259 :愛のVIP戦士:2007/02/12(月) 18:16:24.94 ID:ndFHJSTO0
《第五話 思い想いの

           【side-B】

僕の思考は、様々な所に飛びうっつては消えていた。

夜の公園でクーと話したこと。
自宅でのあのちっぽけな決意。あの矮小な決心。
昨夜、バーボンハウスでドクオと話したこと。

ツンと離れた後の僕が、ツンを諦めきれなかった僕が、
ツンと再び出逢えた僕にシグナルを送ってくるのだ。

やはり、好きなのだと。
……ツンに遭ったとき、僕はなんと言えばいいのだろう。
どうすれば気の利いた事の一つでも言えるのだろう。そう考えれば考えるほど、舌には雑草が絡まっていく。


僕はとんでもない臆病者だ。



260 :愛のVIP戦士:2007/02/12(月) 18:16:46.64 ID:ndFHJSTO0
遭わなければならないと決心してもなお、どこかでツンと再開することを拒む自分がいる。
むしろあそこまで言って許されるのか?
迷惑だと突っぱねて、もう一度顔合わせする事なんて許されるのか?

答えの返らない自問。答えをはじき出すのは自分自身だ。
逃げたい。――――逃げればいい。


ドクオも言ってたじゃないか。道は一つじゃない、って。


(  ^ω^)「……道は、一つじゃないお」


だからこそ僕はもう逃げない。
ツンを拒む事でツンから逃げていた自分からも。
過去とも現在とも、ハルシオンデイズとも。全部と、向き合う。


道は一つじゃないんだから。




261 :愛のVIP戦士:2007/02/12(月) 18:17:48.51 ID:ndFHJSTO0

           【side-Т】

自室にて、私は例の音楽ノート――ハルシオンデイズのノート片手に窓際にいた。
遠くの方からコオロギが求愛する鳴き声が聞こえてきていて、
今では、昼間喧しいほど恋焦がれ鳴いていたセミはその息を潜めている。

そんな中で私は深呼吸する。

初夏の匂いと、夜の匂い。それらが交じり合い、どこか湿気を含んだ大気が鼻腔をくすぐる。
吹いて来た風で、カーテンがはためいた。

ξ゚听)ξ「…………」

再度深呼吸をして、私は机に向かう。
もう、やる事は決まっているし、迷いは生じない。

机の上に置いてあったペン刺しからボールペンを一本とって、ノックする。
これは、私なりの進歩だ。

ξ゚听)ξ「ハルシオンデイズ」

最後のワンフレーズは、ずっと前から浮かんでいた。
イスに座らないまま、私は音楽ノートにペンを走らせた。
これは、過去ばかり見て、今のアイツを見なかった私への叱咤。

262 :愛のVIP戦士:2007/02/12(月) 18:18:24.55 ID:ndFHJSTO0

先に進もう。これからの、新しいハルシオンデイズを見据えて。


携帯を取り、アドレス欄からクーのメールアドレスを引っ張り出す。
普段活用している単語の記憶機能は使わず、純粋に変換だけを使って一通のメールを打つ。

『あの話、受けようと思う』

そして押す送信ボタン。



明日、私はバーボンハウスへ行く。



        《第五話 思い想いの》  終
                 最終話へ続く!

戻る

inserted by FC2 system