5 : ◆rHi47N9WYc :2007/08/22(水) 23:33:01.77 ID:AVJru/tXO
第三十八話





……もう年が明けてしまった……


まったく早いものだ。

私も今年で25歳になる……


川 ゚ -゚)

7 : ◆rHi47N9WYc :2007/08/22(水) 23:35:15.04 ID:AVJru/tXO
私のZ32の調子は上々だ

あれから、燃調や噴射量、点火タイミングをもっと煮詰めてみたのだ

今ならブースト1.8で780馬力近いパワーが出てるだろう



しかしチューニングカーはこのくらいの領域になると常にトラブルと背中合わせになり、気温が少し変わっただけでgdgdになってしまうなんてことが、よくある


エンジンルームが狭く、熱が籠りやすいZ32ならなおさらだ。


8 : ◆rHi47N9WYc :2007/08/22(水) 23:38:11.84 ID:AVJru/tXO


だから日頃のチェックは欠かせない。


ひとたびエンジンにトラブルが起こってしまえば、費用も時間も大幅にかかってしまいかなりツラい

ツラいというよりも、立ち直れないだろう……


余談だがZ32ならノーマルでも特にイキやすいのがパワートランジスタだ


イグナイタとも呼ばれるパーツだが初期型のZならまず間違いなくこれは必ず壊れる

予備のパワトラを常備するのは初期型オーナーなら常識の域だ

私のは最終モデルだから壊れる心配は薄いがやはり常備している

13 : ◆rHi47N9WYc :2007/08/22(水) 23:43:22.53 ID:AVJru/tXO


川 ゚ -゚)「よし、大丈夫だな」


オイル漏れも、冷却水漏れも無い。ベルトやコネクタ類も問題無し


ボンネットを閉じて工具を片し、ガレージ内を見回す


川 ゚ -゚)「………散らかってきたな」

積み上げられた段ボール箱は相変わらずZ32のVG30DETT用のパーツばかりだ

しかし、その中にはぽつり、ぽつりと1JZターボ用のパーツも点在している



川 ゚ -゚)「………ドクオ」


しばらく連絡をとっていなかった

とはいっても私の方から連絡することはほとんど無いと言っていい。

いつも、年下のドクオの方から連絡が来るのが普通だった

川 ゚ -゚)「あいつ……どうしてるのかな」
15 : ◆rHi47N9WYc :2007/08/22(水) 23:47:15.48 ID:AVJru/tXO
ガレージの隅にある1JZ系パーツはいつか、ドクオのタメに役に立てばと思い、用意していたパーツだった………


鍛造ピストンにハイカム、H断面コンロッド

燃料ポンプにオイルポンプ、660cc対応インジェクター……etcetc

一応ビッグタービンキットも用意してあるのだがやはり極めつけはナイトロオキサイドのキットだ。



ナイトロオキサイドシステム、

こいつはアメリカのクルマ映画によく出てくるシロモノで、タンクに充填された亜酸化窒素をインテークマニホールドに吹いてやることにより、酸素供給と気化による冷却でエンジンパワーを爆発的に上昇させるシステムなのだ
17 : ◆rHi47N9WYc :2007/08/22(水) 23:52:12.11 ID:AVJru/tXO
しかし問題もある、

ガスをタンクに貯蔵している形式からもわかる通り、何回か使ってカラになってしまったらまたナイトロオキサイドを充填しなくてはならないことと、それを発動させる時のためのメインコンピューターを書き換えなければならないことだ





たまたまツテを辿って手に入れたのはいいが、ただでさえビッグツインタービン車のZ32に装着するにはどうにもリスクがつきまといそうで、躊躇っていたところだった。



18 : ◆rHi47N9WYc :2007/08/22(水) 23:54:18.20 ID:AVJru/tXO
それでそのままお蔵入りにしてしまっていたのだ


実際、ドクオの70スープラに必ず装着しようと思っているわけでもないが、とりあえず使い道がないまま埃を被らせておくのももったいない、というわけである

川 ゚ -゚)「……やっぱり今日は寒いな」


………それらのパーツを一瞥し、私は肌寒いガレージを後にして部屋に戻った。


とりあえず熱いコーヒーで一服しよう、

そう思えば足取りも軽くなった



19 : ◆rHi47N9WYc :2007/08/22(水) 23:56:39.27 ID:AVJru/tXO






川 ゚ -゚)「ドクオ、なにか変わったかな……」


コーヒーをドリップしながら独り言を口走ってしまった

悪い癖……というほどではないがたまにやってしまう……


ドクオは……たしかまだ21とか22歳だっただろうか

たしか、21歳……


戻りたくても、戻れない……

まだまだ失敗を恐れずに突き進める年齢

私はといえば……そう、今年で25歳

私は……かつてこうあって欲しいと思っていた25歳になれるのだろうか
21 : ◆rHi47N9WYc :2007/08/22(水) 23:59:16.29 ID:AVJru/tXO

川 ゚ -゚)

25歳……それこそ会社の経営者や芸能人、

会社員、大学院生からニート、犯罪者まで……

みんなが10代で決めたであろう選択肢を辿った結果、いろいろな25歳がいる


私だって……10代の頃はもっと高みを見ていた

もちろん、そんな先のことなど想像もつかなかったがな


……そして、ハタチを越えたとたん時間の経過が尋常ではなくなった



22 : ◆rHi47N9WYc :2007/08/23(木) 00:00:40.04 ID:iNLodmnkO


……10代の頃の基準からすれば想像もつかないくらい毎日が速く過ぎていった


時間はただ、何も告げずに過ぎてゆく……めくるめく毎日、

『今を大切にしたい』

『いざとなったらいつでも出来るさ』


そんな言葉は一度も現実にならないまま24歳を過ぎてしまった


こんな風に20代はあっという間に終わってしまうんだろうな、と最近はよく思う

27 : ◆rHi47N9WYc :2007/08/23(木) 00:03:50.90 ID:iNLodmnkO

川 ゚ -゚)

しかし、まだまだ通過点にすぎないはずだ



25歳を……仮に、


仮にだ、

クルマの加速度で例えれば3速4000rpmくらいのものだろう


クルマも人生もここからアクセルを踏み込めるか否かが鍵だ

踏み込めればトルクの広がりで一気にリミットまで行ける


そのアクセルを踏む為には何が必要か?
29 : ◆rHi47N9WYc :2007/08/23(木) 00:07:13.34 ID:iNLodmnkO

まずは『見通しの良さ』だ

前もロクに見えないまま踏み込むほど無謀なバカはいないだろう



次に『ターボ』

ターボというと大袈裟だが、要は補器類だ

自分をサポートしてくれる存在すべて……友人、会社、家族、過去の経験……

……あるかないかで加速度はまるで変わってくる

32 : ◆rHi47N9WYc :2007/08/23(木) 00:09:04.01 ID:iNLodmnkO

そして一番大事なコト
『踏み込む勇気』

一瞬であっても視界が開けたならすぐに踏み込む。グズグズしていたらチャンスを取り逃がしてしまう


……つまづいたならシフトダウンも必要だろう

逆にある程度満足すればシフトアップしてのんびり一定回転を保つのもアリだろう……

しかし、人生の5速トップエンドまでイケるかどうかが決まるのは20代でどこまで踏み切れるかにかかっている

……と私は思うのだ

34 : ◆rHi47N9WYc :2007/08/23(木) 00:18:47.74 ID:iNLodmnkO
ドクオからの連絡は、来ない


連絡をくれればスープラのチューンをしてやろうと思っているのに……


川 ゚ -゚)y ̄~「近々………湾岸に、行ってみるか」

近頃の湾岸は、トップ不在だという


それはつまり、私が最近Z32で湾岸に行かなくなってからの話しらしい

要は私のZ32が最速と扱われていたらしいが実際のところはよくわからない

それに、まだまだ見知らぬ好敵手も数人いる

川 ゚ -゚)「………」


私は急がなければ、


終焉を見ることが………出来ないだろう



第三十八話  


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