部撃っておくんだった
ドクオは後悔した

78 名前: :2006/11/26(日) 12:14:09.70 ID:6pJitQIX0
…そんな馬鹿な事でも考えてないと、頭がどうかなりそうだった
見つかれば終わり、怖い
死ぬのが怖い
死ぬのなんて怖くないと、そう、思っていた筈なのに

その時大地が振動する
(メ'A`)(うわわ!??)
遅れて轟音と熱い風が周囲に吹き、森がざわめく

振り向くと後ろの方で炎が上がる
小屋の前に居た連中が慌ててそこに向かうのが見えた

(メ'A`)「い、今だ…!」
心臓がうるさく鳴るのも無視して飛び出した


79 名前: :2006/11/26(日) 12:15:38.71 ID:6pJitQIX0
見事に全員行ってしまったようだ、小屋の前まで来ても誰も居なかった

ドアを開く、暗い、その中に誰かが居た

(メ'A`)「……クー?」

「…………」

目が合う

(メ'A`)「あ、と…大丈夫?」
中に入って声をかけてみるけど反応してくれない
もしかして何かとんでもない、あんな事やこんな事されてかゆうまですか?

川 - )「ドクオ…?」
あ、答えた
81 名前: :2006/11/26(日) 12:22:09.68 ID:6pJitQIX0
(メ'A`)「クー、良かった…さあ行こう、あまりのんびりはしてられないんだ」

川 - )「ドクオ…どうして…」

「どうして、ここに居るんだ…?」

(メ'A`)「………助けてって、言われたから、かな」

「どうして……そんなに普通なんだ…私は、お前を…」

(メ'A`)「クーがそんな口調なのはさ、やっぱ王様だから?」

「ん…どうだろう……いやいや、ドクオ…」

(メ'A`)「クー…ごめん」

「………何故、謝るんだ?」

「守れなくて、ごめん」


82 名前: :2006/11/26(日) 12:24:32.90 ID:6pJitQIX0



轟と

今にも炎が溢れそうな剣

それがギコに振り下ろされた瞬間

爆発がおきた
辺りに轟音が響き渡り
橙と白のグラデーションが周囲を丸ごと呑み込んだ

爆発で数メートルは吹き飛ばされたニダーはそれを見た
燃える木々、焼かれ苦しむ自分の手下達、その地獄の中心で
先程と何も変わらぬ姿で、地に刺さったその剣を掴む男の姿


<<;`∀´>>「         !!!」
悪魔の様な姿を見たニダーは何かを叫ぶ
耐え切れず逃げ出し、こちらに走ってくる手下に半狂乱で叫んだ
「あいつを!!あいつを殺せ!!早く殺せえええええええ!!」

83 名前: :2006/11/26(日) 12:27:01.80 ID:6pJitQIX0
「オオオオッ」

後ろで更に轟音が聞こえるのも気にせず走る
(腕が!腕が焼ける!いたいいたいいたいいたいたい)
既に水ぶくれでボロボロの腕を庇いながら小屋の方へ逃げる

と、何かが見えた
小屋から出てくる男女の姿

「あいつらああああ!!くそっ…あいつらだけも!殺してくぁwせfrtgyふj」
最早叫ぶ言葉が言葉にならない

彼は既に精神を破壊されていた


84 名前: :2006/11/26(日) 12:29:57.91 ID:6pJitQIX0


小屋の外から未だ聞こえる轟音、安心してる暇なんて無い、とにかく逃げなきゃ
クーをどうにか起こし、外に出る

見ると今だ燃える炎から誰かがおかしなスピードで走ってくる
…………あいつだ!!

(メ'A`)「や、やばい!!走るよクー!」

どうやら奴は風を使っているようだ、まるで飛ぶように走っている
普通の道じゃすぐに追いつかれる、慌てて森の中に逃げ込む
何かに足を取られそうになりながら必死に走った


85 名前: :2006/11/26(日) 12:31:32.33 ID:6pJitQIX0
どれくらい走ったのだろう、今は一秒が長い

さっきから疲れては立ち止まり
「――――――!!!」
声が聞こえるとまた走る
その繰り返し、まるで映画のようだと思った


クーは小屋から出てすぐの時は何だかぐったりしていたけど
今はいくらか手に力がこもっている

気付けば、小さな湖に辿り着いた
「少し休もう」クーが言った
息を落ち着ける
(メ'A`)「もう、その、大丈夫?」

86 名前: :2006/11/26(日) 12:33:36.54 ID:6pJitQIX0
川 ゚ -゚)「ああ、大丈夫だ……」

クーが俺の手を取る

川 ////) 「…ありがとう」

(メ'∀`)「…………うん」

「私に出来るのは、こんな事くらいだから…」

(メ'A`)「え…?」

手に何かが流れ込んでくる感覚が気持ち悪い

でも、心強くなる

体の感覚がわからない、一瞬指の動かし方が分からなくなる

でも、すぐに理解していく

「そっか、これが………」

87 名前: :2006/11/26(日) 12:34:54.09 ID:6pJitQIX0
そして、いつかと同じ様に風が吹いた
そして狂ったような笑い声

「は、wはwはw、…やはり、運がいい」

クーの体が震える

<メメ`∀´>「水を求めて来て見れば…はははwwwww」

「とりあえず、殺してやるニダ」


そいつは、そう言った、…だから

クーの前に立つ「もう、大丈夫」いつか言われた言葉を返して


88 名前: :2006/11/26(日) 12:35:56.58 ID:6pJitQIX0
川;゚ -゚)「だ、駄目だドクオ!それはそんなにすぐ出来る事じゃない!逃げるんだ!!」
背中でクー叫ぶ、「大体、私の力じゃ…何の役にも」そうも聞こえた

いつもの様に思考する、頭がボーっとして、代わりにイメージがはっきりと見える

四角い画面に文字が走る


アクセスポイントを検索中



見つかりました

応答を待っています







 接続完了


89 名前: :2006/11/26(日) 12:39:18.18 ID:6pJitQIX0
湖に大きな波紋が一つ

川 ゚ -゚)「え……」


<メメ`∀´>「何だおまえええ…んん?wwww何だ!?まさかその女から受けとったのか!!」
「水の?!水のアクセス権をわざわざ?wwwうえw」
相変わらず狂ったように笑う、いい加減耳障りだよ

クーが、脅えてしまうじゃないか

<メメ`∀´>「そんな役立たずの力で」

奴が手を俺に向ける

「何が出来るニダ!!」

地面を巻き上げながら空気の壁が迫る、それを
目の前にある丸い水の塊が防いだ

それは風を浴びた途端、波紋と共に俺達を包むように広がった

風が止むと相変わらず狂ったような声が聞こえる

「な、な…なんで、何で水の接続者如きが、防げるんだ!!そんな馬鹿な!!馬鹿な!!」


90 名前: :2006/11/26(日) 12:42:24.94 ID:6pJitQIX0

右手に重さを感じる
それをゆっくりと持ち上げていく

川;゚ -゚)「……あっ…」

ザアアアアアアァァァッッ

湖が盛り上り空に昇る

月に重なり、照らされたそれは、まるで水の巨人の様だ

「!!!!!」

(メ'A`)「もう、お前の声は聞きたくないよ…」

手を下ろすと、巨人は奴に向かい倒れこむ

「何故!?何故最弱の力と言われるのがこんn――――

水はニダーを呑み込むと、そのまま地面を抉り木を倒し土石流となって山の一部分を抉り取った



91 名前: :2006/11/26(日) 12:44:09.31 ID:6pJitQIX0
川;゚ -゚)「………っ」
クーは信じられない…といった表情をしている


俺は気付くと倒れこんでいた

(メ'A`)「……星が…綺麗だ」
ふと思いだした

 (お前は皆から嫌われているんだ)
あの日と同じくらい
 (騙されてるだけってわからないの!?)
いやそれ以上に、綺麗だ…


目を閉じる

流石に…疲れた…

「ドクオ…?」

最後に

「ありがとう」

そう聞こえた



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