23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/11(日) 22:16:57.04 ID:BMIbrQJM0
第二話  流れ星って信じる?



オアシスのある所はすぐに分かる。 緑の葉っぱは、褐色の砂漠でよく目立つ。
僕は泉の岸まで彼女を運び、疲れたので隣の砂地に身体をうずめた


┌| ∵|┘「…」

ξ )ξ「…」


彼女は弱弱しく上体を起こし、掌で水をすくってそれを少しずつ飲んでいく。
器用だなあ、ニンゲンってそういうトコがうらやましい と僕は思った。


ξ )ξ「ふう…」


一息をつき、彼女はしばらくその場にうずくまっていた。 背中は僕に向けたまま。
僕は「会話」というものがしてみたくて、たどたどしく声を出した。


( ∵)「落ち着いた?」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/11(日) 22:20:11.87 ID:BMIbrQJM0
ξ゚听)ξ「ええ、ありがと…」


ξ;゚听)ξ「はぁ?」



こちらを振り返った彼女は、驚きを含んだ表情で僕を見た。



( ∵)「こんにちは」

ξ;゚听)ξ「さささ、サボテン!?」


ああ、やはりこの世界において喋るサボテンというのは珍しいんだな。


…と思ったのも束の間、女の人が、腰元から短刀を抜いた。
剣先は、僕を向いている。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/11(日) 22:23:22.12 ID:BMIbrQJM0
ξ;゚听)ξ「中に誰かはいってるの…?」

( ∵)「ううん」

( ∵)「ぼくはぼくだよ」

ξ;゚听)ξ「サボテン… なの…?」

( ∵)「どっからどうみてもサボテンだよ!」


そう言って僕は勢いよくジャンプした。 
そして、彼女の周りをぴょんぴょんと飛び跳ねる。 なんだか知らないけど、いい気分なんだ。


ξ;゚听)ξ「うわ!! うわわわわ!」



( ∵)ミ( ∵)ミ( ∵)ミ( ∵) ぴょんぴょんぴょーん♪

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/11(日) 22:25:25.32 ID:BMIbrQJM0
彼女の周りを三周したあと。最後に空高く飛翔し、ズボッと音を立て、砂に身体をうずめた。
それを見て、彼女は短刀を腰元にしまう。


ξ;゚听)ξ「何よコイツ…」

( ∵)「ぼくはぼくだよ」

( ∵)「ぼくはサボテンだよ」

ξ゚听)ξ「…まあ、ここまで運んできてくれたんなら、いいサボテンかもね」

ξ゚听)ξ「でもっ!! こうして安心したスキに、食べようとしてるのかもしれないわ! 怪物め!」

( ∵)「かいぶつじゃないよ」

( ∵)「僕はサボテン」

ξ゚听)ξ「はいはい…」

僕に背中を向け直す彼女の姿に、さっきから訊きたかった事柄を投げかける。

( ∵)「君の名前は?」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/11(日) 22:28:43.05 ID:BMIbrQJM0
ξ゚听)ξ「私は…」

ξ゚听)ξ「こんな得体の知れないヤツなんかに、名前を教えていいものかしら?」

( ∵)「いいよ」

ξ;゚听)ξ「はあっ」

女の人は黄金色の髪の毛をかき上げ、蒼い瞳で僕を見つめて呟いた。

ξ゚听)ξ「私はツン、ツン・デ・レイラ よ」

ξ゚听)ξ「こう見えてもお姫様なんだから ふふん」

( ∵)「お姫様? そうだと思った」

( ∵)「キレイだもんね」

ξ゚听)ξ「サボテンの癖にクチが上手いのね」

( ∵)「僕の口はうまくないと思うよ」

( ∵)「サボテンの味しかしないと思う」

ξ;゚听)ξ「はいはい」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/11(日) 22:31:54.56 ID:BMIbrQJM0
泉の岸、ツンは掌を水に遊ばせながら、僕に尋ねる。
太陽の光は段々と弱まり、空は橙の色に染まり、一日の終わりを想った。


ξ゚听)ξ「あなたは?」

( ∵)「さぼてん」

ξ゚听)ξ「ただのサボテンなの?」

( ∵)「ただのサボテンではないと思う」

ξ゚听)ξ「まあ… 動いたり喋ったりするんだもんね」

ξ゚听)ξ「ってか… ちゃんとした名前はないの? って訊いてるのよ」

( ∵)「…」

( ∵)「ないかも」

ξ゚听)ξ「ふぅん。それじゃあ、私を助けてくれたお礼に、あなたに名前をプレゼントしましょうか?」

( ∵)「え?」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/11(日) 22:34:11.24 ID:BMIbrQJM0
名前? 僕の名前? 僕は… サボテン。 
だけど、それじゃ自分が、「ただのサボテンじゃない」ってことに確証が持てなかったんだ。
例え歩いたり、喋ったりできても。

だけど、僕に「ちゃんとした名前」があれば、自信が持てると思う。
「ちゃんとした名前」は、僕の、僕という存在を、より強めてくれるんだ。



( ∵)「いいの?」

ξ゚听)ξ「いいわよ。別に。ペットに名前つけるようなものだもの」

( ∵)「ペットって何?」

ξ゚听)ξ「あんたみたいに可愛い犬やネコのことよ」

( ∵)「砂漠じゃラクダしか見たことないからわからないや」

ξ゚听)ξ「ふふ… そうでしょうね」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/11(日) 22:36:27.73 ID:BMIbrQJM0
ツンはしばらく微笑みながら考えていた。
そして、砂粒で掌に付いた水滴を乾かして、言った。


ξ゚听)ξ「ビコーズ なんてどう?」



( ∵)「…」

( ∵)「それっていい名前かな?」



ξ゚听)ξ「あなたが気に入ったらなら、いい名前じゃない?」

( ∵)「うん」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/11(日) 22:38:19.13 ID:BMIbrQJM0
ビコーズ
ビコーズ
ビコーズ

三回繰り返してみた。 だけど、別にもやもやとした気持ちは浮かばなかった。
よし、これはいい名前だ。





( ∵)「僕は… ビコーズだね」

ξ゚听)ξ「よろしくね、ビコーズ」






34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/11(日) 22:41:11.53 ID:BMIbrQJM0
僕の名前を呼ぶと同時に、ツンは白魚のような綺麗な手を差し出した。
爪先が、泉の水で艶やかだった。



ξ゚听)ξ「…」

ξ゚听)ξ「どうしたの? あくしゅよ、握手」

( ∵)「とげ…」

ξ゚听)ξ「あら…」

ξ゚听)ξ「でも、大丈夫」


ツンは、棘と棘の隙間を、優しく撫でてくれた。 それが僕とツンとの「握手」だと理解する。
身体の中で、温かいけど形のないものがやんわりと広がった。
僕は神というものはやはりいると思った。そして空を仰いで感謝をする。



彼女と巡り合わせてくれた運命とやらに。


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/11(日) 22:42:08.86 ID:BMIbrQJM0
空はすっかり黒に染まっていた。

泉に映る月の明かりを頼りにしながら、僕はツンの横顔を見る。
ツンは「夜まで残しておいたの」 という乾物をちびちびとかじりながら、僕と他愛もない会話を交わしていた。



――――流れ星って、信じる?





( ∵)「…流れ星 ってなに?」

( ∵)「ぼくは、ただの星しか知らない」

ξ゚听)ξ「あなた、このだだっぴろい砂漠に住んでるなら、よく見かけるでしょう」

ξ゚听)ξ「読んで字のごとく、流れるように空を翔る星のことよ」

( ∵)「ああ。 わかるかもしれない」
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/11(日) 22:49:40.29 ID:+ed9+1zC0
ξ゚听)ξ「流れ星を見つけたらね、遠くへ行っちゃう前に、飛んでっちゃう前に、3回願いことを言うの」

( ∵)「大変だね」

ξ゚听)ξ「うん、難しいんだよ。 でもね、そしたらその願いが叶うの!」


( ∵)「…」


( ∵)「それって凄いや」

( ∵)「じゃあ僕は信じることにする」

ξ;゚听)ξ「じゃあ僕は… って ふう」




ξ゚听)ξ「話変わるけど」

ξ゚听)ξ「流れ星の仲間かどうかは知らないけどさっ」


彼女の顔が、急にしんみりとした、寂しげな表情に切り替わった。
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/11(日) 22:52:44.32 ID:+ed9+1zC0

ξ゚听)ξ「”レイ”っていう不思議な星があるの」

ξ゚听)ξ「その星… いや光みたいなものらしいけど、世界中を飛び回っているんだって 生き物みたいに」

ξ゚听)ξ「捕まえて、触れられることが出来れば、何でも願いが叶うらしいわ…
     流れ星みたいに、おとぎ話じゃなくて」

ξ; )ξ「実際、VIP国は”レイ”を手に入れて…」

ξ゚听)ξ「…」

ξ゚听)ξ「ねえ、ビコーズ、聞いてる?」


「…」



ξ゚听)ξ「…ただのサボテンに戻っちゃったか。 寝るの早いんだね」

ξ゚听)ξ「兎にも角にも、貴方のおかげで命びろいしたわ。ありがと」

ξ゚听)ξ「…さて、私も眠ろうかしら」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/11(日) 22:54:22.11 ID:+ed9+1zC0
(明日… 町に着くことができるかな)

(待ってて… お姉ちゃん…)

(…)



┌| |┘「…」

┌| ∵|┘「ん」




夜、ふと目が覚めた。 気がつくと、闇が僕を包んでいる。
空には相変らず、広大なプラネタリウムが広がっていて、僕は生まれた時の頃を思い出す。
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/11(日) 22:55:27.31 ID:+ed9+1zC0
ぼうっとしていると、プラネタリウムを横断する、とある光の筋を僕は見つけた。



( ∵)「…」

( ∵)「あ、」


( ∵)「ツンともっと仲良くなれますように
   ツンともっと仲良くなれますように
   ツンともっと…」



( ∵)「…消えちゃった」





(続く)

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