- 3 :
◆rHi47N9WYc :2007/03/05(月)
18:26:30.56 ID:zM70kwzLO
- 第十話
夕暮れ、VIP市内幹線道路
( ^Д^)「なあモララー、オレのクルマの方はどうやら決まったようだぜ」
( ・∀・)「チェイサーの売却か?それとも新しく買うクルマの方か?」
二人の男が、青いS15シルビアに乗って話し合っている。ハンドルを握っているのはモララーだ
m9( ^Д^ )「ズバリ両方だ!」
( ・∀・)「その指が気に障るが…そうか、…それは良かったな。それで何買ったんだ?」
- 4 :
◆rHi47N9WYc :2007/03/05(月)
18:27:10.71 ID:zM70kwzLO
- ( ^Д^)「ああ?なんならオレんち寄ってって見てくか?」
道路はかなりの渋滞、モララーが少しけだるそうに答える
( ・∀・)「なにももったいぶることないだろう…」
( ^Д^)「…新しいクルマ買ったときってのは大概もったいぶるもんなんだぜ」
( ・∀・)「……いいだろう。今から行ってやる」
同時に青いS15が脇道へと左折した。
- 5 :
◆rHi47N9WYc :2007/03/05(月)
18:28:35.27 ID:zM70kwzLO
- VIP市郊外、工業団地付近
閑静な団地付近にS15のSR20のアイドリングが響く
( ・∀・)「おい、着いたぞ。起きろプギャー」
助手席でスヤスヤしてるプギャーを軽く小突くモララー
( -Д^)「ん…だいぶ時間かかったみたいだな」
空はすっかり暗くなり、さっきまで西に残っていた太陽はもう、どこかに消えたようだ
( ・∀・)「渋滞がひどかったんだ…まったく眠くてかなわん」
( ^Д^)「わりぃね、とりあえずクルマはここに置いていこーか、」
( ・∀・)「…把握」
モララーはエンジンを切り、クルマを降りてタバコに火をつけた
( ^Д^)「やべ、タバコ切らしてた。一本くれ」
( ・∀・)y ̄~「しょうがないな…ほれ」
いまポケットにしまったラークをもう一度出し、プギャーに一本渡す
( ^Д^)y ̄~「サンキュ、じゃあ行くか」
二人は住宅街の駐車場へと向かう…
- 6 :
◆rHi47N9WYc :2007/03/05(月)
18:29:47.37 ID:zM70kwzLO
- ( ・∀・)y ̄~「しかしだな、お前よくそんな頻繁にクルマ替えられるな」
( ^Д^)y ̄~「…それは金銭面での疑問か?」
( ・∀・)y ̄~「それもあるし、気持ちの問題もあるな」
( ^Д^)y ̄~「両方とも…問題ないさ。必要なクルマがあるのならすぐ乗り換える、
そうしてないと世間も回らないだろ」
( ・∀・)y ̄~「……お前は頭がいいな」
( ^Д^)y ̄~「……皮肉か?」
( ・∀・)y ̄~「いやいや」
二人はお互いの職業や普段の生活を知らない。
そんなことは聞くもんじゃないし、聞く必要もない…と二人とも思っていたからだ
知っているのは、クルマに対する考え方くらいのもの
やがて二人は駐車場にある一台のクルマの前で立ち止まった
- 8 :
◆rHi47N9WYc :2007/03/05(月)
18:31:22.46 ID:zM70kwzLO
- ( ・∀・)y ̄~「………」
( ^Д^)y ̄~「………」
異様なオーラを放つクルマを前に二人の男は立ちつくしたままただタバコを吸っていた
( ・∀・)y ̄~「…いくらした?」
思い出したようにタバコの灰を落としながら沈黙を破るモララー
( ^Д^)y ̄~「10000000…」
( ・∀・)y ̄~「金持ちだな」
二人とも、表情を変えずに、ただクルマを見つめていた。まるで他人ごとのように
- 9 :
◆rHi47N9WYc :2007/03/05(月)
18:33:17.25 ID:zM70kwzLO
- ( ^Д^)y ̄~「……ちょっとそのへん流してみるか」
( ・∀・)y ̄~「………」
すっかり静かな宵に轟音を響かせてエンジンに火が入った
ドイツ製水平対抗6気筒ターボ…空冷のエンジンである
- 10 : ◆rHi47N9WYc :2007/03/05(月)
18:36:07.21 ID:zM70kwzLO
- ('A`)
クーさんのガレージ
もうすっかり夜だ。
時計の針は八時を指している…やっと少しばかり涼しくなってなにやら気分がいい
川 ゚ -゚)「ドクオ、すまんがこっちのボルト押さえてくれないか?」
('A`)「あ…はい」
川 ゚ -゚)「……よし、外れた」
クーさんは巧みにSnap onのメガネレンチを操り、作業をこなしている。ここをゆるめたら次はそこ、こっちをはずしたら今度はここ、
クーさんの手つきは鮮やかだった。このVG30DETTエンジンを理解しきっていた。
かなり慣れている。
- 11 : ◆rHi47N9WYc :2007/03/05(月)
18:36:47.99 ID:zM70kwzLO
- 妙齢の女性でありながらプロ顔負けの腕…
黙々と、丁寧でいて大胆に作業をこなし、汗をかくクーさんの姿はとても美しい。
そう感じた。
同時に何もわからない、何も出来ない自分がどうしようもないヘタレに思えてきた。
だから指示されたことには一瞬で返事をして自分に出来ることをして…とにかく誠意だけは忘れなかった。
それでクーさんに少しでも近付けるなら…
自分を理解してもらえるのなら…
川 ゚ -゚)「ふぅ、少し休憩して夕飯にしよう」
気がついたら、エンジンは全てバラされていた
- 13 : ◆rHi47N9WYc :2007/03/05(月)
18:55:24.28 ID:zM70kwzLO
- 〜VIP市内のファミレス〜
('A`)
Zの作業を中断し、俺とクーさんは夕飯を食べに近所のファミレスに来ていた
川 ゚ -゚)「さて…なんでも好きなものを頼んでくれ、当然私が奢る」
('A`)「いいんですか…?ご馳走になります」
考えてみれば俺はあの憧れの女性と二人きりでゴハンを食べに来ているんだという事実にいまさら気がつき、心が妙にドクドクした。
考えてみれば異性と食事するのも初めてだ。一応童貞なんだ俺は、童貞で悪かったなコノヤロー
- 14 : ◆rHi47N9WYc :2007/03/05(月)
18:56:37.45 ID:zM70kwzLO
- 川 ゚ -゚)「…この後についてだが、ドクオは家に帰らないでいいのか?明日は仕事はないのか?」
('A`)「お盆休みなんで三日くらい仕事はないです。今夜は徹夜でも大丈夫ですよ」
川 ゚ -゚)「…そうか、なんなら泊まっていくか?」
なんともあっさりお泊まりの誘い!ただでさえファミレスに二人で来ているというだけで心が浮わついているのに!
(゚A゚)「ブフォッ!!!ゴホッ!」
俺は思わず飲んでいたお冷やを思いきりテーブルの上にぶちまけそうになったが気合いで耐えた
- 15 : ◆rHi47N9WYc :2007/03/05(月)
18:57:49.75 ID:zM70kwzLO
- 川;゚ -゚)「…大丈夫か?」
('A`)「ゴホッ…はい、大丈夫です。なんか気管につまっただけです」
かなり苦しいことになったがクーさんが心配してくれるのがまた嬉しい
('A`)「クーさんさえよければ…泊めてもらおうかと…」
やたらと激しい動悸を乗り越え、俺は勇気を持って返事をした。
川 ゚ -゚)「…そうか、わかった」
クーさんはこともなげに答えた。
俺はこんなにもwktk…じゃなかった、ドキドキしているというのに…
クーさんはひたすらと言っていいほど冷静に、
俺は無闇にドキドキしながらハンバーグセットライス大盛りを完食した
味なんか分かりゃしねえ…('A`)
- 16 : ◆rHi47N9WYc :2007/03/05(月)
19:26:32.95 ID:zM70kwzLO
- 川 ゚ -゚)y ̄~「ドクオは…次のクルマは決めているのか?」
食事が終わり、二人でコーヒーを飲みながら一服していたとき、クーさんが俺に聞いてきた
('A`)y ̄~「ええ…とりあえずお金はあるんで…70か80のスープラを考えてます」
川 ゚ -゚)y ̄~「…そうか、アテはあるのか?」
('A`)y ̄~「アテは…まだないですね」
川 ゚ -゚)y ̄~「そうか…」
- 17 : ◆rHi47N9WYc :2007/03/05(月)
19:27:29.73 ID:zM70kwzLO
- ('A`)y ̄~「クーさんは…いつごろからあのZに乗ってるんですか?」
本当は…クーさんの年を聞いてみたかったが
…妙に気を使ってしまい、それは聞けなかった
川 ゚ -゚)「…そうだな、三年くらい前からになるのかな。」
('A`)「ええ…」
川 ゚ -゚)「まず最終型のZをフルノーマルで買って…すぐボアアップして3.1リッター化…」
- 18 : ◆rHi47N9WYc :2007/03/05(月)
19:28:39.13 ID:zM70kwzLO
- ('A`)「……」
ボアアップとは排気量アップのこと、つまり一度エンジンを降ろして今回のように全バラしにして加工しなければならない。
もちろんそんなチューンはそんじょそこいらの走り屋がやっている訳もない。
クーさんはかなり気合いが入っているほうだ
川 ゚ -゚)「おや、もうこんな時間だ。早いとこ帰るとしよう」
('A`)「あ…はい」
俺はあわてて残りのコーヒーを飲み、クーさんについていった
帰りにクーさんはコンビニでタバコを買ってくれた
- 20 : ◆rHi47N9WYc :2007/03/05(月)
20:16:51.07 ID:zM70kwzLO
- ( ・∀・)「…俺は…お前ならGT-Rを買うとばかり思っていたよ」
左の席でハンドルを握るプギャーに語りかけるモララー。
( ^Д^)「オレも最後までどっちにするか迷ったんだよな」
( ・∀・)「どうしてGT-Rを選ばなかった?」
( ^Д^)「気分だ」
( ・∀・)「……お前はそういう奴だったよな」
プギャーが今ドライブしているのは993型の…
おそらく小学生でも知っている…
白いポルシェ911ターボだった
水平対向6気筒3.6リッターエンジンをツインターボで過給する…ドイツのスーパーカーである
- 21 : ◆rHi47N9WYc :2007/03/05(月)
20:18:30.09 ID:zM70kwzLO
- ( ^Д^)「なかなかいいぜぇ…特にトルクがな。さすが3.6のターボだ」
( ・∀・)「……運転代われよ」
( ^Д^)「まだノーマルだからいかん」
( ・∀・)「…………」
やがて911ターボは強大なトルクと共に加速し、新制首都高方面に向かっていくのであった
第十話 完
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