83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 01:15:01.33 ID:QlZq9i7P0
第十五話 「僕」




牙猫団のアジト。その一角で或る夫婦の会話が聞こえてくる。


(*゚ー゚)「ほらあなた…… 後ろの帯緩んでる」

(,,゚Д゚)「おお本当だ。直してくれ」


ギコは鏡に映った自分の姿を見て呟く。


(,,゚Д゚)「しっかしなんだね。いつ見てもこの格好はださいな」

(*゚ー゚)「いいのよ。今日はお城に招かれたんでしょ? ネコミミ族はネコミミ族の正装でいかなくちゃね」

(,,゚Д゚)「ご先祖様はセンス悪いなー。くそう」
86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 01:17:54.07 ID:QlZq9i7P0
着付けが終わり、くるりとターン。溜息一つ。
そして、おもむろに呟く。


(,,゚Д゚)「そういやフサは? 今日は、一応あいつも招かれているんだぜ」

(*゚ー゚)「先に城下町へ行ったわよ。用事があるって」

(,,゚Д゚)「そうか…… 正装か?」

(*゚ー゚)「普段着だったわね」

(,,゚Д゚)「畜生。あいつめ!」


ぶつぶつと文句を零しながらギコは地上へ出た。
あいも変わらず、砂漠を照らす太陽は大きい。しかし、その輝きは、今日なら希望の類に感じるのだった。

ホバーボートに勢いよくキーを差し込む。
そして、乗り込んだ。尻が座席に沈み込むのと同時に、エンジンが唸る気がいつもする。
88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 01:20:03.33 ID:QlZq9i7P0
ゴーグルを付け、ターバンを被り、アクセルに足を乗せる。
まさに出発のそのとき、シィが口を開いた。


(*゚ー゚)「あの、あなた」

(,,゚Д゚)「なんだい?」

(*゚ー゚)「なるべく早く帰ってきてね」

(*゚ー゚)「大切な話があるの」

(,,゚Д゚)「……わかったよ」




シィはホバーボートが地平線の彼方に消えるまで見送り続けた。
心なしか膨らんできたお腹をさすりながら。
90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 01:22:24.35 ID:QlZq9i7P0



VIPから解放されて一週間。レイラの街は賑わいを取り戻していた。
鬱陶しい関所もない。街に着いて、ギコはまずフサを捜すことにした。
通りを歩きながら、彼は思った。
街行く人々の顔に笑みがある。たとえ種族が違うとしても、その変化はとても嬉しいものがある。


(,,゚Д゚)「あいつのいそうなところは……」

「兄貴」


人ごみの中、見慣れた姿が顔を出した。


(,,゚Д゚)「おう! そっちから出てきてくれたか」

ミ,,゚Д゚彡「会議に出るのか?」

(,,゚Д゚)「そうだよ。お前も来るんだ」

ミ,,゚Д゚彡「絶対行かねぇよ」

(,,゚Д゚)「……そういうと思った。だが、ならばどうしてここに?」
92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 01:24:05.37 ID:QlZq9i7P0

ミ,,゚Д゚彡「……」

ミ,,゚Д゚彡「兄貴、大事な話があるんだ。城から戻ったらホバーボートの所で待ってるぜ」

(,,゚Д゚)「やれやれ、お前もかよ。わかった。じゃあな」

ミ,,゚Д゚彡「……」


フサは意気揚々と城門へと歩いていく兄をずっと見つめていた。
ターバンをいつもより目深に被りながら。


※ ※ ※ ※ ※


( ∵)「ふああーあ」

( ∵)「最近暇だなあ。街は賑やかになったけど」

( ∵)「ツンやフサたちと完璧に別れちゃったんだもん」

( ∵)「ま、いっか! それでもいつか会えるのが友達ってフサが言ってたもんね」

93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 01:25:38.88 ID:QlZq9i7P0
――僕はあの時から、ずっとレイラの城下町にいた。
城下町といっても、塀の外。だって、街をぴょこぴょこ歩いたら、街の人に驚かれるもんね。
あぁ、本当は色んな人と話したりしたいのだけれど、無理な願い。


( ∵)「だからずっとここに居ろって?」

( ∵)「……それじゃただのサボテンと変わらないじゃないか」


そう、最近思うことがある。
自分がなぜサボテンなのかってことに、疑問を持ち始めたんだ。
いや、もっと具体的に言うと、”自分がサボテンであること”に、疑問……
憤りに似た疑問を、感じている。


( ∵)「僕は人間みたいに喋ったりできるよ」

( ∵)「でも街に行って驚かれて、捕まえられたりしたら、意味がないじゃないか!」

( ∵)「―――あっ」

94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 01:30:00.30 ID:QlZq9i7P0

僕はフサが言った色んな言葉を思い出した。
そう、彼らも人間と同じような力を授かった故に、色んな悲しみを経験してきているんだ。

僕にもそのうち深い悲しみが……?

いや、今こそ悲しい時期だ。
誰か僕に会いに来て!



ξ゚听)ξ「やっほ」

( ∵)「どわー!!」


( ∵)「つ、ツン!」

ξ゚听)ξ「久しぶり、ビコーズ。まさかまた会えるとは思わなかったわ。」

( ∵)「ぼっ、僕もだよ!」

ξ゚听)ξ「驚くこと、覚えたんだね」


久しぶりに出会えたのに、とてもツンは乾いた表情をしている。
どうして? そう考えていると、お城のベルがリーンゴーンと鳴った。
僕は、お城のベルが鳴るのを聴くのは初めてだった。
95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 01:31:31.30 ID:QlZq9i7P0


会議の間。厳粛な雰囲気が漂う。
円状のテーブルに座るのは、レイラ王、ギコ、ショボンだ。



/ ,' 3 「……それではこれから会議を始める」

/ ,' 3 「ギコ殿、フサ殿はどうしたんだね?」

(,,゚Д゚)「あいつは人間嫌いだから欠席です」

/ ,' 3 「……そうかね」


/ ,' 3 「まずはお礼を述べたい。ショボン殿、今回の奪還作戦非常に感謝致す」

(´・ω・`) 「非常に感謝致されました」

レイラ王はむっとしたような表情を浮かべる。
ショボンは早く本題に入りたそうな素振りだ。
95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 01:31:31.30 ID:QlZq9i7P0


会議の間。厳粛な雰囲気が漂う。
円状のテーブルに座るのは、レイラ王、ギコ、ショボンだ。



/ ,' 3 「……それではこれから会議を始める」

/ ,' 3 「ギコ殿、フサ殿はどうしたんだね?」

(,,゚Д゚)「あいつは人間嫌いだから欠席です」

/ ,' 3 「……そうかね」


/ ,' 3 「まずはお礼を述べたい。ショボン殿、今回の奪還作戦非常に感謝致す」

(´・ω・`) 「非常に感謝致されました」

レイラ王はむっとしたような表情を浮かべる。
ショボンは早く本題に入りたそうな素振りだ。
96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 01:34:16.29 ID:QlZq9i7P0
/ ,' 3 「いやはや。私はVIPをなめていたかもしれぬ」

/ ,' 3 「なんといっても、ツンから訊いていたが」

(´・ω・`) 「魔法兵か」

/ ,' 3 「そうじゃ。そいつらの存在が大きかったかもしれぬ……」

(´・ω・`) 「結局対決できなかったな。私にとっては未だ未知数の存在だ」

(,,゚Д゚)「じゃ、じゃあレイラもマホウヘイ雇えばいいじゃねぇか」

(´・ω・`) 「ネコミミはとりあえず黙ってな」

(,,゚Д゚)「むっ……」

/ ,' 3 「紳士らしからぬ態度だなショボン。そんなに本題が気になるか」

(´・ω・`) 「ああ、気になるね」
97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 01:36:32.79 ID:QlZq9i7P0

/ ,' 3 「……」

/ ,' 3 「今のところ、ワシはレジスタンスとも牙猫団とも手を組むつもりはないぞ」

ギコとショボンの表情が、一瞬にして強張る。

(´・ω・`) 「……!!」

/ ,' 3 「だが」

/ ,' 3 「城下町内の自由をネコミミ族には与えよう。もちろんそれに合わせた法も順次作成する」

ギコの方のみ、頬が緩む。

(,,゚Д゚)「あ、ありがてえ。ならば俺たちの要求はほとんど満たされたようなものだ」

/ ,' 3 「そうであろう? だからこその決断じゃ」

/ ,' 3 「同じようにショボン」

/ ,' 3 「お主もそうであろう。レイラと同盟を組みたいという裏には」

(´・ω・`) 「……」

ショボンは、「言うな」という意味を込めた強い視線を王に送る。
恐らく、第三者が同席しているからだろう。
98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 01:38:42.63 ID:QlZq9i7P0
/ ,' 3 「確かにVIPは強大じゃ…… これからさらに強くなるだろう」

/ ,' 3 「しかしじゃ。今ここでまんじゅうのようにフタバ地区の組織が合わさってもだな」

/ ,' 3 「烏合の衆じゃ」

ショボンが、やや強めの口調で反駁する。

(´・ω・`) 「ならば王が考える、現時点での最善の判断は?」

/ ,' 3 「敵の研究じゃ」

真っ当すぎる返答に、ショボンは思わず拳をテーブルに叩きつける。

(´・ω・`) 「そんな猶予はあるのか。サーバ砂漠全域がVIPに支配されてもいいのか!?」

/ ,' 3 「年を取ってせっかちになったのう。お主は」

(´・ω・`) 「ふん」

99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 01:41:38.13 ID:QlZq9i7P0
/ ,' 3 「明日、東の国から使節団が来る」

/ ,' 3 「東の国は天文術が進歩しているのじゃ。きっと”レイ”の核心にも触れられるかもしれん」

(´・ω・`) 「レイ!? そんなものはこの砂漠のローカル的なものではないか?」

/ ,' 3 「それはまだ分からんわい」

(´・ω・`) 「ふん。まるで話が通じない。今日は帰るぞ」

/ ,' 3 「……」


ショボンが重苦しい空気を残して退室した。
ギコはそんな雰囲気に耐え切れず、沈黙を割る。


(,,゚Д゚)「どうしてレジスタンスはレイラと同盟を?」

/ ,' 3 「なぜじゃろうな。ふぉっ」

/ ,' 3 「……」
101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 01:43:17.25 ID:QlZq9i7P0
レイラ王は、眉間に皺を寄せる。そして、ショボンが退席した扉をずっと、じっと、見つめていた。


/ ,' 3 (あのとき、魔法兵によってどれだけの兵士が殺されたか分かるかショボンよ……)

/ ,' 3 (分かってくれ。今は守りの時期じゃ……)


※ ※ ※ ※ ※


ξ゚听)ξ「……ふーん。で、そのA作とB次郎ってのが面白かったのね」

( ∵)「A次郎とB作だよ! …多分」

( ∵)「でね! でね!」

( ∵)「えっと……」

ξ゚听)ξ「……」

102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 01:44:42.00 ID:QlZq9i7P0
――どうしてツンはそんなに悲しそうなの?


ξ゚听)ξ(……はっ)

ξ゚听)ξ「そ、そうかしら?」

( ∵)「うん。だって僕がおしゃべりしても、ちっとも笑わないんだもん」

ξ゚听)ξ「あはは」

( ∵)「それは作り笑い。サボテンでも分かるさ」

ξ゚听)ξ「……腹立ってんのよ」

( ∵)「僕に?」

ξ゚听)ξ「違うわ」



ξ )ξ「自分の不甲斐なさに……」

103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 01:45:56.74 ID:QlZq9i7P0
次はツンがおしゃべりをした。
どうやら、ツンもツンで大変だったらしい。お父さんを助けるために、城の下に潜ったようだ。
でも、そこにいるのはお父さんじゃなかった。
それを見抜けなかったのが、本当に悔しかったみたい。


ξ゚听)ξ「私ってやっぱり駄目ね。ショボンさんに助けを求めるくらいしか役に立ってない」

( ∵)「それで十分だと思うんだけど……」

ξ゚听)ξ「あー! 今でもあの地下のことを思い出すと! 情けなくて、恥ずかしくて、苛立ってくるわ!」

( ∵)「……」

( ∵)「でも、お父さんが無事で、良かったじゃない」

ξ゚听)ξ「……」

なぜか僕はそのとき、怒ったような声で、言ってしまったんだ。

( ∵)「僕なんか、お父さんって存在すらいないんだ!!」

ξ 凵@)ξ「…………」

104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 01:47:39.68 ID:QlZq9i7P0
( ∵)「家族かぁ」

( ∵)「僕、最近、思うんだ」

( ∵)「人間っていいなって……」

ξ゚听)ξ「そう? 人間も色々大変よ?」

( ∵)「……」


僕は、次の言葉を口にするのを少しためらった。
でも、ツンは一番の友達だから、言っても大丈夫だと思ったんだ。


ねえ、ツン?

なぁに?





――――ぼく、人間になりたいんだ。






106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 01:49:25.30 ID:QlZq9i7P0

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        ・・・・
108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 01:50:38.32 ID:QlZq9i7P0




船の倉庫。鼠は、出航の前、男たちが退治した。
生き物の気配はないはずだ。
それなのに、なぜ奥から三番目の大樽がぐらぐらと揺れているのか。
今夜は、潮風も波も、穏やかなのに。


めきり、めきりと、樽が割れる音がする。


「……ぷはぁ〜。やっと出られた」


大きい鼠か? 勿論違う。
”彼”は懐に忍ばせておいた果物ナイフを誇らしげに見つめた。

そして、ゆっくりと樽から身を乗り出す。
抜き足、差し足、忍び足で、倉庫の入り口へと向かう。
この感触、どうやら鍵は掛けられていない。引き戸のようだ。


使う予定だったナイフをそっと仕舞い、甲板へ出る。
久方ぶりの外の空気に、”彼”は思い切り伸びをしてみる。
実に清清しい気分だ。たとえ時刻が真夜中だとしても。
110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 01:52:00.51 ID:QlZq9i7P0
「さあーて……」


酔っ払った船員が近寄る。異常な酒臭さに、思わず鼻を摘んだ。


(おっ、これは臭いも消せるし声色も変えられるから一石二鳥!)

「お前…… その服は、天文学徒か?」

「は、はい! そうですお! ……じゃない、そうでございます!」

「ガキは早く寝ろよぉ? うーい。ひっく」

(良かった。鼻摘んどいて)

111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 01:53:46.13 ID:QlZq9i7P0



 ……あんな所、二度と戻るもんか。

  僕は、一人でもちゃんとやっていけるんだ。

   それを証明させてやる。

    僕は僕。 僕には、僕だけの人生があるんだ!!





( ^ω^)(レイラ国…… どんな国だろう?)

(*^ω^)(胸が、どきどきするおwwww)



少年。どこにでもいるような少年。
両手を広げ、甲板をドタドタと走り抜けた。



船はゆっくり西へと進む。
行く先は、サーバ砂漠。

(続く)

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