2 : ◆rHi47N9WYc :2008/04/17(木) 20:53:31.30 ID:lBdL/O4zO
第四十二話





──深夜──



いつだって変わらない


海の匂いが風にさまよう新制首都高速……………湾岸線、東パーキング





('A`)「あー、掃除も容易じゃねーなぁ?ブーンよ」


深夜のVIP東パーキング、


ドクオは寒空の下、クルマから降りてタバコの灰を落としたりコーヒーのこぼしたのを拭き取ったりしながらブツブツとブータレる




3 : ◆rHi47N9WYc :2008/04/17(木) 20:54:47.70 ID:lBdL/O4zO


( ^ω^)「………まあ、その程度で済んでよかったとも言えるお(ぼくのクルマじゃないしww)

だいたいタバコくわえたままコーヒー飲もうとしたらこぼすに決まってるお」


('A`)「ついつい忘れててなぁ……」



\('A`)/「……おかげでタバコでシート焦げるわこぼしたコーヒーでオーディオ壊れるわwwww俺涙目wwwww」


( ^ω^)「どんまいちっち!」


('A`)「っうぜぇwwww」
9 : ◆rHi47N9WYc :2008/04/17(木) 20:58:42.26 ID:lBdL/O4zO
( ^ω^)「まあこれを機に焼け焦げた純正シートは諦めてレカロでも入れたらどうかお?」

('A`)「うむむ……そういう手もあったか……今こそSR-Vを買う時なのか」

( ^ω^)(ドクオもやっぱり単純な男だお……)

この頃のブーンは以前のようなオドオドした感じが無くなり、少しくらいのことでは動じなくなった。

年齢的なものか、それなりに肝が据わってきたのかもしれない


( ^ω^)「?」


ふと、見覚えのあるクルマがブーンたちの横に滑り込んできた


青白いキセノンのビーを放つ、黄色いNSX

降りてきたのはもちろんツンだ

ξ゚听)ξ「相変わらずねぇ、アンタたちも………」

( ^ω^)「あれ?ツンじゃないかお!どうしたんだお」

('A`)「あれま!」


ξ゚听)ξ「べ、別にただの夕涼みというか……暇潰しにドライブしてただけよっ!」
11 : ◆rHi47N9WYc :2008/04/17(木) 21:03:38.11 ID:lBdL/O4zO


( ;^ω^)(この冷え込んだ深夜だというのに夕涼み………)

(;'A`)(さすがツンさん……回答が一筋縄でない……)


ξ゚听)ξ「……で、なにかやってんの?クルマのほうは?」


( ^ω^)「ぼくのZは……まずまずってとこかお」


('A`)「俺のスープラはシートに穴が空いてオーディオが死にましたwwww」


ξ゚听)ξ「………それはご愁傷さまねぇ、なにがあったかしらないけど」


14 : ◆rHi47N9WYc :2008/04/17(木) 21:05:55.23 ID:lBdL/O4zO

( ^ω^)「ツンのNSXはいい感じかお?」


ξ゚听)ξ「イイ調子かもね、でも今夜はもう帰るわ、よかったらついておいでなさいな」


( ^ω^)「お?一緒にランデブーするかお?」


ξ゚听)ξ「……そこまで馴れ合うほどの気分じゃないけど……ついてこれるならそれもいいわ」


( ^ω^)「………いくお、ドクオ」


('A`)「そーしますか」


ξ゚听)ξ「…………」

数秒の間の沈黙はバスンというドアの閉まる無機質な音と共に終わり、三台のクルマのエンジンに火が入る


16 : ◆rHi47N9WYc :2008/04/17(木) 21:12:31.18 ID:lBdL/O4zO
ウォォンッ!!


ξ゚ー゚)ξ「…………」

黄色いNSXのリトラが開き、キセノンのハイビームと共にパーキングの路面を蹴っていった。

( ^ω^)「………」

('A`)「………」


Z31と70スープラがそれに続き、三台のテールランプはやがて朧と闇に消えていった───




18 : ◆rHi47N9WYc :2008/04/17(木) 21:14:41.24 ID:lBdL/O4zO
同時刻、湾岸線鉄鋼団地料金所………



( ゚∀゚)y ̄~「………さて」

じっ……と、佇む


特徴的な丸目四灯のテール……

誰もがそのテールにおののき、畏敬の念を抱いた


そのクルマはR32スカイラインGT-R

 ___      ___
(◎ロ◎)─────(◎ロ◎)




( ゚∀゚)y ̄~「いくか!」
21 : ◆rHi47N9WYc :2008/04/17(木) 21:18:09.08 ID:lBdL/O4zO
130φの大口径マフラーから威嚇的なサウンドを轟かせるGT-Rがいま、料金所から発進を始めた


『ブォン!!ブォアババババッ!!!!』


路面にブラックマークを残しながら全開で加速していく



( ゚∀゚)(…………いい、仕上がりだな)


2速へシフトアップ


『バシュッッ!!』


たまらなくレーシングな気分を掻き立てられるブローオフサウンドが響き、

『ボッッ!!』

一瞬遅れてアフターファイヤーがマフラーから炸裂、バックミラーの中はオレンジの閃光で瞬いた


25 : ◆rHi47N9WYc :2008/04/17(木) 21:22:47.15 ID:lBdL/O4zO
再びアクセルを踏みこむと、RB26DETTは飢えた虎の如くエアーを取り込み、レブリミットまで一瞬にして回転を上昇させる


HKSの誇るタービン、GT2530が組み込まれたRB26DETTエンジンのパワーは凄まじい


80km/hから140km/hまでの加速時間はわずか二秒ほど


視界は奔流へと変わる


他のクルマをまるで道端に落ちた枯れ葉のようにブチ抜ける



(;゚∀゚)「く……ぅ」


まさに暴力だった


クルマというよりも、巨大なパワーの塊……

27 : ◆rHi47N9WYc :2008/04/17(木) 21:27:19.21 ID:lBdL/O4zO
………………………………………
…………………


( ・∀・)「……む?」


なにか来る……


バックミラーが二本の光軸を反射している


かなり眩しい、みるみるうちにハイビームが迫ってきやがる


( ・∀・)「……なんだ?」

車種を確かめる前にそいつはもう俺のS15に並んでいた


バシューーーッ!


( ・∀・)「………!」
今、俺のシルビアを抜いていったのは……
29 : ◆rHi47N9WYc :2008/04/17(木) 21:29:14.66 ID:lBdL/O4zO
……………………………………………
……………………
……………

(;゚∀゚)「おいおい……マジか」

Rのハンドルを握りながら思わず独りごと言っちまった。
いや、そんな控え目なモンじゃない……もう少しで叫ぶところだ


今日はギコのGT-Rがやっとこ組み上がったもんで、ちょっと試運転に来てみたところだったんだが……

自分で組んでおいてなんだがあまりにも速すぎて驚いちまった


もうGT-Rは何台も仕上げた経験があるというのにいまだに驚かされる


31 : ◆rHi47N9WYc :2008/04/17(木) 21:31:45.21 ID:lBdL/O4zO

同時に、数々のGT-Rを仕上げたうえでわかることなんだが、俺の腕が良いっていうよりも、やっぱりRB26DETTってエンジンが素晴らしいってことだな、こりゃ


( ゚∀゚)「なんてこと言ってる場合じゃねーんだ……」


あくまでこれは仕事だ

俺にはギコ……いや、客に任せられたクルマの完成度をキッチリと見極める義務がある



足周りはキチンと仕事しているか?クルマはちゃんと真っ直ぐ走っているのか?

レスポンスは?ブレーキは?

ボディ剛性は?そして不安感は?

そいつを確認するための試運転だ。
34 : ◆rHi47N9WYc :2008/04/17(木) 21:34:07.94 ID:lBdL/O4zO

もしもなにか問題点があればすぐに工場に戻って対策をしなければならない


( ゚∀゚)「………よ、よっと」


グッ……ググッ……


100km/hほどのスピードでスラロームを試みると、ダイレクトに、面白いようにノーズが向きを変えてくれる


4WDでありながらこのキレのよさには感動だ
それでいて不安や恐怖を感じさせない仕上がりはこれまでのノウハウがあってこそだ

熱関係も全て正常値だ。異音等も無い


( ゚∀゚)「問題ない……これならギコも満足のはずだ、な」

38 : ◆rHi47N9WYc :2008/04/17(木) 21:38:41.35 ID:lBdL/O4zO
……………………………………………………………
…………………………
……………………



( ・∀・)「ああ、BNR32だったか……素晴らしい、素晴らしい加速だった」


ここはひとつ追い回してみようか、速度差はかなり広いが今ならまだイケる、追い付ける


( ・∀・)「面白い……」

シルビアのハイビーム点灯

6速だったシフトは4速に落とし、一気にフルスロットル!
これで非現実空間にいける


( ・∀・)「俺と」


グォオアアアアアア!!!!



( ・∀・)「遊ぼうぜ」

40 : ◆rHi47N9WYc :2008/04/17(木) 21:42:10.34 ID:lBdL/O4zO
いままでのほほんと流れていた夜景は突如として奔流に変貌する

みるみるうちに道幅が狭く感じるようになり、やがて前方の一点に引き込まれるような感覚に陥る

( ・∀・)「………まだまだ」


この加速Gのなか、さらにスクランブルブーストを掛けるべくブーストコントローラーの押しボタン式の赤いスイッチを押す


(;・∀・)「………!」


ギュギュギュギッ!

後輪が一瞬パワーに負けてホイールスピンを起こしたが、すぐにトラクションを立て直し、更なる加速をはじめた

42 : ◆rHi47N9WYc :2008/04/17(木) 21:45:04.35 ID:lBdL/O4zO

タダでさえ偉駄天のようだったスピードが、さらに後ろから蹴り飛ばされるような凄まじいパワーを得る

( ・∀・)「…………」

今まで等間隔で過ぎていた街灯の灯りは光の点と点が繋がって一本になり、

三車線の道路幅がとてつもなく狭く感じられるほどだ


( ・∀・)「………俺のクルマも伊達にGT-Rのエンジン積んでるわけじゃあないんでね」


少しずつ、少しずつBNR32のテールが近付いてくる


ついには視界いっぱいに白い巨大な壁のようなテールに張り付いた




( ゚∀゚)「………?!」

45 : ◆rHi47N9WYc :2008/04/17(木) 21:49:10.23 ID:lBdL/O4zO

( ・∀・)「………」



( ゚∀゚)「………!」



S15がBNR32を追い抜いたのはほとんど一瞬のことだった


シュワーーンとあっけなく……



BNR32に乗っていたのはツナギを着た大柄の男のようだ。なぜだかどこかで見た覚えがある


( ・∀・)「そうか………プギャーの911をチューンした奴か」


S15にチギられたBNR32はそのまま減速し、近くのランプで湾岸線を降りていった

47 : ◆rHi47N9WYc :2008/04/17(木) 21:53:28.81 ID:lBdL/O4zO
……………………………………………………
………………………

( ゚∀゚)「RB26の音してやがったな……あんなS15もいるのか……
こりゃもうちっとツメなきゃならんかもな」

すっかり満足したつもりでいたが、まだまだそうもいかないらしい
もう少し、もう少しマージンを削ってGT-Rを仕上げるべく、工場に戻ることにした

まだいくつかやれることがある。


( ゚∀゚)「わりーな、シルビアの兄ちゃん、まだこのクルマはテスト中でな……続きはギコとやってくれや(はぁと)」

霞みがかった湾岸地帯の工場の灯りが、自分たちを引き留めているかのように見えたが……

GT-Rは吹っ切るようにその場を後にした



49 : ◆rHi47N9WYc :2008/04/17(木) 21:57:41.55 ID:lBdL/O4zO
…………………………………………………………………………


( ;^ω^)「シルビアとGT-R……」


ξ;゚听)ξ「は……速い……」


(;'A`)「今のR……ギコさんの……だったか?」


この三台、もちろん本気で飛ばしていたわけじゃなかった。なので必然的にのんびり流していたらほとんど一瞬でS15とBNR32にブチ抜かれた


(;^ω^)「うぅむ……」
52 : ◆rHi47N9WYc :2008/04/17(木) 22:02:53.96 ID:lBdL/O4zO



(;'A`)「ま……またかよ……びっくりしちまってコーヒーはオーディオにこぼれるわタバコの火種はシートに落ちるわ……また大惨事になってしまったじゃねーか!」




\('A`)/



第四十二話 完


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