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名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/25(日) 00:55:40.10 ID:aELG6mTG0
- 第四話 ネコミミの盗賊団・砂上のレジスタンス
サンドワームとの遭遇からまた少し歩いて、僕たちは遂に「村」に辿り着いた。
「村」だとか、「町」というのは、人間が集まって暮らしているところらしい。
ツンみたいなのが沢山いるのかなあ。 僕は胸を弾ませた。
…だけど
ξ゚听)ξ「やっと… 着いた…」
( ∵)「やったね」
ξ゚听)ξ「それじゃ、あなたはここに立っていなさいね」
( ∵)「ええっ!?」
ξ゚听)ξ「当たり前じゃない!
サボテンが通りを闊歩したら、村のみんなは驚いちゃうわよ!」
- 29
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/25(日) 00:57:46.97 ID:aELG6mTG0
- ( ∵)「そうかなあ」
ξ゚听)ξ「そうよ」
僕は、足元に力を入れ、この身を大地に深く差し込んだ。
ξ゚听)ξ「しばらくただのサボテンに戻ってなさい! いいわね?」
( ∵)「うん。ツンはともだちだから、言うこときく」
ξ゚听)ξ「いいこね。それじゃ……また」
※ ※ ※
- 31
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/25(日) 00:59:53.53 ID:aELG6mTG0
- オアシスの村 「スイーツ」
広大なVIP砂漠を歩く旅人や貿易の中継地点。
村の人口自体は決して多くないが、放浪の者や商人が通りにはたむろしている。
ツンは、村の隅に沸いている泉で水を飲み、酒場へと歩を進めた。
ドアを開けると、ひんやりとした空気がツンを包み、彼女は久方ぶりの心地良さを覚える。
そして、目的の人物を見つけると、その人物のテーブルの向かいに、腰を下ろしたのだった。
ξ゚听)ξ「ちょっと遅れたかしら」
「いいえ、そんなことはありませんツン様」
ξ゚听)ξ「ここでその名は言わないで」
「…すいません」
- 32
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/25(日) 01:02:58.95 ID:aELG6mTG0
- ツンの向かい側に座る男―― 軽装だが、腰には片手剣を携えている。
顎鬚を擦りながら、神妙な語り口で会話を進める。
「レイラの国がVIPの襲撃を受けたと聞き、
我々レジスタンスは、こうしてスイーツに布陣を張って貴方の到着を待っていたのです」
ξ゚听)ξ「ありがとう。 騒ぎが収まるまで身を隠させてもらうわ」
「レイラ王の行方は?」
ξ゚听)ξ「VIPに捕らえられたわ」
ξ゚听)ξ「今頃…… 城の檻の中よ」
「それはなんと……!」
- 35
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/25(日) 01:04:52.70 ID:aELG6mTG0
- 憤怒の念を口にする兵士の表情を、彼女はわざとらしいと見抜いていた。
こうして相手の挙動を観察しつつ、ツンは会話を進めていく。
ξ゚听)ξ「でもあの豪傑よ… きっと何とか活路を見出すはずだわ」
「はい。 レイラ王の行動力は、私達のリーダーからいつも聞かされております」
ξ゚听)ξ「今の私は… 私のことで精一杯だわ」
ξ゚听)ξ「だけど…」
兵士が一呼吸を置いて呟いた。
「お姉様ですね?」
- 36
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/25(日) 01:07:31.56 ID:aELG6mTG0
- ふいを突かれた。
その話題は、最後のほうにと彼女は取って置くつもりだったのだ。
ξ゚听)ξ「…! お姉さま、お姉さまはどこなの!?」
「ご心配なく。 デレ様はこの先50キロの地点にある修道院で安静に療養中です」
ξ )ξ「……良かった」
何処かのタガが外れたのか、ツンはうっすらと睫毛を濡らす。
そして、細い小指でそれを拭うと、再び口を開いた。
- 37
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/25(日) 01:10:28.71 ID:aELG6mTG0
- ξ゚听)ξ「とにかく、レイラの国は壊滅状態だわ」
ξ゚听)ξ「城に残してきた兵士のことを思うと… 胸が…」
「苦心お察しします。 それで、この会談の要旨ですが……」
さっきとは裏腹に、精一杯芯の通った口調でツンは呟く。
ξ゚听)ξ「レジスタンスとの協定を結べ でしょう?
残念ながら、それを決める権力は今の私には無いわ」
- 38
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/25(日) 01:13:19.03 ID:aELG6mTG0
- ツンは頭の中で用意していた言葉を、整理して並べていく。
レジスタンスとレイラの協定。 分かっていた。
ξ゚听)ξ「VIPに襲撃され、王が捕虜になり、自由に動けるのは私だけ」
ξ゚听)ξ「だからチャンスとでも思っていたのかしら?」
「そ、その通りでございます」
ξ゚听)ξ「私は… 王の代役でもなんでもない」
ξ゚听)ξ「ただ、姉が心配で… 姉一人の安否のために、
国のみんなを捨ててここまで来た、一人の、我侭な女よ」
ξ゚听)ξ「それに… レジスタンスとレイラの関係は…」
ξ゚听)ξ「私が口を挟めるものではないわ」
「ご無礼失礼致しました」
ξ゚听)ξ「いいのよ。 お互い様だわ。 私も私で、都合のいいときだけレジスタンスを隠れ家に利用する…」
- 39
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/25(日) 01:15:12.86 ID:aELG6mTG0
- ξ゚ー゚)ξ「困ったときは、お互い様よ」
「はい! それでは、アジトへ向かいましょう」
レイラ王救出のシナリオを組み立てなければ……」
※ ※ ※
┌| ∵|┘「…」
┌| ∵|┘「暇だなあ」
僕は単調な景色を相手に、時間を持て余していた。
ああ、僕も村に入りたい。 人間と、色んな話がしたい。
しかし、そうは問屋が卸さないらしい。
あ、今、ぼく人間臭いこと言ったよね。
- 75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/31(土) 02:01:45.45 ID:brX2hqXU0
- 僕はぐるっと身を回し、村の入り口に立てかけられた看板を見つめた。
( ∵)「す、い、ーつ…」
( ∵)「ここは、スイーツっていうんだね」
「オイ… 今このサボテン喋らなかったか?」
( ∵)「?」
もう一度身を回す。 そこには、大柄の人間が立っていた。
肌の色や、瞳の中の光。ツンとは全てが正反対のような、屈強な男。
(,,゚Д゚)「…」
- 40
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/25(日) 01:18:25.15 ID:09qf8lI00
- 「何言ってんすか親分。 サボテンが喋るはずねえじゃありませんか」
ぞろぞろと男達が僕の目の前に集まってきた。 皆、カラフルなターバンやバンダナを巻いている。
僕は胸を躍らせた。
(,,゚Д゚)「いや、喋ったんだよ」
ターバンよりもちょっとスリムな帽子を被った男は、僕をじっと見つめる。
(,,゚Д゚)「…」
┌| ∵|┘
(,,゚Д゚)「…」
┌| ∵|┘
(,,゚Д゚)「…」
- 41
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/25(日) 01:19:12.26 ID:09qf8lI00
(,,゚Д゚)「おいサボテン野郎、お前ちょっと喋ってみろ」
( ∵)「…」
( ∵)「ワーーッ!!!!!!」
「「「「「ギャアァアアアアーーーッ!!!!!」」」」」
集まっていた男達はみな、慄き、震えた。 僕の性? なんだか楽しいな。
(,,゚Д゚)「お前らぁ! 大の男が揃ってわなわな震えてんじゃねぇぞゴルァ!」
(,,゚Д゚)「……ふん。喋るサボテンか。こいつは珍しい」
- 42
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/25(日) 01:20:16.38 ID:09qf8lI00
- ( ∵)「はじめまして。ぼく、ビコーズだよ」
「かーーちゃーーん!! こえーーよーー!!」
(,,゚Д゚)「うるせぇ! へへ…ビコーズってのかい。
俺は銀猫盗賊団の長、ギコってんだ」
(,,゚Д゚)「後ろにいる臆病な奴らが子分さ。 宜しくな」
( ∵)「よろしく。ギコ」
ギコという精悍な男は、一息をつくと、拳を高らかに突き上げて、叫んだ。
(,,゚Д゚)「おおし!! 今日はこいつをかっぱらう!!!」
( ∵)(…え?)
- 43
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/25(日) 01:21:04.11 ID:09qf8lI00
- 「おやびーん! 今日は悪徳商人の野郎を襲撃するんじゃなかったのかい?」
(,,゚Д゚)「気が変わったんだ! こいつを見ろよ! 喋るサボテンだぜ?
こいつぁどこの見世物小屋でもお目にかかれないシロモノだ。 高く値がつくぜ」
( ∵)「ねえねえ、見世物小屋って何?」
(,,゚Д゚)「へっ、あとで教えてやらあ。
おい! こいつをひっこぬけ!!」
「へいっ!!」
もしこの人が、さっきのサンドワームみたいな奴だったら、僕は必死で抵抗しただろう。
だけど、僕はギコに何も嫌味を感じなかったから、その身を委ねた。
僕の身体は、小気味良く、すぽんと抜けた。
- 46
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/25(日) 01:22:15.32 ID:09qf8lI00
- そして僕は、ギコの子分たちに担がれて、見たこともない生き物に括りつけられた。
( ∵)「ギコ! これ、なに?」
(,,゚Д゚)「あん? そいつはおめぇ… 俺達の足、”ホバーボート”だよ!」
( ∵)「かっこいい!」
(,,゚Д゚)「ありがとよ! それじゃあ、出発だ!」
ギコがそう叫ぶと、ホバーボートがぶるぶるぶると震え、一直線に砂漠を駆け始めた。
物凄い風、だけど、サンドワームの吸い込み攻撃とはまったく違う。 心地良い風。
いつまでも、これを浴びていたいような……
- 47
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/25(日) 01:23:23.15 ID:09qf8lI00
- 風に煽られながら、僕はとあることを尋ねた。
( ∵)「ねえ、ギコ」
(,,゚Д゚)「なんだよ」
( ∵)「ギコには、尻尾が生えてる」
(,,゚Д゚)「へっ、こんなもん、邪魔なだけさ」
( ∵)「どうして、尻尾が生えてるの? ギコは、人間じゃないの?」
(,,゚Д゚)「…ふっ。 聞きたいか?」
( ∵)「すごく聞きたい!」
(,,゚Д゚)「半獣、半人だよ」
( ∵)「はんじゅうはんじん?」
- 48
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/25(日) 01:24:58.39 ID:ccr6sNj+0
- そう言うと、ギコはボートのレバーをがちゃがちゃと動かした。
ボートが自動的に進むようになる。
そしてハンドルから手を離し、帽子を脱ぎ始めた。
ぴょこん、と、二つの長い耳が飛び出た。
(,,゚Д゚)「俺たちは…… ただの猫だったのさ」
(,,゚Д゚)「数百年前まではな」
- 49
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/25(日) 01:25:40.53 ID:ccr6sNj+0
- ( ∵)「…! ただの猫だったの?」
(,,゚Д゚)「ああ、そうだ。 だがしかしある日突然、ご先祖様は言葉を覚え、二本足で歩くの覚え、”にゃー”と鳴くのをやめたんだってよ」
(,,゚Д゚)「まるでおとぎ話だなあ!! はは!」
( ∵)「僕と似てる」
(,,゚Д゚)「あん?」
( ∵)「僕も、ただのサボテンだったんだ」
( ∵)「でもある日、僕は僕を手に入れたんだ!」
(,,゚Д゚)「ほお… こいつはおもしれえぇな。 見世物小屋に売っ払うのはもったいないような気がしてきたぜ」
- 50
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/25(日) 01:26:18.68 ID:ccr6sNj+0
- 「みせものごや ってなにー?」
「ははは。 なんだろうなー」
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
いくつもの砂塵を切り裂いて、ホバーボートは砂の海を進む。 やがて何処へ辿り着くのだろう?
ツンの用事が済むまでには戻らなきゃ。 そんなことを、いつもと変わらぬ空を眺めながら思っていた。
- 51
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/25(日) 01:29:30.54 ID:ccr6sNj+0
- ※ ※ ※
申し訳なさそうに、兵士はツンをラクダへと導いた。
「こちらです」
ξ゚听)ξ「あら? レジタンスお得意のホバーボートはどうしたのかしら?」
「それが… その」
「巷で暴れまわっている銀猫盗賊団という輩に盗まれてしまいまして」
ξ゚听)ξ「盗賊団… まったく、レジタンス、鍛え直さなきゃダメじゃない?」
「ううっ」
ξ゚听)ξ「レジスタンスのアジトは、何処にあるのかしら」
- 52
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/25(日) 01:31:35.21 ID:ccr6sNj+0
- 兵士に事項を尋ねたその時、ツンは村の入り口について違和感を覚えた。
ビコーズが、いない。
ξ;゚听)ξ「…あれ?」
「アジトはこの先15キロの三角岩を…」
「あの、姫様、聞いてますか?」
(続く)
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