- 3 :
渡来人(関東):2007/03/13(火)
23:22:06.18 ID:ppKL0F31O
- 第二十一話
〜深夜一時、新制首都高湾岸線〜
闇に包まれ、水銀灯の明かりに照らし出されたアスファルトの上を駆ける三台のクルマ
黒いZ32、白い911ターボ、青いS15
川 ゚ -゚)「………」
('A`)「あのS15は…こないだも憑いてきてましたね」
川 ゚ -゚)「…ああ」
先程までいつものように湾岸をテスト走行していた黒いZ32、
だがいつのまにか後ろに二台の怪しいクルマを従えていた…というわけだ
川 ゚ -゚)「今日は…こないだの様にはいかん」
Z32の最終セッティングは既に終わっている
手筈は全て整っていた
今夜はクーにとって負けられない夜となる
- 7 :
渡来人(関東):2007/03/13(火)
23:24:43.58 ID:ppKL0F31O
- ( ^Д^)「このZ32か…以前にも増して速くなってるようだな…」
白いポルシェ911ターボのステアリングを…プギャーのいかつい指が制御する
( ^Д^)「…たのしみだ」
プギャーは思わずニヤついてしまう、そして武者震いも…
プギャーはエンジンが7500rpmに達したのを確認し、4速にシフトアップする
( ^Д^)「…だがオレが一番速いに決まっている」
プギャーはあくまで自信家であった。
- 8 : 渡来人(関東):2007/03/13(火) 23:26:25.88 ID:ppKL0F31O
- ( ・∀・)「…今回も、私が一番前を走らせてもらおう」
前回ここでZ32と遭遇したときも、モララーは前を走った。
今回もそれが出来れば…
完全なる勝利といえるだろう
( ・∀・)「今宵の夜明けはどんな気分で迎えるものか…楽しみだよ」
引き締まっていた口許から、白い歯を見せた。
- 10 : 渡来人(関東):2007/03/13(火)
23:28:00.49 ID:ppKL0F31O
- ('A`)
俺は今、クーさんのZの助手席に乗っている
今までフツーに湾岸を流してたら…後ろからS15とポルシェがパッシングしてきて…
今は…バトルといったような状況になってる…
だけど…このZが負けるはずが無いだろう。
なんにしろこの加速感…頭はヘッドレストに押し付けられてアゴが勝手に上がってしまうくらいの凄さだ。
一度や二度隣に乗ったからと言って、この凄まじさに慣れるはずもない…
異常だ。たかがクルマがこんな加速していいのか…?とすら思ってしまう
川 ゚ -゚)「…………」
クーさんは運転席で冷静に前を見据えながらハンドルを握っている
…俺は今、この人とZ32に命を預けている
- 13 : 渡来人(関東):2007/03/13(火)
23:31:48.25 ID:ppKL0F31O
- ( ^Д^)(最高速か…)
前方に黒いZを捕え、二番手を走るプギャーは、考えていた
( ^Д^)(オレは…なにを目指してココに来たんだ…?
あのZ32に勝つため?…いや、少し違うな
最高速の極限状態の快楽を得るため?
…それもわからん
とにかく、アイツを抜きたい…
でも、アイツを抜けば…その時オレの中の何かは変わるのか…?
昼間のツマンねえ日常は変わるのか?
オレのバカな過去は変わるのか?
オレの未来は変わるのか?
…アイツの前に出なきゃなにもわからん
とにかくこんなに知りたいことは生まれて始めてだ)
ブーストメーターは1.8を指し、
スピードメーターは300km/hを示しているなか、プギャーは思いを巡らすのであった
- 14 : 渡来人(関東):2007/03/13(火)
23:32:53.66 ID:ppKL0F31O
- 先頭からZ32、911ターボ、S15の三台が湾岸を走る
( ・∀・)「…もう300km/hか…」
モララーの視界いっぱいに白いポルシェのテールが迫っている
周囲の景色が凄い勢いで流れていく中、
ポルシェとZ32が止まって見えるのは目の錯覚だからだろう
( ・∀・)(プギャーか…
まさかアイツとこんな風にバトルする瞬間が来るとは思わなかったな…
バトル…?バトルなんて陳腐な言葉ではこの状況は表現出来ないが…
あえて表現するなら…
とにかく心にビリビリときやがるナニかだ)
モララーもまた、最高速の領域で不思議な想像を広げていた。
- 17 : 渡来人(関東):2007/03/13(火)
23:34:25.43 ID:ppKL0F31O
- ( ・∀・)(…いつからだ?
私はいつからこんな馬鹿になったのだろう?
公道でこんな暴走をするなんて…
あの黒いZ32に抜かれてから?
いや、もっとずっと前…クルマというものに興味を持ったころから…?)
( ・∀・)「わからん……でも、やめられないんだ。こんなことが…」
(とにかくこんな風に全開で走っている時だけは…いつもとは違う自分がいる…
このときだけは窮屈な日常の仮面を捨てられる…
それに気づいた時から…私は…私は…)
- 19 : 渡来人(関東):2007/03/13(火)
23:38:24.30 ID:ppKL0F31O
- 川 ゚ -゚)(…もう何年になるだろう?こんな走りをし始めてから…
いつまで走れば私は満足するんだ?
こんな馬鹿げた走りをして何になる…?
何もない…踏んでいったその先にあるものは…恐らく地獄
…よくて免許取り消し、
悪くて、他者を巻き込んで事故死、
…愚かだということは自分でもわかっている
だけど…それでも、他では得られないこの快楽…
微塵のミスも許されないリスクの中…最高速の極限状態のエクスタシーが手に入るなら…)
VG30DETT改3.1の気の遠くなるような叫びを聞きながら…クーもまた、ハンドルを握りしめ、自らの『走り』について考えていた
Z32、911、S15、
ハイビームで、エキゾーストで闇を切り裂き、湾岸線を駆け抜ける三台…
Z32のスピードメーターは一番右下…320km/hを示している。
スピードメーターの目盛りは、もうない
第二十一話 完
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