995 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/04(土) 19:26:12 ID:gslfhTKcO

 ――3人殺害――17歳――1年半に渡るいじめ――情状酌量――


<_プ−゚)フ

 テレビ画面を見つめる。

 事件そのものより、「犯人」が受けてきたいじめばかりが
 クローズアップされているように思う。

 キャスターが、「いじめていたグループ」と書かれたフリップを出した。
 青い、人型のマグネットが4つ付けられている。
 3つのマグネットが被害者という枠に移動させられた。

 残った1つは、エクストだろう。

『この生徒は元々加害者の少年と親しく――』

 キャスターはエクストのマグネットを指し、彼が殺されなかった理由を話し始めた。
 ヒッキーとエクストの証言を軸にしてはいるが、キャスターの憶測も含まれたもの。
 時折見当違いなことを言う。

 けれど、真実を知る者などヒッキーとエクストぐらいしかいない。
 無関係な人々は、各自で好き勝手に想像するより外ないのである。

 未だ開けられぬチョコレート菓子の箱を見下ろして、エクストは目を伏せた。



番外編 あな危なっかしや、サスペンス小説 その後

996 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/04(土) 19:26:37 ID:gslfhTKcO

<_プ−゚)フ

 ひそひそ。こそこそ。
 すれ違う生徒達が、エクストを見て何か話している。

 あの事件に関することであろうと、考えずとも分かる。

 生徒も教師も、エクストへの扱いが以前と変わった。
 ある者は腫れ物に触るように。
 ある者は汚いものを見るような。

 孤立する。
 独りきり。

 ヒッキーは、これに加えてフォックス達からの暴力もあったのだ。
 どんなに辛かったことだろう。

<_プ−゚)フ「……」

 あてもなく廊下を歩く。
 今は昼休み。
 誰の目もないところで、時間を潰したい。

('(゚∀゚∩「エクスト君だよ!」

<_プ−゚)フ「あ」

 突然声をかけられた。
 クラスメートの、なおるよという少年。

 最近やたらと彼に話し掛けられる。

('(゚∀゚∩「エクスト君、どこに行くんだよ?」

<_プ−゚)フ「別に、どこってわけじゃないけど」

997 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/04(土) 19:26:56 ID:gslfhTKcO

('(゚∀゚∩「僕は今から自販機でジュースを買うんだよ! 一緒に行くよ!」

<_フ;゚−゚)フ「は? ちょ、」

 腕を引っ張られる。
 つんのめったエクストは、慌てて体勢を立て直した。
 それにも構わずなおるよがどんどん歩いていくので、仕方なくついていく。

 昇降口前の自動販売機に到着すると、なおるよは缶ジュースを2本購入した。
 その内の1本をエクストに渡す。

<_フ;゚−゚)フ「?」

('(゚∀゚∩「あげるよ!」

<_フ;゚−゚)フ「……あ、ああ。サンキュ」

('(゚∀゚∩「いいよー」

 ぱしん。なおるよがエクストの背中を叩いた。

('(゚∀゚∩「エクスト君、よくヒッキー君にジュースあげてたよ」

<_フ;゚−゚)フ「え」

 見ていたのか。
 驚くエクストに、なおるよが「何度か見たよ」と頷く。

('(゚∀゚∩「フォックスが恐くて、僕はヒッキー君に何もしなかったよ。
      でもエクスト君はヒッキー君を励ましてあげてたんだよ。
      ……僕、自分が恥ずかしくなったよ」

998 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/04(土) 19:27:49 ID:gslfhTKcO

('(゚∀゚∩「エクスト君。きっとヒッキー君は嬉しかったんだよ!」

<_プ−゚)フ

<_プ−゚)フ「……うん、分かってるよ」

 プルタブを引くと、小気味よく弾けるような音がした。
 缶の中身を口に含む。

 美味しい。
 以前、同じものをヒッキーに奢った気がする。

 ヒッキーはありがとうと言って笑っていた。
 あのとき、彼も、こんなに美味に感じたのだろうか。

('(゚∀゚∩「嬉しかったから、ヒッキー君はエクスト君に何もしなかったんだと思うよ!」

<_プー゚)フ「うん。……ありがとう」

 何だか自分を見ているようで気恥ずかしくなり、エクストは顔を逸らした。
 口元が緩む。





 ――家に帰ったら、菓子の箱を開けてみようと思った。
 自分がヒッキーに与えた味が、知りたくなった。



番外編 終わり

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