4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 20:23:45.84 ID:icfGXhWH0
第十話 特別








それぞれの思いを浮かばせた夜空は、朝の光が眩しくて逃げてしまった。
薄い雲を纏って、気高い山の上に居座って、太陽は今日の日も砂漠の人々を照らす。
ロック山脈の麓、銀猫盗賊団アジト入り口のモグラ穴、
違う場所から同じその光を強く睨める者たちがいた。 

幸か不幸か彼らの目的地は同じ点。
ツンの故郷であるレイラ国だ。
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 20:25:48.57 ID:icfGXhWH0
砂漠をふらふらと舞う旅烏が、姫がこしかけている灌木に止まった。
太陽はまだ彼らの真上に来ているわけではない。
ナナの刻。レイラ奪還作戦開始予定時刻は目と鼻の先。


川 ゚ -゚)「…それではもう一度だけ繰り返します」

(´・ω・`) 「うむ」

ξ゚听)ξ「…」

(´・ω・`) 「姫。確かに今日は素晴らしきかな晴天だが」

ξ;゚听)ξ「すみません」

川 ゚ -゚)「では繰り返します」


川 ゚ -゚)「班は三つ。かく乱班、潜入班、突撃班
     かく乱班は夜明けと共に既に出発しました。今頃町の隅で最終の確認を行っていることでしょう。
     潜入班は姫様とドクオ。何かトラブルが起きたときは必ずやドクオが姫様をお助け致します」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 20:29:01.39 ID:icfGXhWH0
ξ゚听)ξ「よろしく頼みます。ドクオさん」

('A`)「…」

ドクオはひたすら押し黙る。
ただ、紅蓮の鎧を太陽に反射させ輝かせていた。
この寡黙な男がどれくらいの剣を振るうものなのかと、ツンは大いなる期待を寄せた。

(´・ω・`) 「地下の間取りや王が幽閉されているところは把握しているのか?」

ξ゚听)ξ「ええ、大体は」

(´・ω・`) 「ならいいんだ」

川 ゚ -゚)「続けます」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 20:31:46.64 ID:icfGXhWH0
川 ゚ -゚)「突撃班は私とマスター。城を占領している相手側のボスはおそらく魔法兵
     不可思議・正体不明な標的ゆえ勝算を正しく割り出すことは難しいです
     私の能力が効くのかどうかさえわかりません」

(´・ω・`) 「もし私たちが刺し違えても王だけは救出してくれよな。はは」

ξ゚听)ξ「そんな縁起でもない。」(´・ω・`) 「だがそれが戦場さ!」


リレーのバトンを受け取るようにツンの言葉に続いた。
ツンははっとして彼の顔を見たが、口元がどうやら緩んでいる。
ショボンはこれから起こるであろう戦いを、何かしらの楽しみをもって迎えるようだ。
彼は根からの武人であるとツンは確認した。


(´・ω・`) 「魔法兵か… もし本当にそうならとても面白い戦いになりそうだ」

(´・ω・`) 「剣や拳の達人がいたとしても、それはそれで楽しいがな」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 20:34:14.13 ID:icfGXhWH0
川 ゚ -゚)「作戦終了時刻は未定。二夜三夜に跨る戦いには」

(´・ω・`) 「なるわけないさ。お昼前には終わらせてみせる」

ξ゚听)ξ「まるで遠足ね」

川 ゚ -゚)「それでは無事レイラで美味しい酒を飲み交わすことができるよう―――」


クーとドクオとショボンはそれぞれ手にする剣や杖を空に掲げ、一点に先を向けた。
太陽の光を浴びる騎士たちの姿に、ツンは彼らが内に秘めている力を感じる。

(´・ω・`) 「それではいざ行かん!」





旅烏もその場から飛び立った。
但し行き先は、気の向くまま風の吹くままだ。
今日は無風の日だった。烏は体が熱くなって、水でも飲みたいなあとふと思う。
ショボンたちと反対方向に、ふらふら飛んでいった。



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 20:36:26.79 ID:icfGXhWH0
※ ※ ※


ミ,,゚Д゚彡「なんか、泉のまわりにスナカラスが多いな
      邪魔だ。しっしっ!」

┌| ∵|┘「今日は風が吹いていないんだ。だから鳥さんたちも喉が渇いているんだね」

ミ,,゚Д゚彡「お前は?」

┌| ∵|┘「ずっと薄暗いとこにいたから、太陽のひかりがとっても気持ちいい」

┌| ∵|┘「太陽の下にいるとね、すごく生きてるってカンジがするんだ! フサもそうだろ?」

ミ,,゚Д゚彡「そーだな。俺ぁヒナタに寝転がって昼寝しているときが一番幸せだ」

┌| ∵|┘「ははは! フサはやっぱり猫さんだね!」


「おーい! 水汲み終わったか!」


ミ,,゚Д゚彡「もう少しで終わるよ!」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 20:38:57.13 ID:icfGXhWH0
今日はレイラって町に買い物しに僕らは行く。
レイラって言葉、どこかで聞いたことがあると思ったら、ツンが生まれた場所なんだ。
そういえばツンと離れ離れになって、もう一日くらい。
彼女は今どこで何をしてるんだろう? 
「門の前にいなさい」って言われたけど、守れなかったから、怒ってるかな。

※ ※ ※

ホバーボートは砂漠をガガガガとはしる。
太陽は今日もメラメラもえる。
後ろの筒からはゴゴゴゴとけむりがでていた。



( ∵)「ギコ、この煙なんだい?」

(,,゚Д゚)「鉄のカタマリってのはアブラを飲んで煙を吐いて動くのさ」

( ∵)「ふーん! キカイも僕やギコたちとあまり変わらないね」

(,,゚Д゚)「そうか?」

( ∵)「うん」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 20:43:11.77 ID:icfGXhWH0
(,,゚Д゚)「そういえば燃料も買わなきゃなあ」

ミ,,゚Д゚彡「ウワサによるとまた高くなったらしい」

(,,゚Д゚)「ケッ! VIPの世はクソッタレだな」

ミ,,゚Д゚彡「純血のニンゲンが一番上を支配する限りは、どの国だってクソッタレだろう」

(,,゚Д゚)「…」


ギコは黙ってホバーボートの速度をあげた。
煙がさっきよりいっぱい出てくるから、それが面白くて僕はボートの後ろにいた。
通り過ぎるサボテンたちに一つ一つ挨拶をしたいけど、今日は無理みたいだ。
とても気持ちがいいな。照りつける太陽。吹き抜ける風。
ただ砂漠に突き刺さってるだけの彼らは、こんな気持ち分からないんだろうな。
僕はどこか自慢げになった。
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 20:45:30.68 ID:icfGXhWH0
( ∵)「…ところで」



( ∵)「VIPって何?」


(,,゚Д゚)「大きな国の一つさ。この大砂漠には国が大きく分けて三つあるんだ
     VIP帝国、レイラ王国、モラ皇国… こないだの戦でレイラよりVIPのほうが偉くなっちまった
     モラは永世中立だがな、いつVIPの乱暴者にケガさせられるかわかんねえ」

( ∵)「乱暴者は嫌いだ」

(,,゚Д゚)「ああ、みんな嫌いさ。」


またスピードがあがった。僕はふっとばされそうになる。
そういえば、年に一度くらいに、地に根を張ってても吹き飛ばされそうな風が吹く日も、あったかもなあ。
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 20:48:03.24 ID:icfGXhWH0
(,,゚Д゚)「乱暴者をとっちめてくれるよう、お前のお友達にお願いしてくれよ」

ミ,,゚Д゚彡「友達?」

(,,゚Д゚)「ああ。ビコーズ、お前レイラのお姫様と友達なんだろ?」

( ∵)「うん!」

ミ,,゚Д゚彡「はん。昨夜言ってたツンって子か。どこかで聞いた名前だと思ったら…
      サボテンの妄言だろ」

(,,゚Д゚)「サボテンが妄言なんて言うのかな…」

( ∵)「っていうか、まず、サボテンが喋ったり動くかな?」

(,,゚Д゚)「がはははは! 自分で言うなよ」


ギコは陽気に笑う。その脇でフサも小さく笑った。
笑わないで欲しかったんだホントは。 最近、僕の「考え事」の中で大きな部分を占めていることなんだ。



僕は特別なのかな? それとも別に普通なのかな?



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 20:51:41.08 ID:icfGXhWH0


僕が僕を手に入れた最初の日は、それはもう、自分は特別なんだって、
天にも昇るような気持ちだった。

でも、ツンや、ギコ達と出会って、世界を知っていくうちに…
特別 だってことは、必ずしも、いいことじゃないって、思った。
フサが、顔を捻じ曲げて耳のない頭を見せたとき、そう気付いたんだ。

僕もそのうち…



( ∵)つ(お前は特別なサボテンです! だから連行しまーす!)

⊂(∵ )(特別なサボテンはこうしてやります! 棘を全部抜いてやります!)

(#∵)(”イマシメ”だ!! はーははは!)

( ∵)「…」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/11(火) 20:53:05.64 ID:icfGXhWH0
( ∵)「もし、そうなったら… すごく、やだな」

(,,゚Д゚)「あん、何が?」

ミ,,゚Д゚彡「ついたぜ。VIPの兵が訝しげにこっち見てやがる」





「ところでさあ… 僕、友達と離れ離れになったまんまなんだけど、また逢えるかな?」

「必ず逢えるさ。それが友達ってもんなんだ」

「ふぅん」

「兄貴、通行証早くよこせ」



「――――あっ!!!!」



(続く)

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