27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 20:54:13.55 ID:icfGXhWH0
第十一話 突撃!!


今、向こうの塀の角を、確かに二つの頭が曲がった。
スカーフで顔を隠していたけど、少しだけ漏れた髪の毛の黄色は、絶対にツン。
サボテンの目はフシアナだから、よく見えるんだ。


( ∵)「見つけた! ツン! ツーーン!」

「なんだねアレ」

ミ,,゚Д゚彡「海の向こうのオモチャだ。面白いだろ?
      ほらよ、通行証だ」

「…偽物じゃないだろうな」

ミ,,゚Д゚彡「もしこの紙切れが偽物で、そしてそれが見破られても、
      お前が誰かを呼ぶ前に喉を掻っ切るだけだ」
「…通れ」
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 20:58:10.10 ID:icfGXhWH0
(,,゚Д゚)「お前はそこにいろよー! 町にいると厄介だから!」

「うん! それ、ツンにも言われたー!」

(,,゚Д゚)「…勝手にどっかいっちまった」

(,,゚Д゚)(まあ町の周りなら別に… 大丈夫かな)


※ ※ ※


自分は空を飛ぶ鳥だと思って、動いた。ヒョコヒョコと。
これが人間でいうところの、「走る」っていう自分なりの動作なんだけど…
中々疲れるな。 でも、ツンに会って話がしたい。
僕が見たこと聞いたこと。 たった一晩のことだけど沢山あるんだ。
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 20:59:32.50 ID:icfGXhWH0
(;∵)(この塀は…)

(;∵)(どこまで続くのかなー)

(;∵)(でっかいお城…)

(;∵)(ツンって金持ちなんだなぁ…)

(;∵)(あ、いちばんてっぺんから人が出てきた)

(;∵)(でっかい剣に… おっきいヨロイ… 黒いヨロイ…)

(;∵)(…)

(;∵)(あれは人じゃない。僕にはわかる)

(;∵)(だけど… 今はどうでもいいことだ!)

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 21:01:44.32 ID:icfGXhWH0

城の尖塔に建てられた旗は、夜の空みたいな色をしてる。
ここはレイラの国なのに、印された文字は「V」 これが「せんりょう」ってことなのかな。

VIPは乱暴者。ツンは乱暴者にいじめられて、追い出されて、砂漠で死に掛けていた。
それを僕が助けた!! 二人は出会った!!
なんて素敵なことなんだろうって… 今更ながら思うんだ。


( ∵)「はあ… はあ… やっと、ちょくせんの終わり」

( ∵)「この角をツンは曲がったんだ! ツンはこの先にいる!」


希望を胸に塀を曲がった。巨大な城の裏側が僕を出迎える。
しかしツンの姿はない。 代わりにヨロイを着た男の人が二人重ねて倒れていた。
あの人たちに話を聞いてみよう。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 21:03:47.58 ID:icfGXhWH0
〜〜( ∵) ぴょこぴょこぴょこ


( ∵)「こんにちは」

( ∵)「僕は喋るサボテンのビコーズといいます」

( ∵)「あのー… このへんに可愛い女の子がいませんでしたか?」

( ∵)「名前は…」

(×A×)「…」

( ∵)「ツンというんですけど」

(×B×)「…」

( ∵)「…」


僕はお日様が沈まないと絶対に眠れないのに、人間って何時でも寝ちゃう。
面白いなあって思うのだけれど、ツンはどこ?

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 21:05:19.59 ID:icfGXhWH0
( ∵)「この階段を下れば城の中」

( ∵)「城の中で会えるかな?」

( ∵)「でも… 城の中は地下。地下は地面の中。
   地面の中はあんまり好きじゃない。太陽がないから」

( ∵)「…」

( ∵)「とりあえずここでツンが出てくるか、この人たちが起きるかを待とう」


どっちが早いかなあ なんて思いながら、僕は足を地に這わせた。
久しぶりに僕はただのサボテンとなる。少し考え事もしたいけれど、疲れてしまった。
ギコ達の買い物が終わるまで、一休みしよう。


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 21:07:08.20 ID:icfGXhWH0
( ∵)「…」

( ∵)「もしもーし」

( ∵)「だめだこりゃ。 …ん?」

(×A×)「ちっくしょ… 女が男を殴っちゃ… あきまへんで…」

( ∵)「なんか、殴られたあとみたいな、アザがあるなあ」







※ ※ ※


VIPの支配下に置かれた城下町は、当然のことながら殺伐としている。
そんな中、各地を転々とする、故郷を持たない流浪商人のあっけらかんとした商いの声が通りには響く。
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 21:09:09.48 ID:icfGXhWH0
(´・ω・`) 「もうかるかい」

商いに冷かしの声をかけた男。
袈裟に身を包んだその姿、かつてのこの国の英雄だとは、誰も分からない。

「さっぱりでさぁ。 現地の人はみんなそっぽ向いてくれる
 VIPの兵隊さんや亜人が時々相手してくれるね」

(´・ω・`) 「そこの酒、小瓶でひとつくれよ」

「25レスになりやす。あんさん、戦士かい?」

(´・ω・`) 「ああ、これから一戦あるんだ。景気づけにね」

「いくさ?」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 21:12:22.42 ID:icfGXhWH0
ショボンは安酒を体に流し込みながら答える。

(´・ω・`) 「今日はもう店じまいしたほうがいいぜ。じゃあな」

彼の手を離れた小瓶が、地に落ちて欠片を飛ばした。欠片は太陽の光に照らされキラキラと光った。

「あーあ、ダンナ、困りますよ」



ショボンはゆらり城門へ向かった。 
大通りには、町人に扮したレジスタンス兵が、いつ蜂起が起ってもいいよう、武器を忍ばせて建物にもたれている。


43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 21:14:50.22 ID:icfGXhWH0
※ ※ ※


(´・ω・`) 「うーい ひっく おえっ」

左の門番が言う。

「オッサン、ここは便所じゃねーよ」

右の門場が言う。

「汚い赤い面、早くさげろ」

(´・ω・`) 「ふふふ…」

不敵に笑う酔っ払い。後ろに隠していた右手を手前に出した。
その手は鋭く、尖ったものを握っていた。


「これはなんだ? 答えてみろ、酔っ払い」

(´・ω・`) 「これは、短剣ですな」

「そうだ。刃物だ、武器だ。 危ないよな?
 早くしまえ」

(´・ω・`) 「ふふふ、嫌だと言ったら?」
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 21:16:51.12 ID:icfGXhWH0
「そうか。嫌か」

「私の右手が握っている剣は、お前のそれより何倍も長くて切れ味がいいと思うぞ」

(´・ω・`) 「そうですかい」

(´・ω・`) 「……」

「―――喝!!!!!!!!!!!」





鈍く小さな音が鳴った。それと同時に門番は後ろへ吹っ飛ぶ。豪脚が唸った。
左の門番は大きく慌てる。しかし既に喉元は剣先が睨んでいた。







(´・ω・`) 「いけえええええっ!!!!!」


湧き上がる男たちの声。VIPの兵士たちは剣を構えて血の覚悟をした。
城下町の民たちは、事前のレジスタンス兵の指示通り扉を固く閉め、戦いの勝利を祈った。
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 21:19:46.40 ID:icfGXhWH0
※ ※ ※

城下町での戦いは、あくまで兵たちをかく乱させるというのが目的。
レジスタンス達はやや大袈裟に騒ぎながら、
血を流さぬよう、民家に被害が及ばぬよう、防戦を続けた。






混乱の中、陣の後ろからクーが飛び出る。
屈強な門を破壊するための大火球が、手には蓄えられていた。


(´・ω・`) 「まるで今日のお日様みたいにでっかいな」

川 ゚ -゚)「マスター! 危ないですので五歩左に!」


クーは手首の力を少しばかり緩め、門へと腕を伸ばした。
抑え付けていた火球が、手から離れ、轟音を伴って一直線に飛んでいく。
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 21:22:25.86 ID:icfGXhWH0
火球は見事門に衝突し、その身を焦がさせた。
有機物が燃える煙をかわしつつ、ショボンは棍棒を用いて扉を破壊していく。
やがて扉は壊され、炎の壁の向こうに敵の顔が見えた。 
しかし、火炎のせいでショボン側に移動することができず、もどかしい気持ちを抱くうち、ショボンの一突きに倒れた。

城内にはほとんど兵はいなかったため、二階三階からの攻撃も、軍師を担当したクーの予想よりずっと微々たるものだった。



(´・ω・`) 「よし、突入だ! クーよ、この炎の壁をなんとかしてくれ!
      はやく消火しなければ城もろとも燃えてしまう!」

川 ゚ -゚)「……」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 21:24:42.25 ID:icfGXhWH0
クーの人差し指から高水圧の水鉄砲が発射される。火の壁はみるみるうちに消えていった。


(´・ω・`) 「お前ら! 痛くても泣くなよ! 勝利を信じろ!」

「「「はい!!!」」

(´・ω・`) 「それでは行くぞクー!」

川 ゚ -゚)「はっ!」

二人の影は消火の煙の中へと消えていった。 町では戦いを装ったどんちゃん騒ぎ。 
作戦開始からものの20分しか経っていなかった―――

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 21:26:29.54 ID:icfGXhWH0
※ ※ ※


(,,゚Д゚)「おいおいなんだこの騒ぎはぁ!?」

ギコの目に逃げ足の商人がとまった。

(,,゚Д゚)「おいそこのあきんど! どうしたんだこの状況は?」

「あっしはわかりませんで。 なにやら戦いが始まったようですぜ…」

(,,゚Д゚)「なにぃ…?」

ミ,,゚Д゚彡「兄貴」

(,,゚Д゚)「どうした、積荷は終わったのか?」

ミ,,゚Д゚彡「最後の荷物が見つからねえ」

(,,゚Д゚)「…ビコーズか?」


フサはこくりと頷く。 
様々な厄介ごとが重なったせいか、彼らの尻尾と長耳は自然とうなだれていた。


(続く)
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