3 名前: :2006/12/18(月) 18:23:39.89 ID:0cNnCU830
第11話「   



動いたのが先か、風が吹いたのが先か

フサは正面を向き地面を蹴る、その一瞬で最高速まで加速
まるで雨を知らせるツバメの様に地面すれすれを飛ぶように疾駆
そのままの速度で木に向かうとすれ違いざまに手に握る木刀を叩きつける

木刀は反動に耐えきれず砕けるように折れフサはそのまますっ転んだ

「あいて!」

幾瞬遅れてその木には風が衝突、否
もはや物質に近い程の空気の壁が激突すると木の形が歪んでいく

そして甲高い千切れるような音と共にゆっくりと倒れていく

フサが寝転ぶ方に向かって

(;゚ー゚)「ふ、フサ君!!危ない!!」

ミ;゚Д゚彡「げ」

必死で転がる様に避ける、今居た場所が木の下敷きになった
ミ;-Д-彡「ひぇぇ…」

4 名前: :2006/12/18(月) 18:25:08.69 ID:0cNnCU830
顔を上げるとそこにはいつのまにやらギコが居た

(,゚Д゚)「…悪いが漫才ならよそで」

ミ;゚Д゚彡「違うっての!」


ミ,゚Д゚彡「で、どうよ今の?すごいだろ?」

(,゚Д゚)「まあ接続の方は悪くないが…そんな隙だらけになるんじゃ駄目だな」

「だいだいあんな直線なやり方じゃいい的だぞ」

「がーん…」


(,゚Д゚)(しかし凄まじいな…まさかここまで風を操れるようになるとは…)

ギコは最初は剣術を教えようとしたのだが

ミ;-Д-彡「わあっ」
(,゚Д゚)「目をつぶるな!よく見ろ!」

ミ,゚Д゚彡「うらぁ!」
(,゚Д゚)「軽い!!」

ミメ゚Д゚彡「いってえーーー!!!」

5 名前: :2006/12/18(月) 18:26:59.79 ID:0cNnCU830
すぐに脅える、力無い、っていうか才能無い事がわかったので
とりあえず接続の方を重点的に鍛える事にしたのだが
フサは一度コツを掴むとあっという間に風を操れるようになっていた


第11話 「剣と炎とフサギコと」


ギコは言った

(,゚Д゚)(まあそもそも戦いはほとんど接続者同士のぶつかり合いだから剣術なんてのは飾りだが)

ミ;-Д-彡(じゃあいいよ…剣なんか使えなくても…)

(,゚Д゚)(お前剣の管理者になったんだからそうも言ってられないだろ?)

(とにかく素振りくらいしてろ)
というわけで俺は今日もこの重たい鉄の棒を振り回している
最近は少し慣れてきた気がする…力がついたってのもあるかもしれないけど
俺の体がこの棒を振るのに慣れたって方が近い、スムーズな体重移動と力の込め具合…これだね

ミメメメ゚Д゚メ彡「…ふっ…ぬ…ふっ…お!……あれ?」

(*゚ー゚)「頑張ってるじゃない?」

兵棟近くで素振りしている俺の所にしぃさんが来てくれた


6 名前: :2006/12/18(月) 18:28:05.76 ID:0cNnCU830

(;゚ー゚)「ていうか傷だらけね…どうしたの?」

ミメメ;゚Д゚メ彡「い、いえ…これはちょっとその………」

これはついさっきの事だ、素振りをするのに慣れてきた事を実感した俺は調子に乗った
ミ,゚Д゚彡(俺すげwwww絶対強くなったよwwww)
調子に乗ってギコに勝負を挑んだ所…ボコボコにされた

何となく気付いてはいたんだけど、ギコは滅茶苦茶強い
どう強いってまず速い…目で追えてもそれに体がついてず、気付けばしこたま叩かれる
仮に反応できても力も相当なもので…鍔迫り合いなんてもってのほか、武器が飛ばされないのに精一杯

それが何だか悔しくて…情けない事に泣きながら意地になって何度も挑んだ

(,゚Д゚)(!?)

ミメ;Д;彡(背中の傷は…剣士の恥だ)

(,-Д-)(見事…!)


『ずばっ』そこで俺の意識は途絶えた
(,-Д-)(生き急ぐな…若き力よ…)


ミメメメ゚Д゚メ彡「…とまあそんな感じでして」

(;゚ー゚)「そう…大丈夫?」(…最後のは何だったのかしら?)


7 名前: :2006/12/18(月) 18:30:33.38 ID:0cNnCU830

ミメメメ゚Д゚メ彡「それにしてもあいつやるね…まさかここまで歯が立たないとは…」

(*゚ー゚)「うーん…まあVIP国内じゃトップクラスらしいわよ?」

ミ;゚Д゚彡「げ…マジすか…結構とんでもない奴だったんですね」

(*゚ー゚)「そうねぇ、でもあの人精神面が弱いわよ…すぐカッとなるし」

ミ,゚Д゚彡「ははは、それは言えてる」

そういえば確かに兵棟でのギコは何となく他から一目置かれてる感じがあった
…というか他の人と絡んでるのをあまり見ない

(*゚ー゚)「しかもちょっと周りから孤立してたみたいだし…ほらあの性格でしょ?
     頼られたり持ち上げられたりされるのが嫌みたいなの」

ミ;-Д-彡「あー…ツンツンしてるのが目に浮かぶ…」

(*゚ー゚)「ふふ、でも最近は少し変わってきてるとは思うんだけどね」

ミ,゚Д゚彡「そう?俺はよくわかりませんが…」

(*゚ー゚)「うん、それにフサ君だって変わったんじゃない?」

ギコはちょっと優しくなって、俺はちょっと男らしくなったと
「二人とも…変わったよ」
そう言われて思わずにやける……そうかな?そうかも。


8 名前: :2006/12/18(月) 18:33:32.23 ID:0cNnCU830

(* ー )「男の子の友情、か…ずるいなぁ…」

しぃさんは口から漏らすように呟く、声をかけるとパッと笑顔になった

(*゚ー゚)「んーん、何でもない…それより疲れたでしょ、図書室でお茶でもどお?」

ミ,゚Д゚彡「行きましょうとも」

そうして二人で城へと向かうと、何やら慌しく走り回る人々が目についた

(;゚ー゚)「騒がしいわね…どうしたのかしら?」

ミ,゚Д゚彡「何かあったんですかね?」
その時どこからか俺を呼ぶ声

(,゚Д゚)「やっぱりここに居たか…ってしぃも一緒か」

(*゚ー゚)「うん、どうしたの血相変えて」

それは突然の通達
(,゚Д゚)「…アース国からの最後通牒が届いた」

ミ;゚Д゚彡「…どういう意味?」

「連中が侵攻を開始したって事だ!」



9 名前: :2006/12/18(月) 18:35:43.44 ID:0cNnCU830
アース国…接続者の数はVIPに劣るものの、単純な兵数では3倍以上
情報では総数およそ100以上の大部隊が既に領土内に入ったと聞いた
隣国との距離はそう遠くないため明日には開戦だと言う

ギコは俺を探しに来たらしく、兵棟へとにかく向かう事になった

(* - )「死なないでね…二人とも」
別れ際にしぃさんが言った
ギコはただ静かに「ああ」とだけ言ったのをよく覚えている


そして兵棟への集合、会議、物資の調達及び準備…瞬く間に過ぎ
その日の夜、俺は王様からの呼び出しを受け例の箱ごと剣を受け取る

王様は俺にそれを渡した後、何故か忙しそうにどこかへ行ってしまい
俺はとりあえず兵棟の方に戻る事にした

川゚-゚)「…おにいちゃん?」

ミ,゚Д゚彡「くーちゃん?どうしたのこんな所で」

兵棟へ戻る途中に少女に出会った


10 名前: :2006/12/18(月) 18:37:14.26 ID:0cNnCU830
川゚-゚)「せんそう…またおきるんだよね」

ミ,゚Д゚彡「そうみたいだね…」
最初にギコにそれを聞かされた時、俺はいまいち現実感がもてなかった
けどこの雰囲気が…目の前の少女の言葉が、だんだんと恐怖を煽ってくる

川゚-゚)「みんな…いなくなっちゃうのかな」

川 - )「わたしも…やだよ…こわいよ…たすけて…」

まるで独り言のように続ける
俯いたその表情は長い髪にかくれて見えなかったけど、胸が痛んだ

ミ;゚Д゚彡「…っ…大丈夫、だよ」

川゚-゚)「ほんと…?」

ミ,゚Д゚彡「もちろん…」

ただの気休めだ…そう思う心を隠して
すがる少女の頭を撫でながら、できるだけ優しく話す

「俺が守るから」

「うん……」

少しでも安心させたくて俺はそう言っただけ、でもそれを口にした時胸が熱くなるのが分かった
『助けて』の一言はまるで弱い俺の存在を否定するような気がして…
勇気付けられたのは…他ならぬ俺だった

11 名前: :2006/12/18(月) 18:39:37.42 ID:0cNnCU830
――明朝、VIP国内を離れてどれくらいだろう…腰に下げた剣が邪魔で歩きにくいったらない
既に精神的にへとへとになりながら、4時間は歩いた所で鉢合わせた

何かの境界線でもあるかのように一定の距離をあけて行進が止まる
何故か互いに睨み合う形となり、前方に見えるは人の群れ

ミ;゚Д゚彡「…………あわわわ」

こちらは全戦力を投入しているのに対し、向こうは余力を残した状態でこちらと同程度の数
…どう考えても不利な状況、これには流石に涙も出やしない

(,゚Д゚)「おい、フサ」

ミ;゚Д゚彡「うわっ!な、何だよぉ」

(,゚Д゚)「もっと後ろの方にいけ…そしたら風に接続して、まあ色々やれ」

ミ;-Д-彡「い、いろいろって」

12 名前: :2006/12/18(月) 18:41:52.13 ID:0cNnCU830

(,゚Д゚)「ああそうだ、その剣はどうだ?何かわかるか」

ミ,゚Д゚彡「え?うーんと…くそ、取りにくいっ…」
腰に下げられた剣を鞘から抜き放つ

(,゚Д゚)「どうだ、何か変わった感じとかするか?」

ミ,゚Д゚彡「……なんもー」

(;゚Д゚)「そうか…まあ無いよりましだろ」

そうだ…俺はこれからこの剣を持って……「戦うんだ」

(,゚Д゚)「……ん?」

ミ,゚Д゚彡「ん?」

手に…何か熱さを感じる、見ると剣の片刃が赤くうっすらと輝いている
やだなにこれきもちわるい!

ミ;゚Д゚彡「えーーー!なにこれぇーーー!」

(;゚Д゚)「落ち着け」


13 名前: :2006/12/18(月) 18:44:18.24 ID:0cNnCU830
それも見ていると段々と赤い発光が強くなり、ちょっとずつ漏れる火が見える

ミ,;Д;彡「らめええええ!火でちゃだめなのおぉぉ!」
これは!これはまさか!まさか!?

気が動転した俺はとりあえず思った事を口にした

「 ば く は つ しちゃう!!」

「「 ざわ…!  ざわ…!」」

そんな事を口走りながら走り回る俺、周囲は軽くパニックに陥った

兵士1「ぎゃああああこっち来るなぁ!」

兵士2「お前に足りないもの…危機感だ」

兵士3「よせよせ!向こういけええ!!」

兵士4「ふ、ふざけんな!う、うわ!!」


(,゚Д゚)「あれは…そうか…」


14 名前: :2006/12/18(月) 18:46:10.73 ID:0cNnCU830
「おいフサ!」ギコが泣きべそをかく馬鹿を呼ぶ

ミ,゚Д゚彡「馬鹿って言うな!!」

(,゚Д゚)「うるせえ馬鹿、それよりお前…」


そんな事をやっている内に敵将と思われる人物が正面に立った

( ゚д゚ )「我が名はミルナ!アース国王が剣にして国王の代弁者!
     これが最後の機会だ!大人しく従えば無駄な血は流れん!」

声高に叫ぶ敵将、そして恐らくVIPの兵将と思われる人物がそれに答える

「お前の言う無駄とこちらの思う無駄の意味は違うのだろう
  …接続者以外の人間は無駄と考える貴様らに従うことは出来ん!!」

( ゚д゚ )「そうか…ならば力ずくで行かせてもらおう」


16 名前: :2006/12/18(月) 18:49:22.55 ID:0cNnCU830

「「突撃!!」」

声に続いて声が重なる

「「「「おおおおおおっ」」」」

雄叫びが轟き大地に揺れを感じる

(,゚Д゚)「行くぞっ!!」

ミ;゚Д゚彡「お、おおオウ!!」

ギコに次いで駆け出す
風が吹く、風は俺の腕へ、剣へ、そして刀身に纏うように

(それよりお前のその剣…どうやら火を出せるみたいだな)

(う…うん、そうみたい…でもいつ爆発するか…)

(……爆発するかどうかは置いといて、だ)
(俺について来い、お前はそれを構えていればいい)

(でも爆発したら危険ですよ!)

(だったら爆発を風で吹き飛ばしてやればいいだろ!)


17 名前: :2006/12/18(月) 18:51:06.47 ID:0cNnCU830
風を纏った剣から溢れる炎は更に勢いを増してついには刀身を包み込む

そこら中で敵味方入り混じり斬り合う戦場の中
俺は必死にギコの後を追う

ミ;゚Д゚彡「少しは待ってくれよお!」

その時、敵兵の一人がギコに向かっていくのが見えた
ミ,゚Д゚彡「!!」

だがそれもほんの一瞬の出来事

相手がギコに向けて剣を振り上げた瞬間、男の腕が胴体から離れ後ろに飛んだ
振った剣影すら残さない程の高速の一閃

「!???!!??」
男はあまりに突然な事態に腕を上げたまま固まっている

19 名前: :2006/12/18(月) 18:53:31.60 ID:0cNnCU830
(,゚Д゚)「おらあっ!!!」
ギコは駆ける勢いと剣を振った反動で空中で回転しながら棒立ちの男を蹴り飛ばした
男はそのまま倒れこみピクリともしない

ミ;゚Д゚彡「は…」

着地と同時に更に疾駆…更に迫る敵に体をぶつけ体制の崩れた所でまた相手の片腕を地面に落とした
そして大きく振りかぶり相手の肩から腹部を切り裂き血が飛ぶ
俺が言葉を言い終えるよりも早くギコは更に目の前に居た敵兵を斬り伏せ
あっという間に赤い染みが周囲に撒かれた

「はやすぎ…」

(,゚Д゚)「ぼーっとするな!!」
ミ,゚Д゚彡「え?うわあああっ!!!」

気付けば真横から敵兵が俺に襲い掛かってきた
相手が振り上げた剣が振り下ろされる
21 名前: :2006/12/18(月) 18:56:53.58 ID:0cNnCU830
刹那ギコが俺を突き飛ばすように割り込み、振り下ろされる剣を受け止めた…いや
耳を突く様な甲高い音がしたと思えば
そのまま相手の振った剣筋がぐにゃりと曲がり地面に突き刺さる

ミ,゚Д゚彡(何だ今の!?)

敵兵「ぐぬっ!?」

ギコは動きの止まった相手に向けて剣を肩の後ろにまで持ち上げ
体を先に回しながら振りぬいた
(,゚Д゚)「はあっ!」

何か鈍い音と共にその男の首が回転しながら転がり落ちる
少し遅れて何かが噴出したのが見えた

ミ,゚Д゚彡「おえっ…」
俺は慌てて目をそらす

(,゚Д゚)「来るぞ!構えろ!」

ギコの声に反応して正面を向くと
目の前に5,6人がこっちに来るのが見える


22 名前: :2006/12/18(月) 18:59:21.63 ID:0cNnCU830
ミ;゚Д゚彡「よよよよぉぉし…!!」
声が震える…困った…

(,゚Д゚)「黙って前に向けて構えてろ」

ミ,゚Д゚彡「え?」

ギコが手を向けると、俺が持ってる剣から炎が溢れ出しギコの周りを巻くように漂う

(,゚Д゚)「よし…思った通りだ…」

ミ;゚Д゚彡「えっ!ええええ!!」

(,゚Д゚)「いくぞ!!」

ギコの叫びに呼応するように炎は低い唸り声と共に周囲を呑んだ
赤とも黄色とも取れる炎のグラデーションが視界を奪う
ミ;>Д<彡「うおっまぶし!」

(,゚Д゚)「焼き尽くせ!!」


叫ぶ炎の音の中に混じって幾人もの断末魔が響く

23 名前: :2006/12/18(月) 19:01:16.24 ID:0cNnCU830
凄惨な光景、それを見た兵の誰かが言い始めた

「まさかあれは…か、管理者なのか!?」

ここで敵兵達の間に恐怖が生まれる
「化物」管理者それが今目の前にある
アース兵の士気が下がり始めるには充分だった
( ゚д゚ )(くっ…不味い事になった、このまま士気が下がれば……)

( ゚д゚ )「ならば!!おおおおおおおお!!!!」

戦いが長引けば、精神的な物が出始める…
あと何度殺せばいい、いっそ楽になりたい、そんな苦しみとの戦いになる
それゆえ、士気が勝敗を決する事が多い

そして先に士気を落としてしまったのはVIP側であった

(メ;゚Д゚)「何!撤退!?どういうことだ!」

ミメ;-Д-彡「ぜえ…はぁ…はぁ……」


24 名前: :2006/12/18(月) 19:03:03.12 ID:0cNnCU830

VIP兵「中央が完全に崩れた!このままじゃ囲まれる、一時撤退だ!!」

(メ゚Д゚)(中央が!?くっ…ならこちらの将はやられたって事か!)

ミメ-Д゚彡「…は…な、何?」

(メ゚Д゚)「撤退だ、逃げるぞ…走れるか?」

ミメ;゚Д゚彡「あ…うん」

VIP兵「急げ!怪我人はフォローしてやれ!」

VIP兵「く…くっそおおお!!」


( ゚д゚ )「………」

そんな逃げ行くVIP兵をミルナは黙って見つめていた

アース兵「…追わなくてよいのですか?」

( ゚д゚ )「ああ、よいのだ…それよりも、どうやら少し相手を舐めすぎたらしい
     本国に伝令だ、接続者の人数を増やすようにな」

アース兵「…了解です!」


25 名前: :2006/12/18(月) 19:05:25.39 ID:0cNnCU830

( ゚д゚ )(それにしても危ない所だった…)

ミルナが追撃を命じなかったのは、しなかったのではなく…できなかったのであった

管理者の情報は戦いの最中に聞こえていた、そしてそれによる被害
一部は完全に崩されていた状況に重ねて…謎の管理者の噂
これ以上長引けばこちらが押し切られていただろう

ならばどうするか

ミルナは周りの兵と共に捨て身で敵将のみを狙い、そして討ち取った
それには犠牲も大きかったが…
そうする事で相手の士気を下げるばかりか、こちらの一部が押されている状況をも利用し
真ん中を切り開く事で相手を囲んだように見せつけたのだった

( ゚д゚ )「惜しかったが…あんな雑な統率しかできないのではな…」

ミルナは最後にそう言い残し、その場を去って行った

30 名前: :2006/12/18(月) 19:59:34.19 ID:0cNnCU830
みんなで息を切らせて走っている、何だかマラソンを思い出させる光景だった

…何がどうなったのかわからない…
撤退って事は負けたんだよね?でも俺はピンピンしてるのに
ギコと二人で、あんなに沢山の敵を倒してきたのに

『あんなに人を殺したのに』

ミメ;Д;彡「…ぐす」

(メ゚Д゚)「………ちっ…」

いつしか追っ手の無い事に気付いたのか周りが少しずつ歩き始めていて
俺達も自然と歩き始めた

ミメ;Д;彡「ギコ…俺達…負けたのか?」

(メ-Д-)「………」
その問いに返事は返って来なかった

どれくらい歩いたのだろう、やけに長く感じたがどうにか城まで無事に辿り着いた


31 名前: :2006/12/18(月) 20:01:27.49 ID:0cNnCU830
戻ってからは何やらみんな慌しそうだった
後でわかった事だが、こちらの実際の被害は2割かそこらだったらしい

それは単純にこちらが優秀なのか、向こうが手加減しているのか…恐らくは後者だろう
アース兵の中に接続者がほとんど居なかったって言うし
ただ何よりも完全に敵に戦術で劣っていると言う事実が大きかった

あそこは引いてはいけない場面だった、そして引いてしまったらどうなるか

全ては後の祭り、次は恐らく戦力を増強してくる
敵の狙いは接続者達…接続の力は遺伝する為、捕らえさえすればどうにでもなるって聞いた
他は恐らく……考えたくもない

…VIPは敗戦ムードに犯されつつあった

そして俺は城の中にある螺旋階段を昇り塔のてっぺんで一人泣いていた

ミメ;Д;彡「う…っく……ぐす…ぐす」

目を閉じると今でも思い出す…焼きついた光景がまぶたの裏から離れない


32 名前: :2006/12/18(月) 20:03:39.47 ID:0cNnCU830

斬られ血を馬鹿みたいに流しながら動かなくなる人
燃える炎の中で気が狂ったような声を上げながら蠢く人影

耳には人の断末魔が反響している

鼻で息を吸うたび『あの場所』の匂いを思い出して軽く吐き気が襲う

…不思議と恐怖は少なかった

それよりただひたすら哀しかった
悲しくて哀しい

胸が詰まって苦しくて、俺は無理やり泣こうとしていて
いつしか泣いているのが素なのかわざとなのかわからなくなってくる

ミメ;Д;彡(これが壊れるってやつなのかな…)
そんな事をふと思った、それで楽になれるならいっその事…

そこまで考えてふと背中に気配を感じた

川゚-゚)「…おにいちゃん?」



33 名前: :2006/12/18(月) 20:53:43.87 ID:0cNnCU830
ミメ;Д;彡「くー…ちゃん…」

俺は…待ってたんだと思う、一人で居たくて痛くてここにいたけれど
ここに居たら来る人は一人しか居ないって事はわかってた、はずなのに

何故だろう…こんな時に頼るべき人は他にいるはずなのに

何故だろう…こんな情けない姿は一番見せたくない相手なのに

川゚-゚)「…へいき?どうしてそんなにないてるの?」

俺は既に壊れてるのかな…?

川゚-゚)「おにいちゃん…やっぱり…みんなしんじゃうの…?」

ミメ;Д;彡「………」

川゚-゚)「わたし…しんじてるよ」

ミメ;Д;彡「…え?」


34 名前: :2006/12/18(月) 20:54:33.25 ID:0cNnCU830
川*゚-゚)「わたしおにいちゃんをしんじてるよ、たすけてくれるって
     …ぜったいまもってくれるって」

…今わかった、ここに来た理由が

ミメ;Д;彡「……う」

ミメ-Д-彡「…うん…誓うよ…必ず…君は必ず、俺が守るよ…!」

……………

(メ-Д-)「…もういいのか?」

ミメ゚Д゚彡「ああ、ギコ…聞いてくれ」

(メ゚Д゚)「…何だよ」

ミメ゚Д゚彡「俺…負けたくない…この国を…あの子を、俺はくーを守りたい」


(メ゚Д゚)「…そうか」


35 名前: :2006/12/18(月) 20:55:38.92 ID:0cNnCU830
ミメ゚Д゚彡「俺にさ、助けてって言ったんだ、あの子」


ミメ゚Д゚彡「…だから俺は誓ったんだ」


(メ゚Д゚)「……何をだ?」


ミメ゚Д゚彡「必ず守るって…だから、それを守れないなんて」


ミメ゚Д゚彡「俺、そんなの嫌なんだよ…」


(メ゚Д゚)「なら…どうするんだ?お前一人がどんなに頑張ったってどうにかできるもんじゃないぞ」

ミメ゚Д゚彡「お前となら…できる…俺達二人なら、何だってできる!」

(メ゚Д゚)「よく言うぜ…ずっと脅えてただけの癖に」

ミ;-Д-彡「う……でも…何か感じたんだ戦ってる間…変な無敵感みたいな…そんな物を」

(メ゚Д゚)「…まあな」
ミメ゚Д゚彡「だろ!?」

ミメ゚Д゚彡「なあギコ、行こう」

38 名前: :2006/12/18(月) 21:16:34.14 ID:0cNnCU830
(メ゚Д゚)「………嫌だね」

ミ;゚Д゚彡「…えー」


(メ゚Д゚)「と言いたい所だが、まあ…国を守る為にってのは賛成だし…」

「俺も誓ってやるよ、この国と…その女の子とやらを守るってな」

ミメ゚Д゚彡「んでさ、考えがあるんだ」
(メ゚Д゚)「?」


兵棟前…兵達が集められた隊長命令で、だ

兵士1「何が始まるんだ?」

兵士2「さあ?そもそも隊長って誰だ?死んだんだろ?」

兵士3「皆ご苦労、避難急げ!だったりしてな…」

兵士4「ん?何か聞こえるぞ」

兵達は集まり思い思いに語っている
(ほら、いけって!)
(何で俺なんだよそもそも!)
(分相応不相応ってもんがあるんですよ!)
(んぁ〜〜〜わぁったよ!)


39 名前: :2006/12/18(月) 21:18:31.29 ID:0cNnCU830
台の上に立ったのはギコ、手には奇妙な形の剣が赤く輝いている

ざわめきが広まる、なんでギコが…?そんなのが聞こえる

ミメ゚Д゚彡(とりあえずこの嫌な空気をぶち壊そう)
(メ゚Д゚)(どうやって…)


(メ゚Д゚)「俺は誓う!!この神具たる剣の下、管理者として!」

兵達は一様に困惑していたが管理者の名と、一部の兵達によって纏まり始める
 
兵士「あの剣…そうだ、とんでもない炎でアース兵の奴等を蹴散らしてた…」

兵士「そうだ!あれだ…そうか、ギコだったのか!!」

(メ゚Д゚)「誓約の元に、この国は必ず守り抜くと!」

そして剣から昇る炎は空に、夜空に舞う炎の花

その夜ギコとフサギコの下、全ての兵士は一つになった

願いはどちらも変わらない守る為の意思表示

誓いを守る者…

誓約の騎士


つづく

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