- 108 :第二章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/13(土) 22:38:58.01 ID:386queVa0
アッーと言う間に定時。
六時を告げるアナウンスが社内に響いた。
( ^ω^) 「じゃあ今日は帰りますお」
ξ゚听)ξ 「さようなら。お母様によろしくね」
( ^ω^) 「心配してくれて有り難うですお」
軽い会釈をし、ツンは微笑みを返してくれる。
僕は会社を出た。太陽は沈みかけ、満月が顔をのぞかせている。
( ^ω^) 「カーチャン………」
僕は勇み足で駅へ向かい、列車に乗り込んだ。
列車は帰宅ラッシュで混んでいたが、何とか席を奪うことができた。
( ^ω^) 「ふう……」
小さな溜息が口をつく。
僕は押し合いへし合いになる眼前を見据えながら、ギュッと鞄を抱きしめた。
- 109 :第二章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/13(土) 22:39:18.56 ID:386queVa0
( ^ω^) 「カーチャン……」
僕は病院の前に立っていた。
寂しげなライトに照らされた白塗りの壁は、月下の光を受けて光っている。
( ^ω^) 「僕は……本当に良い息子ですかお?」
僕は今まで。一人で母の寝顔を見たことが無い。
会社にはカーチャンの見舞いと言って帰宅しているが、実際病院に入った事は無い。
誰か同伴者がいる時は別にして、一人では入る事、会う事が出来ないのだ。
( ^ω^) 「僕を……恨んでますかお?」
答えは風の中。
内藤の頬を吹きすぎる風が撫でていくばかり。
- 110 :第二章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/13(土) 22:39:35.29 ID:386queVa0
- 四畳一間のアパートに帰宅する。
カーチャンがいた頃住んでいた一軒家も、今や現金へと形を変えた。
( ^ω^) 「ただいまだお」
誰とも無く呟く。
机には会社から持って帰ってきたファイルや資料が山積みになっている。
( ^ω^) 「っと。今日の試合も亀田が勝ったのかお……」
テレビの向こうでは亀田が叫び声を上げている。
赤いグローブにチャンピオンベルト。今やすっかりとお馴染みになってしまった。
もしも2ちゃんねるがあったならどんなレスをするだろう。
亀田勝利wwwwwwwwww
八百長言ってた奴哀れwwwwwwwww
ふと笑みが零れた。
- 111 :第二章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/13(土) 22:39:50.41 ID:386queVa0
- ( ^ω^) 「お?」
突然テレビ画面の亀田の顔が歪んだ。
歪みは序所に激しくなり、その画面はニュース番組へと変貌した。
( ■■) 「臨時ニュースです」
( ■■) 「15分。あの野菜レイパーから新たな犯行声明が出されました」
( ^ω^) 「日本のニュースも終わったな」
僕はテレビの画面を割った。
- 112 :第二章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/13(土) 22:40:05.65 ID:386queVa0
- 携帯電話のバイブが震動する。
電話番号を晒す事の無くなった今、この携帯に掛けて来るのは一人である。
('A`) 『よう。今家か?』
( ^ω^) 「ドクオかお。今帰った所だお」
('A`) 『今すぐテレビをつけろ。タカテレビだ』
( ^ω^) 「おk。ワンセグで見るから電話切るお」
('A`) 『終わったらすぐ電話する。しばらく目を離すな』
一年前に彗星の如く現れたワンセグケータイ。
一年経った今では、そんなもの当たり前になってしまった。
僕はドクオからの電話を打ち切ると、手早くチャンネルをタカテレビに合わせた。
- 113 :第二章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/13(土) 22:40:21.53 ID:386queVa0
- ( ゚∀゚) 「はぁ。それで貴方はひろゆき氏を訴えたと」
爪'ー`)y‐ 「まぁアンナ輩は消えて当然ですよ」
煙草を吸った男がインタビューに答えている。
ドキュメント番組のようだが、そのタイトルはこうだ。
原告が語る!! かつての巨大掲示板の真実!!
爪'ー`)y‐ 「私が勝つのは真理だった訳ですね」
( ゚∀゚) 「そうですかー。2ちゃんねるって悪い掲示板だったんですね」
爪'ー`)y‐ 「ええ。ですから今流行りの「3ちゃんねる」も、すぐに潰れると思いますよ」
何を言っているんだ。この男は。
怒りに身を任せた感情が、心を貫いた。
- 114 :第二章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/13(土) 22:40:37.88 ID:386queVa0
( ゚∀゚) 「ではジェイソンさん。最後に何か一言お願いします。」
爪'ー`)y- 「ふふふ。私の名前を含め、住所。顔は全て晒されています。偽名は無駄ですよ」
煙草の男はニヤリと笑ってカメラを見つめる。
爪'ー`)y- 「かつての2ちゃんねらーさん。今なら分かるでしょう。どちらが上だったかをね」
爪'ー`)y- 「所詮俗は俗。品格の無い者に未来はないのですよ」
煙草の煙が画面を包み込む。
カメラマンが咳き込んだのか、画面の震動と共に、番組はCMに突入した。
- 115 :第二章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/13(土) 22:40:52.09 ID:386queVa0
- ( ^ω^) 「ドクオ……」
('A`) 『ああ。言わんとする事は分かってる』
誰もが忘れる事の無い。一年前の事件。
その発端となった人物の顔は、今でも僕の頭に焼き付いていた。
( ^ω^) 「アイツに……間違いないお」
ドクオの電話の向こうでギリギリと音がする。
歯を噛み締めているのか。それとも力一杯受話器を握り締めているのか。
('A`) 『俺の仲間がスカイプラジオを通じて決起を呼びかけている』
( ^ω^) 「場所は……?」
('A`) 『今のは生放送だ。となれば……』
( ^ω^) 「タカテレビかお」
そういえば、ドクオの後ろから叫び声が聞えている。
それを牽制する声や、怒号。挙句の果てには悲鳴まで。
僕は手を握り締めた。
- 117 :第二章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/13(土) 22:44:44.42 ID:386queVa0
- ( ^ω^) 「すぐ行くお」
僕は電話を切った。
白いコートを纏った僕は、かつてと同じ。空も飛べる速さで走り出した。
同時刻。
タカテレビが見下ろせるビルで。
(´・ω・`) 「フフフ……。待っていたまえジェイソン君……」
明らかに変質者の風格を漂わせる男が呟く。
只者ではないであろう、その空気が眼下の暴動を見据えていた。
(´・ω・`) 「この野菜レイパーの名に懸けて……君に裁きを与えよう……」
午後九時。
かつての報復戦争ともいえる争いが、ここに始まった。
続く。
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