126 : 三銃士(関東):2007/03/22(木) 21:28:32.05 ID:dqF6PkWCO
第二十六話


从 ゚∀从「マスター、この店はスポーツカーのお客さんが多いみたいだね」


(´・ω・`)「ああ、今日はたまたまね…」


バーボンハウス、駐車場には70スープラ、Z31、アルトワークスが停まっている

店内は、マスターと…客はテーブルに男が二人と、少し離れたカウンター席に女がいた


(´・ω・`)「あっちの二人はウチの常連さんでね。お客さんはウチは初めてかな?」


从 ゚∀从「今日初めてなんだよね、いい感じのお店だと思って」


(´・ω・`)「ふふ、ありがとう…このケーキはサービスだからゆっくりしていくといい」

マスターは愛想よくケーキを出し、一見のお客をもてなす

127 : 三銃士(関東):2007/03/22(木) 21:30:21.12 ID:dqF6PkWCO
从 ゚∀从「…どうも」

コーヒーを飲みながら頷くハインリッヒ

(´・ω・`)「…どういたしまして」





( ^ω^)「ドクオ、今度のスープラはまたノーマルなのかお?」

('A`)「ああ、ホイール以外はほとんどノーマルだな。まぁ少しずつ手を入れてく予定だ」

( ^ω^)「そうかお。最初はマフラー交換かお?」


二人の男がクルマ談義をしている様子に気づき、ハインリッヒはチラと目を向ける


从 ゚∀从「…………」

130 : 三銃士(関東):2007/03/22(木) 21:51:23.60 ID:dqF6PkWCO
( ^ω^)「ぼくのZ31はなんか知らないけど結構はやいんだお」
('A`)「まあいろいろイジってあるもんな。コンディションも悪くないみたいだし、イイ買い物だったんじゃないかな、ブーンのZは」


从 ゚∀从(チューニングカー…か)


( ^ω^)「……でだお、………だったらだお…」

('A`)「………かぁ、それは………じゃ……ないか……」



从 ゚∀从(Z31と70スープラ…か、)

ちょっと前までZ32に乗っていたとはいえ…
今はただの傍観者でしかないハインリッヒ。

从 ゚∀从「………」



別に後悔があったわけじゃない、未練があるだけだ

ハインリッヒはそう自分に言い聞かせた…

131 : 三銃士(関東):2007/03/22(木) 21:52:31.51 ID:dqF6PkWCO
从 ゚∀从「マスター、お勘定してよ」


(´・ω・`)「はいはい、…楽しんで頂けたかな」


从 ゚∀从「ああ…また来たいね」

小銭を支払いながらハインリッヒは絞り出すように答える

(´・ω・`)「ありがとう…お気をつけて」


( ^ω^)「やっぱり…は……にしたほうが」


('A`)「いや、それはだな……だと……じゃないか」



カランカラン…

ドクオとブーンの会話を背中に受けながら、ハインリッヒは一人外に出るのであった

132 : 三銃士(関東):2007/03/22(木) 21:58:16.31 ID:dqF6PkWCO
从 ゚∀从「………来週から…どうするかな」

ハインリッヒは、来週から就職することになっていた。

いつまでもニートをやるのはさすがにマズイ、

そう感じて知り合いのツテで配送トラックのドライバーをすることになっていた


从 ゚∀从「就職が決まったのはいいんだけど…」


どこか、ふっきれない思いがあった。

新しい環境を前に、後悔と、苛立ちと、不安と、僅かな期待…

もう失敗はしたくない…後には退けない

強がって、我慢して…
それでも昔のような自分が戻ってくることはないだろう…

135 : 三銃士(関東):2007/03/22(木) 22:01:30.04 ID:dqF6PkWCO
さまざまな思いがハインリッヒの胸の内を去来する

从 ゚∀从(どうして…みんな大人になってくの?)


『あの日夢見た願いがいま〜自分を見つめ直してる〜♪』


从 ゚∀从(私には…『あの日夢見た願い』なんてあったろうか…?

もうクルマの仕事もイヤになったし、Zも売ってしまった…

そしてこれからも夢なんて見つかるだろうか…)


ラジオから流れる歌が、ハインリッヒをよりマイナーな気分にさせるのであった
136 : 三銃士(関東):2007/03/22(木) 22:06:42.52 ID:dqF6PkWCO
〜数日後〜


('A`)「今日は…バーボンハウスは定休日だったな」


水曜日。今日は休日のドクオ

ドクオの印刷会社は土日が休み、というわけではなく、社員が希望する休日で毎月シフトを組む、そういった制度だった


たまたま休みの水曜がバーボンハウス定休日だというのをドクオはうっかり忘れていたのだ

('A`)「どこでコーヒー飲むかな…」

ドクオは、いつも休みの日はバーボンハウスで一人、ゆっくりととりとめのない考えごとをしながらコーヒーを飲むのが習慣だ。

それが彼にとってのこだわりだった
138 : 三銃士(関東):2007/03/22(木) 22:18:12.94 ID:dqF6PkWCO
たまにブーンを誘っていくこともあるけど、基本的には一人で静かにコーヒーを飲むことにしていた



しかし、せっかくバーボンハウスに来たものの、店が閉まっていて何もできないのでは芸がない

仕方なく自販機でセブンスターを買い、少しでもここに来たモトをとろうとするドクオだったが…


('A`)「…国道のファミレスにでも行くか」

妥協したドクオは駐車場に停めたスープラのノーズを東に向けるのだった




139 : 三銃士(関東):2007/03/22(木) 22:21:52.89 ID:dqF6PkWCO
……………………………………

……………………




川 ゚ -゚)「ドクオ、またスープラを買ったんだな」

('A`)「ええ、買っちゃいました…ハハ」

VIP市内の国道沿いのファミレス…

クーが窓際のテーブルでコーヒーを飲んでいたとき…偶然ドクオが店に入ってきた

『おや?』ドアが開いた瞬間にお互い目が合い、
ごく自然に相席して今に至るのであった

川 ゚ -゚)y ̄~「…とりあえず、おめでとう」

('A`)「ありがとうございます…」

この二人、知り合ってもう三ヶ月ほど経つが、

やはりまだドクオには初々しさが残っている。

嬉しいけれど、やはり相手はどこか格が違う…

その思いだけは今でも消えていなかった
141 : 三銃士(関東):2007/03/22(木) 22:32:13.47 ID:dqF6PkWCO
川 ゚ -゚)y ̄~「………」


二人の会話は一度途切れ、ようやくというか、ドクオには現状を把握する時間が与えられた


('A`)(憧れ…尊敬するクーさんと偶然一緒にコーヒーが飲める…それだけで俺は充分だ)


川 ゚ -゚)y ̄~「………」


言葉が途切れたら、もう話すこともない…

しばらくの沈黙。もともとクーはあまり70スープラに関する話題は本当はさして興味がないのだろう。

冷静な、それでいてどこか哀しげな視線を壁紙の模様に向けて泳がせている

('A`)「………」

クーが黙ってしまったのを見て、少々気まずくなるドクオ。

('A`)(……やっぱ、前とおんなじクルマ買っちゃったら、たいした話のネタにはならないよな…。

むしろ保守的でツマラナイ男と思われたかも…
それに…本当は一人でゆっくりしたかったのかもしれないし…)
142 : 三銃士(関東):2007/03/22(木) 22:36:46.89 ID:dqF6PkWCO
本当はもっと話をしたいのに、一向に喋らない女を前にすると、男は多少うろたえる。

ましてや、以前はよく話をしていたのならなおさらだ。

川 ゚ -゚)y ̄~「………」


('A`)「………」


動揺を隠すため、ドクオはタバコをくわえて火をつけた

なんとか間をもたせるために…

('A`)y ̄~「………」

タバコはこういう時にも非常に役に立つんだ、とドクオは思った
145 : 三銃士(関東):2007/03/22(木) 22:44:42.87 ID:dqF6PkWCO
('A`)「………あの、自分ちょっと用があるんで…これで失礼しますね」


言ってしまった


コーヒーを飲み終ったとき、ドクオは沈黙に耐えきれずに、ついにそう言って席を立った。

本当はもっと一緒にいたいのに、今日のクーはそれを拒絶しているかのような…、そう感じた上での行動だった

どこが、とはハッキリ分からないが、やっぱり今日のクーはいつもと違うのだ。


川 ゚ -゚)「…そうか、気をつけてな」


('A`)「…はい!」


別れ際ではあったがやっとクーの声が聞けたドクオは表情が少しやわらぐ。


川 ゚ ー゚)「伝票は…置いてっていいぞ。」


(*'A`)「…ありがとうございます」

146 : 三銃士(関東):2007/03/22(木) 22:48:48.85 ID:dqF6PkWCO
『じゃあ…』最後に二人はそう言ったのち、ドクオだけがファミレスを出た。

川 ゚ -゚)「………」

クーは相変わらず、ドクオが来る前と同じように一人コーヒーを飲んでいる


('A`)「ハァ…どうしたんだろ俺…」

なぜ、憧れのクーさんとバッタリ会ったあとだというのに、なにか釈然としないのか、

なぜ自分から席を外してしまったのか、

本来ならウキウキして仕方ないはずなのに…
('A`)「わからない…でも、今日のクーさんは…いつもと違う」



ずっと窓の外をなんとなく眺めているクー…
時折思い出したようにコーヒーを口にしたり、タバコに火をつけたりしていたが…

不意にクーの表情が暗くなった


川 - )「………ドクオ、私は…私は…」


第二十六話  完

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