- 108 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:39:18 ID:SAqEqcAIO
('A`)「……返事来ないな……」
万年床の上で、ドクオは携帯電話を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返していた。
恋人からメールが来ない。
('A`)「忙しいのかな……それとも、やっぱり嫌だったかな」
不安がぐるぐる巡る。
そうだ、そもそも自分が彼女と付き合えたことからしておかしいのだ。
綺麗で、凛としていて、真っ直ぐな人。
高校生のときに一目惚れしてから、ずっと好きだった。
彼女の好きなところなら、いくらでも挙げられるが――
('A`)(……クーさんは俺なんかのどこが良かったんだろう……)
自分には、人に好かれるようなところなどないように思える。
考えれば考えるほど、何だか悲しくなった。
- 109 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:39:42 ID:SAqEqcAIO
第六話 あな優しや、SF小説・後編
.
- 110 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:41:36 ID:SAqEqcAIO
12月23日。夜。
アパートの一室。
( ∵)「……」
川 ゚ -゚)「……お口に合いましたでしょうか」
( ∵)「ええ。はい。美味しいです」
生姜焼きを飲み込み、ビコーズは頷いた。
クールが、ほっと息をつく。
――昨日に引き続き、今日も学校に行かせてもらえなかった。
四六時中監視されるというのは、きついものがある。
手足が自由になるのはトイレに行くときぐらいで、
それ以外は同じ体勢で転がされてばかり。
しかし不思議と体への負担はない。辛いのは精神面だけだ。
- 111 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:42:54 ID:SAqEqcAIO
川 ゚ -゚)「御主人様の好み通りの味付けにいたしました」
( ∵)(……もう少し薄味の方が好きなんですが、『設定』じゃ濃いめのが好みなんですかね)
クールは昨日から今朝にかけての間で、
腹が減る、喉が渇く、便意を催す、という生理現象を粗方理解したようだった。
物を食べる度、飲み込む度、トイレに行く度、泣きそうな顔をする。
自身に起きる矛盾を処理しきれていないのだろう。
その表情を見ると、哀れに思えてしまう。
自分が受け持つ生徒達と大して歳の変わらないクール。
認めたくはないが、多少の情が沸いても仕方あるまい。
川 ゚ -゚)「お味噌汁……」
( ∵)「ああ、どうも」
現在、ビコーズはテーブルの前に座らされている。
テーブルに並ぶのは、生姜焼きをメインに据えた至って普通の家庭料理。
クールが一口ずつ箸で運んでくれる。
- 112 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:43:53 ID:SAqEqcAIO
( ∵)「あなたは食べないんですか」
川 ゚ -゚)「……クールは、先程おにぎりを食べました」
( ∵)「そうですか」
また辛そうな顔だ。
美味しいですよ、とビコーズは話を逸らした。
川 ゚ -゚)「どんどん食べてください」
( ∵)「はあ」
川 ゚ -゚)「食事の後はお風呂に入りましょう」
( ∵)「いや、いいです、大丈夫です」
川 ゚ -゚)「昨日も入られなかったではありませんか」
( ∵)「昨日は朝に入った……入ったっつうか入れられましたから」
川 ゚ -゚)「今日はまだ入ってませんでしょう」
( ∵)「一日ぐらい入らなくても死にません平気です大丈夫です結構です」
川 ゚ -゚)「クールは、御主人様の裸を見ても何とも思いませんよ」
( ∵)「……それはそれで」
- 113 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:44:58 ID:SAqEqcAIO
そういえば、この家に来てからクールは一度も風呂に入っていない。
着替えてもいない。
( ∵)(いい匂いするから気付きませんでした)
果たして、その辺りのことを指摘してもいいのやら。
入ったとしても着替えがない。
服はビコーズのもので何とかなるにしても、下着の問題もあるし。
( ∵)「んー……」
そのとき、インターホンが響いた。
クールが、はっと顔を上げる。
川 ゚ -゚)「……」
( ∵)「……人が来ましたよ」
川 ゚ -゚)「御主人様」
( ∵)「……」
- 114 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:45:58 ID:SAqEqcAIO
ぴんぽん。間の抜けた音。
ここで大声を出せば、客人が異常を察してくれるのでは。
ビコーズが咄嗟に口を開いた――
川 ゚ -゚)
(;∵)「ぅぐ、ぇ゙っ!?」
瞬間。
クールの腕が、ビコーズの首に巻きついた。
スリーパーホールド再び。
(; .)(……手際良すぎ……)
*****
- 115 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:46:54 ID:SAqEqcAIO
(´・ω・`)「は? 何? クーちゃん?」
『素直クール。女子大生だお』
事務所のソファに横たわりながら、ショボンは携帯電話を耳に当てていた。
電話の相手は内藤。
素直クールという女性を探してほしい、とのことだ。
(´・ω・`)「舞台は主人公の家なんでしょ? じゃあ、そこ行きゃいいじゃない」
『だから、その主人公が誰だか分かんないんだお』
(´・ω・`)「面倒だなあ……クーちゃんってのは、いつから行方不明なのさ」
『本に触ったのは2日前――21日らしいお。
ちなみに、そのとき彼女はシャキンさんの店にいたお』
(´・ω・`)「……はあ。そう。21日に」
体を起こして、卓上カレンダーを見る。
素直クールの特徴を聞き出し、携帯電話を閉じた。
顎を撫でる。
(´・ω・`)「――なるほどね」
- 116 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:48:37 ID:SAqEqcAIO
(゚A゚* )「所長ー、もう上がってもええ?」
(´・ω・`)「おう、帰れ帰れ無能共」
N| "゚'` {"゚`lリ「酷いこと言ってくれるじゃないの」
(゚A゚* )「ニダやん帰んでー」
<ヽ`∀´>「何をさも当然のように一緒に帰ろうとしてるニカ」
荷物を纏めて帰宅の準備をする所員達。
ショボンは、ごみ箱へ目をやった。
(´・ω・`)「無能共」
N| "゚'` {"゚`lリ「何だい、独り寝が寂しいなら付き合うぜ」
(´・ω・`)「お断りします。
……お前ら、差し入れは美味かったか」
(゚A゚* )「ああ、めっちゃ美味かったわ、モンブラン。なあ、阿部のおっちゃん」
N| "゚'` {"゚`lリ「俺が食ったのはアップルパイだったな。美味かった」
- 117 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:51:04 ID:SAqEqcAIO
<ヽ`д´>
(゚A゚* )「何やニダやん、その顔」
<ヽ`д´>「ウリだけ……ウリの分だけなかったニダ……。
この事務所で一番甘党のウリに……」
(´・ω・`)「あれ、お前甘いの好きだったっけ」
<#`∀´>「大好きニダ!」
(´・ω・`)「キムチでも食ってろ」
<#`∀´>「辛いの苦手ニダ!」
N| "゚'` {"゚`lリ「おいアイデンティティ」
(゚A゚* )「はいはい。ウチの家に来たら、たらふく甘いもん食わしたるでー。
甘いもんと言わずウチまでも」
<ヽ`∀´>「のーちゃんはウリの飲食物に睡眠薬とか混入してくるから遠慮しとくニダ……」
(゚A゚* ) チッ
ショボンは舌先を軽く噛み、昼に食べたショートケーキの味を思い返した。
苺は少々酸っぱかったが、クリームや生地は文句なしに美味だった。
(´・ω・`)「……美味かったか」
(´-ω-`)「そうか。なら――仕方ないな」
*****
- 118 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:52:22 ID:SAqEqcAIO
(;-@∀@)「でさ、すっごく綺麗な女の人が出たんだって!」
ζ(゚、゚;ζ「ええー。意外ですね」
(;-@∀@)「だよね!」
24日。
相変わらずビコーズはやって来ない。
デレが図書室へ行くと、いきなりアサピーが「聞いて聞いて」と話を始めた。
昨夜、ある教師がビコーズの家を訪ねたところ、
若い女性――それも美人――が応対したのだそうだ。
女性は、ビコーズは熱を出して寝込んでいると言い、すぐにドアを閉めてしまったという。
(;-@∀@)「そりゃあビコーズ先生独身だし、恋人いるのが悪いわけじゃないけど。
かなりの美人だったらしいよ。しかも若い!」
身振り手振りでアサピーが驚きを表現する。
凄まじい衝撃だったようだ。
(;-@∀@)「でもビコーズ先生、女運ないから一生独りでいいとか言ってたのになあ」
ζ(゚、゚*ζ「女運?」
- 119 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:53:36 ID:SAqEqcAIO
(-@∀@)「去年の忘年会で独り者ばっかり残ったときに聞いたんだけどさ――」
*****
( ∵)『昔……昔っつっても十何年か前なんですが、先生に初めて恋人が出来ましてね。
大学生のとき。いやあ若かった。酔った勢いで付き合ったんですよ。
先生なんかにゃ勿体ないくらい綺麗な人でした。顔と体だけはね』
(-@∀@)『はあ』
( ∵)『けども、まあー我が儘我が儘。
しかもうるさいんです。ぴいぴいぎゃあぎゃあと』
( ∵)『んで、向こうも先生みたいな男は嫌いだったらしくて。つまらないってね。
こんっなに優しくて誠実で完成され尽くした人間が嫌いだなんて変わった人ですよね』
(;-@∀@)『え? 優し……え?』
( ∵)
(;-@∀@) ナンデモアリマセン
- 120 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:55:32 ID:SAqEqcAIO
( ∵)『いやはや、その場のノリで付き合うもんじゃありませんね。若気の至り若気の至り。
一ヶ月過ぎた頃には、2人共嫌悪感しかありませんでした』
(-@∀@)『別れたんですか?』
( ∵)『当たり前でしょう。
デートの待ち合わせ場所で互いにプロレス技かけ合って別れましたよ』
(;-@∀@)『プロレス!?』
( ∵)『その後2人ぐらいと付き合いましたが、全部ろくな女じゃありませんでした。
1人目に比べりゃマシでしたけど』
(;-@∀@)『……類友……』
( ∵)
(;-@∀@) ナンデモアリマセン
*****
(-@∀@)「――って」
ζ(゚ー゚;ζ「それは何とも……ビコーズ先生らしい……」
- 121 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:57:07 ID:SAqEqcAIO
(;-@∀@)「だよねえ。
いや僕としては、あの人が女性と付き合ったことある方が驚きだったけど」
ζ(゚ー゚*ζ「そう言うアサピー先生はどうなんですか? 恋人とか結婚とか」
(-@∀@)
(@∀@-)
::(∀@- )::
ζ(゚ー゚;ζ「あっ、ごっ、ごめんなさい! ごめんなさい!!」
*****
- 122 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:58:04 ID:SAqEqcAIO
――黒板。
黒板に、白色の文字が綴られる。
川 ゚ -゚)
('A`)
かつかつ、チョークが音を立てた。
かつかつ。こつこつ。
しゅるり、句点を描いて、彼はチョークを置いた。
うん、合ってるよ――教師が頷く。
一番前の席に座っているお調子者が、やるじゃんドクオ、と彼を冷やかし、
ドクオは照れ臭そうに笑った。
- 123 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:59:11 ID:SAqEqcAIO
高校2年の、古典の時間だったように思う。
教師が黒板に書き付けた古文に、指定された生徒が訳を加える、そんな場面。
クールの隣の席にドクオが戻ってくる。
目が合うと、ドクオはほんのりと顔を赤く染めた。
川 ゚ -゚)『……お疲れ』
(*'A`)『えっ』
いつもはしないのに、この日に限り、クールはドクオに労いの言葉をかけた。
こくこく、ドクオが何度も首を振る。
――字だけは綺麗だよね。
後ろの方から、女生徒同士の囁きと笑い声が聞こえた。
ドクオを馬鹿にするものだったが、クールは心の中で、こっそり同意した。
教師が黒板に解説を足していく。
ドクオの文字に教師の文字が被さる。
それが、ひどく煩わしく感じられた。
すらりと整って、どこか優しく見える、ドクオの字。
クールはノートをとるのも忘れ、ずっと黒板を見つめていた。
- 124 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:00:06 ID:SAqEqcAIO
川 ゚ -゚)『古典のノート貸してくれ』
(*'A`)『え』
休み時間、クールはドクオにそう言った。
真っ赤になる彼に、風邪か、と問うと、違うけど、と小声で返された。
川 ゚ -゚)『さっき、ぼんやりしてしまってノートをとり損ねたんだ。写させてほしい』
(*'A`)『……う、うん。いいよ』
ドクオがノートを手渡してくれる。
ありがとうと礼を言い、ノートを開いた。
黒板に書いたものよりは多少崩れていたが、それでも尚綺麗で、見とれた。
無意識に指先でなぞる。
これまでまったく気にしたことのなかったドクオが、クールの中に居座った瞬間だった。
度々、宿題などを忘れたふりをしては、ドクオにノートやプリントを見せてもらった。
席替えをしてからは借りられなくなったが、気付けばドクオを目で追う日々。
クラスが変わっても、廊下で見かけるのが楽しみだった。
何度か男子生徒に告白されたが、その都度ドクオの顔が脳裏を過ぎった。
何故かは分からぬまま、断る。
- 125 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:00:50 ID:SAqEqcAIO
――今年の夏。
講義室。目の前に立つドクオ。
(;*'A`)『……』
川 ゚ -゚)『……』
「好きです」。綺麗で、だけど、震えた字。
自分だけに向けられた言葉。文字。
ドクオが好きなのだと気付いたのが、そのとき。
何だか泣きそうなぐらいに嬉しくて。
川 ゚ー゚)『……うん』
けれど泣いてしまったらドクオがびっくりしてしまうだろうから。
誤魔化すように、笑った。
*****
- 126 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:01:53 ID:SAqEqcAIO
川 ゚ -゚)
視界が変わる。
頬に布の感触。
慌てて起き上がった。
( ∵)「……寝てるところを初めて見ました」
隣にビコーズが転がっている。
クールは、頭を押さえた。
つい先程の夢が遠ざかる。
目が覚めた傍から、記憶が離れていく。
――夢。夢?
川 ゚ -゚)「……クールは、寝ていましたか」
( ∵)「寝てましたよ。もう昼前です」
川 ゚ -゚)「ロボットは……眠りません……」
( ∵)「……そうですか」
- 127 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:04:03 ID:SAqEqcAIO
俯く。
どうして、腹が減る。どうして眠くなる。
ロボットなのに。
さっきのは何だ。
男が――男が、夢の中にいた気がする。大事な人。
川; - )「……っ」
一昨日出会った少女が脳裏に浮かぶ。
あのとき頭を掠めた映像は何なのだ。
( ∵)「クールさん?」
川; - )「御主人様……」
ビコーズの胸に額を擦りつけ、しがみついた。
御主人様。クールの御主人様。
傍にいなければならないのに。
ここにいてはいけない気がしてならない。
*****
- 128 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:05:38 ID:SAqEqcAIO
(;^ω^)「一体どれだけ請求されるかお……」
赤信号。車を停める。
内藤はハンドルに凭れかかった。
シャキンの話では、素直クールが本を手にしたとき、
店内には数人の客がいたらしい。
その中の誰が主人公に選ばれたのか、内藤にはさっぱり分からない。
早々に自分で調べるのを諦めた内藤は昨夜、ショボンを頼った。
彼ならすぐに調べ上げてくれるだろう。
しかし唯一にして最大の問題がある。
依頼料だ。
助手席でツンが溜め息をつく。
ξ゚听)ξ「今回は手掛かりが少ないからね。かなり高額になるんじゃないかしら」
(;^ω^)「だおね……」
ξ゚听)ξ「ショボン以外の誰かには頼まないの?」
(;^ω^)「僕はショボンの腕だけは信用してるんだお」
ツンは、そう、と返し、目を閉じた。
信号が変わる。
- 129 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:07:14 ID:SAqEqcAIO
万が一を考慮し、こうして内藤もクールを探している――のだが。
彼に出来るのは、せいぜい、キュートが姉を見かけたという道の近辺を
うろちょろするぐらいである。
(;^ω^)「……おー……でも、明日までには何とかしないといけないんだおね」
ξ-听)ξ「明日?」
(;^ω^)「デレちゃんとのデートがあるお。
彼女なら、きっとキュートちゃんや『クーちゃん』のことを気にして
デートに集中出来なくなるに違いないお」
ξ゚听)ξ「ああ、デート」
(;^ω^)「デレちゃんったら真面目でお人よしなんだから……」
ξ゚听)ξ「……ブーンは、ここのところ、デレの話ばっかりね」
言って、ツンは指先で口を押さえた。
眉間に皺を寄せる。
(;^ω^)「お? 何か言ったかお?」
ξ゚听)ξ「いえ、何でもないわ」
ξ--)ξ「――何でもないの。本当に」
*****
- 130 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:09:27 ID:SAqEqcAIO
ζ(゚ー゚*ζ「あっ」
( ^ν^)
昼過ぎ。
図書館へ行ったデレを待っていたのは、ニュッだった。
待っていたというより、ただそこにいただけだろうが。
ζ(゚ー゚*ζ「ニュッさんだ!」
本を読んでいるニュッにデレが駆け寄る。
ニュッは一度視線を上げたが、顔を顰め、すぐに本へ意識を戻した。
ζ(゚ー゚*ζ「他の方はいないんですか?」
( ^ν^)「俺じゃ不満かよ」
ζ(゚ー゚;ζ「いやいや、お邪魔しますって電話したときモララーさんが出たから、
てっきりモララーさんが相手してくれるのかと。
それにニュッさん本読むばっかで構ってくれないじゃないですか」
( ^ν^)「お前の相手をすることに、読書以上の価値がない」
- 131 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:12:29 ID:SAqEqcAIO
ζ(゚ー゚;ζ「価値がないって……何か心が痛い……。
……そういえばニュッさん、昨日キュートちゃんを、」
隣に座ったデレ。
ニュッは、右腕をデレの頭に乗せた。
そのまま掌を垂らし――
ζ(゚д゚;ζ「――はぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ! 鼻フック! 乙女に鼻フックやめて!!
痛い痛い! 指! おい!」
( ^ν^)「手頃なところにあったから、つい」
ζ(゚д゚;ζ「手頃て!!」
遠慮なしに鼻に突っ込まれた指。
デレは力ずくで引っこ抜き、向かい側へ逃げた。
せめてもの仕返しにニュッの足を蹴る。
睨まれたが、それ以上は何もしてこなかった。
- 132 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:14:06 ID:SAqEqcAIO
さて、することがない。
鞄からノートと教科書を出して、一応勉強するポーズはとってみる。
( ^ν^)
ζ(゚、゚*ζ
ζ(゚、゚*ζ(……暇)
少しばかり退屈ではあるが――存外、居心地は悪くない。
元々デレは静かな方が好きだ。
それに、今ニュッが読んでいるのは図書館の作家達が書いたものではなく
普通の市販されている本。
最近気付いたのだが、作家の本か市販の本かで、ニュッの集中力は随分変わる。
作家の本を読んでいるニュッにどれだけ声をかけようと反応はまず返ってこないが、
市販のものの場合、彼の意識は本以外にも向けられやすい。
ζ(゚ー゚*ζ
( ^ν^)「……何笑ってんだお前」
ほら、このように。
- 133 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:16:05 ID:SAqEqcAIO
ζ(゚ー゚*ζ「え? ……何ででしょう? 分かんないや」
( ^ν^)「気持ち悪い」
ζ(゚、゚*ζ「気持ち悪いって酷いなあ……もう、黙って本読んでてくださいよ」
呆れた目をされた。
ニュッは常に小馬鹿にしたような顔と態度でデレに接するので、
普段と同じといえば同じか。
楽しくなってきた。
馬鹿にされるのが、ではなく、2人きりでゆったりするのが。
何なら、しばらくこのままでもいい気がする。
.
- 134 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:17:26 ID:SAqEqcAIO
ζ(-、-*ζ
ζ(-、゚*ζ
――足に触れる感触で、目が覚めた。
瞼を持ち上げる。
視界に入ったのはコートの生地。
気付かぬ内に居眠りしていたようだ。
靴下越しに足を撫でられる。
傷跡の辺りをなぞられ、足が跳ねた。
ζ(-、゚;ζ(ん?)
待った。
誰だ。誰の手だ。
- 135 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:19:06 ID:SAqEqcAIO
耳を澄ます。下から微かに聞こえる、荒い呼吸。
ぼうっとしていたデレは、一気に覚醒した。
伏せていた頭を上げる。
ζ(゚д゚;ζ「ニュッさんの変態!!」
( ^ν^)
ζ(゚д゚;ζ「……あれ」
犯人だと思われたニュッは、真向かいに座っていた。
デレが眠る前に見たのとは違う本を持っている。
恐々、視線を落とした。
(;*゚ー゚) ハァハァ
ζ(゚、゚*ζ
よくよく考えれば。
こんなことをしそうのは、こいつか内藤しかいない。
- 136 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:20:38 ID:SAqEqcAIO
ζ(゚д゚;ζ「ぎゃあああああああ!!」
(;*゚ー゚)「アイザックッ!!」
デレの膝がしぃの顔面にめり込んだ。
顔を押さえ、テーブルの下から転がり出るしぃ。
ζ(゚д゚;ζ「何してんですかぁああ!」
(;*゚ー゚)「だってニュッちゃんを構いに来てみれば
デレちゃんがすやすや眠ってたもんだから、何か、むらっときて……。
足をすりすりもふもふ、略してアシモフしてやろうかと。SF作家だけに」
( ^ν^)「アシモフに謝れ」
ζ(゚、゚;ζ「それ言いたかっただけでしょ絶対!?
もふもふって何か剛毛みたいじゃないですか、ちゃんと処理してますよ!」
(*゚ー゚)「そこを気にするのか」
ζ(゚、゚;ζ「ていうかニュッさん、しぃさんに気付いてたんなら止めてください……」
( ^ν^)「寝てるのが悪いんだろ」
- 137 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:24:18 ID:SAqEqcAIO
ところで、と。
テーブルの下で、ニュッの足がデレの爪先を踏んだ。
( ^ν^)「お前は俺を、ああいうことする人間だと思ってたのか」
ζ(゚ー゚;ζ「……あ、あは……だって、さっきまでニュッさんと私しかいなかったし……。
つっ、爪先駄目! 爪先痛い! そこ小指ぎゃあああ!!」
(*゚ー゚)「あのねデレちゃん。ニュッちゃんにはそういう度胸ないよ」
( ^ν^)「度胸とかの問題じゃねえだろまとめて死ね」
けたけた、諸悪の根源が笑う。
自由すぎる。
デレが睨みつけてもまったく気にしない。
(*゚ー゚)「モララーが珍しくお茶の準備してたから何かと思えば、
デレちゃんが来るからだったのねん」
ζ(゚、゚;ζ「あ……モララーさん、どうしたんです?」
(*゚ー゚)「セクハラしてやったら泣きながら引きこもった」
ζ(゚、゚;ζ(ど、どんなレベルのセクハラされたんだろう……)
- 138 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:25:28 ID:SAqEqcAIO
色々と気になるところはあるが、それは一旦置いといて。
ニュッの隣に腰掛けるしぃを見たことで、昨日の会話を思い出した。
彼女の本に目をつけられたらしいキュートの姉、クール。
ζ(゚、゚*ζ「……クールさん、大丈夫でしょうか」
(*゚ー゚)「キュートちゃんのお姉さん? まあ……別に危険な話じゃないし――」
しぃの言葉は、突如流れたメロディに遮られた。
デレがポケットから携帯電話を取り出す。
ζ(゚、゚*ζ「? 誰だろ」
着信。
見知らぬ携帯電話の番号。
首を傾げながら電話に出ると、思いもよらぬ人物の声がした。
- 139 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:26:59 ID:SAqEqcAIO
『コール3回以内に出なさいな、お嬢さん』
ζ(゚、゚*ζ
ζ(゚、゚*ζ「おかしいな……ショボンさんの声が聞こえる気がする……」
『うん、みんなのアイドル、ショボちゃんだよ』
ζ(゚、゚;ζ「……ちょっと! 何でショボンさんが私の番号知ってるんですか!!」
『事務所の方に電話してきたじゃない、一昨日』
ニュッとしぃがデレを見る。
ショボンなの、としぃが訊ねてきたので、首を縦に動かして返事をした。
『どうせ図書館にいるんでしょ? とっとと出てきなさい。林の前で待ってるから』
ζ(゚、゚;ζ「え? え?」
『――「主人公」の家に連れてってやる』
*****
- 140 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:29:06 ID:SAqEqcAIO
夕方。
外が暗い。
窓からカレンダーへ視線を移し、ビコーズは溜め息をついた。
( ∵)「……24日。クリスマスイブですね」
これで無断欠勤も3日連続になる。
色々と恐ろしい。
川 ゚ -゚)「――クリスマス……」
( ∵)「はい?」
ぽつり、クールの口から呟きが漏れた。
振り返る。
川 ゚ -゚)「いえ。何でも」
( ∵)「……クリスマスに用事あるんですか? 恋人か友達とでも」
川 ゚ -゚)「……」
クールは、額に手をやった。
静寂。手を下ろす。
- 141 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:30:43 ID:SAqEqcAIO
――何かがある気がするのです、と、か細い声で囁いた。
( ∵)(……おお)
昼から彼女の様子が変だ。
食事や排泄に加え、睡眠まで体験して――気付き始めているのかもしれない。
限界なのかもしれない。
ついでに。
ビコーズも限界である。
( ∵)(どうして先生、こんな小娘の好きにされてんでしょうね)
現状に慣れた上、すっかり弱々しくなったクールを前にして、
段々いつもの調子が戻ってきた。
哀れに思う気持ちは依然ある。
情も沸いたまま。
――だからといって、怒りや焦りが消えるわけでもないのだ。
- 143 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:44:16 ID:SAqEqcAIO
( ∵)「……ねえクールさん、そろそろ外に出たいんですけど」
川 ゚ -゚)「……駄目です」
( ∵)「1人で出たら駄目なんでしょう。一緒に出ませんか」
川 ゚ -゚)「嫌です」
( ∵)「嫌って、子供じゃないんですから。恐いことなんかないですよ」
川;゚ -゚)「……嫌です!」
叫ぶ。床に手をついた。
ビコーズは一瞬身構えたが、包丁を持ってきそうにはない。
クールは己を疑っている。
誤魔化しようのない証拠だって、彼女が身をもって示している。
一昨日のような凶行に出る気力も見られない。
ここまで滅入っている彼女に付け込むのは気が咎めるが、
今なら、もしかしたら。
- 144 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:45:55 ID:SAqEqcAIO
( ∵)「……先生ね、先生なんですよ。……何か変な言葉ですね。まあいいや。
高校の先生なんです」
川;゚ -゚)「……」
( ∵)(おや)
「御主人様は画家ですよ」。
こう返されると思っていたが、意外にも彼女は黙りこくるだけだった。
やはり、認め始めているのではなかろうか。
( ∵)「今は冬休みでして、補習やることになってるんですよ。午前に1年生、午後に3年生。
なのにね、この3日、彼らを放置しちゃってんですよね。3日ですよ3日。
どんだけ教え込めると思います、3日間で」
( ∵)「いい子ばっかりなんですよ。
そんな彼らを裏切ってるようなもんなんです、今」
改めて口に出してみると、ああ、何ということだ。
事前に立てておいた予定やら、作っておいたプリントやら、全て無駄になった。
愛しい生徒達へ施す筈だった「教育」が、ぶっ潰された。
- 145 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:49:37 ID:SAqEqcAIO
( ∵)「たとえば1年A組の長岡デレという生徒。基本的に頭は悪いですが、努力はする子です。
1人で勉強したらろくに入らないけど教えられれば頑張れるタイプですかね。
基礎から学び直せば何とかなれそうなんです」
( ∵)「1年C組人生オワタ。これまたどうしようもない成績ですが頭自体は然程悪くない。
ただ、すぐ諦めちゃう悪い癖があるんです。
それさえ直せば平均以上にはいける筈です」
( ∵)「同じく1年C組斉藤またんき。彼は自ら補習を申し込んできた珍しい子です。
元々サボり魔でしたが、秋口にお母様がご病気で倒れられてから心を入れ替えました。
3年までに成績上げて資格取って、少しでも就活の幅を広げたいそうです」
( ∵)「それから1年D組――」
川;゚ -゚)
クールが止めないのをいいことに、ビコーズは矢継ぎ早に教え子について語り出した。
徐々にヒートアップしていく。
ただでさえ数日後には仕事そのものが休みになるというのに、
何故に今の内から家に篭っていなければならないのか。
生徒への教育を邪魔する権利など、クールにはない。
怒りが、言葉が、溢れ出た。
- 146 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:51:14 ID:SAqEqcAIO
(#∵)「――3年E組の田中ポセイドンは英語さえあと少し頑張れば希望大学も何とかなるし
山崎渉は成績上位者で正直鼻ほじりながらでも大学にゃ受かりそうですが
それでも油断なんかしない努力家だし3年F組の狐塚ギンは――」
川;゚ -゚)「ご、御主人様、あの、」
(#∵)「っあああああ! いい加減にしろ!!
なぁあにが『御主人様』だ! 美女に何と呼ばれようが、
教え子に『先生』って呼ばれる方が万倍嬉しいっつうの!!」
川;゚ -゚)「待ってください、チャイム……チャイムが、さっき」
(#∵)「あなたも深い事情がありそうですし可能なら何とかしてあげたいですがね!
ぶっちゃけ! ぶっちゃけ、あなたより生徒達の方が気掛かりなんですよ先生は!」
(#∵)「てめえに構ってるせいで生徒の成績や受験に差し支えがあったら
どぉおおしてくれんだよ!!」
川;゚ -゚)「……チャイム……」
- 147 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:53:14 ID:SAqEqcAIO
(#∵)「ていうかね、キュートさんのこと考えてあげてますか?
真面目な優等生……他の先生達は騙されてますが、あれ猫被ってますよね。
まあ猫被ってるのを差し引いても、いい子ですよ」
(#∵)「絶対心配してる筈だろうが! 親父さんは単身赴任中だったっけ?
お袋さんとキュートさんとあんたの3人暮らしだろ、今は。
申し訳ないと……」
ビコーズの口が止まる。
――キュートの名を出した途端、クールが頭を抱えて蹲ったのだ。
川; - )「っ、うあ……っ」
(#∵)「……おーい」
川; - )「……きゅ、ぅと……」
引き攣る声。
苦しげに呻く。
あまりにも辛そうで、ビコーズの怒りが萎んでいった。
( ∵)「……大丈夫ですか?」
恐る恐る声をかける。と。
――真横から、轟音が響いた。
*****
- 148 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:54:10 ID:SAqEqcAIO
その、少し前。
助手席にデレ、後部座席にニュッとしぃを乗せ、ショボンの車は走っていた。
しばし車内は沈黙に包まれていたが、気まずさに耐え兼ねたデレが
ハンドルを握るショボンにおずおずと疑問をぶつけた。
ζ(゚、゚;ζ「……内藤さんに頼まれたんですか? 主人公の家を探せって」
(´・ω・`)「まあ、依頼はされたね」
( ^ν^)「じゃあ兄ちゃんの方に教えてやれよ」
(´・ω・`)「いいじゃない、どうでも」
(*゚ー゚)「館長、まーた金ふんだくられちゃうのねー。ショボン最低ー」
ζ(゚、゚;ζ「お前が言うな」
(*゚ー゚)「やばいデレちゃんが本格的に冷たくなってきた」
- 149 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:55:17 ID:SAqEqcAIO
20分ほど経った頃、ごく普通の――かなり古そうではあるが――アパートの手前で、
車は停まった。
ショボンがメモ用紙と周囲の風景を見比べ、頷く。
(´・ω・`)「そこの奥……奈良場ビコーズの部屋だ。行ってらっしゃい」
ζ(゚ー゚;ζ「ビコ……っ」
ぎょっとした。
早く行けよとショボンがデレを押しやる。
ζ(゚ー゚;ζ「い、行ってきます……ありがとうございましたショボンさん!」
(*゚ー゚)「ショボンは行かんの?」
(´-ω-`)「ここで待ってる。これ以上の仕事は別料金になるからね」
(*゚ー゚)「?」
真っ先にデレが車を降り、ニュッもだらだらと後に続く。
しぃはショボンの言葉が気にかかったようだったが、すぐに降車した。
- 150 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:56:52 ID:SAqEqcAIO
1人残ったショボンは、腕を組み、アパートへ駆けるデレを一瞥。
小さく息をつく。
『ビコーズ先生――あ、私の学校の先生なんですけど』
『でも、昨日今日と続けて無断欠勤してるらしいんですよ』
『素直クール。女子大生だお』
『本に触ったのは2日前――21日らしいお。
ちなみに、そのとき彼女はシャキンさんの店にいたお』
過去に父から聞いた、ビコーズという常連。
彼とクールがラーメン屋で鉢合わせた可能性は充分ある。
そして何より、クールが行方不明になったのとビコーズが無断欠勤を始めたのはほぼ同時期。
ショボンの中では、確定したようなものだ。
朝方父に確認をとってみたところ、どんぴしゃり。
彼らは店内で会話まで交わしていた。
確認の後は、奈良場ビコーズの住所を調べるだけとなる。
実に楽な仕事だった。
(´-ω-`)「……余分に頂いた500円と、所員共への差し入れ分の働きはしましたぜ」
*****
- 151 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:58:13 ID:SAqEqcAIO
表札を見て、デレはしょっぱい顔をした。
奈良場。
ζ(゚、゚;ζ「うわあ……本当だ……」
( ^ν^)「どうした」
ζ(゚、゚;ζ「英語の先生なんです。
……だから学校来れてなかったのかな……えー、すごい偶然」
チャイムを鳴らした。
鳴らしたのだが、一向に出てくる気配がない。
――と、いうか。
ζ(゚、゚;ζ「……何か、騒がしくないですか。中」
(*゚ー゚)「喧嘩? どうしたんかな」
チャイムに気付けるのか怪しいほど、ドアの向こうが喧しい。
怒鳴り声に聞こえる。
ドアを叩き、直接声をかけた。
- 152 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:59:50 ID:SAqEqcAIO
ζ(゚、゚;ζ「すみませーん!」
(*゚ー゚)「ならばちゃーん、あーそーぼー!」
ζ(゚、゚;ζ「それで出てくんの小学生だけです! ……えっと、クールさーん、いますか!?」
( ^ν^)
うるせえなと言わんばかりの表情で、ニュッが耳を塞ぐ。
それと同時、隣の部屋のドアが開いた。
女性が現れ、じろり、デレ達を睨む。
从'ー'从「もう、うるっさいなあ〜。部屋の中から外から〜」
ζ(゚、゚;ζ「あう……ご、ごめんなさい」
表札を見るに、女性は渡辺というらしい。
渡辺は、ビコーズに何か用かと苛立ちを含んだ声で訊ねた。
ζ(゚、゚;ζ「私、ビコ……えと、奈良場先生の生徒でして。んっと」
(*゚ー゚)「私は奈良場先生の同僚です。
奈良場先生が3日も無断欠勤を続けているものですから、心配になって。
……このように部屋の中が騒がしいのですが、何かあったのでしょうか」
ζ(゚、゚;ζ(うわ、しぃさんが真面目だ)
- 153 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:00:34 ID:SAqEqcAIO
从'ー'从「……ふうん? 同僚さんなら、昨日の夜も来てたの聞いたけど」
(*゚ー゚)「今日も連絡が来なかったので」
从'ー'从「そう……ま、連絡しようにも出来ないらしいからね〜」
しぃがコートを着ていて良かった。
コートの下、無駄に露出の多い服を見られていたら信用されなかったに違いない。
頭を掻いた渡辺。
彼女は、極めて面倒臭そうに、とんでもないことを口にした。
从'ー'从「奈良場さんなら監禁されてるわよう」
ζ(゚、゚*ζ
ζ(゚、゚;ζ「――かん……っ」
从'ー'从「何かねえ、両手両足ふん縛られてるんですって〜。女の子に。
だっさいわねえ〜」
ζ(゚、゚;ζ「かかかかか監禁!?」
(*゚ー゚)「うっそー」
( ^ν^)「……どんだけ話が捻れてんだよ」
- 154 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:01:44 ID:SAqEqcAIO
从^ー^从「助け求められたけど丁重にお断りしちゃった」
(*゚ー゚)「随分クレイジーなお隣りさんだな……」
ζ(゚、゚;ζ「どっ、どうしましょう、ビコーズ先生がっ!!」
当然鍵はかかっていて、ドアはびくともしない。
通報しようかと思ったが、渡辺が言う「女の子」がクールならば、
警察を呼ぶのは避けたい。
クックルの本が引き起こした事件の記憶が蘇った。
キュートといいクールといい、お前ら姉妹は閉じこもるのが好きなのかと問いたい。
問い詰めたい。
ζ(゚、゚;ζ「……ニュッさん、ドアぶち破れます?
クックルさんみたいに足でとは言いませんから、こう、体当たりとか……」
( ^ν^)「……俺に死ねっつってんのか」
ζ(゚、゚;ζ「どんだけ虚弱なんですか」
( ^ν^)「うるせえお前がやれ」
ζ(゚、゚;ζ「や、やりますけど……期待しないでくださいね」
( ^ν^)「いや本当にやらなくていい」
助走をつけようとしたデレにチョップをぶちかまし、ニュッは溜め息をついた。
こうしている間にも、怒鳴り声――あるいは叫び声は大きくなっていく。
これを放っておいたら放っておいたで、ご近所さんに通報されてしまいそうである。
- 155 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:03:54 ID:SAqEqcAIO
从'ー'从「……ねえ」
ζ(゚、゚;ζ「は、はい? ああ、どうやったら出てくれますかね……」
从'ー'从「おいで」
ζ(゚、゚;ζ「え?」
渡辺が、デレの手を引いて自分の部屋へ戻った。
しぃとニュッは顔を見合わせ、慌ててついていく。
――部屋に入ると、隣室からの声は一層大きく感じられた。
何を言っているかさえ、くっきり聞き取れるくらいに。
从'ー'从「壁がねえ、うっすいのよ〜。古くてあちこちガタが来てるしね〜」
ζ(゚、゚;ζ「そ、そのようですね」
ビコーズの声。
キュート、という名前が出た。
やはり向こうにクールがいるのだ。
从'ー'从「……生徒さんと同僚さんが心配して来てくれるぐらいには、
他人との信頼関係築けてるのねえ、あの唐変木も」
ζ(゚、゚;ζ「は? ……あの、何持って……」
- 156 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:05:16 ID:SAqEqcAIO
ぶつぶつ呟きながら、渡辺はベッドの下から何かを取り出した。
長い棒状の、光沢のある――
(*゚ー゚)「……金属」
( ^ν^)「バット」
从'ー'从「こうもうるさいと私も仕事に集中出来ないし〜」
渡辺がバットを構える。
どの方向へって、それは勿論。
从'ー'从「特別ね」
ビコーズの部屋側の壁。
- 157 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:07:25 ID:SAqEqcAIO
踏み込み、バットが振られた。
完璧なフォーム。
デレの頭に、ホームラン、とかいう言葉が過ぎった。
从^ー^从「えーい☆」
凄まじい音を立て――壁に、穴があく。
从^ー^从「そおれ、にーい、さーん、しーい!」
何度かバットを振り続け、ついには人が抜けられそうな大きさへ。
こうも見事に壊れるものなのか。
デレとニュッ、しぃの3人は言葉を失っていた。
( ∵)
穴の向こうで呆然とする、ビコーズも。
- 160 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:08:54 ID:SAqEqcAIO
从'ー'从「あ〜すっきりした」
( ∵)「あんた何してんだ」
从'ー'从
从;ー;从「wwマwwwジwwでwwww縛られとるwwwwwwぷひーwwwwwww」
( ∵)「え、まさかこれ見るためだけにやったんじゃありませんよね?」
ζ(゚、゚;ζ「すみません、通らせてください! ビコーズ先生……ぶぎゃっ!!」
穴を潜り、デレはビコーズのもとへ転げ落ちる。
ビコーズは状況を一切理解出来ていないようで、デレを二度見どころか三度見した。
( ∵)「……生徒が恋しすぎて幻覚まで見始めたんでしょうか、先生は」
ζ(゚、゚;ζ「幻覚じゃないです、本物です。
大丈夫ですか? い、今、これ外します! えいっ!」
( ∵)「痛い痛い痛い締まってます締まってます。
わーい、この頭の悪そうな感じはたしかに長岡さんだー」
- 161 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:10:53 ID:SAqEqcAIO
川;゚ -゚)「何者だお前ら!」
(*゚ー゚)「はいはい失礼いたしますよーん。
ったく、何がどうなったらここまで物語と違う展開になるのやら……。
本はどこだ、本は」
デレのように落っこちないように気を付けながら、しぃは穴を抜けた。
クールが「出ていけ」と喚いたが、お構いなしに室内を歩き回る。
(*゚ー゚)「ここかにゃー?」
目についた鞄をひっくり返し、中身をぶちまけた。
ファイルやルーズリーフが床に散る。
本はない。
隣にあった別の鞄を掴む。
(*゚ー゚)「おっ」
その鞄を持ち上げると、陰から桜色の本が現れた。
見間違えようもない、しぃの本。
(*゚ー゚)「見っけ!」
- 162 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:12:56 ID:SAqEqcAIO
( ∵)「……長岡さん。どなたですか、あれ」
ζ(゚、゚;ζ「え、えっと」
从'ー'从「同僚じゃないの〜?」
( ∵)「知りませんよ、あんな失礼な人……っつつ、長岡さん優しく取ってください、優しく」
ζ(゚、゚;ζ「あっ、すみません」
本をめくって確認するしぃ。
ぱらぱらと流し読みし、ぱたり、閉じた。
(*゚ー゚)「ふうむ。ふうむ。本には異常なしだね。
おとなしく演じてりゃあ、さっさと終わってたものを……」
ζ(゚、゚;ζ「しょうがないじゃないですか、ビコーズ先生は何も知らないんですし……。
はい、取れました」
ベルト、ガムテープ、紐の全てを外し終える。
起き上がったビコーズは腕をぐるぐる回し、長い長い溜め息をついた。
( ∵)「ああ、助かりました。ありがとうございます長岡さん」
从'ー'从「私が壁を壊したおかげなのに〜」
( ∵)「大家さんから鍵を借りてくるって発想はなかったんですか」
从'ー'从「私あの大家さん好きじゃないし〜、苛々溜まってて発散したかったから〜」
( ∵)「とことん狂ってますね。修理代は勿論そちら持ちでお願いしますよ」
- 163 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:14:24 ID:SAqEqcAIO
さて、とビコーズはクールを見た。
声をかけようとしたのだが、その口は、結局何も言わずに閉じられる。
川 ゚ -゚)
床に転がった荷物。
その中にあった封筒を持ち、クールが固まっていたからだ。
数秒黙っていたクールは、封筒を開け、中から便箋を抜き取った。
綺麗に折り畳まれているそれを広げる。
誰も動く者はなく、場を静寂が包んだ。
川;゚ -゚)「――!」
時間にして1分ほど。
不意にクールが顔を上げる。
ビコーズと手紙を見比べ――さっと、血の気が引いた。
- 164 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:16:18 ID:SAqEqcAIO
川;゚ -゚)「な……あ……嘘……何……私、そ、そん……」
( ∵)「……どうしまし――」
川;゚ -゚)「すっ」
川;゚ -゚)「すみませんでしたぁああああ!!」
( ∵)「は?」
きっちりと、いっそ美しさすら感じるような。
土下座。
.
- 165 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:18:21 ID:SAqEqcAIO
川;゚ -゚)「なななな何だこれ、何なんだ、私は何してんだ!?
ど、どうしよう、犯罪じゃないか……!!
……うわあああっ、ごめんなさい! 申し訳ありません!」
がばりと上半身を起こし、クールは可哀相になるほど慌て出した。
かと思えば、ビコーズと目が合うなり再び土下座する。
頭を上げては土下座、を繰り返すクール。
脳震盪を起こすのではないかと、デレははらはらして堪らなかった。
(*゚ー゚)「何これ新手のヘッドバンギング?」
ζ(゚、゚;ζ「クールさん、落ち着いてください」
川;゚ -゚)「な、長岡さん……」
( ∵)「知り合いですか? ああ、そういや最近仲良かったですね長岡さんとキュートさん」
川;゚ -゚)「……キュート!」
青ざめていた顔が、さらに白くなる。
どうしよう――絶望しきった声が漏れた。
- 166 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:22:35 ID:SAqEqcAIO
ζ(゚、゚;ζ「……元に戻った、んですかね……? 演じ終わったんでしょうか」
デレがしぃを見上げる。
多分ね、と、しぃは曖昧に頷いた。
本の表紙を撫でる。
(*゚ー゚)「飽きたのかも」
ζ(゚、゚;ζ「飽きた?」
(*゚ー゚)「私に似て、飽き性な子が多いの。
あんまりにも思い通りにいかないから、見限ったんじゃないかなあ。
よっぽど強靭な精神してんだね、主人公の人。本の影響を全然受けないぐらい」
( ∵)「……何の話です」
ζ(゚、゚;ζ「えっ、あ、うう……と、とにかく今はクールさんを何とかしましょう!」
- 167 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:24:27 ID:SAqEqcAIO
――ひとまずクールを落ち着かせて。
しぃは、ビコーズとクールに謝罪した。
詳しくは言えないが、今回の事件は自分のせいだと。
クールの頭がおかしくなったわけではないので、警察も病院も勘弁してやってほしい。
しぃがそう告げると、ビコーズは腑に落ちないながらも、
面倒事は嫌ですから、と頷いた。
(*゚ー゚)「悪いのは全て私です。責めるならどうか私を責めてください。
縛るなり蝋燭垂らすなり鞭で打つなり、前から後ろから責めてください。
お願いします! 早く!!」
ζ(゚、゚;ζ「しぃさんどんな責めを期待してるの!?」
从'ー'从「縄と蝋燭と鞭なら私の部屋にあるけど〜」
ζ(゚、゚;ζ「いいから! 持ってこなくていいから! ……何で持ってるの!?」
( ∵)「コントしに来たんですか?」
- 168 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:26:48 ID:SAqEqcAIO
ζ(゚、゚;ζ「そういうわけじゃ……――と、とりあえず。
今回の件は、これで終わり……ってことで、いいでしょうか」
( ∵)「ええ、まあ、色々納得はいきませんが、もう何も害がないなら構いません」
川;゚ -゚)「……本当に、すみませんでした」
( ∵)「いいですよ。良くないけど。あなたのせいじゃないんでしょう」
(*゚ー゚)「そう、一種の催眠状態にあったようなもんでね。
悪いのは私。だから早くひん剥いて弄んでくれたまえ!!」
ζ(゚、゚*ζ「しぃさん……本気で黙って……」
(*゚ー゚)「うおお……デレちゃんの目が侮蔑を通り越して慈愛を湛えておる……」
- 169 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:30:03 ID:SAqEqcAIO
荷物を鞄に詰め込み、クールは立ち上がった。
コートを拾う。
川 ゚ -゚)「後で、改めて謝罪しに来ます」
( ∵)「結構です」
川 ゚ -゚)「します。――とにかく今は一度、失礼させてもらってよろしいでしょうか。
妹に謝らなければいけません」
( ∵)「早く行きなさいよ。うちの可愛い生徒を不安にさせているなんて許せませんので」
川 ゚ -゚)「……ごめんなさい。ありがとうございます。
絶対に来ますから――これ、預かっておいてください」
( ∵)「いいですって……真面目ですね。どうせ来るなら29日以降でお願いしますよ。
長時間みっちり説教してやりますから」
学生証を床に置く。
深々と頭を下げ、クールは駆け足で立ち去った。
川 ゚ -゚)「……あ、お風呂とトイレのこと、なるべく迅速に忘れますので」
( ∵)「言わんでいい」
- 171 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:32:13 ID:SAqEqcAIO
ドアが閉まると同時に、ビコーズは寝転がった。
ああ、だの、疲れた、だのと呻く。
从'ー'从「せめて年明けまではあのままで良かったのに〜」
( ∵)「ごめんです」
( ^ν^)「おい。帰るぞ」
ζ(゚、゚;ζ「あっ、ニュッさん。……もうっ、蹴らないでください!」
すっかり存在感をなくしていたニュッがやって来て、デレを足で小突いた。
今まで黙っていたのは、関わるのが面倒だったのか、女が多い状況に怯んでいたせいか。
まあ、どっちもだろう。
(*゚ー゚)「おう帰ろう帰ろう。ええっと、奈良場さん? この本は返していただきますね」
( ∵)「え? ああ、あなたのものなんですか? どうぞお好きなように」
言いながら、ビコーズの目がニュッへ向けられた。
視線が固定され、沈黙。
しばらくして、ビコーズは両手をぱしんと打った。
( ∵)「見覚えがあると思ったら、長岡さんの彼氏」
( ^ν^)「は?」
ζ(゚ー゚;ζ「ちょっ」
- 172 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:34:36 ID:SAqEqcAIO
( ∵)「ははっ、長岡さん似顔絵上手いんですね。似てる似てる」
(*゚ー゚)「似顔絵?」
( ∵)「前に長岡さんが提出した補習の課題に、この方の似顔絵が描かれてましてね。
その周りに『ばか』とか『おに』とか『もやし』とか『本の虫』とか――」
ζ(゚ー゚;ζ「あれは! ……だってニュッさんがっ」
( ^ν^)
ζ(゚ー゚;ζ「あっ、やだニュッさん、人がいるところで鼻フックはああああ!!」
*****
- 174 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:36:54 ID:SAqEqcAIO
全てが終わり、デレ達が帰ってからしばらく経って。
ビコーズは、壁の穴を見てげんなりした。
修理代は内藤とかいう男が出してくれるそうだ。
同僚を騙った女性から去り際に渡された名刺と、クールの学生証を見遣る。
( ∵)「あーあ。やだやだ。これ直るまで、あなたと半同居状態じゃないですか」
从'ー'从「着替えとか寝顔覗いたら、目潰すから〜」
( ∵)「んな気色悪いもん見たら潰されるまでもなく目が腐り落ちますよ」
从'ー'从「言いやがったな」
( ∵)「何か間違ってます?」
睨み合う。
渡辺が右手の親指を下に向けたのを合図に、両者はそっぽを向いた。
( ∵)「……まあ一応、ありがとうございます」
从'ー'从「ふーんだ。助けるのは今回だけよ〜」
从'ー'从「……昔、公衆の面前で私にプロレス技かけてくれた恨みはまだ忘れてないんだからね」
- 175 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:39:36 ID:SAqEqcAIO
( ∵)「お互い様でしょう、あれは」
从'ー'从「付き合ってきた男は大勢いたけど、
あんな別れ方したの、奈良場さんぐらいだわあ〜」
( ∵)「あれだけ全力で喧嘩したのも、あなたぐらいなもんでしたよ」
从'ー'从「懐かしい〜。
無愛想すぎてみんなから『能面奈良場君』って呼ばれてたのに、
あのときは鬼面のような形相で……」
( ∵)「マドンナ(笑)だった渡辺さんも、相当酷い面して怒鳴り散らしてましたね」
从'ー'从「思い出したら殺意沸いてきた」
( ∵)「奇遇ですね、先生もです」
从'ー'从
( ∵)
从'ー'从「今そっち行くから」
( ∵)「上等です、かかってきなさい」
从'ー'从「性の6時間ならぬ血塗られた6時間をお届けしてあげる〜」
( ∵)「一生忘れられない夜にしてさしあげま……おい待て金属バットは無しで」
*****
- 176 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:41:40 ID:SAqEqcAIO
――12月25日。午前11時。
クールは、駅前の喫茶店へ入った。
店員に待ち合わせをしていると告げ、店内を見渡す。
目当ての人物を見付け、そのテーブルへ移動した。
川 ゚ -゚)「ドクオ」
('A`)「あ」
川 ゚ -゚)「待ったか」
(*'A`)「う、ううん」
川 ゚ -゚)「そうか、良かった。――映画に行くんだったな」
(*'A`)「うん。ち、チケットは俺が持ってる……」
川 ゚ -゚)「……すまなかった、手紙の返事が遅れて」
(*'A`)「ん、いいよ。……ちょっと不安になってたけどさ。ははは……」
- 177 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:43:35 ID:SAqEqcAIO
川 ゚ -゚)「なあ、映画の後はどこに行く予定なんだ?」
んぐ、とドクオが詰まる。
面目ないといった表情を浮かべた。
(;'A`)「ごっ、ごめん……さっき気付いたんだけど、何も考えてなかった……」
川 ゚ -゚)「だろうと思った」
(;A;)「ごめんなしゃい」
川 ゚ -゚)「泣くな泣くな。――なら、適当な場所でご飯食べて、買い物にでも行こう」
(ぅA;)「買い物?」
川 ゚ -゚)「実はドクオへのプレゼントを用意出来なくてな。
どうせだったら、本人と一緒に選ぼうかと」
(*'A`)「い、いいよ、俺は」
川 ゚ -゚)「遠慮するな」
(*'A`)「うー……うん。じゃあ……よろしく」
- 178 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:44:13 ID:SAqEqcAIO
('A`)「でも本当、大したものじゃなくていいからね。
俺もあんまり良いもの選べなかったし」
川 ゚ -゚)「それこそ大したものじゃなくていい。書ければいいんだ、書ければ」
('A`)「……どうして……あの、日記帳なの? 欲しいもの」
川 ゚ -゚)「ん? ……ああ」
――クリスマスに、映画を一緒に観に行きませんか。
もしも予定が空いていましたら、メールで良いのでお返事下さい。
それと、欲しいものも教えて頂けたら嬉しいです。 ドクオ――
昨日。
ドクオからの手紙を読んだ瞬間、クールは「自分」を取り戻した。
相変わらず綺麗で、緊張して震えてて、どこか優しい文字。
愛しい人の愛しい文字が、クールを呼び起こしてくれた。
実際は、手紙を読んだのと「本」が諦めたのがたまたま同時だっただけなのだが。
クールが知る由もないし――知らなくていいことだ。
- 179 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:47:24 ID:SAqEqcAIO
川 ゚ -゚)「交換日記でもしようかと思って」
('A`)「交換日記? 古風だね。お友達とするの?」
川 ゚ -゚)「お前とだよ」
(;'A`)「……俺と!?」
川 ゚ -゚)「駄目か?」
('A`)「いや、文章書くの好きだし、全然構わないけど……どうして?」
川 ゚ -゚)「別に難しい理由なんかないよ」
川*゚ー゚)「――最初に惚れたのが、君の文字だったってのを思い出しただけだ」
ミセリに交換日記の話をしたら、また呆れられるだろう。
くつくつと笑い、クールはきょとんとするドクオの手を握った。
- 180 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:48:36 ID:SAqEqcAIO
(*'A`)「わ」
川 ゚ -゚)「夕方ぐらいになったら……君さえ良ければ、うちに来てくれないか」
(;*'A`)「えっ、く、クーさんの家!?」
川 ゚ -゚)「妹もいるが」
('A`)「あ、そうなんだ……」
川 ゚ -゚)「色々あってな、妹が拗ねてしまったんだ。
目一杯美味しい御馳走とケーキを用意して機嫌をとらなきゃいけない」
('A`)「俺なんかも一緒でいいの?」
川 ゚ー゚)「一緒がいい」
(*'A`)「……じゃあ、お邪魔します」
川 ゚ー゚)「ああ」
ドクオの手がじりじり熱くなる。
それが愛しいやら可笑しいやらで、クールは、また笑った。
*****
- 181 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:51:42 ID:SAqEqcAIO
( ∵)「クリスマスだし土曜日だし3日間音沙汰なしだったし、
てっきり誰も来てくれないと思ってたんですよ」
高校。ある教室。
全員、とまではいかないまでも、半分以上の生徒が補習に出席していた。
浮かんですらいない涙を拭うような仕草をして、ビコーズは「嬉しいです」と呟く。
プリントの問題を解く生徒達の肩を叩いて回る。
( ∵)「しかしクリスマスに補習って悲しいですね、君達」
\(;^o^)/(誰のせいで……!!)
(・∀ ・)「先生ー」
( ∵)「何ですか、またんき君」
(・∀ ・)「どうして顔に痣が出来てるんですか」
1人の男子生徒が、ビコーズの顔を指差した。
右の目尻と額に青い痣がある。
( ∵)「いやあ、躾のなってない猫……いや女豹がいましてね。……噛むかよ普通……。
一番痛いのは脇腹ですよ。踵が綺麗に決まりやがりましたから」
(;・∀ ・)「?」
- 182 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:54:15 ID:SAqEqcAIO
廊下側、一番前の席。
うんうん唸るデレの隣で、ビコーズは屈み込んだ。
ζ(゚、゚;ζ「もくてきご……ほご……」
( ∵)「長岡さん」
ζ(゚、゚;ζ「うひゃっ!?」
プリントに書かれた一文を指先で示す。
綴りが違うと告げると、デレは恥ずかしそうに消しゴムを手に取った。
しかし、そのまま固まってしまう。どこが間違いなのか分かっていないのだろう。
( ∵)「ここ。『a』じゃなくて『u』です」
ζ(゚、゚;ζ「あっ。ありがとうございます」
礼を言い、書き直す。
本当は綴りどころじゃないレベルで間違っているのだが、それは黙っておいた。
- 183 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:57:31 ID:SAqEqcAIO
( ∵)「……ねえ、長岡さん」
声を潜める。
ペンを止め、デレが耳を近付けた。
ζ(゚、゚*ζ「はい?」
( ∵)「あの本、何だったんです? ピンク色の」
ζ(゚、゚;ζ「え」
( ∵)「昨日変な人が持ち帰った本。……一連の事件の原因なんでしょう、あれ」
――返事は、なかった。
もごもごと口ごもり、俯いている。
どうせ答えてもらえないだろうと予想はしていたのだ。
ビコーズは腰を伸ばし、丸まっているデレの背中を叩いた。
( ∵)「言いづらい事情なのは分かりました。これ以上は訊きません」
ζ(゚、゚;ζ「すみません」
( ∵)「まあ――何をしようと、あなたの自由ですが。
あんまり危ないことに首突っ込まないでくださいよ」
ζ(゚、゚;ζ「……はい」
教壇に立ち、ビコーズは生徒達へ振り返った。
手を叩く。
( ∵)「さあて、皆さん、お時間です。答え合わせをしましょう」
*****
- 184 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:59:44 ID:SAqEqcAIO
15時。
駅の西口、クリスマスツリー前。
大勢の人間がごった返す中、デレは内藤を探した。
ζ(゚、゚*ζ(……デートかあ……)
少々、気が乗らない。
決して内藤が嫌なわけではないし、寧ろ誘われたのは嬉しい。
ただ。
ζ(゚、゚*ζ(……ツンちゃんは、どうするのかな)
内藤といえばツン。
デートをするなら、デレよりツンを選びそうなものだ。
それに、4日前――ツンは、明らかに嫉妬していたようだった。
あのとき、右手に覚えた痛み。
ほんの少し背中に走った悪寒。
もしもデレが本当に内藤とクリスマスを過ごしたら、ツンは何を思うのだろう。
いっそ辞退してしまおうか。
けれど、今更断るのは失礼が過ぎる。
- 185 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:00:50 ID:SAqEqcAIO
どうしよう、と悩みながら辺りを見渡したデレは、
浮かれたムードを圧倒するほど、巨大な負のオーラを放つ男を見付けた。
ζ(゚、゚;ζ
( ^"ν^)
ζ(゚、゚;ζ「……ニュッさん?」
ニュッだ。
寒い、うるさい、リア充死ね、などとぶつぶつ呟いている。
デレが声をかけると、物凄く不機嫌そうな顔で振り向かれた。
ζ(゚、゚;ζ「ひいっ」
( ^"ν^)
ζ(゚、゚;ζ「あ、あのう……何してるんです?」
( ^"ν^)「お前こそ何してんだよ」
ζ(゚、゚;ζ「デートの待ち合わせです」
一瞬、ニュッの表情がますます険しくなった。
すぐにそっぽを向いてしまったが。
- 187 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:02:47 ID:SAqEqcAIO
( ^ν^)「そうかよ」
ζ(゚、゚;ζ「あっ、デートっていっても内藤さんとですけど――」
( ^ν^)「……ああ?」
ニュッが再びデレに振り返る。
しばし考え込み、頭を掻きながら舌打ちした。
( ^ν^)「んだよ、くっだらねえ……」
ζ(゚、゚*ζ「?」
( ^ν^)「俺は兄ちゃんに無理矢理連れてこられた」
ζ(゚、゚*ζ「内藤さんに?」
内藤に連れてこられたニュッ。
内藤に待ち合わせ場所を指定されてやって来たデレ。
――あの日、何か企むように笑った内藤。
ζ(゚ー゚;ζ(……あー)
合点がいった。
思い起こしてみれば、「誰と」デートをするかは言っていなかった。
なるほど、たしかにくだらない。
- 188 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:04:12 ID:SAqEqcAIO
( ^ν^)「……」
ζ(゚、゚*ζ「ニュッさん、どこ行くんですか」
( ^ν^)「帰る」
踵を返したニュッだったが、一歩進むと足を止めた。
着信かメールの受信か、震えている携帯電話を取り出す。
開き、何か操作をして――溜め息。
( ^ν^)「……兄ちゃんだ」
ζ(゚、゚*ζ「内藤さん、何て?」
隣に並んだデレに、ニュッは携帯電話を渡した。
表示されているのはメール。
- 190 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:06:17 ID:SAqEqcAIO
いわく。
『今頃デレちゃんと遭遇していることだろう。
そしてニュッ君のことだから帰ろうとしているだろう。
そこで、指令を出す。
作家達とデレちゃんへのプレゼントを買ってくるように。
デレちゃんと一緒にじっくり選んできてほしい。
デートが終わったら、デレちゃん連れて帰ってきなさい。パーティするから。
荷物運ぶのが大変なぐらい増えたら、迎えに行くから連絡よろしく。
追伸
このツンたん可愛くない? 天使じゃない?』
ζ(゚、゚;ζ「デートっていうか、おつかい……」
添付されていた写真――トナカイの角を象ったカチューシャを着けたツン――を最後に、
メールは終了した。
面倒くせえ、と呟き、ニュッが歩き出した。
文句は漏らしても、どうせ言われた通りにするのだろう。
- 191 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:07:59 ID:SAqEqcAIO
ζ(゚ー゚*ζ「何にします? 貞子さんは……ホラー映画のDVDとか」
( ^ν^)「採用」
ζ(゚ー゚*ζ「やった! クックルさんはどうしましょう?」
( ^ν^)「恋愛映画のDVD」
ζ(゚ー゚;ζ「各ジャンルごとのDVDで済ませる気でしょニュッさん!!」
( ^ν^)チッ
ζ(゚、゚*ζ「もっと丁寧に考えましょうよ。
……んー、私からも、皆さんへのプレゼント準備しなきゃなあ。
一応、内藤さんにはネクタイ買ったんですけど。さっき」
いつもスーツ姿の内藤にあげるプレゼントとなると、ネクタイしか浮かばなかったのである。
ツンやニュッ達へのプレゼントは、内藤とのデート中に一緒に考えてもらうつもりだった。
まあ相手は変わったが、予定自体はそれほど変更せずに済んだか。
- 192 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:09:10 ID:SAqEqcAIO
( ^ν^)「別に気遣わなくていい……っつうか、
俺とお前からのプレゼントってことなんじゃねえの」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、そうなんですかね。じゃあ、お金半分出します」
( ^ν^)「いらねえ」
ζ(゚、゚*ζ「だって結構な出費になるでしょう?」
( ^ν^)「お前と違って金なら唸るほど持ってんだよ、こっちは」
ζ(゚ー゚;ζ「事実だから腹立つ! 痛っ、お財布でビンタしないで!
――あっ、そ、そういえば、私がまだ会ってない作家さんっていますか?
いるなら、その人にも買わなきゃ」
- 193 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:10:06 ID:SAqEqcAIO
( ^ν^)「……1人だけだな」
ζ(゚ー゚*ζ「1人……」
心臓が、大きく跳ねた。
(´・ω・`)『君が会っていない、「図書館の人間」がいるだろう?
そいつが一番の鍵』
デレが会っていない人間。
謎を暴く、一番の鍵。
その作家が鍵?
- 194 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:13:46 ID:SAqEqcAIO
ζ(゚ー゚*ζ「……今日のパーティで会えますかね。ついに全員とご対面なるか」
( ^ν^)「多分出てこねえと思う」
ζ(゚、゚*ζ「えー」
絶賛スランプ中で部屋に篭っているのだと説明された。
デレの声に落胆と安堵が混じる。
今日は、難しいことを抜きにして楽しみたい。
ニュッに携帯電話を返しながら、彼の顔を覗き込んだ。
ζ(゚、゚*ζ「……ニュッさんは何が欲しいですか?」
( ^ν^)「あ?」
ζ(゚ー゚*ζ「ニュッさんにもあげますから、プレゼント。やっぱり本ですかね。
でも何か面白みがないなあ」
( ^ν^)「悪かったな、面白みなくて」
ζ(゚ー゚*ζ「他に欲しいものとか食べたいものとかありません?」
( ^ν^)「あー……」
高価なものでも要求されたらどうしよう。
身構えたデレだったが、ニュッの答えを聞いて、ぽかんとしてしまった。
- 196 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:15:33 ID:SAqEqcAIO
( ^ν^)「チキンライス」
ζ(゚ー゚*ζ「え?」
( ^ν^)「お前が作ったやつ」
思わず立ち止まる。
数歩先を行ったニュッは足を止め、どうしたと視線で問い掛けた。
ζ(゚、゚*;ζ
――何か。何だ。何だろう。
よく分からないが、かなり嬉しい。
- 198 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:17:58 ID:SAqEqcAIO
( ^ν^)「行くぞ」
ζ(゚ー゚*ζ「……はい!」
ニュッに駆け寄る。
訝しむニュッを促し、歩みを進めた。
ζ(^ー^*ζ「作ります、いっぱい作ります!」
( ^ν^)「いっぱいは作らなくていいけどよ。……にやにやすんな気持ち悪い」
*****
- 199 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:19:12 ID:SAqEqcAIO
川д川「……どうしたの館長、いきなり体中掻きむしったりして……」
( ^ω^)「何か急にむず痒くなったお……」
川д川「?」
( ^ω^)「それにしてもニュッ君達、今頃上手くいってるかお」
川д川「何も進展しないに煎餅5枚……」
ξ゚听)ξ「私も何も進展しないにクッキー10枚」
川д川「賭けにならないじゃない……」
(*゚ー゚)「大穴で、2人がホテルへ直行するにゼリー30個!」
(;゚;;-゚)ノシ
(*゚ー゚)「止めてくれるなでぃちゃん、ギャンブルは無謀さが大事なのだ」
ハハ ロ -ロ)ハ「ズールーイー! ワタシもニュッ君やデレとデートとかシーターイー!」
(;゚∋゚)「ハロー、俺を叩くな」
- 200 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:20:35 ID:SAqEqcAIO
( ・∀・)「あのニュッ君がデートかあ……大丈夫かな……」
ハハ ロ -ロ)ハ「ニュッ君ズルイ、デレもズルイー!」
(;゚∋゚)「だから叩くな!」
(;^ω^)「やめなさいハロー!」
(´・ω・`)「うるせえぞ眼鏡と筋肉。ねえブーン、酒飲んでいい?」
(;^ω^)「そんでお前は何でいるんだお! あとお酒駄目! 酒乱だろうが!」
(´・ω・`)「誰のおかげでしぃの本を回収出来たと思ってんのかな?」
(#^ω^)「……あっ、もしかして金取りに来たのかお!?
今回はいくら巻き上げるつもりだお!」
(´-ω-`)「いりませーん。先客から貰ってますー」
(#^ω^)「先客?」
(´-ω・`)「まあ少し割引しすぎたから、ブーンが金くれるってんなら貰いたいけどね。
モララー、シャンパン開けて」
( ・∀・)「はーい」
(;^ω^)「ばっ、駄目だおモララー! ショボン暴れるからぁああ!!」
*****
- 201 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:22:18 ID:SAqEqcAIO
o川;゚ー゚)o「……どうしようハイン。
身内がビコーズ先生にとんでもないことやらかしたみたい……」
『え、あの悪魔に? つか身内ってもしかしてお姉さん――』
o川; ー )o「冬休みなんて……冬休みなんて明けなければいいのに……!
お姉ちゃんの馬鹿ぁああ……!!」
第六話 終わり
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