( ^ω^)ブーンは偉い魔道士です
- 154 : ◆X5HsMAMEOw :2006/01/29(日)
15:18:17.38 ID:1+3uhbrI0
- 「試験って…なんだよ」
そいつは、不適に笑った。
まるで…そう。俺がその試験を受ける意味などないと言うかのような笑いだ。
その笑いを見た途端、背筋がぞくりとした。
「試験を始める前に、貴様の名前を聞かせてもらおう」
「名前? 俺は、炎堂……。炎堂ガルシアだ」
「ガルシアか。私は内藤ホライゾンだ。覚えておけ」
そいつ……内藤は俺の名前を聞くと、俺に背を向けた。
「試験内容は簡単だ。先ず、貴様に本当に資質があるのかを試させてもらう」
「なんだその、資質って……?」
「まあ、見ているがいい」
内藤はそういうと、腕を俺に向かってかざした。
刹那、俺の正面の花々が……焼ける。残ったのは、灰のみだ。
- 157 : ◆X5HsMAMEOw :2006/01/29(日)
15:26:30.13 ID:1+3uhbrI0
- 「なっ!?」
「私は貴様に資質を感じた。さあ、炎を出してみよ」
な、何言ってるんだこいつ!?
炎を出せ…!? 無茶苦茶だ! ファンタジーじゃないんだぞ!?
「それともう一つ。この試験には、制限時間がある」
「制限時間………だと!?」
「現世での貴様の肉体が消える前………つまり、貴様が火葬されるまでに試験を合格しなければ、貴様は死ぬ」
な………。
火葬されるまでが制限時間……だと?
俺は今日死んだ。
となると、後三日程度で俺は火葬されるのだろう。
制限時間は、…それしかない? それを過ぎれば、俺は死ぬ?
「無茶言え! 手から火が出るなんて、夢じゃないんだぞ!?」
「口答えはいらん。己自身で勝利をつかめ」
「お、おい! 待てよ!」
内藤はそういい残すと、俺の目の前から消えてしまった。
- 159 : ◆X5HsMAMEOw :2006/01/29(日)
15:36:49.97 ID:1+3uhbrI0
- 俺は呆然としていた…。
こんな訳の分からない所に放り出されて。
いきなり試験を受けろと言われて。
しかも制限時間は、俺が火葬されるまで?
さらに試験内容は炎を出せ??
――――無茶苦茶だ!
俺は苛立ちをぶつけるかのように、近くの花々をへし折った。
「くそっ………!」
俺は………これからどうなるんだよ!?
- 165 : ◆X5HsMAMEOw :2006/01/29(日)
15:41:41.60 ID:1+3uhbrI0
- ……ぼさっとしていても仕方がない。
こうしている間にも、時間は過ぎているんだ。
俺は立ち上がり、「試験」とやらを開始する事にした。
先程、内藤がしたように手をかざしてみる。
そして、そこに気を集中させ………放つ!
「とうぁ!」
………だが、静寂。
俺の手からは、何もでない。
…あたりまえだ。そんな、魔法みたいな事を出来る人間なんて、いやしない。
俺は諦めたように、花の上に寝転ぶ。
「あーあ……。俺、やっぱ死ぬんだなぁ」
俺はそのまま、眠りについた。
- 167 : ◆X5HsMAMEOw :2006/01/29(日)
15:47:36.18 ID:1+3uhbrI0
- ……どれほどの時が過ぎたのだろう。
俺は…寝ていたのか。
ゆっくりと体を起こす。
目に入る光景は……一面の花畑だ。
「試験中の居眠りか…。結局、何分くらい寝てたんだろう」
俺は大きなあくびをする。
眠気がすっかり覚めた。どこかで顔でも洗いたいものだ。
―――そういえば、ここに来た時に川が見えたよな。
あの川に行って、水で顔洗ってさっぱりするか。
別に、顔洗うくらいなら平気だろう。
俺はそう決めて小高い丘の上に登り、川を目指して歩いた。
- 168 : ◆X5HsMAMEOw :2006/01/29(日)
15:55:30.06 ID:1+3uhbrI0
- 川までの距離は、そう遠くなかった。
先程俺のいた場所から、徒歩で数分で着けた。
水がとても綺麗だ。
どうやら川はとても長く、地平線の果てまで続いている。
ここはどちらかと言うと上流らしく、水を飲んでも問題なさそうだ。
…にしても、変だな。
こんなに綺麗な川なら、魚とか虫とかいてもいいと思うんだがな。
川の中には、小石などもない。貯水庫を水が流れているような感じさえする。
「まあ、いいや」
俺は先ず、水を手に組み、顔を洗う。
水はとても冷たく、俺をしゃきりとした気分にさせてくれた。
次に、水を飲む。
だが…。
「ま、まじぃ!」
思わず、水を吐き出してしまった。
こんな綺麗なのに……なんて味なんだよ、この川の水…。
- 171 : ◆X5HsMAMEOw :2006/01/29(日)
16:08:02.81 ID:1+3uhbrI0
- 「げほっ、げほっ!」
うえええ……。
なんだこれ…、腐った卵みたいな味だ。
そう。硫黄の溶けた水を直に飲んだ感じだ。
気持ちが悪い……。
「何だお前。この川の水を飲んだのか?」
そんな俺に、誰かが声をかけてきた。
俺はハッとして、声の方向を向く。
そこには、男が立っていた。
少々細身だが、引き締まった体をしている。
内藤のような得物は持っていない。こいつも受験者なのか?
「お前も受験者なのか?」
俺はそいつに話しかける。
「ん? 受験者? ああ、お前受験者なのか!」
「そうらしいぜ。何だか訳わかんない試験受けさせられてよ…。お前もやっぱり?」
「バカ言えよ。俺は違げえ。俺は黄泉への代行をする死神だ」
「死神? ……内藤みたいな奴の事か?」
「何だお前…。内藤から試験を言い渡されたのか…」
その名前を聞いた途端、男の目つきが変わった。
- 190 : ◆X5HsMAMEOw :2006/01/29(日)
16:28:06.56 ID:1+3uhbrI0
- その男は、ドクオと名乗った。
ドクオも、内藤と同様に、死者の魂を黄泉へと送る代行人の仕事をしているそうだ。
先程鎌で斬られた男が消滅したのも、黄泉へ送っただけだと言う。
そしてこの代行者たちなのだが……、資質と言うものを持った人間はすぐに黄泉へと送らず、試験を受けさせるらしい。
その試験を今受けているのが、俺と言うわけだ…。
「こんなところだ。何か、他に知りたい事はあるか?」
俺は、ドクオにいろいろな事を聞いていた。
そのおかげで、ここの事なども大体つかめてきた。
ここは、黄泉へと向かう一歩手前の場所だそうだ。
代行者達が死人を見定め、試験を受けさせる場所でもある。
「試験の概要を知りたいんです。結局、俺どうすればいいんですか?」
「……お前、内藤に試験を言い渡されたんだろう?」
ドクオの目つきが、またも変わる。
何か、内藤といざこざでもあったのだろうか…?
- 192 : ◆X5HsMAMEOw :2006/01/29(日)
16:33:33.81 ID:1+3uhbrI0
- 「内藤の事、嫌いなんですか?」
「イヤ、そういう訳じゃないんだ。ただ、内藤が資質を見定めるなんて珍しい事なんだ」
俺は正直、ドクオの言っている事があまり理解できなかった。
「内藤はまあ、代行人なんだがな。格が違うんだ。貴族階級で言うと、上層のほうにいる感じだ」
「へえ……。内藤、凄いんですね」
「ああ。内藤が今回代行人を務めたのも、俺の同僚が今日急な仕事で、違うとこに回されたからなんだ」
「それでその時、俺が選ばれたと言うんですか…」
ドクオは、虚ろな目をしていた。
内藤が資質を持った人間を選ぶと言うのが、よほど珍しいのだろう。
「試験内容は分かるか?」
「はい。なんか、内藤が手から火を出してました。俺も火を出せばいいんですよね?」
俺がそういうと、ドクオは吹き出した。
なんなんだ、こいつ。
- 199 : ◆X5HsMAMEOw :2006/01/29(日)
16:42:42.46 ID:1+3uhbrI0
- 「なんですか! 内藤は、俺に火を出せっていったんですよ?」
「ああ、悪い悪い。だがな、そんな火を出せるなんて現実に出来ると思うか?」
「…だから困ってるんですよ」
ドクオは、くすくすと忍び笑いをしている。
俺はそんなにおかしいことでも言ったのか? 内藤から言い渡された試験内容を言ったに過ぎんだろう。
「別にそんな、手から火を出さなくたっていいだろう。ほれ」
ドクオが俺に何か投げつける。ライターだ。
「内藤は説明が下手なんだよな。俺の記憶では、とりあえず一次はどうでも良いから火を起こせばよかった気がするぜ?」
「な……。そうなんですか…?」
俺の肩の力が抜ける。
なんだ、それ。火をおこせば、何でもいいってのか?
俺はどこか気の抜けた感じで、足元の花々にライターで火をつけた。
- 200 : ◆X5HsMAMEOw :2006/01/29(日)
16:49:17.74 ID:1+3uhbrI0
- 花がめらめらと燃える。本当に、これでいいのだろうか……?
「本当にこんな簡単でいいんですか?」
「何言ってんだ。俺がライター渡してやったから良いが、普通に火をつけるとなると苦労するんだぞ?」
まあ、それもそうだ。
ドクオ、いい奴なんだなと俺は思った。
やがて、俺の目の前に内藤が現れた。
先程とは違い、鎌は持っていない。
「火をつけられたか。それでは、次の試験に入ろう」
「待てよ、内藤」
と、突然ドクオが俺の横から出、内藤と対峙する。
「おめえ、やっぱり説明が下手だな? こいつ、手から火を出そうとしていたぞ?」
「何を言うか。そんな事を人間が出来るわけがあるか」
「………もういいや。まあ、後はガンバレや」
ドクオはそういい、僕に手を振って川を下っていった。
- 201 : ◆X5HsMAMEOw :2006/01/29(日)
16:56:58.09 ID:1+3uhbrI0
- 「次の試験だ。この剣を抜いてみろ」
内藤はそういうと、腰から一本の剣を取り出した。
その剣は、とても美しかった。
白銀に輝く刀身、炎のように煌く真っ赤な唾と柄。
いつまで見ていても飽きを感じさせないような………、それほど美しい剣だった。
内藤はそれを、俺の目の前の地面に突き刺す。
剣は、まるで抵抗もせず、するりと地面に突き刺さった。
「これが二つ目の試験だ。把握したか?」
「把握したが…。そんな簡単でいいのか?」
俺はそう言い、剣の柄頭に手をかける。
そして、地面から―――引き抜く。
―――あれ?
おかしい。いくら力を込めても、剣が抜けない?
「お、おい内藤! どうなってんだよ!?」
俺が声をかけたとき、すでに内藤は消えていた。
戻る