3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/14(土) 22:11:24.13 ID:8lrne8sY0
第十三話 上は洪水・下は大火事(前)



太陽の輝く世界から隔離された空間。
ドクオの炎の剣だけが光源となって、その場を照らしていた。
慄くレイラ王。そしてツン。


勿論、依然として剣士は寡黙を貫くのみ。


/ ,' 3 「……」

('A`)「……」

ξ;゚听)ξ「ドクオさん! 何を!?」


王が小さく口を開く。


/ ,' 3 「ほう。所詮雇われの兵士なんぞ信用できぬということじゃ」

/ ,' 3 「貴様はどこの反逆者かな?」
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/14(土) 22:13:25.70 ID:8lrne8sY0
ξ;゚听)ξ(そんな…… ドクオさんが……)


王が腰元の短剣に手をかけた。 
刀身は短いといえども、王の所持する武器。材質は特別で、切れ味は優と推測できる。
一方、ドクオの構えはぴくりとも変わらず。揺らめく剣先は、王の眉間を指していた。

/ ,' 3 「ふん。炎の剣か。史書で見たことがあるようなないような…… だな」

/ ,' 3 「ワシを斬って本当に良いのかな? 今頃、上の階ではショボンが魔法兵を破っているだろうな」

('A`)「……」

/ ,' 3 「構わんと?」



対峙する王とドクオ。緊迫した空気に、ツンが一石を投じた。



ξ;゚听)ξ「ドクオ!! 剣を下げなさいっ!!!」


('A` )「!」
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/14(土) 22:15:26.06 ID:8lrne8sY0
/ ,' 3 「去ね!」


ツンの怒号に一瞬反応してしまったドクオ。
その瞬間を狙い、王は彼の胸元を目掛け踏み込んだ。
しかし。


ドクオはまるでその動作を予測していたかのように、受け流す。
死角を取られた王の左腕に、大剣が振り下ろされた。
思わずツンは目を伏せる――


ξ; )ξ「お父様ぁーーー!!!」

/ ,' 3 「あ゛ぁあああああっっ!!!」



('A`)「……」



滴る血溜まり。
その中央に、王の豪腕が、ぼとりと落ちた。

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/14(土) 22:17:29.76 ID:8lrne8sY0



(´・ω・`) 「どーなってんだこりゃ」

川 ゚ -゚)「まやかし… ですね」


城内も、地下と同じくショボン達に幻覚を見せていた。
どの扉を開いても、辿り着く部屋は堂々巡り。階段を下りても上ってもフロアは変わらない。
窓の外からは喧騒が続く。


(´・ω・`) 「これは面倒だな……」

川 ゚ -゚)「闇雲に進んでも絶対に親玉のところには辿り付けません」

(´・ω・`) 「何か策があるか」

川 ゚ -゚)「この世の全てには普遍の真理、絶対的な法則があります……」

(´・ω・`) 「そんなの分かっているさ」

(´・ω・`) 「しかし、今、我々が置かれている状況は例外だろう?」

(´・ω・`) 「ランダム、なんだよ」
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/14(土) 22:19:04.90 ID:8lrne8sY0
川 ゚ -゚)「果たしてそうでしょうか」


そう言うと、クーは手前の扉へと駆けた。
この扉は、ドアノブが青色に塗られている。
ショボンは後を追い、彼女に尋ねる。

(´・ω・`) 「もしや扉のドアノブの色の相関性か?」

川 ゚ -゚)「もしや です」


ドアノブを回し扉を開ける。二階から一階へと戻ってきてしまった二人。
しかし、後ろを振り向いてノブの色を確認すると、青である。

(´・ω・`) 「なんという簡単なことなんだ。急いでいたから、出口側の扉のノブの色など見ていなかった」

川 ゚ -゚)「そんなものです。さて、三階の階段に通じる二階のドアノブの色は?」


ショボンは眉間に皺を寄せ、おもむろに瞳を閉じた。
遥か遥か昔のことのように思える、あの時期のことを、ゆっくりと思い出そうとする。
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/14(土) 22:21:12.33 ID:8lrne8sY0
(´-ω-`)「……」


まだあの頃のアラマキは王子だった。
そう、先代の王にいつも謁見していた。その都度登らなければいけなかったあの階段。
そしてその前に置かれていた扉……


(´・ω・`) 「黄色だ」


川 ゚ -゚)「捜しましょう。そして、そこに徐々に近づいていくのです」

(´・ω・`) 「よし」



再び走り出す二人。
迷宮の謎は少しずつ解けてきたものの、ショボンもまた焦燥を感じていた。

王女と未知数の剣士。果たしてそうスムーズに任務は成功するだろうか。
そんな親心のような不安と、この城にかけられたまやかしへの憤り。
それが、彼の足並みを急かせていた。
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/14(土) 22:23:39.87 ID:8lrne8sY0
――数分が過ぎた。まだなんとか手下達はVIPを混乱させているようだ。
しかし、思わぬ壁にぶち当たる。
単純な仕掛けには、単純故の理不尽さがある。


(;´・ω・`) 「くっ……」

川 ゚ -゚)「黄色のドアノブを持つ扉が、ありませんね」

(´・ω・`) 「まやかしを理解したところで、城内のほとんどの場所には辿り着くことができた」

(´・ω・`) 「だがしかし…… そこらの何処にも黄色のドアノブがないということは」

川 ゚ -゚)「階段を登ることができないということですね」

(´・ω・`) 「考えろ。考えるんだ」



そう言って、神妙な顔をしてショボンは地べたに座り込んだ。
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/14(土) 22:26:23.63 ID:8lrne8sY0
(´・ω・`) (ふん。私としたことが中々手こずらされているではないか)

(´・ω・`) (このまやかしがもし レイ とやらの力だったら)

(´・ω・`) (私たちは手ごわい相手に喧嘩を売っていることになるな)

(´・ω・`) (だがこちらにも勝算はある)

(´・ω・`) (そのためにはツン王女が…… ドクオ、頼むからしっかり護っていてくれよ)

(´・ω・`) (しかし、どうするべきか……)



※ ※ ※ ※ ※ ※



/ ,' 3 「ぐっ…… 血が、血が止まらぬ!!!!」

ξ;听)ξ「お父様! 大丈夫ですか!?」



ツンは首に巻いていたスカーフを解き、それで父の手当てをしようと接近した。
同じく歩を進めるドクオ。しかし接近の方向はツンだった。

ξ;听)ξ(!! まさか私まで!?)

('A`)「……」
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/14(土) 22:30:22.40 ID:8lrne8sY0
('A`)「……」

('A` ) ぷい


ξ;゚听)ξ「何よ…… どけろっていうの? させないわ! お父様は私が護る!」

/ ,' 3 「ぐっ…… ツンよ」


次の瞬間、ドクオの大きなモーションがツンを捕らえた。
剣を持たぬ方の腕で、王から剥ぎ取られるように、吹き飛ばされるツン。
石の壁に頭を叩き付けられ、意識は遠のいてしまった。


再び対峙する二人。先程とは違い、王の額には汗が滴っている。

('A`)「……」



/ ,' 3 「ふん…… 斬るのか? 本当に…… 斬るのか?」
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/14(土) 22:33:02.21 ID:8lrne8sY0
('A`)「……」

ドクオはこくりと頷いた。

/ ,' 3 「……」


/ ,' 3 「…なぜだ? なぜダ?」


「ナゼ、バレタアァアアアアアア!!!!!!!!!!」


――レイラ王という人間の形が変質する。

皮膚はドス黒く染められ、ぶくぶくと膨れ上がる。

額からは角が突き出し、眼球が勢いよく飛び出た。

衣服という名の飾りは、身体の肥大によって破り捨てられ、

代わりに、おどろおどろしい斑紋が浮かび上がる。



ドクオは、剣を、下げない。



(続く)

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