24 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 13:17:23.33 ID:n766GXUk0
《第一話 続いていますか? 続いていてもいいですか?》

『……それ、何て曲?』
訝しげな声。
音の悪いスピーカーから出た音みたいに、所々掠れて聞き取れない。

『……へえ』
感心したような声。


ξ゚听)ξ「……平穏無事な日々」


夢よりもいくらか不明瞭になってしまった声を思い出しながら手にした音楽ノート。
空白になっている題名部分を指でなぞりながら、笑ってみる。
鏡がないから解らないけれど、きっと今私は酷い顔をしてるだろう。

『ツンはよく知ってるお、そう言うこと』
自分のことのように嬉しそうな声。


ξ゚听)ξ「当たり前よ。……私が作った曲なんだから」


あの時いえなかった本当の事。
精一杯考えて作った私の曲。イメージはハルシオンデイズ、私達の日常。


25 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 13:17:42.56 ID:n766GXUk0

ξ--)ξ「けど……まだ未完成なのよね。この曲」

書き上げられない最後の一小節。
ペンを取れば、この曲を仕上げてもいいのだろうかと言う迷いが必ず生じる。
書き上げて、終ってしまわないだろうか。私の。私達のハルシオンデイズが。


ξ゚听)ξ「ばかっ……馬鹿馬鹿しい」


2度目に出た口癖は、いつもよりも長い余韻を私に残す。
蝉の声が聞こえ始めていた。
朝が始まりかけている。新しい朝がきた、希望の朝が。

その点で言えば、私は止まっているのだろうか。
――――いや、違うか。

止まれていない。続き続けているだけ。

多分それは――

ξ゚听)ξ「これを終らせるまで、ずっと……」

呟いてから、手の中の音楽ノートを一瞥する。
それでも終らせる気なんて、さらさらなくて。

34 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 14:29:26.40 ID:d+Ts2sEc0
歯磨きして、顔を洗って。
朝食を取る暇がないと嘆くくせに、長い時間をかけて髪を整える。

ξ゚ー゚)ξ「一人暮らしにも慣れたものね……」

苦笑気味に笑った朝6時30分。


ξ゚听)ξ「…………」


って。


ξ゚听)ξ「今日から大学夏休みだしっ!」


昼まで寝たとして時間損した。
時給710円として2840円分の損失。


ξ#゚听)ξ「あー! 何このケチくさい考え方!」


腹立つ! 調子狂う!
一通り叫んでいたら隣人に壁をドンドン叩かれた。
思わず萎縮する。ご、ごめんなさい。一体誰に謝ってんだか。
そして切り出された最悪な一日のスタート。
36 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 14:31:56.17 ID:d+Ts2sEc0

……どれもこれもきっとアイツのせいだ。


ξ゚听)ξ「……内藤の馬鹿」


この呟きが届くはずはない。解ってはいるけれど。
くしゃみの一つくらい、やってくれててもいいとは思う。


妄言を払拭させる為にもとテレビを付けると、
丁度天気予報のコーナーに入った所。

新顔の天気予報士が今日から梅雨明け宣言をした後に、
連年より少し遅い本格的な夏の始まりが訪れたと言う。


大学の夏休みを利用して、三年ぶりに実家に帰る計画はしているものの、


アイツに。

内藤に会う予定は、立っていない。

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