107 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 18:20:16.41 ID:n766GXUk0
色々なことがぐるぐるぐるぐる頭の中で回って、
昔考えたようなことがくらくらくらくら頭の中で繰り返されて。

そうして僕の手は震えていた。

無言でしかいられなかった。
気を抜くと数年分の思いが一気に溢れ出そうで怖かった。


『もしも奇跡とか、偶然とか。そう言う類の神がかりで
もう一度チャンスが転がって来たなら。僕はどうするのだろう。』


あの日の問題への答えを出すんだ。

               《第二話 必然スクランブル》


ξ゚听)ξ「ブーン……?」
( ^ω^)「ツン――」

僕らは相手の名前を呼んで。訝しげながら言葉を吐いて。
目の前の姿が自分の幻想でないことを悟ってから、


ξ゚听)ξ・(^ω^ )「「久しぶり……!」」
同時にこの声を上げた。
ああ、住み慣れたこの町の空気は僕の胸を締め付けるには十分で。
懐かしい彼女の声色は僕が閉じていた記憶に触れてくるには十分で。
114 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 19:34:00.56 ID:w8io87810
( ^ω^)「ツン……どうかしたのかお?」
彼女の背中に掛けたときと同じ言葉を僕は掛けた。
あ、とか、う。とか。彼女が言いよどむ。

首を傾げればその首に彼女が掛けていたショルダーバックを思い切りぶつけられる。

ボキとか良く聞く擬態語じゃなかった。
何と言うか、ミシ、って言った。ミシ、て。首が。首ですよ。首。


( ゜ω゜)「ほ、ほぉぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!??」
普通に唾液とか口から出た。
きったないわね。ツンの言葉が響く。誰の所為だ 誰 の !


ξ゚听)ξ「……私はただバーボンハウス探してただけよ」


その言葉が僕に響いていたかどうかは定かではない。




115 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 19:34:38.09 ID:w8io87810
( ´ω`)「いや、まあ。大事に到らなかったからいいんだお」
ξ゚听)ξ「ええ」

( ´ω`)「ツンの負けず嫌いは知ってるお」
ξ゚听)ξ「ええ」

( ^ω^)「だけど白昼堂々、公開殺人はどうかと」
ξ゚听)ξ「うっさい!」

バン。今度はツンなりに配慮したかは知らないけれど、
例のショルダーバックを顔面にぶつけられた。
乾いた音が響く。金具の部分が額に当った。頭蓋骨って丈夫だったっけ?


ミシ。あ。


( ^ω^)「……ツン?」
ξ゚听)ξ「ごめ」

謝罪の色は見えない。
毎度の事だから、まあいいんだけれども。……随分懐かしい毎度だ。
思いあたって少し笑いが出た。
なんて暖かいのだろう。なんてハルシオンデイズなんだ。

116 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 19:35:29.53 ID:w8io87810
ああ。僕は何度この中でまどろむ夢を見ただろう。僕は何度彼女の笑顔に触れる幻想を抱いただろう。

そして思ったんだ。

『もしも奇跡とか、偶然とか。そう言う類の神がかりで
もう一度チャンスが転がって来たなら。僕はどうするのだろう。』

あの日の答えは。

ξ゚听)ξ「元気にしてた?」
( ^ω^)「お、ま。それなりにですおー」

ξ゚听)ξ「ああ、そうだ。覚えてる? あの、音楽室で弾いた――」

あの時もう、出していたんじゃないか?

                 『ハロー』

( ^ω^)「…………」
ξ゚听)ξ「ブーン?」
                 『アンドグッバイ』

( ^ω^)「……迷惑、なんだお」
ξ゚听)ξ「え……?」

                 『マイハルジオンデイズ』


理解したじゃないか。
ハルシオンデイズに終止符を打つ、って。

117 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 19:37:28.24 ID:w8io87810
( ^ω^)「ブーンにとってツンはもう昔の人なんだお……」
ξ゚听)ξ「ブーン……?」
( ^ω^)「それなのに数年たってずかずかずかずか人の心に入り込んできて――!」

今僕は物凄く自分勝手なことを言っているんだろう。
傍から見ればただの独善の切り売りだ。でも。

( ^ω^)「迷惑、なんだお……!」


これで、いいんだ。


ξ゚听)ξ「っ…………ブーンのバカぁ!」

そう言って走り去る彼女の背中が僕には歪んで見えた。
手を伸ばす事は出来ない。それをしないと決めたのは僕なんだ。

後悔なんて、無い。

彼女にあって、それからああいって。
やっと僕のハルシオンデイズは終わりになるんだ。

これで、いいんだ。これでよかったんだ。
良かったんだろ? なあ。これでいいんだろ?

118 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 19:38:04.58 ID:w8io87810

自問自答。それの度に溢れ出してくるのは

( ;ω;)「何で笑えないんだお……っ!」

なんで笑いじゃなくて涙なんだ。



天下の往来で僕はさめざめと泣いた。……最初の内だけ、だけど。
その内、頭のてっ辺から足の先にかけてコンマ一秒ともかからず走った震え。
顔に回っていた血の気が引きすぎるぐらいに引きすぎた所で、僕のおえつはボリュームをあげ始めていた。

手が仕様もなく震える。

『しようとしまいと こうかいは おこるだろ』

なあ、僕。これがした後の後悔なのかな。
どうしようもなく頭が、手が、心が痛いんだよ。

( ;ω;)「ひっ……うっぐ、うぇ、うえぇっ……っオロローン!!」

泣きすぎて頭痛がして来た。
行き交う人々は僕を避けて何処かへ向かっている。(完全に脳障を見る目だった)
半径1メートル台のサークルの中、ただ僕は泣き声を上げている。

答えはこれであっていたのかな?
僕はちゃんと100点満点だったかな?

ああ、自分に投げつける言葉はひたすらに皮肉まみれだ。

119 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 19:39:33.92 ID:w8io87810
( ;ω;)「ひっく、ツッ……ツンッ……オロローン! オロロロローン!!」
おえつは序々に吐気へと転化されている。
このまま全部任せて吐いちゃえば楽になれるかな、色々と。
なんて、どうせ吐けもしないのに思ったりして。

( ;ω;)「ひっぐ……うぇ゛、え゛っぐ……」
「オイコラ、」

聞こえるが早いか、けられるが早いか。
そんなタイミングでふくらはぎを強かに蹴り付けられた。

う゛ぇ゛、とおえつとも悲鳴ともつかない声をあげ、
僕の体は慣性の法則と全ての物理法則に反する事無く、地面へと突っ伏す。

orz「…………」
「男泣きもここまでくると見苦しいったらねぇ」

背中にかけられた、男の声。

聞き覚えはある。見当もつく。
いつだって、頭の中でリフレインしてた声だ。――さっきだって。

( ´ω`)「ドクオォォッ!」
Σ('A`)「うぉおぉッ!?」

120 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 19:40:23.54 ID:w8io87810
起き上がり、砂利も払わず僕は振り返りざまにドクオにダイブする。
その際少しだけ今の僕らのビジュアル
(いい歳した男がくんずほぐれつ)を想像してみた。

すぐに抹消した。尻の穴がうずいた。やばい吐きそう。

想像してしまったアレ気な物を払拭させようと、
僕は顔(むしろ頭)をドクオの胸板に押し付け、ぐりぐりとえぐる様に首をふった。


('A`;)「は、鼻水がつく! 俺のTシャツに鼻水が!!」
( ;ω;)「う、うっぐぇ……ドクオロローン!」

('A`♯)「っ、オイコラ! やめろ、やろてくれ! 鼻水つけんなバカ!!」
( ;ω;)「オロローン! オロロロローン!」

だぁぁぁあ!! ドクオが叫んだ。
回される腕はなかったけれど(あったら今頃本当に吐いてる)

延髄に来るチョップの痛みが救いだった。


121 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 19:41:16.22 ID:w8io87810
なあ、答えはこれでよかったのかお?
涙は制御でき始めていた。嗚咽だけが漏れた。

顔を離せば、ドクオのTシャツと僕の鼻とをつなぐ銀の橋。

( ;ω;)「ごめんちゃい?」

そして迫り来る延髄チョップ。
だぁぁぁぁ!! ドクオの声だったか、僕の声だったかは覚えていない。


女の意地というものがどうやら私にもあったらしく、
足早に家路へと戻る時、涙は一滴も流れなかった。ただその代わりに、

ξ゚听)ξ『何なのよ何なのよ何なのよ……! ブーンのバカァッ……』
ロール紙のように切れ目ない罵倒が巡り巡っていた。

それは実家の玄関を開け、いかり肩のまま階段を駆け上るまで続き、
(その時少しだけイラついたような母の声が私をけん制したけれど、よく覚えていない)

それから。

ξ゚听)ξ「ブーンの……バカァッ!」


部屋の扉を勢いよく閉めた時には、頭の中だけで収まっていたブーンへの罵倒は声に出ていた。
悔しくて、悔しくて。それで、どうしようもなく悲しくて。
あふれたのは涙だったのだろうか。もしかすると、せき止めていたあの感情だったのかも知れない。

122 :愛のVIP戦士:2007/02/10(土) 19:41:38.98 ID:w8io87810


拒絶されても好きな自分がいる。


だから悔しくて、悔しくて。拒絶されたことが、どうしようもなく悲しくて。


私はその日、ひゃっくりをあげて、嗚咽を漏らして。
恥も外聞もかなぐり捨てた子供みたいに泣いた。


ξ;凵G)ξ「ひ、ひゃっく……ばかぁ……」


何十回目かのひゃっくりが出た時だろうか。

ポケットの中にあった携帯が、私を励ますように振動したのは。


《第二話 必然スクランブル》終
          第三話へ続く

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