66 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 00:21:54.57 ID:1gFwOpTfO
第三話  


ξ゜凵K)ξ
相も変わらずさわがしいキャンパス、油を売る男たち‥さっさと帰る女‥
はあ‥たいくつ、もう大学も飽きてきちゃった‥



べつになにかしたくて大学に入ったわけじゃない‥高校を卒業して、両親の言う通りに大学に入っただけ‥これからどうせただなんとなく卒業してなんとなく父親の会社の役員をやって‥と、こんな将来が決まっていても楽しみでもなんでもない。


父親は一応中堅クラスの会社を経営している。お陰でわたし自身お金に困ったこともないし、それはそれで感謝するべきだということはわかってるわ。
でも、どうにもこうにも退屈で仕方がない‥『人生には失敗や挫折があるから面白い』というような言葉が真実ならわたしの人生なんてとてもつまらないに違いない。なにもかもが想定の範囲内。それってなにひとつ楽しくないんじゃないかしら?

67 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 00:22:46.72 ID:1gFwOpTfO
なにかわくわくするようなことってないかしら?わたしだってそれなりに努力はしてるし‥
一応社長令嬢のわたしだけど意外にも行動力はあるのよ。


退屈な日常を変えようとバイトしてみたり‥サークルに入ってみたり‥


それでもわたしの心は満たされなかったけどね。たしかに楽しかったけど、あくまで想定内。

やっぱり予想を反する面白さってなかなか無いものなのかしら‥
もう、いいや。いつまでも学校にいたって仕方ない。外の空気にでも触れてこなくちゃこのまま腐っちゃいそう

68 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 00:23:43.33 ID:1gFwOpTfO
VIP市東通り、東京で言うところの晴海通りみたいなものかしら?

車が絶えず通り、歩道は人でいっぱい。ちょっと自転車なんかが走ってくると軽くウザいと思えるような人工密度。



ひとり都会を歩くわたし、もうそろそろ都会の喧騒にもあきあきしてきた。

こんなときにはバーボンハウスで暇つぶしでもしようかしら


こんな心もとない気持ちの時はなんでもいいから強引に決意しないととてもテンションを上げられない。

わたしは静かな側道に入り、バーボンハウスに向かうことにした。歩くと30分くらいはかかるかしら?でも今はタクシーに頼らず歩いてみたい気分‥なぜだろう?

69 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 00:25:56.88 ID:1gFwOpTfO
(´・ω・`)「やあ、ツンちゃんようこそバーボンハウスへ」
ドアを押して入るとマスターがいつものように声をかけてくれる。

ξ゚听)ξ「あら、よくわたしのこと覚えてたわね」

(´・ω・`)「忘れるわけないに決まってるじゃないか、そろそろ来てくれるんじゃないかなぁと思っていたところさ、まあこの紅茶はサービスだからまず飲んで落ち着いてほしい」


ξ゚听)ξ「あら、ありがとうマスター。‥べ、べつに紅茶サービスしてくれたからお礼言っただけなんだからねっ」


(´・ω・`)「うふふ‥ところで最近調子はどうだい?」


ξ゚听)ξ「なんの調子?」

(´・ω・`)「おおざっぱに…人生の、調子かな」

70 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 00:27:03.23 ID:1gFwOpTfO
マスターはいつもサービスがいいうえに悩み相談なんかにも乗ってくれる。だから昼間時間が空いたときにはふらっとここに来てみたくなったりする。おかげで今日も美味しい紅茶をサービスしてくれた。それを頂きながらわたしは答える。

ξ゚听)ξ「なんか‥前にも行ったけどつまんないのよね‥なんか面白いことないかしら」


(´・ω・`)「それはおかしいね、恋愛とか浮いた話はないのかな?」


ξ゚听)ξ「恋愛?なんかあんまり興味ないのよね、バイトや大学の男はアホみたいなのばっかだし、だいたい私がなまじ社長令嬢なもんだからみんな気負けしてる感じ‥向こうから近寄ろうともしないしこっちからも近寄らないわ」

71 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 00:29:36.74 ID:1gFwOpTfO
(´・ω・`)「そうか…興味がないか、しかしもったいないね。ツンちゃんクラスのルックスなら彼氏もよりどりみどりだろうに」


ξ///)ξ「べ、べつに誉めたってなにも出ないんだからねっ」

そう言ったらマスターは少し苦笑した。私はまた紅茶に口をつける…


そう…色恋沙汰には興味がないし、なにか目標がないかしら?

少しくらいくだらない目標だっていっときの退屈をしのげるならそれもいいかもしれない

…と考えたときマスターが口を開いた


(´・ω・`)「そういえばツンちゃんは免許もってたっけ?」
73 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 00:31:41.76 ID:1gFwOpTfO
まるでわたしの思考を読んでいたかのような絶妙な発言。

ξ゚听)ξ「あたし?ううん、持ってないわ」

(´・ω・`)「そうか…学生のうちに免許はとっておいたほうがいいと思うけど…どうだろう?免許とってみたら?そしたら少しばかり世界も広がるかもしれないよ」

m9ξ゚听)ξ「それだわ!」


わたしは思わず椅子から立ち上がってマスターにプギャーしてしまった…


たしかに学生生活になにか足りないという気がしていたと思ったら…車の免許だ。いつもタクシーか執事が運転手してくれていたからすっかり見落としていたのかもしれない




74 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 00:33:25.90 ID:1gFwOpTfO
ξ゚听)ξ「たしかにそういうの、チャレンジングでいいかもしれないわね」


(´・ω・`)「うん、それにこの国の免許保有率は五割以上だしね。いいチャンスだと思うよ。それじゃ紅茶おかわり、するかい?」



ξ^ー^)ξ「いただくわ!」



こうして私はマスターの弘明ぶりにより、突如免許取得の意欲が湧いたのであった
78 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 01:30:45.39 ID:1gFwOpTfO
〜2週間後〜

ξ゚听)ξ


こうして私はまず近所の教習所に入校した。やると決めたらすぐ行動を起こす、これがわたしのポリシーだから



教習所の印象は‥なんだかあんまり軽い雰囲気じゃないけど、けっこうサバサバしててそれはそれでいい印象だった‥かな

行ってから気づいたんだけどわたし、オートマ免許とマニュアル免許、どっちにするか決めてなかったんだ。でもマスターは


(´・ω・`)「若いんだし、どうせ取るんならマニュアルにしたほうがいいよ」


と言ってたからそれに従うことにした

79 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 01:35:51.50 ID:1gFwOpTfO
ξ゚听)ξ




とりあえず今のところバイトもしてないし、大学の単位も余裕だから毎日通うことにした、


うまく行けば一ヶ月で取れるかもしれないってマスターは言ってた



それから毎日、毎日教習所に通った。車の運転は‥なんだかすごく面白かった。


マニュアル車ってたしかに面倒かもしれないけど、こっちの方が楽しい。わたしはそう思う
81 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 01:44:26.31 ID:1gFwOpTfO
ξ゚听)ξ


毎日通ってたこともあって、明日には仮免の試験が受けられる。



ちょっと不安だけど今まで特に問題なかったし、今日の見きわめでも教官に「この調子でいけば明日は受かるよ」と言われた。

だから、たぶん大丈夫。うん、



82 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 01:47:12.07 ID:1gFwOpTfO
〜翌日〜



仮免の試験は番号順で行われる。その日の受験者はたった二人‥


わたしともう一人‥ということね


黒板に本日の受験者名が書かれている。

一番、内藤ホライゾン
二番、ツン


( ^ω^)「おっおっ!やばいお、緊張してるお」



ξ゚听)ξ「‥‥‥」
90 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 06:33:10.80 ID:1gFwOpTfO
受験前の説明を受ける教棟にふたりきり‥わたしと同じ年齢くらいの‥内藤ホライゾンなる男が独り言を言っている‥


これってもしかしてわたしに言ってるのかしら‥だとしたらスルーしちゃうのも少々気の毒な気がしたので‥


ξ゚听)ξ「そうね‥私もなのよ」と反応してあげた


( ^ω^)「おっ?やっぱりそうだおね?二人とも受かるといいお」

ξ゚听)ξ「ええ‥」

( ^ω^)「どうですかお?自信の方は?」

ξ゚听)ξ「そんなの受けてみなくちゃわかんないじゃない」

( ^ω^)「冷静な人だお」


91 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 06:36:31.17 ID:1gFwOpTfO
‥なんか‥久しぶりに他人に声をかけられた気がする‥
でも何故か嫌な気持ちがしないのはどうしてかしら?
‥と、教官が部屋に入ってくる

「おはようございます、これから検定を始めますから、内藤さんはそこの車の運転席、ツンさんは後部座席に座ってください。ツンさんは自分の検定の前に見学してもらいますのでね」

そう言い残してサッサと準備を始めた


そっか‥見学してから検定ね、わたしだけちょっとラッキーかも


( ; ^ω^)「そんな‥僕はまだ心の準備が‥そんなの不公平だお」
教官「番号順なんで仕方がないんですよね〜、まあ内藤さんは自分の検定が終わったあとにツンさんの見学をしてもらいますから」


( ; ^ω^)「それって意味ないおww」



ξ゚听)ξ「ぷっ‥」


いけない、少し吹いちゃった。
100 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 12:08:51.37 ID:vD66obrqO
〜午前10時〜

ξ゚听)ξ「ふう‥」


検定を終えて車から降りた私は大きく伸びをして教棟に入った。手応えは‥たぶん大丈夫


( ω )「ああ‥やっちまったお」



内藤さんはなんだか自信がなさげ。
これから私と内藤さんは合格発表まで数十分ほど部屋で待機しなくてはならない


( ^ω^)「それにしても‥ツンさんの運転はスムーズでしたお」

彼がさりげなく私に声をかけてくる

101 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 12:10:41.08 ID:vD66obrqO
ξ゚听)ξ「あら、そうかしら?内藤さんも結構よかったんじゃない?」

( ;^ω^)「いやいやいや、一回坂道発進失敗してしまったんだお。ガクブルだお‥」

ξ゚听)ξ「ああ‥確かにそんなことも‥」


( ^ω^)「あ、あと僕のことは『さん付け』しなくていいお。むしろ『ブーン』と呼んでもらって構わないお」


ξ゚听)ξ「なによそれww」

発表までの待機時間が長いせいか、二人だけの教室が雑談で賑わったとき


教官「ハイお待たせしました〜、それでは結果を発表します」

102 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 12:13:58.29 ID:vD66obrqO
ガラガラッと引き戸を明け、教官が現れたので私たちは軽くびっくりして前に向き直る

教官「え〜、今回の結果は‥」

( ;^ω^)「‥‥‥」


ξ゜凵K)ξ「‥‥‥」

教官「二人仲良く合格です!仮免許証ができあがってますのでお渡ししますね〜」

わたしはホッと息をつき、安心した。
ブーンは‥

( *^ω^)「まじかお!落ちなくてすんだんだお?やったお」

満面の笑顔で仮免許証を手にする

ξ゚听)ξ「よかったじゃない。ブーン」

( *^ω^)「おっおっ!ありがとうだお!嬉しいお」

ξ///)ξ「べ、べ、べつにあたしは単なる社交辞令として祝福してあげただけなんだからねっ」

五月ともなると昼はすこし暑いくらい‥そのせいか今、すこし顔が赤くなってる気がした

103 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 12:16:20.77 ID:vD66obrqO
(´・ω・`)「そうか、仮免とれたんだね。まあこれから路上教習も長いけど頑張ってね」

( ^ω^)「わかってるお!」


(´・ω・`)「そういえば今日はドクオは一緒じゃないのかい?」
( ^ω^)「ドクオは今日は仕事だお。僕だって夜からバイトなんだお」

(´・ω・`)「そうか‥ブーンはバイト始めたんだ‥なにかお金が必要なことでも?」
( ^ω^)「いまはクルマが欲しいんだお。教習所のお金はカーチャンに出してもらってるけどクルマはそうはいかないお。だからニートをやめてお金を稼ぐことにしたんだお。働くことに最初は不安だったけど、やってみたら思った以上に毎日充実してるお」

(´・ω・`)「そうか‥ブーンもやっぱり働きはじめていい顔になってきたね‥


  や  ら  な  い  か  ?」

( ^ω^)「だが断る」

(´・ω・`)「‥‥‥」

104 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 12:17:51.03 ID:vD66obrqO
その時、扉がカランカランと音を鳴らしながら開く。来客のようだ
(´・ω・`)「‥やあ、ようこそバーボンハウスへ‥って、ツンちゃんか、」


ξ゚听)ξ「どーもー」


( ^ω^)「お?ツンさんですかお?これまた奇遇だお」


ξ゚听)ξ「あら!ブーンじゃん!どうしてここに?」


( ^ω^)「僕は一応ここの常連なんだお」

(´・ω・`)「おや?ひょっとしてツンちゃんて‥ブーンの彼女だったとか?」


ξ///)ξ「な、なにいきなりわけのわかんないこといってるのよ!そんなんじゃありませんだからねっ」


( * ^ω^)「マスター、これで彼女になにか飲み物を頼むお」

顔が赤くしながらブーンは即座にカウンターに100円玉4枚、5円玉を7枚差し出した

105 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 12:18:39.06 ID:vD66obrqO
ξ///)ξ「あ、アンタもなにその気になって気取ってんのよっ!」

( * ^ω^)「まあまあ、せっかくだから二人の仮免合格の祝杯をあげようお。僕がおごるお」

(´・ω・`)「ふふ‥なるほどね、教習所の出会いか‥まあまあツンちゃん、とりあえず座りなよ。ブーンのオゴリの紅茶を用意したから飲んで落ち着いてほしい」

ξ*゜凵K)ξ「‥もう」

106 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 12:20:51.23 ID:vD66obrqO
ξ゚听)ξ


そんなことがあってからさらに数週間後‥



わたしはブーンと教習所の卒検をクリアし、その翌日にはいっしょに免許センターに行き、これまたいっしょに合格してしまった


ブーンとはあの日以来すっかり打ち解けて、なんだか友達みたいになってる‥

べ、べつにあいつと仲良くなりたかったとかそんなことはひとことも言ってないんだからね!誤解しないでよねっ!

107 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 12:21:45.82 ID:vD66obrqO
そんなこんなで免許証を交付され、今は二人で歩いて帰っているところ‥


( ^ω^)「やっと免許を手にいれたお、そういえばツンはなにか欲しいクルマとかないのかお?」

ξ゚听)ξ「クルマ‥か」


わたしはもう一ヶ月前に立てた目標、『免許をとる』というのを達成してしまった‥これからは何を目標にしようか考えていたけど‥急にクルマを目標にしたくなってきた。だけど‥


ξ゚听)ξ「特に‥思いつかないなぁ‥でもせっかくマニュアル免許取ったんだからマニュアル車がいいかな」

( ^ω^)「そうかお。じつは僕もまだ決めてないんだお。てかまだお金貯まってないけどお」

108 : ◆rHi47N9WYc :2007/02/24(土) 12:23:20.90 ID:vD66obrqO
ξ゚听)ξ「‥‥帰りにバーボンハウス、寄ってく?」


( ^ω^)「おっおっ!それは賛成だお」


ξ///)ξ「べ、べつにアンタとお茶が飲みたいってわけじゃないんだからね!あたしが喉がかわいたからついでに誘ってあげただけなんだからねっ」


( * ^ω^)「いいから早くいくお!」


─ブーンに手をひかれ、今日もまたバーボンハウスに向かう─



六月のこの季節は蒸し暑くて
緑の匂いが鼻をさし─もうじき夏がやってくることを実感する─

21回目の夏─

免許をとった夏─

第三話 完

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