213 : 共産党幹部(関東):2007/03/15(木) 23:03:28.10 ID:TZihZtMIO
第二十四話

(*゚ー゚)

VIP駅前、午前10時

いつ来ても人通りが慌ただしい場所。

スーツを着た男たち、疲れたサラリーマン、背伸びした中学生…

みんな自分の居るべき場所、行きたい場所にせわしなく移動している

私は駅前の待ち合わせ場所の壁に寄りかかり、雑踏のなか一人、退屈しのぎにケータイを無意味に眺めてた

ここはこんなに人がいながら隣には誰も居ない…そんな街
215 : 共産党幹部(関東):2007/03/15(木) 23:04:38.48 ID:TZihZtMIO
(*゚ー゚)


今日は仕事はお休み。
めずらしくギコ君とも休みが合ったのでこれからひさしぶりのデート、ということになる


こないだまでは昼間は汗ばんでいたけど、この季節は急に肌寒い日が気まぐれにやってきたりするから…

今日は一枚多く着ておいて正解だったみたい

(*゚ー゚)「あと…どれくらいで来るかな…」

待ち合わせ時間は10分ほど過ぎている…

もしかしたらまだ寝てるのかな?

でも、まだ電話はしないでおこう、10分待ったぐらいで電話するんじゃせっかちみたいだし…
217 : 共産党幹部(関東):2007/03/15(木) 23:09:05.18 ID:TZihZtMIO
(*゚ー゚)「今日はギコ君とどこに行こうかな…」


思わず独り言を呟いたとき、改札の方の人混みの中から、見慣れた姿が出てきた。

ギコ君だ。


彼の姿を見つけて、わたしの心臓は思わず高鳴る。


周囲にはそれを感付かれないようにしようと思っていても、自然に笑みがこぼれてきちゃう

ギコ君は遠くからキョロキョロと周りを見渡している。

私のことを探してくれているんだ。

そう感じた私は居ても立ってもいられなくて、ギコ君の元へと早足で向かった。

(*゚ー゚)「ギコ君!」

テンションが上がりすぎてちょっと声が裏返っちゃって…

顔が赤くなるのが分かった
219 : 共産党幹部(関東):2007/03/15(木) 23:12:30.64 ID:TZihZtMIO
( ,,゚Д゚)「おお、わりぃな。少し寝坊しちまった」

ギコ君は、いつものように冷静

だけど、表情は少しずつ優しくなっていくのが分かる

(*゚ー゚)「ううん、いいのいいの。」

( ,,゚Д゚)「えーと…今日はどこ行く予定だったっけ」


(*゚ー゚)「うん、ちょっと買い物に付き合って欲しいの。

それとも先にお昼にする?」


( ,,゚Д゚)「そーだな…先に買い物にしようか、」

ギコ君がそう答えたのを聞いて、私はニッコリ笑い、彼の手をひいて駅を出た



222 : 共産党幹部(関東):2007/03/15(木) 23:20:06.54 ID:TZihZtMIO
(*゚ー゚)

VIP駅前の大手デパート

私が買いたかったのは新しい靴。ブルーノ・マリ

私はなるべくギコ君を待たせないように、手早く選んで購入した


(*゚ー゚)「おまたせギコ君!」

デパートの手提げ袋を持って、紳士靴をなんとなく退屈そうに眺めていたギコ君のところへ駆け寄る


( ,,゚Д゚)「お、早かったな」

(*゚ー゚)「えへへ」


ギコ君の予想より早く買い物が済んで私はホッとした。

『女の買い物は時間がかかりすぎる』なんて思われたらイヤだし、

ギコ君を待たせるのは忍びなかったから、安心した

223 : 共産党幹部(関東):2007/03/15(木) 23:23:42.70 ID:TZihZtMIO
(*゚ー゚)「じゃあ、このあとはお昼にしよっか?」


腕時計を見ると午前11時半。ちょうどお昼どき。



「そうだな。」とギコ君は答えた

駅前にどこかお洒落で美味しい洋食屋さんはあったかな…

それとも意表を突いてラーメンもいいかも

でもギコ君はお肉系がいいのかなぁやっぱり…


……………

226 : 共産党幹部(関東):2007/03/15(木) 23:35:35.09 ID:TZihZtMIO
…………



( ,,゚Д゚)「…ふぅ、うまかったな」


(*゚ー゚)「うん、おいしかったね」


私とギコ君は…駅前大通りのスパゲティ屋さん、

大通りが見渡せる窓際でナポリタンを食べた。


( ,,゚Д゚)y ̄~「………」

食後の一服を楽しんでるギコ君。

いつもと同じように、目を細めてゆっくり煙を吸っている…


その姿に私はいつもいとおしさを感じる…


こういう瞬間て、わたしの一番大事なものだと思うんだ
230 : 共産党幹部(関東):2007/03/15(木) 23:46:27.51 ID:TZihZtMIO
(*゚ー゚)「ふふ」


いつもと同じ、デート、

休日の平穏なデート


私のそばにギコ君がいて、


ギコ君のそばに私がいる…


でも、前までと違うのは…



( ,,゚Д゚)y ̄~「………」


駅前でのデートが中心になったこと。

すなわち、クルマでドライブする…それが無くなった。
235 : 共産党幹部(関東):2007/03/15(木) 23:57:07.20 ID:TZihZtMIO
(*゚ー゚)


私はそれでも構わないけど、ギコ君はなにか物足りなさそう…



ギコ君がRX-7に乗ってた時は、いつもニコニコしてて、

楽しそうで、

そんな彼の…RX-7を運転してる横顔が、私は大好きだった


でも、RX-7は無くなってしまった


だから、最近のギコ君の目には以前のような生き生きした光が感じられないのかもしれない…


( ,,゚Д゚)y ̄~「……」


私の前でギコ君は、窓の外を眺めるともなく視線を泳がせている…

無表情…
238 : 主婦(関東):2007/03/16(金) 00:02:17.30 ID:qS3VLkUBO
(*゚ー゚)「ねぇ、ギコ君…」


( ,,゚Д゚)y ̄~「ん?どうした」


(*゚ー゚)「あ、いや…なんでもない」

『もう一度クルマ乗らないの?』

と聞こうとしたけど、やめた。

ギコ君はあの事故のことをまだ引きずってる、

だから彼は私にももうクルマの話はしてこない。


なのに、私が無責任にそんなこと聞いたら、
ギコ君は傷つく…

だから聞かなかった
241 : 主婦(関東):2007/03/16(金) 00:05:26.67 ID:qS3VLkUBO
(*゚ー゚)「……」


私はつい、気まずくなって窓の方を眺めた


店の前の通りでは歩行者が絶え間無く通り、

車道はタクシーや乗用車がたくさん流れていく。

なにもかも自分とは関係なく世間は流れてる…


(*゚ー゚)「……!」


窓の向こうに見える大通りを、赤いRX-7が走っていった

同じく窓の向こうをボンヤリ見ていたギコ君の頬が、
一瞬ピクリと動いたのを感じた


第二十四話  完

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