- 24
名前: 果樹園経営(樺太) :2007/04/16(月) 20:32:29.22 ID:GCIIe5ZcO
- 第三十話
('A`)
うお…寒い
印刷会社の仕事を終え、外に出た瞬間そう思った
そりゃそうか、もう12月になっちゃったんだもんな
こないだまで夏だったというのに…
時間が過ぎるのはじつに…早い
このままだとあっという間に年とっちゃいそうで怖いな…
('A`)「ヒィィ…」
でも、12月になってくれたおかげで…出たんだよ。ボーナス!
お陰で…外は寒いが財布の寒さは当分しのげそうだ
- 25
名前: 果樹園経営(樺太) :2007/04/16(月) 20:34:16.65 ID:GCIIe5ZcO
- ('A`)「…」
しっかし…都会ってやつはどいつもこいつも気が早い
街中イミテーションだらけだ
けっ!なーにが『merryX'mas』だ!
こんな小さい床屋にそんなの貼ってどうすんだチキショー!
だいたいまだ今日は12月18日じゃねえか
('A`)「………」
('A`)「ウツダ…」
ボーナスはありがたいが、クリスマスなんぞ少しもありがたくない
次のバイト先に向かう道中で、俺は一人愚痴りながら歩くのであった
- 26
名前: 果樹園経営(樺太) :2007/04/16(月) 20:36:42.22 ID:GCIIe5ZcO
- / ,' 3「はい、内藤くん…」
( ^ω^)「部長、ありがとうございますお」
精肉工場の事務所内、
事務所とは言っても少し生臭い部屋であったが…
ブーンは冴えない部長から封筒を受け取ってニコニコしていた
( ^ω^)「おっおっ!ボーナスでたお。ktkrだお」
この精肉工場で働き初めてから半年とちょっと…
ブーンにとってはこれが初めてのボーナスだったのだ
- 27
名前: 果樹園経営(樺太) :2007/04/16(月) 20:38:45.53 ID:GCIIe5ZcO
- ( *^ω^)「…とりあえずZにハイオク満タンいれるお。クヒヒ」
ホクホクの表情で会社を出て、Z31のシートに座るブーン
( *^ω^)「…………」
仕事が終わった後に、Zのイグニッションキーを捻る瞬間はいつも嬉しい。
キュルルル…グワグワワアアーン!!
エンジンに火が入り、凄みの効いたサウンドがブーンの体を震わせる。
これで仕事の疲れの半分は消え去るお…ブーンは毎日そう感じている
( *^ω^)「クルマが僕の活力の源だお」
- 28
名前: 果樹園経営(樺太) :2007/04/16(月) 20:41:38.89 ID:GCIIe5ZcO
- デスクの上の書類は、やっと最後の一枚になってくれた。
( ´∀`)「これで…終わりかモナ」
右手でネクタイを緩めつつ、左手で書類を手にする
私は大雑把に目を通してハンコを押し、処理済み書類の棚に放り込んだ
( ´∀`)「ふぅ、」
…これでやっと今日の仕事は終わり。
解放感に浸りつつ私は窓の外を眺める
まだ五時だが…街はもう暗く、イルミネーションが眩しく光っている
- 29
名前: 果樹園経営(樺太) :2007/04/16(月) 20:42:50.56 ID:GCIIe5ZcO
- ( ´∀`)「そうか、もうクリスマスかモナ」
道理でイルミネーションが多いと思った
この時期になってやっと、一年が過ぎることを実感しはじめる
そうだ。考えてみれば正月とゴールデンウィークと、お盆…
少し一息つけるときになってやっと年月の経過を実感している…
( ´∀`)「やれやれ…」
学生のときはいつまでも青春が続くものだと思いこんでいたが
どうやらそんなことはないらしい
…ショックだ。
私は…たしかに若いころの夢だった『社長』になったというのに。
- 30
名前: 果樹園経営(樺太) :2007/04/16(月) 20:47:29.97 ID:GCIIe5ZcO
- ( ´∀`)「思い起こせば…」
二十代から…苦労して昇りつめ、銀行から借金して会社を設立し
事務員の裏切りや取り引き先の不渡り手形に泣き、
休みもとらず必死になって働いてきた
そして…苦労のすえに、若いころ夢見た『裕福な生活』『平和な家庭』を築きあげた
自分で言うのもなんだがその人生はきっと、誰の目にも『成功者』として写るだろう
そうだ。努力は報われた
『これでいい…』
事実そう納得していたつもりだった
しかし…この物足りなさはなんだ?
- 31
名前: 果樹園経営(樺太) :2007/04/16(月) 20:51:37.28 ID:GCIIe5ZcO
- 若いころにやりたかったことを…私はとうとうやらなかった
年を取ればいつかそれでも納得するときが来る…そう思っていた
しかし、そうはいかなかった
…いくら年をとったと言ってもまだまだシャバっ気は捨てきれるものではない。
むしろ…あとが無いぶん未練も多い
そして今こそ望むものが…
『金も何もなかったころの若さ』になってしまうとは…
- 32
名前: 果樹園経営(樺太) :2007/04/16(月) 20:52:48.55 ID:GCIIe5ZcO
- ( ´∀`)「……………」
こればかりはもう諦めるしかない
未来には行けても…
人間誰も昔に戻ることは出来ないんだ
…それが自然の摂理なのは少し悲しい
( ´∀`)y ̄~「…………」
ならば、その摂理に少しだけ反抗してみよう
( ´∀`)y ̄~「…NSXでドライブでもするかモナ」
- 33
名前: 果樹園経営(樺太) :2007/04/16(月) 20:55:51.33 ID:GCIIe5ZcO
- ( ´∀`)
私はコーヒーを飲み干して…社長室をあとにした
いつもながら、ゆっくりと重々しく閉まってゆく社長室の扉。
カチャリ、
控え目な音が廊下に響き、それを合図に今日の私の仕事は完全に終了となる。
自然と足取りも軽くなる
( ´∀`)「………」
私は若干早足で自宅のガレージへと向かった
( ´∀`)「ポチッとな」
ガレージの電動シャッターがゆっくりと上昇…
暗闇の中に浮かぶ黄色い獣が少しずつ姿を現す…
はずだった
- 38
名前: 果樹園経営(樺太) :2007/04/16(月) 21:07:37.65 ID:GCIIe5ZcO
- そこに姿を現すはずの…
澄ましてるような、獰猛なような、黄色い獣は居なかった
( ´∀`)「……NSXが…無い?」
ああ、そうか、
ツンが今どこかに行くのにNSXを使っているのか…
NSXのあった場所にメモが残っているのを発見し、そう解釈した。
『午後10時頃までNSX使います
ツン』
( ´∀`)「………」
- 39
名前: 果樹園経営(樺太) :2007/04/16(月) 21:11:50.13 ID:GCIIe5ZcO
- ( ´∀`)
そうか、今夜はクリスマスだったな…
たしかにツンは遊びたい盛りだ。クルマを使いたがるのも無理はないし…
私も若いころはここぞとばかり親父のクルマを使っていた手前、文句を言うのもしのびない…
誰か友達と遊んでるのだろうか…
…もしかして彼氏でもいるのか?
しかしどのみち私のドライブはパアだ
( ´∀`)「………」
( ´∀`)「ショボーン」
第三十話 完
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