/ ,' 3 「えー、今からおよそ1000年前、この大陸はラウンジ帝国とニュー速連邦の 二つの国家が争っていて・・・・」  季節は春。穏やかな日差しが眠りを誘う午後の教室では歴史の授業が行われていた。 教室に並べられて座席についている生徒たちはまだ初々しく、新しい生活に徐々に早 く慣れていこうと頑張っている。 ( −ω−)「Zzzz・・・」  もうすでに慣れきっている人物もいるようである。  彼の名前は内藤ホライゾン。ここ、入速高校の1年生。この春に入学したばかりの 出来立てホヤホヤの高校生である。  今は楽しい夢でも見ているのか口からよだれをたらしながら薄い笑みを浮かべてい る。  その後ろに座っている少年はそんな彼を見つめ、ため息を漏らしていた。 ('A`)「(こいつは高校生になってもかわんねぇなぁ)」  こちらはドクオ。ブーンの小学生からの友人で、俗に言う腐れ縁というやつである。  あまり目立たないタイプで、多少女性がニガテで親しくならないとうまく話せない という奥手な人物。  そのため彼という人物はあまりクラスメートには知られていないが、ブーン曰く 「あいつはスルメみたいな奴だお! 噛めば噛むほど味が出るんだお!」とのことだ。  授業が終わって昼休み。 女子A「ねーねー、次の時間って何するの?」 女子B「HRだよー、6月末の遠足のグループわけだってさ」  その声を聞いた一人の少年がピクッと反応を示す。 (´・ω・`)「・・・」  少年は一人、自分の席で弁当を食べている。生徒たちのほとんどはもうグループを作 っているのにも関わらず。  彼はショボン。この学校では珍しい遠い地区からこの学校に入学した生徒だ。  そのため、まだ新しいクラスになじめず、友人が同じ中学出身の一人しかいない。  そしてその一人は女の子であり、今は女の子グループのひとつに混じってお昼を楽し んでいる。彼女とショボンは友人ではあるが、ショボンは男であるため、どうもあのグ ループには入り込みにくいのだ。 ( ^ω^)「・・・」 ('A`)「おいどうした?」 ( ^ω^)「いや、あれ・・・」  ブーンは一人の少年を指で指し示す。それは一人弁当を食しているショボンだった。 ('A`)「あー、たしかショボンだっけか? あいつがどうかしたか?」 ( ^ω^)「・・・あいつ、クールだお! しびれるお! ぜひ友達になりたいお!」 (;'A`)「あ?」  そういうとブーンはすくっと立ち上がりつかつかとショボンの前に歩いていく。ブー ンはクラスでも目立った存在だったので、周辺にいた生徒たちは何事だろうかと様子を 伺っていた。 (´・ω・`)「・・・?」  ショボンは戸惑っていた。今まで話したこともない、クラスのムードメーカー的人物 が突如自分の前に現れたからである。  彼の行動の真意が読めず、ショボンは彼から目を離せないでいた。 ( ^ω^)「ちょっと話があるんだけどいいかお?」  ショボンはますますわけがわからなくなっていた。しかし表面上では眉ひとつ動かし ていない。彼はポーカーフェイスが得意だった。彼の経験上他人に弱みを見せるのはあ まりプラスにならないからだ。 ( ^ω^)「HRのグループ分けの事なんだけど」  つい今しがた女生徒たちが話していたことだ。しかしショボンにはあまり関係ないこ とだ。友人がいないのだからどこか適当に人数の足りない班に放り込まれ、空気みたい に扱われるのだろう。  だが、次の瞬間ブーンの口から思いもよらない言葉が出たため、ショボンは驚いてつ い表情を変えてしまうことになった。 ( ^ω^)「ショボン君、僕と一緒の班にならないかお? ドクオっていう奴もいるし きっと楽しいお!」  そしてHRの時間。  男子3人と女子3人。あわせて6人のグループを作るように、荒巻先生から指示が出 た時、ブーンとドクオとショボンはすぐに3人のグループとなった。  他の生徒たちはまだキャーキャーワーワーと騒ぎながら楽しそうにグループ作りをし ている。 ( ^ω^)「おっおっおっ! 後はどっかの女子3人と組めばおkだお!」 ('A`)「な、なるべくうるさくなさそうなのにしようぜ・・・」 (´・ω・`)「えっと、ドクオ君は女の子が苦手なのかい?」  ショボンは唐突に起こった現状に冷静に対処しようと心がけた。ブーンが何を思った のかはよくわからないが、誘ってくれた事自体は正直うれしかったのだ。  だが、最近久しく同年代の人物と親交を深めていなかった彼は落ち着かなかった。 ('A`)「ドクオ君なんて呼ぶなよー、気持ちわりぃやw ドクオでいいぜ。俺もショボン って呼ばせてもらうからさ」 (´・ω・`)「え、あ・・・そうかい、わかったよドクオ」  ドクオはニヤリと(本人はニコリのつもりらしい)笑ってショボンに親指を立てた。 それを見ていたブーンも真似して親指を立てる。ショボンもそれに続いた。 ( ^ω^)b「今日から僕らは友達だお!」 ('A`)b「そういうこった」 (´・ω・`)b「うん・・・!」 ξ゚听)ξ「・・・」  そんな三人のやり取りを一人の少女が見つめていた。くるくるとカールされた金髪が とても似合うちょっと気の強そうな女の子。 女子C「どしたの、ツンちゃん?」 ξ゚听)ξ「え、ああ。ちょっとね」  ツンは先ほどまでショボン達に向けていた意識を目の前の友達二人に戻した。 女子D「ショボン君、ブーン君たちと仲良くなったみたいだね、よかったジャン」 女子C「ツンちゃんいつも心配してたもんね・・・」  そう、ツンは気になっていたのだ。唯一同じ中学出身であるショボンがクラス内で孤 立していたことが。  彼女はそこそこショボンとは交友があり、友人といっても差し支えない関係だった。 もちろんそこは男子と女子。同じ友人とはいえ異性と同姓では接する機会や接し方は違 ってはいたが。  中学時代の彼にはもちろん同姓の友人はそこそこいたようで、楽しそうにしていた(よ うにツンには見えた。ショボンは表情があまり変わらないタイプなのでパッと見ただけ では感情を読み取ることが難しかったからだ)。  だが、高校に入ってからは一人でいることが多かった。  ツン自身、割と他人の世話をしたがるタイプだったので、ずっと気になってはいたのだ。 しかし男の子には男の子なりのやり方やプライドがある。変につっこんでいっては逆効果 だとわかっていたのだ。 ξ゚听)ξ「よかったね、ショボン君」  楽しそうにしている3人を見ていると、本心からそう思えたのであった。 ( ^ω^)「・・・?」 ξ゚听)ξ「・・・!」  ふと、二人の視線が重なり合う。  するとブーンは何を思ったかズンズンとツンたちのグループに向かって歩き始めたの である。 ('A`)「おい、どうしたんだよ?」  その様子を見ていたドクオとショボンはあわててブーンの後に続いた。  ブーンはそのままツンたちのグループのそばにやってくると、ツンを含む3人に声を かけたのである。 ( ^ω^)「このグループ、まだ他の男子のグループと一緒になってないおね?」 女子C「うん、そだよー」 ( ^ω^)「じゃあうちのグループと一緒に な ら な い か」 女子D「いいよー♪」 ( ^ω^)「じゃあ決まりだお!」  グループ完s―― ξ;゚听)ξ「いやいやいやいやおかしいだろ常識的に考えて!」 (;'A`)「俺らの意見は無視か!?」  息をぴったり合わせた突っ込みに能天気3人組は「おおー」と湧き上がる。ショボン は展開についていけず見守るしかないと思っているようだ。 ( ^ω^)「いやだって、ショボンとツンさんは一緒の中学でしょお? まったく知ら ない同士よりその方がいいだろうし。ドクオの苦手なギャルっぽい女子もいないし、丁 度いいかなと思ったんだお」 (´・ω・`)「!」  ブーンはブーンなりの考えがあったようである。二人の考えを聞いたツンとドクオは そういう事ならと納得したようである。ただドクオは心のうちで「ギャルっぽくなくて も女子は苦手なんだけどな・・・」とか思っていたりするが。  他のクラスメイトたちもグループ分けが終わったようで、それぞれが固まって騒いで いた。 / ,' 3 「それじゃあグループ分けも出来ましたし、次は役割分担や当日の話などをし ましょう」  そして放課後。  HRも終了し、みな早々に教室を出て行ってしまった。ブーンとドクオとショボンは 少しだけ残って話をしようということになり、みんなでたわいない雑談を繰り広げてい た。  そしてドクオがふと時計を見て現在時刻に気づいたとき、その場はお開きとなったの である。  校門前にたどり着き、ドクオはふとショボンに尋ねた。 ('A`)「そういや、ショボンは家どっちのほうなんだ?」 (´・ω・`)「えっと、○○地区のほうで」 ( ^ω^)「じゃあ僕らとは逆方向だおね・・・しかも結構遠いお」  それを聞いてショボンは少しがっかりした。この楽しい時間がもう終わりだと思って しまったからだ。 ('A`)「そんなしょげた顔すんなって! また明日会えるだろ?」 ( ^ω^)「そうだお! "また明日"だお!」 (´・ω・`)「また・・・明日」  それはショボンにとって久しく聞く機会がなかった言葉であった。そしてその言葉の ありがたさをかみ締めていた。 (´・ω・`)「そうだね、また明日だ」 ('A`)「うい、それじゃあな!」 ( ^ω^)ノシ「バイバイだおー!」  こうして、周りの環境が大きく変化したショボンの一日は終わったのであった。  それからの1ヶ月間、ショボンはとても楽しく過ごすことが出来た。  ドクオやブーンはとても面白い奴らで、付き合えば付き合うほど、新しい発見が出来 た。  たとえばドクオはちゃんとした格好をすればそれなりに格好よく見えること。時々学 校の花壇に水をやってたりすることなど、第一印象とはまったく異なる人物であった。  ブーンの場合はクラスで決めることがある時は率先して意見を出し、みんなを引っ張 っていくこと。みんなが面倒くさがるようなこともきちっとやっていること。付き合い はじめてからはショボンにはそれがとても彼らしいと思えるようになった。  それは向こうも同じだったようで、たとえばショボンがカードゲームやボードゲーム などの戦略性、駆け引きのあるゲームがとても強いことや、いろいろな物事や雑学を知 っていること。  特にブーンはアレやコレやと質問してはその答えがスラスラ返ってくる事にとても驚 いていた。  そして遠足当日がやってきた。  天気は晴れ。絶好の日和である。 ( ^ω^)「照る照る坊主をつるしておいてよかったお!」 (;'A`)「お前は小学生か・・・」 (´・ω・`)「元々照る照る坊主って言うのは・・・」 女子C「あの三人ほんと仲いいよねぇ」 女子D「ずっと昔からああだったみたいだねー」 ξ゚听)ξ「ほんとねー・・・」  一行は今回の目的地、山間のコテージへとやってきた。全体への連絡のために広場 に集めた1年生全体をまとめるのはさすがに大変なようで、先生たちも苦労している ようだ。  なんとか静まり返らせると、付き添いでやってきた校長の挨拶がはじまった。だが、 半数以上はヒソヒソ声で周囲の仲間と会話をかわしていたりするのだが。  それから各グループは自由行動の時間となった。 ('A`)「と言っても何をすればいいんだ?」 女子D「せっかくだからみんなで遊ばない? トランプとか持ってきたし」 (´・ω・`)「お、いいね」 女子C「よーし、絶対勝つよ!」  他のグループはコテージから少し離れた湖や小川、アスレチックやグラウンドなどへ 出かけていったようだ。  ブーン達は自分たちのコテージ(男女別棟であるため、現在は男子の棟)に集まって いた。 ( ^ω^)「あ、ちょっと先に遊んでて欲しいお! 僕ちょっとやることがあるんだお!」 女子C「やることー?」 (*^ω^)「カブトムシとかクワガタを捕まえるためにトラップをしかけるんだお!」  そういうと蜂蜜や蛍光灯、白い布などを集めて外へと駆け出していってしまった。 女子C「あーあ、いっちゃったねw」 女子D「とりあえずうちらだけではじめますかー」 ('A`)「お、おう!」 (´・ω・`)「うん」  4人は輪になってトランプを配り始めた。 女子C「ツンはどうする? やる?」 ξ゚听)ξ「あー・・・私はいいわ。ちょっと散歩してくる」 女子D「そっか、一応気をつけてね」  ツンはDの言葉に手をひらひらとふって返した。 ( ^ω^)「ふふーん♪」  ブーンはコテージから少し離れた森の中で作業に没頭していた。  まず木と木の間に白い布を結びつけて、その布で包むようにに蛍光灯を配置した。  さらに周囲の木に蜂蜜を塗ったり、ちょっと腐りかけた果物をストッキングに包んで つるしてまわる。 (;^ω^)「ふぅ、こんなもんかお! 今夜はお楽しみだおー♪」  そのまま作業を終えると、近くにあった切り株に座り込んで、顔や体から湧き出して いる汗をタオルでぬぐう。それから持参した水筒に入れておいたスポーツドリンクを飲 み、のどの渇きを潤す。  周りはとても静かで、ブーンはまるでこの世界に一人きりになったんじゃないか、そ んな錯覚を感じていた。  それからどのぐらい経ったろうか。休憩もひと段落したブーンがそろそろコテージに 戻ろうと立ち上がった時だった。 ξ;゚听)ξ「あ、いた!!」  突然声をかけてきたのは班の仲間のツンだった。 ( ^ω^)「お? ツンさんじゃないかお、どうしたんだお?」 ξ#゚听)ξ「どうしたもこうしたもないわよ! なんであんたこんなとこにいんのよ! おかげでかなりあっちこっちウロウロさせられたわよ!!」 (;^ω^)「(いきなり逆ギレとかどんだけー)」  それからしばらくツンの愚痴は続き、ブーンはそれに延々と付き合わされることになった。 (;'A`)「ま、また負けた……」 女子D「あはは、ドックン弱すぎーwww」 女子C「顔に出てるもんねぇ」  一方のコテージ組はと言うと、何度目かのゲームを終え、休憩時間に入っているようだ。 (´・ω・`)「そういえば、ブーンとツンさん、戻ってこないね」 女子C「あー、そういえばねー」 女子D「二人でデートでもしてんじゃない?w」  その言葉を聞いたショボンの顔が少し歪む。  だが他の三人はソレに気づかずにトランプをまた配り始めた。 (´・ω・`)「ちょっと、探してくるよ」  そういうと返事も聞かずにショボンは部屋を飛び出していった。  突然の事に三人は驚いたが、いつまでもそうしていても仕方ないのでトランプを配って また遊び始めた。 (;゚A゚)「(ってちょっと待て?! なんだこのシチュエーションはー!! 地獄だー!!)」 (´・ω・`)「どこかな……」  外に出たショボンは案内板を頼りに森の中に踏み入り、ブーンとツンを探し始めた。  緑がうっそうと茂る森は歩きにくく、また初夏を迎えつつある子の時期のためじんわり と汗が皮膚に滲んでくる。  それでも歩みを緩めずにいると、前方からツンとブーンの話す声が聞こえてくる。  ショボンは嫌な気分になりながらも声の方を目指して歩を進める。  そして少し開けたところに出ると切り株に腰掛けるブーンとツンの後姿が目に飛び込 んだ。 ξ゚听)ξ「で、本題なんだけど……。あんた、なんでショボン君と仲良くしようと思ったわけ?」 (´・ω・`)「(僕の話……?)」  ツンがブーンに質問した事はショボンが最近気になっていたことだった。  なぜ、あの時ブーンは僕に声をかけ、友人となってくれたのか。  僕じゃなくても彼は人気があるし、仲良くなれる相手なんていっぱいいる。  そういう嫌な考えに囚われかけていたのだ。 (´・ω・`)「それ、僕も是非聞きたいな」 (;^ω^)「!?」 ξ;゚听)ξ「!」  突然後から声をかけられて、二人はかなり驚いたようだ。  体がビクっと跳ねた後素早く後を振り返る。 ( ^ω^)「ショボン、いたのかお!? ビックリしたお!」 ξ;゚听)ξ「お、おどかさないでよね!」 (´・ω・`)「ごめんごめん、二人があまりにも遅いからちょっと気になってね」  ショボンはそういうと二人の前に回りこみ、そこにあった木に背を持たれかけてブーン を見た。 (´・ω・`)「僕もさ、ずっと気になってたんだ。君がなんで僕と友達になってくれたのかが」  ツンは居心地が悪そうな様子でそわそわし始めた。  話題に上げた張本人がここにやってくるとは思いもしなかったのだろう。  ブーンの方は目を閉じてうつむき、自分の考えをまとめているようだ。  そして意を決したのかショボンの目をまっすぐに見つめて言った。 ( ^ω^)「僕はただショボンと友達になりたいと思っただけだお。ショボンと一緒ならきっと楽しいと思ったんだお。」 (´・ω・`)「……それだけ? ほんとに?」 ( ^ω^)「それだけだお! それともショボンは友達になるのに特別な理由がいるのかお?」  ショボンは安堵すると共に、自分の今までのくだらない考えを恥じた。  そして自分の愚かしさとブーンの気持ちに胸がこみ上げてしまい、涙を流した。 (;^ω^)そ「どっどどどどうしたんだお!? どっか痛いのかお!?」 (´;ω;`)「いや、なんでもないんだ……なんでも……」  それまで静観を決め込んでいたツンは、自分の浅はかさに呆れるのと同時にもう一つ  別の感覚が胸に浮かび上がってきている事に気づいた。 ξ*゚听)ξ「……」  その視線の先には、おたおたと慌てている少年。  種が今、芽生えようとしていた。 ( ^ω^)「とりあえずもうコテージ戻ろうお。みんな待ってるお」 (´・ω・`)「……うん、そうだね!」 ξ*゚听)ξ「い、言われなくてもそうするつもりだったわよ!」  三人は肩を並べ、笑顔で帰路についた。  今はまだ、この先に起こることなど、何も知らずに。 終わり