118 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 15:04:43.00 ID:vD66obrqO
第四話  

─夜─

ネオンが眩しく色とりどりの形を造っては消え、明滅する街‥首都VIP。

いくつものビル街から人が溢れ、酒を呑んだり大騒ぎしたり、思い思いの時を満喫する時間帯
大通りはタクシーで溢れ、ぎこちない流れでクルマ達が走っている。


その中のひとつのビルから一人の女が吐き出された。


黒革のパンツ、黒革のジャケットに身を包まれた美女─


彼女は人の波を避けながらスタスタと大通りに向かい、路肩に停まっているクルマのドアを開け、ドライバーズシートに身を埋めた。

119 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 15:06:24.72 ID:vD66obrqO
Z32‥

漆黒のフェアレディZ

彼女を乗せたZはゆっくりと動きだし、そのまま『新制首都高速VIP4号入り口』と書かれた看板の方へ向かっていった





─彼女はほぼ毎日のように新制首都高を走っている。移動のためではない。ただ、純粋に走りたい‥それだけだった




三車線の高速湾岸線はひたすら真っ直ぐ続いている。まるで永久に終わりが見えないほどに、
前方に一般車の姿は見えない。工業地帯や倉庫街の明かりが眩しく感じるくらいにすいている

120 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 15:07:24.26 ID:vD66obrqO
水温、油温、油圧を確認し、四速のまま彼女はゆっくりとアクセルを踏みはじめた。

Zはエンジン回転2000rpmからゆっくりと加速する、しかし回転を重ねるごとに徐々にただものではない空気を漂わせていく。5500rpmを越えるとぎこちなくブーストメーターの針が右側にピン!と張り付き、
ドッゴーン!となにかが取り憑いたように狂ったような加速を始めた。

まるで大砲から打ち出されたかのようだ。

視野が一気に狭まり、左右の景色が見えなくなる。見えるのは前方の一点だけ。同時に襲い来る加速Gは彼女の体を容赦なくバケットシートに押し付け、後頭部はヘッドレストに引っ張られる。肺の中の空気までが押し出されるような感覚─

121 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 15:08:28.86 ID:vD66obrqO
ほぼ一瞬で7800rpmに届く。彼女は一度アクセルを離して素早くギアを5速へチェンジする


「バシュッッ!」ブローオフが開き、一瞬遅れてマフラーから「スパーン!」という音とともにオレンジ色のアフターファイヤーを煌めかせる。



エンジンは一度5800rpmほどに落ちたが、再び全開にされたスロットルがさらにZを加速させる


目が大きく見開かれ、全身の毛穴が開くような、まるでこのまま奈落の底へ落ちるようなスピードの中、彼女は思った


川 ゚ -゚)(これだ‥この感覚‥ほかでは得られない‥このために私はここに来て‥

そしてここに来るために私は‥生きている‥)


グオオアアアァァァ‥‥‥‥


漆黒のZは重い高音を夜空に響かせながら湾岸の果てへと消えていった
143 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 20:05:00.70 ID:vD66obrqO
新制首都高、港湾パーキング




ブォロロロロロ‥


重低音を響かせてゆっくりZは停車する。

ターボタイマーを作動させ、女はクルマから降りるとタバコに火をつけ、夜の海を眺める。


川 ゚ -゚)y ̄~「‥‥ふぅ」





河口のむこうがわの岸には工業地帯が並んでいる。黄色いランプがところどころに配置され、それを無数に積み重ねられて壁のようになっているオレンジ色のコンテナが照り返す。


少し上の空を国際線が横切る。赤いランプを点滅させるジャンボジェット機‥



彼女は缶コーヒーを飲みながらただ立ち尽して夜景を見ていた。まるで自分がこの場所の一部であるかのように‥



157 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 23:19:27.49 ID:vD66obrqO
どれぐらいの時間が経っただろうか、


彼女のもっていた缶コーヒーがすっかり冷たくなったころに遠くからエキゾーストサウンド(排気音)が近付いてくる
音からしてかなりのチューニングをされているクルマのようだ。


川 ゚ -゚)y ̄~「‥‥‥」


振り向くと、駐車エリアに白いスカイラインGT-Rが入って来た、BCNR33だ。ドライバーの顔は見えない


しかし彼女は特に意に介さず

川 ゚ -゚)「さて‥もう帰るとしよう」


Zに乗って駐車場出口に向かっていった

165 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 23:49:57.02 ID:vD66obrqO
GT-Rとすれ違ったときに相手の口許だけが見えた。なにか、ほくそ笑むような、引き締まるような、そんな口許に変わる光景だけが彼女の目に映った



川 ゚ -゚)「‥‥」


湾岸線を折り返すZ、道路状況は一般車がまばらにいる程度だ。


しばらく100キロ前後で流したのち、水温、油温、油圧を確認してギアを5速から3速に落とし、アクセルを踏みこんだ。再び襲い来る加速感に身を委ねていた彼女だったが‥



川 ゚ -゚)「ん‥?後ろから‥何か来る?」
さきほどまで真っ暗だったバックミラーに白いロービームがだんだんと迫ってきていた
川 ゜‐゜)「もしやさっきの33R‥?」


Zのスピードはまだ160キロほどだったが、さっきまでバックミラーに映ってもいなかった白い33Rは徐々に距離を詰めてきている



3速7500rpm。すばやく4速にシフトアップ、ブーストは1.5をピンと指す。戦闘機的な加速を続けるZだったが彼女の感情はさきほどまでと違っていた‥

川 ゚ -゚)「あの33Rが‥追い上げてくる!?」
167 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 23:51:33.15 ID:vD66obrqO
このZに追いついてくるクルマはそうそうあるものではない。いくらGT-Rといえど、ちょっとやそっと改造したくらいでは相手にならなかったのだ。たった今までは‥
5速6000rpm、ついさっきまで完璧だと思えたこのパワーが、今は彼女を満足させなかった。


白い33Rはスパッと進路を変え、そのままZを追い抜いた。


川 ゚ -゚)「ば‥ばかな‥」

横からシュワーンと音がしたと思ったら、もうライバルには前に出られていた。こんなことは彼女には経験のないことだった


Zの速度は280キロを越えているというのに、前を走る33Rはそれを上回る速度で走っている。その証拠に2台の距離は少しずつ離れていく‥
川 ;゚ -゚)「こんなクルマが‥いたのか‥?」





グオオアアアァァァァッ!
ギュオオオオォォォォ‥‥

168 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 23:52:25.38 ID:vD66obrqO
( ; ^ω^)「おおお!!」
(;'A`)「うわああ‥」


白い33Rと黒いZ32に一瞬でブチ抜かれた青いスープラの中の男二人が一斉に叫んだ。


( ; ^ω^)「い、いまの2台すんげーはええお!気合い入りすぎだお!」

(;'A`)「いやあ‥あの2台時速300くらいでてるんじゃないか‥次元が違いすぎる‥」

( ^ω^)「いまの黒いZ32って前見かけた美人なおねえさんが乗ってたやつじゃないかお?」

('A`)「えっ?mjd?そうだった?」
170 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 23:55:01.59 ID:vD66obrqO
川 ゚ -゚)「‥‥」


アクセルを離していた。5速1500rpm、時速80キロほどまでスピードを落としていた
もう、あれ以上踏み続けていても勝てないと判断した結果だった。勝負を降りた。



川 ゚ -゚)「私がここで負けるとは‥いったいなんなんだあの33Rは‥」


運転しながらタバコを取りだし、火をつける。いままで車内では吸わないことにしていたが、吸わないととても気分が収まりそうにないのだろう。




川 ゚ -゚)y ̄~(しかしあの33Rとの差はそんなに絶望的というほどではないだろう、次は各部の見直しをして、中速のトルク重視にして250から300キロまでの到達を短縮すればなんとかなるはずだ、そのためにはタービン交換が理想だが‥今はまだ無理だな、

やはりその前にエアロを空気抵抗の少ない最高速向きのものにした方がいいかもしれない、

ホントは純正が好きなんだがそれも仕方ないかな‥)



次にZに施すチューニングプランを考え、彼女は帰っていく

彼女は、完全にスピードの魔力に取り憑かれていた。


第四話  完

戻る