37 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 14:34:28.57 ID:d+Ts2sEc0
《第二話 偶然スクランブル》

早起きしすぎた。

時計を見れば6時55分。とは言え再び寝る気にもなれなかった。
まず第一に目が冴えすぎている。その次になんか負けた気がする。

早起きは三文の得と言うけれど、私の一日のスタートといえば隣人に壁を叩かれ萎縮しただけだったような。
逆に損してる。絶対してる。2840円……ハッ!?


ξ゚听)ξ「貧乏くさい……!」


一人暮らしに慣れすぎたのだろうか。
そう言えば日用品にじわりじわりと100均物が増えていっているような気がする。


ξ゚听)ξ「あー! もう嫌ぁっ!」


ドン。うるさいと壁が叩かれる。
断じて私がうるさいわけではない。薄いのよ、このアパート。
す、すみません。あれ、なんだろうすっごいデジャビュ

38 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 14:36:11.61 ID:d+Ts2sEc0

ξ゚听)ξ「……この部屋にいるからダメなんだわ」

結論は極論だった。
そうだ。折角2840円分早起きしたのだ。
これはきっとなにかのお導きだろう。若者こそ外に出るべきなのだ。


ξ゚ー゚)ξ「……馬鹿馬鹿しい」


言うものの、私の顔には笑いがこみ上げてきていた。
そう言えば、ブラインドをあげたときに見えた空は言葉を無くす程青かったような気がする。

ξ゚听)ξ「……こう言う日もありよね」

両腕をのばして、体一杯でのびをすると、
ポキリ。小気味いい音と共に骨がなった。



39 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 14:45:57.62 ID:d+Ts2sEc0
特に意識せずに道を選択していたせいか、気付けばいつも利用している最寄駅に到着していた。
いつもと変わらない景色。だけれど学生の姿が見当たらない。

ξ゚听)ξ「まあ、そりゃそうよね」

夏休みだもんね。


考えにいたって特大のため息が出た。それでも、新鮮な思いがつのるのは、
いつもと空気が違うと感じるのは人口密度がいつもより少ないからだろうか。


それとも


久々にかいだ朝の匂いのせいだろうか。太陽の粒の匂いは人を詩人にするから。
…………うん、きっと。そのせいだ。

都会の朝は早いとよく言うけれど、それは単に町が眠っていないような気がする。
夜の延長線上に朝と昼がある。そんな気がする。

「詩人的だな」
ξ゚听)ξ「そう? いや、多分それはこの朝の匂いのせいよ。こんな考え方……」
って。

あれ?

41 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 15:18:43.08 ID:d+Ts2sEc0
ある朝、グレゴール・ザムザが不安な夢からふと覚めてみると、
ベッドの中で自分の姿が一匹の、とてつもなく大きな毒虫に変わってしまっているのに気がついた。

「大丈夫だよグレゴール・ザムザそれは悪い蟲じゃない」

…………っていやいや、何これ。別の物語よ。
勢いあまって別の物語に突入って何それ。


川 ゚ -゚)「久しぶりだな。ツン」

いやいやいやいや、なんでクーがここにいるの?
ちょってまって。ありえない。と言うか何クーも平然と挨拶してるの。

川 ゚ -゚)「驚くほどの事でもないと思うが……」

いや、驚け。普通は驚く。私は驚いています。

川 ゚ -゚)「そうか。参考にしておく」

あいっからわず……感動ないわね、クー。

――――若者よ町へ出ろ
――――早起きは三文の得

昔の人もいやはやなかなか。
あなどれないもので。

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