195 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 01:24:33.86 ID:QL9V9fxhO
第六話



( ^ω^)「う〜ん‥よく寝たお」

もうすっかり夏の暑さが漂う午前中、ブーンは自宅で目を覚ました。今日は仕事は休日である


( ^ω^)「え〜と‥今日はなにをするかお‥と、そういえば昨日ツンに送ったメールが返ってきてるお‥」


ブーンは昨日、ツンに

『明日バーボンハウスでお茶でもしないかお?』

とメールを入れておいた。返信はこうだった



『別にヒマだしオッケーよ』


( *^ω^)「ktkr!」

196 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 01:26:15.10 ID:QL9V9fxhO
さっそくブーンは顔を洗い、歯をみがき、シャワーを浴びたのは言うまでもない。



〜昼頃、バーボンハウス前〜


( ; ^ω^)「ぉあおお!?」



駐車場に停まった黄色いNSXからでてきたツンを見てブーンは度肝を抜かれた。

無理もない。こないだいっしょに免許をとったばかりの女の子がなんの前振りもなく1000万円を越えるクルマに乗ってきたらたいがいビビる


ξ゚听)ξ「おひさしぶりね…どうかした?」


表情を緩ませないように‥そう思っていても高揚を隠しきれないツンが言葉を発した


( ; ^ω^)「ちょっwwおまww今北産業でkwsk!」


ブーンは挨拶するのも忘れてテンパる
201 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 01:38:04.51 ID:QL9V9fxhO
〜店内、カウンター〜


(;´・ω・`)「‥‥ツンちゃんが…いきなりNSX‥!?」



( ;^ω^)「マスター、その床に散らばってる破片について」


おそらくマスターがコーヒーカップを落としたのだろう‥原因は‥おわかりだと思う

(;´・ω・`)「‥とりあえず今日は二人にブルーマウンテンをサービスするよ。ゆっくりしていくといい」

ブーンの質問をスルーし、香りのいいコーヒーを二人の席に置くマスター

ξ゚听)ξ「どーもー」

( ^ω^)「いただきますお」


二人、ミルクと角砂糖を入れカップに口をつける。コクのあるコーヒーだ‥

( ^ω^)「ズズッ…
で、落ち着いたところでkwsk」

(´・ω・`)「同意」

ξ゚听)ξ「そうね‥話せば長くなるんだけどかくかくしかじか‥‥」


202 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 01:45:11.18 ID:QL9V9fxhO
( ^ω^)(なるほどだお‥そういえば今朝のメールといい…

いつもと違ってツンツンした感じが無くてしずかちゃんぽかったからどうも変だとおもったお、こういうことかお)


(´・ω・`)(若いってやっぱりいいもんだね…ふふふ…)



夏は‥まだまだこれからだ
215 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 08:35:03.42 ID:QL9V9fxhO
ξ゚听)ξ「で?ブーン、帰りは歩いてくわけ?」


いましがたバーボンハウスから出たツンが尋ねる。


( ^ω^)「そういうことになるお」


ξ゚听)ξ「じゃあ‥よかったら送ってく?」

( * ^ω^)「ほんとかお?そうしてもらえるとうれしいお!」


助かる、ではなくうれしい、という言葉を選んだブーン

216 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 08:37:22.26 ID:QL9V9fxhO
ξ///)ξ「べ、べつに帰るついでに乗せてってあげるだけなんだからねっ」


( * ^ω^)(いつものツンに戻ってるお、これはこれでやっぱりカワユス…)

ξ///)ξ「な、なにニヤニヤしてるのよっ!はやく乗ったらどうなのっ!置いてっちゃうからねっ」

顔を真っ赤にしながらアルミパネルのNSXのドアを開けるツンとブーン、



その黄色いマシンが出ていくのを店内から見守るマスター



(´・ω・`)「‥がんばるんだよ、ブーン。」

そっと、NSXに向かって親指を立てた


一人、マスターだけのためにクラシックが流れていた
233 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 12:57:21.81 ID:QL9V9fxhO
( ,,゚Д゚)


見つけた。

ついにあの33Rを‥オレが二度もFCをブローさせてしまった原因となった、あの白いマシンを‥


あれから毎日のように真夜中の新制首都高でヤツの姿を求めてさまよっていたが‥


やっと見つけたぜ‥

湾岸をゆっくり、ゆっくり流しているその姿は不気味なオーラをかもしだしてやがる‥

オレはゆっくりと33Rの後ろに尾き、『その瞬間』を待った…

234 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 13:00:10.81 ID:QL9V9fxhO
( ,,゚Д゚)

オレのFCは以前とは比べ物にならないくらいチューンが進んでいた。

ジョルジュの手によるエンジン、保機類、足回りの見直し、

一番のメインはタービン交換。ついにビッグシングルに交換した。
T88タービン、かなりの出費だったがこれでオレのFCは完全に突きぬけた。

もちろん、以前痛い目を見た冷却系統も今はバッチリだ

今ならどんなクルマにも負けない自信がある。

もちろん、この33Rにも。

今夜これから、それがハッキリする
256 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 17:02:22.50 ID:QL9V9fxhO
( ,,゚Д゚)



この日のためにオレはFCに乗り続けていた。

今はそう感じるのはこれが宿命づけられていたからなのか…


そんなひとりよがりなバカな考え、しかし今はその考えがすべてだった。

257 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 17:03:49.22 ID:QL9V9fxhO
('A`)


今日はブーンとふたりで新制首都高に来てる。まあいつものように気晴らしみたいな感覚で、そして、あわよくばまた黒いZ32に逢えることを望みながら‥

( ^ω^)「いつ来ても夜景が綺麗だお‥」

('A`)「ああ‥そうだな」

( ^ω^)「ところで今度はどこをチューン(改造)するんだお?」


('A`)「うん‥来週‥コンピューター交換するんだ‥」


( ^ω^)「CPUかお、安くないはずだお…すごいお…」



('A`)「少しばかりデカイ出費だったけどな」


果ての見えない湾岸線をどこまでも走っていく‥

258 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 17:06:45.74 ID:QL9V9fxhO
(*゚ー゚)




仕事帰り、マンションのエレベーターで壁によりかかる


はあ‥今日も疲れた。いまは何時なんだろう?

エレベーターを出て自分の部屋に入る。
入ってすぐに目につくのは、こないだギコ君がくれた薔薇の花束。

花瓶もギコ君がプレゼントしてくれたもの。

見ただけで少し笑顔が戻ってきたのが自分でもよくわかる。
260 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 17:07:31.28 ID:QL9V9fxhO
(*゚ー゚)「ふぅ‥」


着替ながら時計を見ると、もう11時に近い。最近残業がキツいせいだ。


今は独り暮らし。でもそろそろギコ君と一緒に暮らしたい‥毎日そればかり考えている




ギコ君といえば最近少しばかり様子がおかしい、電話が通じないことが多いし、わたしと会う機会も少なくなってきちゃった。

まあ後者に関してはわたしが仕事が忙しいせいなんだけど‥
264 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 17:52:47.02 ID:QL9V9fxhO
(*゚ー゚)


ギコ君、いまごろ何してるのかな‥

ギコ君も、きっと仕事大変なんじゃないかなぁ…

私はむしょうにお茶が飲みたくなり、ヤカンに水を入れ、コンロで火にかけた


花瓶の方を見ると、紅い花びらが一枚、ハラリと落ちた
269 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 18:31:33.94 ID:QL9V9fxhO
( ,,゚Д゚)


33Rがハザードを出しながらスピードを少しずつ上げはじめた。

スタートの合図だろう
( ,,゚Д゚)「今日こそは‥」

気合い一発、アクセルを踏みこんだ。

FCのロータリーエンジンがビッグタービンの力を得て、高回転まで一気に駆け上がる。

思わず貧血が起こりそうなほどの重力が額にかかる。

( ,,゚Д゚)「‥いける!」

3速9000rpm、4速シフト。

FCはピッタリ33Rの後ろについていけてる、今日は離れない

前の33Rのケツからアフターファイヤーが吹き出し、FCのバンパーを撫でる。
274 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 19:04:17.47 ID:QL9V9fxhO
( ,,゚Д゚)

あの日、惨敗した相手に、今日は一歩も譲っていない。むしろオレが引き離せる。
確信していた

怒涛の加速と33Rのスリップストリームを使い、一番右の第三車線から前に出る。

驚くほどあっさりと‥それでいてスローモーションのように33RをオレのFCが追い抜いた。


( ,,゜Д゜)「‥‥‥よし!」


オレは武者震いが止まらなかった。あとはこのまま最後まで逃げきれれば‥見える。

限界のその先が‥

275 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 19:06:47.78 ID:QL9V9fxhO
5速7000rpm、33Rを5メートルほどリードしながらエンジンはまだまだ回ろうとしている。
頭の中は完全にまっさらだ。

もはやこのまま死んだとしてもそれに気づくことはないだろう


( ,,゚Д゚)「……しまった…」

前方にトラックが2台‥第二車線と第三車線をふさいで並走してやがる。
いまオレは第三車線、33Rは第一車線‥

なんというタイミングの悪さ

( ,,゚Д゚)「くっ‥」

クラッシュを避けるためにやむをえず一度アクセルを緩めて33Rを前に出してやる。それから第一車線へ、

トラックの群れをいまいましくブチ抜いて再びヤツのテールを追い掛ける。

33Rには50メートルほど差を開けられてしまった
277 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 19:44:31.07 ID:QL9V9fxhO
( ,,゚Д゚)「……まだまだ」



しかし…ここから先は湾岸名物の『VIPブリッジ』
つまり、ここを越えると高速湾岸線は終点になってしまう。

今日、この機会を逃したら、次にこの33Rにでくわすのはいつになるかわからない‥だから、今、なんとしても前に出たい

しかし、依然として差は縮まらない。引き離されないだけいいが、だからこそもどかしい

278 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 19:48:20.69 ID:QL9V9fxhO
( ,,゚Д゚)

ひとつだけ、突破口があった。

33Rのスリップストリームを使って追い抜く‥それしかない

オレは33Rの真後ろにつく、空気抵抗が無くなって少しずつ、少しずつ33Rのケツが迫る、

ビリビリと体に電気のようなモノが走った、

スピードメーターは320を指している。

もはや狂気だ

279 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 19:49:54.09 ID:QL9V9fxhO
2台が第二車線を走りながらVIPブリッジにさしかかる。しかし、この先には3車線が一気に1車線に狭まる、魔の危険地帯があった‥

それまでに勝負をつけなくては‥



( ,,゚Д゚)「今だ!いける!」

スリップストリームが充分効いている。

じわじわと迫る33Rのケツをかするようにしてオレは第三車線に出た。

その瞬間!
283 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 20:08:21.39 ID:QL9V9fxhO
( ,,゜Д゜)「なっ‥!」



前方の一般車が第三車線にノロノロと車線変更してきやがった!

今の今まで33Rの死角で見えていなかったのだ。

最悪のシチュエーション…こっちは320キロも出ているのだからとても止まりきれるかどうか…


考えるより先に右足は思いっきりブレーキペダルを蹴飛ばした

もう白い33Rのことなど考えている余裕などなかった

激しい減速G、体は一気に前に傾き、四点式シートベルトに締めつけられる。

タイヤからはキィーと耳障りな音とともに煙を上げている

駄目だ、止まり切れない‥しかし一般車を事故に巻き込むわけには‥

頭の中が真っ白になり、なぜかピカソの絵のようなものが思い浮かんだ…

284 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 20:14:52.26 ID:QL9V9fxhO
(;'A`)「なっ!!!」
( ; ^ω^)「!!!」

第二車線の後方から迫ってくるクルマに道を譲ろうと第三車線に移った直後、

ドクオのスープラの後ろから激しく迫りくるFC…タイヤから耳障りなゴムが軋む音をさせ、
自分に向かって突っ込んでくる‥


( ,,;゚Д゚)「‥‥ッッ!」

他人を事故に巻き込むわけにはいかない‥このまま側壁に当ててでも減速を優先‥

頭より先に体が動き、ギコはハンドルを思いきり右に切った。

グシャリと音がして、ボンネットがめくれ上がり、ライトが割れ、バンパーの破片を撒き散らしながらスピンを始める‥


(;'A`)「くっ‥」

ドクオはそれでも後ろから迫り来るFCを避けるためにハンドルを左に切った
286 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 20:18:56.67 ID:QL9V9fxhO
しかし、間に合わなかった。

後ろで壁にこすってパーツを撒き散らしながら火花を出しているFCが、ドン!という衝撃とともにドクオのスープラの右リアに激しくクラッシュした


( ; ^ω^)「っ!」

(;'A`)「‥‥‥!」


事故の瞬間がスローモーションのように感じるというのは本当らしい。綺麗な夜景が…歪んで見えた。

2台はそのまま煙を上げながら路面を滑り続け、ようやく止まった。

辺りにはゴムが溶けた匂いが立ち込めていた
293 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 20:54:43.17 ID:QL9V9fxhO
('A`)「ブーン!大丈夫か!?」

( ; ^ω^)「いたた‥ちょっとどこかに頭ぶつけたみたいだけど大丈夫だお、やっぱりシートベルトは大事だお」

('A`)「後ろのクルマは‥周りの状況はどうなってるんだ?」

ドクオはハザードを焚いて外に出て、後ろでグシャグシャになったFCのもとへ走る。

グシャグシャすぎてもはや車種がなにかわからないぐらいだ
296 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 20:57:23.11 ID:QL9V9fxhO
( ,,メメ`Д゜)「ううう‥」


('A`)「だ、大丈夫ですかっ!?」

( ,,メメ‐Д゜)「うぅ…すまん、オレの不注意で‥

本当に申し訳ない‥オレは‥

大丈夫だから‥」

(;'A`)「しっかりしてください!おいブーン!救急車を呼ぶんだ!」

( ;^ω^)「把握だお!」

ギコは額から血を流して‥どうやらシートから立ち上がれないらしい、

('A`)「…大丈夫ですか」

ドクオはギコを抱きかかえるようにして、クルマから降ろして、路肩に寝かせた
299 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 21:12:18.75 ID:QL9V9fxhO
( ,,メ‐Д゜)「…すまん」

ギコはポケットをまさぐった。タバコの箱は…空だった。


ドクオはその様子を察して、黙って自分のタバコを一本差しだした
( ,,メ‐Д゜)「…すまん」
ギコは、言葉を繰り返した


('A`)「‥‥?」
ふと、ドクオが自分のクルマの方を見ると、いつの間にかスープラの前に黒いZ32がハザードを出してとまっていた


何度も見た…しかし一度も話したことのない『あの女性』がこちらに向かって歩いて来る


川 ゚ -゚)「‥‥‥」
301 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/25(日) 21:23:33.41 ID:QL9V9fxhO
川 ゚ -゚)「………」


( ; ^ω^)「………」


('A`)「………」


( ,,メ‐Д゚)y ̄~「………」


遠くからサイレンの音が近付いてくる‥
夜はまだ明けそうにない

ブーンが、21歳を迎えた夏の夜のことだった


第六話  完

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