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名前:高校の女教師 :2006/11/24(金) 11:47:36.41 ID:CW2xQYnn0
第一話「ドクオとギコ」
長身の男が三人、長い棒状の物を手に山を登っている
「見ろ、あそこだ」
「なんだよあれは…あれじゃ、まるで…」
「まるであの時の再現だな」
「………………。」
「…おい、見ろ!何か居るぞ」
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名前:高校の女教師 :2006/11/24(金) 11:49:13.40 ID:CW2xQYnn0
- そのあそこでは地面から光が溢れ、その中心にはまだ幼さの残る青年が座り込んでいる
(;'A`)「えーと…?」
辺りを見渡し、思案
ここは山の中腹あたりだろうとか、どうにもチカチカして見辛いけど遠くに明かりが見える事は分かる
変に温い風が吹き、思わず歯がカチカチと鳴る
今は夜なのだろう、辺りは暗いが空には月が輝きそれに照らされて白い雲が浮かぶのが見えた
そして足元には小さな光が漂っている
('A`)「うわ、すげぇ…!」
それらが空に舞い上がると、辺りが昼間の用に明るく照らされる
そのまま光は空に浮かぶ雲に吸い込まれるように消えていった
思わず自分の置かれた状況さえ忘れて見入ってしまう
- 7
名前:高校の女教師 :2006/11/24(金) 11:51:26.06 ID:CW2xQYnn0
- ふと気がついた
すぐそこに人が居るっぽい
いや居る
何だか見られてない?
うん、すごく見られてる。
しばし静寂 風がぴゅ〜ぅと吹いた気がした
(;'A`)「あ、す、すいません…」
思わず謝ってしまったけど、これがまずかったのだろうか?
この後冷静になれたのは、知らない部屋に閉じ込められた後だった
- 9
名前:高校の女教師 :2006/11/24(金) 11:53:28.51 ID:CW2xQYnn0
- ―――数時間前
朝のあまり人も通らない時間
自転車で通いなれた道を歩いている
今日はさ、たまにはこれも新鮮でいいと思ったから歩いて行く事にしたんだ
けど…それがいけない、ついつい足が寄り道したがるから困る。
………………
……………
…………
………
……
…
- 10
名前:高校の女教師 :2006/11/24(金) 11:55:26.03 ID:CW2xQYnn0
- ふぅ、と呼んでいた本を閉じると顔を上げる
さっきまでちらほらとしか人が通らなかったはずの道
だがそこは今や沢山の人で賑わっていた
見た事無い人、見た事ある人…でもそれを気にする事はないけどね
(;'A`)「あ…あれ?」
結局太陽が真上に上がるまで寄り道していた彼はドクオ
登校中に本屋に立ち寄る悪い子だ
ふと時計を見ればちょうど針が12で重なろうとしていた
(;'A`)「うわっ…遅刻ってレベルじゃねえぞ!!」
イヤホンを耳につけると大音量で再生する
「今 にも 飛び抜ける 駆ける想いは ダテじゃな い」
流れる音楽に背中押されるように人波を走り出す
あー気持ちいい。
- 11
名前:高校の女教師 :2006/11/24(金) 11:57:42.12 ID:CW2xQYnn0
- 遠くからでも分かる4階建ての校舎の中の教室、そこで暖気の中楽しそうに笑い合っている人達
ここはVIP市にある平凡な高校で、ドクオが通う学校であった
('A`)「腹減ってきたなぁ…」
帰りたいよー、とか思いながら階段を上がる
2年生であるドクオは何故か4階まで登らなければならない
理由は何でも「中間が大事な時だ!駆け上がる気持ちを忘れてはならない」かららしい
…俺には死ねと言われている様にしか思えないんだけどね
ちなみに1年は1階で3年は3階だ
どう見ても嫌がらせです本当にありがとうございました。
- 3
名前:はぐれVIPPER :2006/11/24(金) 12:00:20.44 ID:CW2xQYnn0
- せめてもの救いは、階段上がった目の前が自分の教室である事か
ふらふらと教室に入っていくと、奥で誰かが手を振っている
( ^ω^)「ドクオー!遅いお!もう学食行っちゃったお」
(´・ω・`)「やあ、そろそろ来る頃だと思ってたよ」
この高校に入って仲良くなった二人だった
遅刻は俺の得意分野だったから、二人は特に気にした様子もなく挨拶してくる
とりあえず俺は二人の隣の席に座った
ふと時計を見れば昼休みになって20分程過ぎた頃だった
(´・ω・`)「ご飯は持ってきたのかい?」
('A`)「いや、もう食ってきたよ」
本当はまだ、だけどそう答えた
そうしないとすぐ気を使われるからだ
- 14
名前:はぐれVIPPER :2006/11/24(金) 12:01:25.81 ID:CW2xQYnn0
- (´・ω・`)「そうか、じゃあこのコーヒーとパンはサービスだから(ry」
…ばれていた、彼の名はしょぼくれ
あだ名が先行するタイプでショボンと呼ばれてる
2年に上がってから知り合い、気がつけば3人組の一人だ
やたらと鋭いというか気が回る奴で、俺は何度も色んな意味で助けられた
いい人の典型的な感じで、周囲の信頼も厚い
何故そんな奴が俺達とつるんでるのかは分からないがとにかくいい奴だ
('A`)「マジか」
とりあえず受け取る
(;^ω^)「ちょ、それを買いに行ったのは僕一人だお!!」
もう一人はブーン、ブーンてのもあだ名だ
この高校に来て最初に仲良くなったのがこいつ
毎日の様に一緒に帰ってるし遊んでる…のだが
ブーンとしか呼ばないもんだから
未だに本名を覚えてない、確か内藤…ホウレン草?
人に話しかけるのが苦手な俺をいつも引っ張ってくれる奴で俺の親友だ
- 15
名前:はぐれVIPPER :2006/11/24(金) 12:03:15.57 ID:CW2xQYnn0
- (´・ω・`)「でもお金は僕じゃないか、3人分」
そう言って笑いながら言い合っている、そんな二人を見ていると時折思う
ここは暖かい場所だ、当たり前の様に誰もが持ってる自分の居場所、俺の居場所
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名前:はぐれVIPPER :2006/11/24(金) 12:04:12.01 ID:CW2xQYnn0
- …だから思う
自分の今の状況が信じられない、この暖かい空間に自分が居る違和感
本当に絶望を知ったあの日
一人寒空の下自転車を漕いだ、あの日に見た星空があまりにも綺麗だった事
…消えたいって願tt――( ^ω^)「ォ……ドクオ!」
ハッとする、ああー…また思考に溺れてしまった
(;^ω^)「スルーはひどいお…」
(´・ω・`)「相変わらずすぐぼーっとするね、君は。」
どうにも俺は考え事をしていると自分の世界に入ってしまうらしい
だから謝る代わりに笑顔で答えた
('∀`)「ああ、ありがとな助かったよブーン、ショボン」
- 18
名前:はぐれVIPPER :2006/11/24(金) 12:05:33.14 ID:CW2xQYnn0
- その後はまあ、特に何事も無く過ぎて放課後になった
帰りにどっかに行くかと話も出たけど
今日はショボンが用事あるとかで真っ直ぐに帰る事になった
(´・ω・`)「もうあそこへ帰れないマジでバイバイ」
( ^ω^)('A`)「バイ・バイ・マタネ」
ブーンの家は俺の家から学校までの直線状にある、だから帰りはいつもブーンと一緒だ
いつもの川沿いの道でまた、他愛の無い会話を繰り返す
こんな日々が続けばいい
- 19
名前:はぐれVIPPER :2006/11/24(金) 12:06:23.47 ID:CW2xQYnn0
- いや、まあ
そりゃあ変化とか刺激も欲しいとは思う、彼女とかだって欲しいよ
(;^ω^)「お?」
……いやいやいや、別にそんなもんいらないもの、いらないんだもの
(;^ω^)「・・????あれは・・・?」
…本当だよ?
(;^ω^)「ドクオ!見るお!」
('A`)「え?」
思わずブーンを見つめる
(♯^ω^)「僕じゃないお!」
- 21
名前:はぐれVIPPER :2006/11/24(金) 12:08:23.08 ID:CW2xQYnn0
- ブーンが指をさす方向…土手のすぐ下では水面が夕日に照らされてキラキラとしてる
('A`)「ああ、綺麗だねブーン…」
もっと見つめる
(;^ω^)「ドクオ・・・わざとやってるお?」
('A`)「はいはい、…んー?」
魅入られる、というのだろうか
(;'A`)「あれ…わ?なんだ?」
( ^ω^)「だから言ってるお!!・・・ドクオ?」
ふらりと体が自然とそこに向かう
(;^ω^)「ドクオ?聞いてるかお?ドクオ!!」
それは土手を降りたすぐにあった
- 22
名前:はぐれVIPPER :2006/11/24(金) 12:09:30.88 ID:CW2xQYnn0
- (;^ω^)「ドクオ、どうしたんだお!ちょっ、待つお!」
ブーンが止めようとする、何故だろう止まれない
(♯^ω^)「待てお!!!」
地面が光っている、まるでそこだけスポットライトで照らしたように
そっと触れてみた
( ^ω^)「ド―――――。」
指先から腕へ、ゆっくりと光になって消えていく
振り向くとブーンはまるで石にでもなったかのように動かない
('A`)「…ブーン?」
そして、目の前が完全に真っ白になった。
- 23
名前:はぐれVIPPER :2006/11/24(金) 12:10:40.88 ID:CW2xQYnn0
- ―――現在 ???の家
ここに放り込まれてからどれくらい時間が経ったろうか
どうやら外はすっかり明るくなっているようで窓っぽい所からは光が射している
さて、困った事になったけど、逃げ出したい思いは無い、何故なら逃げた方が怖いから
元居た場所も、もうわからない、連れて来られる時なんて正直緊張と不安でそれ所じゃなかったし
('A`)「あー…牢屋ってやつなのかね、一応」
周囲は壁と鍵のかかったドアと、窓…というか四角い穴、それにかかる鉄格子
ここに来るまでも、縛られた時も
特別暴力は受けなかった、ただ妙に脅えていたように思える
そして、やたらと俺の持ち物を気にしていた
話してるのを聞いてて言葉も分かる、でも言ってる事がわからない
とりあえず「せつぞく」だの「かんり」だかを繰り返してたと思う
('A`)「…なんのこっちゃ」
- 24
名前:はぐれVIPPER :2006/11/24(金) 12:11:56.82 ID:CW2xQYnn0
- わからない事を考えても仕方が無い…分かる事を考えよう
(;'A`)(ここは一体どこなんだよ!!ここから出せ!!家に帰してくれぇ!!)
……なんてね
きっとここは俺の居た世界じゃないんだろうな、とは漠然と思う
まだ現実味が足りてないだけかもしれないが…それよりどうしてこんな事に?
………そうそう思い出した、あの変な光に触ったら…凄く暖かくなって
ふと手のひらを見る、ちゃんとある、大丈夫。
('A`)「そうだ、ブーンは…」
一緒に居たんだ、もしかしたら
('A`)「あいつもこの辺に居るのかな」
不謹慎なのかもしれないがそうであるように願った
- 25
名前:はぐれVIPPER :2006/11/24(金) 12:13:44.50 ID:CW2xQYnn0
- けれどドクオは気づいていない 自分が消える間際 振り向く先に居たブーンが言葉も途中に動かなくなった事を
横を流れる川 その上空を飛ぶ鳥 川を越えた向こうを走る自転車も 全てが動いていなかった事
その瞬間 振り向き世界を見ていたのはドクオ一人だった事に 気づいていなかった
カチャ、キィィ
ついでにドアが開いた事にも気づかなかった
('A`)(ああー…どうなるんだろ俺)
(,,゚Д゚)「失礼するぞ」
(;'A`)「え…」
振り向くと、そこには男が立っていた
(,,゚Д゚)「ふむ…本当に普通の子供のようだな」
- 26
名前:はぐれVIPPER :2006/11/24(金) 12:14:59.02 ID:CW2xQYnn0
- ('A`)「あー…と、あの」
男は戸惑うこちらの様子もお構いなしに話を続ける
(,,゚Д゚)「率直に聞くがお前は接続者なのか?昨夜の光はお前が?」
だから何を言ってるのかわかりません………ネット接続?うちは光じゃないよ?
(;'A`)「いや何の事か…」
混乱してきてそれだけ言うのにやっとだった、そんな様子を察したかどうかはわからないが
(,,゚Д゚)「そうか、なら…少し待ってろ」
そう言うと彼は背負っていたでかい箱を床に置いた
その箱には九つの鍵穴があり男はそれを慣れた様子で開けていく
(,,゚Д゚)「これに見覚えは?」
('A`)「これ…剣?」
中にあったそれは巨大な刀の様な形をした剣。
炎のような波状の片刃、柄は妙に長くいわゆる両手持ちの剣だ
初めて見るそれに思わず見とれてしまう
- 27
名前:はぐれVIPPER :2006/11/24(金) 12:17:03.58 ID:CW2xQYnn0
- (,,゚Д゚)「その様子じゃあ知らないようだな…」
('A`)「……」
男は蓋を閉じるとまた鍵を閉めはじめる
何となくその人に危険は無さそうに感じたから、意を決して聞いてみる事にした
('A`)「あ、あの…いいですか?」
(,,゚Д゚)「ああ、何だ?」
('A`)「ここはどこなんですか?」
聞いてから、しまったかな…と思う
思いっきり怪しんだ目で見られたからだ
(,,゚Д゚)「ここはVIPだが……お前、何だ?記憶喪失にでもなったのか?」
(;'A`)「違うんです!俺は…」
ドクオは話した、自分が帰り道で変な光を見つけた事、それに触れたら光が溢れ気づいたらここに居た事など
その間男は黙って聞いていたが、話が終わると
_,
(,,-Д-)「……」
うーんと何か考え込んでしまった
- 28
名前:はぐれVIPPER :2006/11/24(金) 12:18:41.57 ID:CW2xQYnn0
- しばし沈黙
(,,゚Д゚)「…まあいいか、とにかくお前は迷子で行くあてが無いんだな?」
顔を上げると、急に明るく話し出した
何だかすごく適当な解釈をされた気がする
('A`)「あー、と…そう…なりますね」
(,,゚Д゚)「そうかそうか…なら何か分かるまではここに住むといい、うんそれがいい」
…へ?なんて顔をしてる内にどんどん話が進んで行く
(,,゚Д゚)「部屋はここでいいだろう、中は好きにしてくれていいからな!」
何でしょうこのトントン拍子、強引ってレベルじゃ(ry
(,,゚Д゚)「そうそう忘れてた俺はギコ、ここの家主だ…君の名は?」
(;'A`)「…ドクオです、でもあの俺…!」
(,,゚Д゚)「ドクオか、ははは気にすることは無いぞちゃんと俺も帰る方法は探してやるから」
(,,゚Д゚)「さて、そろそろ昼飯でも作るか!ちょいと材料でも買ってくるかぁ…
じゃ用意できたら呼んでやるから大人しく待ってろ」
そういうとギコはさっさと部屋から出て行ってしまった
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名前:はぐれVIPPER :2006/11/24(金) 12:22:43.47 ID:CW2xQYnn0
- (;'A`)「えぇぇー…?」
なんか強制的にここに住むことになってしまった、開いた口が塞がらないとはこの事か
でも…
('A`)「そうするしかない…のかなぁ?」
ハァと溜息が出た、本当になんでこんな事に…
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名前:VIP皇帝 :2006/11/24(金) 12:25:08.75 ID:CW2xQYnn0
- ―――屋外
家から少し離れた場所、ギコはドクオが居る部屋を見ている
(,,゚Д゚)「次元空間へのアクセス…実在したのか…?」
「それとも、やはりあの剣が呼んだのか?お前のように…フサギコ…」
…誰かに語りかけるように呟くと、ギコはその場を立ち去った
一話終
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