2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 22:36:40.00 ID:r+6ZErK10
第十九話 Night affair




フサたちがモール族の巣へ辿り着いた夜。
一方、レジスタンスのアジトでは宴が開かれていた。楽しげな声は堅固な岩壁の外を出ない。
ただ、すきま風のように少しだけ漏れるそれを、旅烏は聞き取った。

門番の上をひらりと飛んで、一足そこへ踏み入れると、鼓膜が破れそうなくらいの賑やかさがそこには広がっていた。



(´・ω・`) 「みんな。じゃあ、ちょっとここらへんで静粛に」

「ヒャホーwwww」

止まない騒ぎ。


(´・ω・`) 「ぶちころすぞ」


止んだ。

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 22:38:59.86 ID:r+6ZErK10
(´・ω・`) 「今日こうして宴を開いたのは、今から壇上に上がる三人を歓迎するためだ」

(´・ω・`) 「さあ、出てきてくれ」


ぴたりと動きが止まった群れから、抜けるように進む三つの頭があった。
それらは檀の上で姿を現し、列になって並ぶ。
赤い鎧の男、赤いローブの女、そのあとを覚束ない足取りで着いていく少年。


川 ゚ -゚)「……」

('A`)「……」


群れの中から一つ目の野次が飛び出る。

「あれー? お前等はもう自己紹介なんてとっくに済んだだろ」



(´・ω・`) 「ふむ」

(´・ω・`) 「今回は雇われ兵としてではなく、正式なレジスタンスのメンバーとして だ」

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 22:40:44.96 ID:r+6ZErK10
(´・ω・`) 「そういうわけで、じゃあ、クーから」


紅蓮のローブを身に纏うが、流れる髪は清流の如く澄み切った青。
絶えず涼しげな表情の裏に、彼女はどのような過去を忍ばせているのだろうか。


川 ゚ -゚)「みなさん、この度は正式にレジスタンスの一員となったということで
     改めて自己紹介をば。 ……」

彼女は自分のことを「魔法使い」と称しようとした。
しかし、この世界にとって魔法という概念はあくまで空想上である。
言葉が、詰まった。


川 ゚ -゚)「……」


しかし、代わる言葉も瞬時には思いつかない。


川 ゚ -゚)「魔法使いの、クー。クー・スナオです」
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 22:43:42.61 ID:r+6ZErK10

すかさず野次は出る。


「魔法? 冗談やめてくれよ! 頭大丈夫か?」

(´・ω・`) 「ふっ」

ショボンはクーに目配せをする。
クーは少しためらうも、人差し指の先から小さな炎を出した。
途端に兵士たちのどよめきが大広間を揺らす。


「どわあああぁ! ど、どうなってんだ!?」

「すげぇ……」

(;^ω^)(これが魔法……!)


川 ゚ -゚)「私は剣を振るうことはできない。代わりに、この力が皆の役に立てばいいなと。
     ここは男ばかりの集団という点でも、私は異質な存在かもしれない
     だけど情けをかけたりかけられたりなどという場面は作らない、作らせない。これからよろしく」

「「「ウオオーーーッ!!」」」


芯の通った弁が兵士たちの間を駆け抜ける。
皆各々の拳を突き上げて彼女の歓迎を示した。

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 22:46:19.58 ID:r+6ZErK10
(´・ω・`) 「ありがとう。よし、次はドクオだ」


紅蓮の鎧を纏った男。その鞘に収めている大剣は、どこにもお目にかかれない炎の剣。
しかし、承知の通りの無反応。ここでも彼はだんまりだ。


('A`)「……」


「おいー! 何シカトこいてんだよ!!!!!」

「あいつ初めて来たときは歓迎会にすら出てこなかったよな……」

「なんでもいいから喋れ!」

「一発ギャグしろ!!!」


(;´・ω・`) 「うーむ……」


無言を貫くその態度に、さすがのショボンも困り顔だ。
彼の表情を察したクーが、兵士たちの野次を浴びつつ口を開く。
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 22:49:07.15 ID:r+6ZErK10
川 ゚ -゚)「あの」


川 ゚ -゚)「私たちの故郷はVIPに滅ぼされた」


「「「……!」」」


水を打ったように静まり返る兵士達。
瞬時に膨大する関心が、視線となってクーに注がれる。


川 ゚ -゚)「戦いの渦中、彼は私を護ってくれた」

川 ゚ -゚)「故郷は滅んだものの、その集落で生き残ったのは私とドクオだけ」

川 ゚ -゚)「重なる激闘で血塗れになり、高熱で意識を失った彼が次に目を覚ましたとき」

川 ゚ -゚)「彼は耳も口も効けなくなってしまったんだ」


「「「……」」」


(´・ω・`) (そうだったのか……)

(;^ω^)(重い。重すぎるはなしだお)
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 22:52:51.99 ID:r+6ZErK10
川 ゚ -゚)「だから彼は時に無礼な態度をとってしまうかもしれない」

川 ゚ -゚)「しかし、それは悪気ではない……」

川 ゚ -゚)「そう。彼にはまだ人間の心がある。剣士としての信念がある!」

川 ゚ -゚)「いつかVIPを破るその日まで、どうか私と彼をここに置いて欲しい」


クーが深く半身を折り曲げた。ドクオもそれに合わせて少しだけおじぎをする。
先程よりも何倍も大きな歓声が、大広間を包んだ。
ショボンは思わず片耳を塞ぐ、しかし、表情には自然と嬉しさの色が浮かんでいた。


「うおおー!!! 俺も村をVIPに滅ぼされた! ここはそんな奴等の集まりさ!!」

「打倒VIP!!! だとうヴィィィイイイイイップ!!!!!」

「いいぞーーー!! むっつりー!!!」

「期待してるからなー!!!!!」


(;^ω^)(ぐわぁあああ〜 プレッシャーがwwwやばいwww)
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 22:56:54.43 ID:r+6ZErK10
(´・ω・`) 「ふむ。実に頼もしい仲間が増えた」

(´・ω・`) 「よし、最後にブーン。締めを頼むぞ」


ブーンは震えながら一歩前に出る。高揚した兵士たちの表情が、彼の心を圧迫した。


(;^ω^)「はははは はじめましって っこここんばわ」

(;^ω^)「ぼぼっぼくのなまえは ブーン です おっ」

(;^ω^)「……」

(;^ω^)(何を言えばいいの?)


静まる大広間。皆が自分の次なる一言一句を待っている。
しかし、ブーンにとってここは一時の宿場にしか過ぎない。


(;^ω^)「趣味は…… さんぽです」

(;^ω^)「好きな食べ物は…… 肉じゃが」
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 22:59:52.12 ID:r+6ZErK10
「おいおい!」

(;^ω^)「ヒッ」

「さっきから何寝惚けたこと言ってんだ? お前もよ、なんかよう、アツーイ意思表明を、しろや!!」

「そうだ! お前も何かVIPに恨みがあってここに来たんだろうが!」

(;^ω^)「え゛ そんなこと言われても……」

(;^ω^)「だいたい……」





(;^ω^)「ヴぃっぷ って 何?」





「「「ポカーン」」」



呆気に取られた兵士たち。その中、一番早く我を取り戻した男が、壇上に乗りあがってきた。
酒の臭いを振り撒きながら、ブーンにゆらりと近づく。そして、彼の優しげな瞳に睨みをきかせた。
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 23:03:15.65 ID:Wuo/jzLa0
――ギロリ

(;^ω^)(ヒィイー!! こわい!)

「テメェ…… なめてんのか」

(;^ω^)「いいえ…… なめてませんお」

「アァン!?」


殴るようにして胸ぐらを掴まれたブーン。
かかとが浮いた。冷や汗が頬を流れる。


「お前、ここがどこだか分かってんのか……」

(;^ω^)「れ、レジスター」

(;^ω^)「あっ」

「レジスタンスじゃぁあ!!!!!」

(;^ω^)「ひょええぇええ!」

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 23:06:11.71 ID:Wuo/jzLa0
諭すような口調でショボンが兵士に声をかける。

(´・ω・`) 「その手を離せ」

「いやしかし」

(´・ω・`) 「今度は事情を私が説明しよう」


ショボンが壇上に上がってくる。
ブーンはその身を引き、額に滴る汗を袖で拭った。


(´・ω・`) 「こいつはな、実は海の向こう、ニコ王国から来た天文学徒だ」

(´・ω・`) 「レイラの城下町に宿を手配したはずだが、どうも手違いで宿無しになってしまったらしい」

(´・ω・`) 「それでしばらくの間かくまってくれ という話だ」


野次は矢のように壇上に向かって放たれる。


「ショボンさん! ここはガキの託児所じゃありませんぜ!!」

そんな言葉に乗っかって、壇上の兵士もショボンに言う。

「そうですぜ。 こいつの分の食料やなんやらがもったいない!」

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 23:09:59.25 ID:Wuo/jzLa0
壇上の兵士は再びブーンを睨む。
ドスの効いた声で、彼に一言を投げていく。

「オイお前」

(;^ω^)「ひゃい」

「剣は振れるか」

(;^ω^)「いいえ」

「槍は」

(;^ω^)「ノン」

「弓矢」

(;^ω^)「ry」


兵士がブーンに背を向けた。
拳を振り上げ、仲間達に向かって叫ぶ。

「こいつ夜の間に外に投げ出して、ハイエナの餌にしようぜ!!」

「「「いいねぇ!!!」」」


(^ω^;)「うー……」

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 23:12:19.32 ID:Wuo/jzLa0
(´・ω・`) 「そこらへんは大丈夫だ」

(´・ω・`) 「しっかりコイツにも仕事を与える」




――臨席した者たち全てが一つの言葉を頭に思い浮かべた。




(´・ω・`) 「雑用係」


「「「ヒャホーーー!!!!!!!!!ww」」」


(;^ω^)(うぅ〜っ。しょうがないお。ハイエナに食べられちゃうよりは)

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 23:16:08.83 ID:Wuo/jzLa0
三人の挨拶が終わり、宴が再開される。
次なる戦いに向け、肉を食べ、酒を飲む。男達は十分に英気を養う。ただ、馬鹿騒ぎをするだけの者もいる。
度を越した笑い声。泡沫のように起きる喧嘩。見知らぬ言葉が湯水の如く出てくる兵士たちの会話。
おどおどしながらも、ブーンの興味は尽きることが無い。


緊張で乾ききった喉をぶどう酒で潤すと、ブーンは一気に心を解き放たれたような気分になった。
生まれて初めて勢いよく飲み切った酒だった。
最初は騒々しいだけだったこの空間が、心地良いとさえ思うになってくる。



( ^ω^)(……っふうー)

( ^ω^)(ツンのところに行くのはまだ早いかな?)

( ^ω^)(あー。なんだか眠たくなってきちゃった……)



( ^ω^)

( ´ω`)

(  ω )「zzZZZ」

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 23:21:21.69 ID:Wuo/jzLa0

アジトから飛び立った旅烏。 夜の空で仲間の烏と落ち合った。
VIPから飛んできた友達だ。
「今、君んとこの国を倒すための会が開かれていたよ」と旅烏は言う。
友達は「こっちもこっちで何かが始まりそうさ」と陽気に答える。

人間たちは大変だなあ。
そんな言葉をお互いに交わしながら、彼らは夜闇に消えていった。



※ ※ ※



VIP城 王の間。 
広大な面積にも関わらず、点けられたキャンドルは四本のみ。
暗闇の中、VIP帝が口を開く。



「皆揃ったか」

(・∀ ・)「いえ、ハインリヒのみが到着していないようです」

「そうか」

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 23:24:48.18 ID:Wuo/jzLa0
5分ほど沈黙が続く。それを破るようにVIP帝はまた口を開く。


「ところでマタンキよ。先日の鉄仮面隊の件だが」

(・∀ ・)「はっ」

「アサピーはこの部隊の開発と編成についてはどのような意向を?」

(・∀ ・)「最初は反対の色を示していましたが、私の懸命な説得により、今では納得しています」

「ほう」

(・∀ ・)(ふっ)

「ところで今日はアサピーはなぜ来ていないのだ?」

(・∀ ・)「腹痛が酷いと…… 近頃激務のために、体調に様々な不良を感じていると申していました」

(・∀ ・)(本当は集まりがあることを教えていないのさ。
      アイツは会議の場では邪魔な考えばかりを出すし、こうすれば株も下がる。一石二鳥だ)
29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 23:27:21.41 ID:Wuo/jzLa0
そのとき、マタンキの隣の地場で次元が断裂した。
隙間から人の姿がゆっくりと現れる。


片目は白銀の髪によって塞がれ、もう一方の瞳は妖艶な輝きを湛える。
身に纏うは、紺青の法衣。まるでクーのそれと対になっているようだ。



――VIP帝直属の宮廷魔法士、ハインリヒ・ハイネ・シングブック



从 ゚∀从「すみません。私用により遅れてしまいました」


「ふむ。それでは始めようか」


从 ゚∀从「ん? マタンキ、エルダー達とアサピーは」

(・∀ ・)「アサピーは体調不良。あいつらはもう出発した」

从 ゚∀从「ああ、そういえばそうだったな……」
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 23:30:07.31 ID:Wuo/jzLa0
帝王の回転椅子がアサピー達のほうを向く。
瞬時に跪く二人。顎だけをくいっと上げ、VIP帝を仰ぎ見た。



「今日の話は二度目のレイラ征服についてだ」

从 ゚∀从(二度目か…… レイラは砂漠の南半分を有する。
     やはりVIPのサーバ統一とは、即ちレイラの滅亡を意味する!!)

「魔法兵を用いて企ててみたが、やはり甘かった点が多かったようだ」

(・∀ ・)「誠に申し訳ない。私の編成した兵たちの性であります」

「いや、良いのだ。魔法兵の練習台のような要素があったからな
 いつかあの状態は解かれると思っていた」

「ところで、レイラ奪還の裏にあった勢力がなんだか知っておるか?」

(・∀ ・)「むっ……」

从 ゚∀从「レジスタンス ですね?」

「そうだ」

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 23:32:36.70 ID:Wuo/jzLa0
「核を取り囲む殻を破るのが戦。まずはこいつらの撲滅を図りたい」

从 ゚∀从「布陣は?」

「兵士は、マタンキが以前から思案していた、鉄仮面兵を採用したいと思う。
 大体、50体くらいだろうか。第一陣はな。フッ」

(・∀ ・)「有難き幸せッ!!」

从 ゚∀从「して、その指揮は」

「ふむ。アサピーに、任せようと思うぞ」

(・∀ ・#)(……ッチ!!!!! クソ!!! おのれ、アサピー……)

「なんでもあの集団には優秀な人材が沢山いるらしいからな。倒せばレイラは丸裸になるようなものだ
 我が国の魔法兵の真の力。今回も見せ付けてやれ。”レイ”の偉大なる力をな!!!」




VIP帝の高笑いが響き渡る。 マタンキは心の中で地団駄を踏む。
サーバ砂漠の戦いが、今まさに本格的に展開しようとしていた。
VIP帝は頭上の天井画に埋め込まれた宝石を仰ぐ。あの宝石にはレイの輝きが閉じ込められている。
彼は、あの光を見るたびに支配欲を刺激されてならないのだった。





32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 23:34:53.67 ID:Wuo/jzLa0



ミ,,゚Д゚彡「これが岩石アメかい」

( ●ш●)「そうズラ、固い外側が取れると、中にはあまーい蜜が詰まってるズラ」

ミ,,゚Д゚彡「どれ。ガリッ…… うっ、駄目だ。歯が砕けちまうよ」

( ●ш●)「ネコちゃんの歯は弱いズラ! ちょっとそれチョーダイ」

ミ,,゚Д゚彡「お前等の歯が丈夫すぎんだよ。ほら」

( ●ш●)「ボリボリ!! んあー うめぇズラ!」

( ∵)「ははは! 美味しそうだねー。それ」

( ●ш●)「サボテンくんもいるズラか?」

( ∵)「僕は植物だから物を食べれないよ」


そういえば、「食べる」ってどんな感じなのかな。
「味」って何なのかな。 この世界には、サボテンだと、どうしても分からないことが多すぎる。
いつか、人間になったら色んなものを食べ歩いてみたい。この岩石アメも、噛み砕けるかどうか試してみたいな。


ミ,,゚Д゚彡「それよりもお酒もっとくれよ。お酒」

( ●ш●)「ほいズラ」
34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 23:37:56.78 ID:Wuo/jzLa0
僕達はモール族の住処に着き、厚いもてなしを受けていた。
光が苦手な彼らは、僕等のためにライトを付ける代わりに、ゴーグルをかける。
彼らのリーダーである「長老」は、三日に一度起きて他はずっと寝ているらしい。
だから、僕らは宴を開きながら長老が起きるのを待っていた。



( ●ш●)「君達はラッキーズラ! 今日はちょうど長老様が起きる日ズラよ」

( ∵)「そういや、長老に会ってどーするの? フサ」

ミ,,゚Д゚彡「むかっ。お前のためだぞ」

( ∵)「え?」

ミ,,゚Д゚彡「モグラ、こいつ、人間になりたいらしいんだ。モール族の長老なら、何か手がかりを知ってるかなと思って」

( ●ш●)「僕の名前は”ディガー”ズラ。 人間かぁ…… 君もモノ好きズラ
       そのままの姿のほうがよっぽどキュートズラ」


確かに僕はツンやネコミミ族の女の人から「かわいい」「かわいい」って言われ続けてきた。
だけど、僕はそんな態度はペットに向けるものと同義だってことを分かってる。
僕はみんなと同じ目線で話がしたい。僕はペットなんかじゃない!

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 23:40:41.65 ID:Wuo/jzLa0
( ∵)「長老は人間になる方法を知っているの?」

( ●ш●)「うーん。そんなの分からないズラ。ただ、あの人の知識量は凄いズラ」

( ●ш●)「モール族は大昔、ゴーグルをかけて人間たちと地上で暮らしていたズラ
       しかし、あのお方が若い頃、突然土の中に篭もって、独り勉強を始めたんだズラ
       そのうちみんなが心配になって、その地中の空間に集まるようになって…… 今はこの通りズラ」

ミ,,゚Д゚彡「へぇ。面白いな。モール族も最初は”共存”の種族だったのか」

( ●ш●)「そうズラ。今はこの通り”別離”の種族ズラ」

( ∵)「きょうぞん? べつり?」

ミ,,゚Д゚彡「亜人には色んなタイプがある。それは元々の種族でも分けられるし、人間との付き合い方で分類することもあるんだ」

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 23:43:48.68 ID:Wuo/jzLa0


「共存」は、ネコミミ族のような奴等を指すグループだ。 人間と共に生活する。人間社会のルールで生きるんだ。 
勿論様々な弊害や差別を抱えてな。「依存」という言葉にも置き換えられるか?
まあ、俺ははぐれ者だから例外だけれども。


「別離」は、こいつらモール族のようなグループのことだな。 人間たちの共同体から遠く離れ、自分達の完全な社会を形成しようする。
亜人は、大概、「共存」か「別離」に分かれるさ。ちなみに、銀猫団はごく最近まで人間から「別離」していたな。


他にも様々グループはある。「従属」 「放浪」……
まあ、今日はここらへんでいいだろ。


40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 23:45:39.41 ID:Wuo/jzLa0
( ∵)「へぇ…… 僕は!? ねえ、僕はどっちかな?」

( ●ш●)「まずサボテンくんは亜”人”じゃないズラ」

( ∵)「……」


一瞬にして僕の身体はしおれて曲がる。
何を持って”ヒト”と言えるのだろう? また新たなモヤモヤが、頭の中をぎゅんぎゅんと駆け巡った。

体を持ち上げたとき、向こうから誰かの野太い声が届いた。

「オーイ!! 長老がお目覚めになったぞー!」


ミ,,゚Д゚彡「おっ! 長老の家に行こう!みんな」

( ●ш●)「この間のお目覚めの刻はトンネル掘ってて御目見えできなかったズラ! 行くズラ!」

( ∵)「……うん」


ミ,,゚Д゚彡「なんか暗ぇな、ビコーズ。やっぱり太陽の光がないと辛いか?」

( ∵)「……んーん」
41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 23:47:29.60 ID:Wuo/jzLa0
節穴の目口の裏にある表情は沈んでいる。
だけど、一縷の希望を持って僕はぴょこぴょこと身体を前に進める。
モール族の長老。きっと何か手がかりを知っているはず!

長老の家へ着く。 大きな岩柱を避けて、長老のベッドまで辿り着く。
だけど、人(モグラ)だかりの性で、長老の顔を見ることができない。


(@○ш○)「む、むぅ…… 瞼を開けない」

( ●ш●)「ささ、ゴーグルをお付けになるズラ!」

(@●ш●)「おお、ありがとう。そこにいるのはトンヌラだね」

( ●ш●)「いんやディガーズラ」

(@●ш●)「おお、そうだったな。ゴーグルということは、客人が?」

( ●ш●)「そうですズラ」

(@●ш●)「珍しいことだ。ならばここに連れてまいれサトチー」

( ●ш●)「……ディガーズラ。まあいいや」
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 23:49:22.83 ID:Wuo/jzLa0
人波を掻き分けて、ディガーは僕とフサの元へ来た。


( ●ш●)「長老がお呼びズラよ」


モール族たちが退いて、長老のベッドが露になる。そこまで一直線だ。
僕はフサよりも先にぴょこぴょこと進んでいく。


長老のもとへ辿り着く。ディガーや他のモール族よりも、何本も皺が刻まれていた。
しわしわになった口が小さく開く。乾いた鼻がヒクヒクとしていた。


(@●ш●)「おお…… ネコミミか…… それと? それと隣にいるのは……?」

( ∵)「僕はサボテンのビコーズです!」

(@●ш●)「ほう。サボテン。喋るサボテンか。こりゃ面白い」

(@●ш●)「もっとこちらへ来なさい」

( ∵)「ビコーズだよ!」
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 23:56:41.94 ID:Wuo/jzLa0
(@●ш●)「エコーズよ…… こんな辺鄙な地に何の用じゃ?」

( ∵)「ビコーズだよ。 僕、人間になりたいんだ!」

(@●ш●)「なぬっ、ピローズ。また面白いこと言う」

( ∵)「ビコーズ!! 長老はすっごく物知りなんでしょ? どうすればサボテンが人間になれるか、教えてよ」

(@●ш●)「ラリーズ。ワシの話を聞け」

( ∵)「ビコry」「ほっとけズラ」(●ш●;)


物凄く当たり前のことを教えてあげよう。
当たり前だけど今の君には大切なことだ。
サボテンはサボテンに生まれたらずっとサボテンなんだ。
モグラに生まれたらずっとモグラ。
王様はずっと王様。商人はずっと商人だ。奴隷はずっと奴隷。



( ∵)「でも僕はただのサボテンだった! 喋りも動けもしないサボテンだったんだよ!」

(@●ш●)「ほう…… そもそもなんで君はそういうことができるのかいのう?」

ミ,,゚Д゚彡「分からないのか? 長老さん」

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/05(木) 00:00:02.56 ID:4Elj9rU80

(@●ш●)「うーむ…… それはだな」

(@●ш●)「確か、えーと」

(@●ш●)「……」


(;●ш●)「こりゃまずい」

( ∵)「え?」

( ●ш●)「また眠りそうズラ」

( ∵)「えぇーっ!?」



「オォオオーーーーーイ!!!!」





ミ,,゚Д゚彡「ん、なんだ?」

46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/05(木) 00:03:51.63 ID:4Elj9rU80



「ふん。中々いいところだ。VIP軍の新たな武器庫には最適だな」

「別れ道も難なく通過できたな。野生の勘か?」

「まあな」

「流石だな。兄者」



集落の入り口に、鎧の鉄が揺れる音がする。 そして二つの話し声。
門番は瞬時に彼らから発する悪を感じ取る。
ハンマーを手にし、話し声の主の一人に飛び掛った。


(メ●ш●)「くたばれぇー!!」

(;●ш●)「……ンッ!」


もう一人のほうに足払いをかけられ、豪快に転ぶモール。
痛がる顔に、白銀の鎧は近づいた。
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/05(木) 00:08:53.36 ID:4Elj9rU80
「なんだ? このゴーグルは」

(メ●ш●)「やっ、やめ……」

「ふん!」


騎士はモールのゴーグルを強引に剥ぎ取った。
モグラにとっては強すぎるほどの光が、剣のように彼の視覚を蝕む。

(;○ш○)「目、目がぁ、目がぁあああああああ!!!!」
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/05(木) 00:11:29.55 ID:4Elj9rU80
目を覆い、その場に悶絶するモール。
その背中を、踏み躙る具足。




( ´_ゝ`)「なんだこいつら、光に弱いのか?」

(´<_` )「モグラだからな。楽勝だよ、兄者」




VIP帝に仕える二人の戦士。 
 
エルダー・サスガ・ァ  

ヤンガ・サスガ・ァ


白金の兜からは、犬の耳がぴょこんと突き出る。地下の冷たい風に晒され、微かに震えた。
そう、彼らは「従属」の――――



(続く)

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