- 39 : 書記(関東):2007/03/17(土)
20:10:55.94 ID:ubbMRyO0O
- 第二十五話
VIP市内、某中古車屋
('A`)「俺はやっぱり…このクルマに行き着いたか」
10月の某日…中古車屋で1台の青いクルマの前に立っているドクオ。
(*゚∀゚)「毎度ありあとやんしたっ!」
('A`)「ええ…それじゃあ失礼します」
店員に声をかけられ、はたと我に帰ったドクオは青いクルマのドアを開け、ぎこちなく乗り込む。
(*゚∀゚)「なにかあったらいつでも来てねー!」
店員に見送られ、国道に出ていくドクオ
('A`)(……このクルマが、俺の二台目の愛車…)
ドクオは渋滞の国道のなか、ハンドルを握りながら思いを巡らす
- 42 : 書記(関東):2007/03/17(土)
20:13:04.44 ID:ubbMRyO0O
- ('A`)(でもなんでかな…やっぱり最初にスープラ買ったときよりも実感がイマイチ湧かない…
不思議とテンションも高くない…
そんなものなのかな…)
('A`)「でもこのクルマが、これからは俺の愛車なんだ」
表情を引き締め、3速にシフトアップし、国道を東へと進むドクオ
(*゚∀゚)「……めずらしいクルマ買うお客もいるもんだね。」
中古車屋の女は、去りゆく青いクルマのテールを眺めて呟いた
- 43 : 書記(関東):2007/03/17(土)
20:17:11.19 ID:ubbMRyO0O
- ('A`)
自宅の駐車場
そこには、三ヶ月前と同じ光景があった
青い、JZA70スープラ、
('A`)「………」
なんだろう。しっくり来るこの安心感…クルマそのものは違っても見た目は同じだからか
…そして微かな不安も
( ^ω^)「おっおっ、前とおんなじスープラがあるお」
ブーンは俺の新しい愛車を見て、まるで自分のことのように喜んでいる。
まったく無邪気なやつだ。
- 44 : 書記(関東):2007/03/17(土)
20:19:27.77 ID:ubbMRyO0O
- ( ^ω^)「でもなんだってまたおんなじクルマを選んだんだお?
今度は80スープラ買いたいんじゃなかったのかお?」
('A`)「ああ…ちょっと、気分でな」
俺は…口から出た言葉とは違うことを思っていた
…本当はなぜ、また以前と同じクルマを選んだのか、俺にもわからない。
本来ならば、ブーンの言ったように70の進化系の80スープラを買う方向で考えていたはずなのに、
俺は、そうするべきステップアップをしなかった
70から…完成度の高い80に乗り換えれば、きっと今までの経験からして、より高いレベルの走りが出来たはずなのに
速さを求めるならここで70スープラを選ぶメリットはほとんど無いはずだ…
( ^ω^)「やっぱりドクオは70スープラが好きなんだおね」
('A`)「ん…まぁ…ね」
考えごとをしている俺の返事はやや重い。
- 45 : 書記(関東):2007/03/17(土)
20:21:02.40 ID:ubbMRyO0O
- ('A`)
たしかに、70スープラでやり残したこと、やりたかったことが俺にはたくさんあった。
でも、できなかった。
前のスープラは廃車になってしまったから
だから、今度こそ悔いの無いように70スープラを仕上げたかった。
俺はここで70を選ばなければ…一生70には乗れない。
そんな気がしていたから…今はコイツを選ばざるを得ない気がした
('A`)「これで今度こそ納得できるかどうかは分からない…
それでも俺はまた70を選んだんだ…
今はそれだけでいい…」
- 47 : 書記(関東):2007/03/17(土)
20:23:33.38 ID:ubbMRyO0O
- ( ^ω^)「…それでいいと思うお」
('A`)「ああ、」
クルマを擬人化するのは好きじゃない。
だけど…
一度破局を迎えた女とヨリを戻そうとしている
今の俺の心情は…例えるならそれに少し近いのではないか、そう思った。
- 49 : 書記(関東):2007/03/17(土)
20:39:03.44 ID:ubbMRyO0O
書類の山、一枚一枚目を通し、ハンコを押す
『VIP建設工業株式会社』
社長室でただ一人、書類を相手にするモナーはふと溜め息をついた
( ´∀`)「……ふぅ」
一体この書類の山を片付けるのに何時間かかるやら…といったふんいきを漂わせ、よっこしょと席を立ち、窓際でタバコに火をつける
( ´∀`)y ̄~「………社長業も楽ではないモナ」
昔のモナーならば、夜はギンザで遊ぶためにサッサと仕事を片付けてしまえたものだが…
( ´∀`)y ̄~「……私も年をとったモナ」
今年でもう、49歳。かつてのように仕事をこなし、ギンザで遊ぶだけの若さと勢いは、もうない。
5年前に買ったNSXも、ガレージで眠るままだった。最近までは…
- 50 : 書記(関東):2007/03/17(土)
20:41:08.00 ID:ubbMRyO0O
- ( ´∀`)y ̄~「……」
もうあと10年若かったら、モナーはもっとNSXに乗っていただろう。
しかし、今はもうそんな年ではない。
どんなに乗っても若いころのことを思い出すだけ…、
そして自分の衰えを痛感させられるだけだった
(全盛期にはもう戻れない…)
乗るたびにそう感じ、モナーが握るのは次第にクラウンやベンツのハンドルになっていった
( ´∀`)(……)
そんなとき、娘のツンがこっそりモナーのNSXに乗っていることをモナーは勘づいた。
( ´∀`)「そうだモナ、ツンは免許を取ったんだモナ…乗りたいと思うのは当たり前だモナ」
- 51 : 書記(関東):2007/03/17(土)
20:43:59.83 ID:ubbMRyO0O
- モナーも昔はそうだった。
黙って父親のハコスカを乗り回して…田んぼに落っことしたことがバレてこっぴどく怒られたり…
…若いころはいろいろあった
自分でクルマを買ってからは、夜の港でゼロヨンをしてみたり…
山で攻めすぎてクルマを引っくり返してしまったり…
無茶なこともさんざんやった
だから、ツンが無断でNSXで街を乗り回すことを本当は怒るべき…
なのだけど怒れない。
ツンのしていることは若いころの自分と同じ、そう考えると…いいような、悪いような、そんな心情になり、
モナーはあえて目をつぶってみることにした
( ´∀`)「…そうだモナ、ツンはこれから全盛期を迎える人間モナ…良いことも、悪いことも、経験させておくのは悪くないモナ」
こんな判断は父親として失格かもしれない。
そう思いながらも、モナーはNSXのキーをツンに託してみたのだった。
あえて、無言で…
- 53 : 書記(関東):2007/03/17(土)
20:53:50.73 ID:ubbMRyO0O
…ガチャ、
モナーが自分の気持ちを反芻していたとき、
不意に社長室のドアが開く
ξ゚听)ξ「父さん…コーヒーが入ったわよ」
娘のツンがコーヒーカップを手に、少し居心地が悪そうに入ってきた
( ´∀`)「おお……ありがとう」
ξ゚听)ξ「うん…頑張ってね、仕事
…それじゃ、」
ツンはコーヒーをデスクに置いて短く答え、社長室を出ていった
- 54 : 書記(関東):2007/03/17(土)
20:59:10.42 ID:ubbMRyO0O
- ξ///)ξ「……NSX…いつも貸してくれてありがと…」
( ´∀`)「………ああ」
モナーが答える前にガチャ、とドアが閉まり、ツンがサッサと歩いていく音が響いてきた
( ´∀`)「…………」
娘がツンデレなのだとしたら、私はなんと表現されるのだろう…
とモナーは思った
( ´∀`)「……さて、仕事するかモナ」
部屋にキリマンジャロの香りが広がっていく
モナーはゆっくりと椅子に座り、再び書類の整理にかかるのであった
第二十五話 完
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