(´゚ω゚`)「うふフフフふ、僕ノ体、綺麗だろウ?」  誇らしげに右腕を振るい、嬉々とした表情で僕を見つめてくる。  その目は、もうショボンの心が残ってないことを僕に教えていた。 ( ^ω^)「……。」 (´゚ω゚`)「どうシタンだイ? 僕の美しサニ声もデナイのかな?」  ショボン……。 (´゚ω゚`)「コノ美しサナら、キッとツンも気にイッテクレルよ!」  ショボン、もういいんだ。  もう、いいんだ。 ( ^ω^)「ショボン、君はツンを愛してるのかお?」 (´゚ω゚`)「ハハは、愚問ダな。当タり前じゃナイか。」 ( ^ω^)「でも……君はもうツンを抱きしめることは出来ないお。」 (´゚ω゚`)「!!」  そうだ、その腕じゃ。  その心じゃ。  ツンを抱きとめてあげることなんて出来ないんだ。 ( ^ω^)「もう……ショボンはショボンじゃないお。僕の目の前にいるお前はただの 化け物だお。」 (´゚ω゚`)「何ヲ!!」 ( ^ω^)「僕の友達のショボンは、そんなんじゃないお。」 (´゚ω゚`)「コレが僕ダ! 最高ノ僕ダ!!」 ( ^ω^)「じゃあ……じゃあなんでお前は泣いてるんだお。」 (´゚ω゚`)「な!」  ショボン、君の目からはさっきからずっと涙がこぼれてるんだ。  少しずつ、少しずつ。  まるで心の奥にある牢屋から叫んでいるみたいに。  僕はこんなんじゃない、って。 ( ^ω^)「今……助けてあげるお、ショボン。」  僕は、今、”力”を解き放った。  それはクーには信じられない状況だった。 ( ^ω^)「うおおおおおおっ!!」 (´゚ω゚`)「グルァアアァァァ!!」  先ほどまで言葉を交わしていた友が、今殺し合いをはじめているのだ。  しかも先ほどまで戸惑っていたブーンが、本気なのだ。 川;゚ -゚)「これが……あのブーン君なのか。」 ( ^ω^)「今……助けてあげるお、ショボン。」  そういい終わるやいなや、常軌を逸したスピード、音をも超える速さで走り出した ブーン。  それは目にも止まらないという形容がぴたりとあてはまる。  超高速で動き回り、標的であるショボンにパンチやキックを打ち込んでいく。  一方ショボンもただやられているわけではなく、そのスピードをきちんと目で捉え、 反撃をしていた。  もはや防御は捨てているようで、ただただその異形と化した腕を振るい続けていた。  互いの力は互角だろうか。決め手に欠けるようで、なかなか必殺の一撃を出すこと が出来ないようだ。 川;゚ -゚)「なんとか……ブーン君を助けることは出来ないだろうか。」 ( ^ω^)「(これじゃだめだお……何か、何か足りないお。)」  ブーンは自分の力がプギャーのときほど発揮されていないことがわかっていた。  あの時は怒りと殺意が心のすべてを占めていたためか、実力以上の力が発揮されて いた。  しかし今ブーンの心を占めているのは悲しみと友への想いだった。  それはブーンの力を逆にセーブさせていた。いくら殺すと心で誓っても、感情まで は押さえきれなかった。  だが、やらなければショボンは救われない。  あんなに”助けて欲しい”と今も泣いているショボンを。 川 ゚ -゚)「ブーン君!! これを!!」  突如クーが発した声を耳に受けたブーンはそのスピードを維持したままクーの方 を見た。  クーは手に持っていた愛刀をブーンに向かって投げよこしていたのだ。  ブーンはあわててかけよるとスローモーションで放物線を描く刀を受け取った。 ( ^ω^)「……これなら。」   ( ^ω^)「行くお!! ショボン!!」 (´゚ω゚`)「ウガァあぁあアァァ!!  ブーンは刀をまっすぐに構え  ただまっすぐ  ただ速く  ただ純粋に  ショボンの胸を貫いた (´゚ω゚`)「ウギャアァアァァアアッ!!」  断末魔の叫びが夜の大空に響きわたる。  命の源、心の臓を貫かれたショボンはそのまま大の字に地へと倒れた。  右手につながっていた宿主の死を悟ったのか、刀はずるずると体から離れ始めた。 ( ^ω^)「逃がさないお。」  ブーンは刀を拾い上げると真っ二つにへし折った。 ( ^ω^)「……。」  クーから預かった刀をゆっくりと地面に置くと、ショボンの元へと静かに歩み寄る。  ショボンはまだ意識があるようで、優しい目でブーンを見つめていた。  ブーンはゆっくりと、優しく彼の肩を抱き、助け起こした。 ( ^ω^)「……。」 (´・ω・`)「はは、僕ももう終わりだな。」  自嘲気味にショボンは言う。 (´・ω・`)「ああ、どこで間違ったんだろうな、僕は。」  過去を思い返すかのように、ショボンは月明かりの戻った穏やかな空を眺めてい た。 (´・ω・`)「少し、哀れな男の話を聞いて欲しい。」  ショボンはゆっくり、ぽつりぽつりと語りだした。  高校に入ってすぐのころ、僕はツンさんぐらいしか心の許せる相手がいなかった。そ んな僕を彼女は快く受け入れてくれた。  それから長くすごすうちに、君やドクオと仲良くなった。友達になれた。  ブーン、君もここまでは知ってるだろ?  ……そのころ、僕は自分の中にある気持ちが生まれていることを知ったんだ。それは ツンさんを好きだって言う気持ち。  だけどツンさんは君のことが好きだった。まぁ君は鈍感だったから気づいたのは最近 だったかもね。  僕はこの気持ちを必死に押さえつけたんだ。だって絶対に実るはずのない想いじゃな いか。  でもね、そんな時僕の前に悪魔が現れたんだよ。天使のように微笑みながら。      「何でも願いをかなえてやろう。」  その言葉はひどく魅力的で、僕には禁断の果実を目の前にぶらさがっているように思 えたよ。  僕の中の黒いところが騒ぐんだ。その願いでツンを手に入れろって。  僕はそれにあっさり負けてしまった。われながらなんてやつなんだって自己嫌悪に陥 るよ。  僕は悪魔の申し出を受け入れて、こうして戦いに参加した。  まずは異能者の存在を知ることが先決だった。僕は学校中をひそかに調べまわって、 この戦いに参加する動機を持ちうる人間を探したんだ。僕みたいな、ね。  この学校に通う人たちの中でそんな動機を持っている人を探すのは簡単だったよ。  あのしぃって言う女の子はすぐに割り出せた。僕はあの子の行動をひそかに監視して いたけど、やっぱり異能者だった。  その後も彼女の張り込みを続けていた。モララーから五人そろったとの連絡もうけて いたしね。  絶対に誰かに遭遇するだろうと思ったんだ。そしたら、あのビロードという少年やプ ギャーに出会ったわけだ。いや、僕は物陰から見てただけなんだけどね。  そして、ブーン。君がビロード君と仲良くしているのを見て、もしやと思ったんだ。  出来たら間違いであって欲しかったけど、君が能力者だと知って喜んでいる僕もいた んだ。  もし願いをかなえても、いずれツンさんは君の元に行ってしまうんじゃないかって思 えて仕方なかった。  だから君の実力を測ろうと思ってプギャーとの戦いは見させてもらった。  君はあのすさまじいまでのスピードでプギャーを撃退した。僕は戦慄したね。あの能 力はやばいなって。  だから僕はあの刀を手に入れたんだ。僕の能力なら潜入なんて簡単すぎだからね。  それまでは自分の刀で戦うつもりだったけど、あの刀は僕を一発で虜にしてくれちゃ ってさ。  それからツンさんが記憶喪失になったろ? もうこれはチャンスだと思ったね。神様 は本当にいるんだなって。  僕ってのは屑だなぁと今では思うよ。記憶のないツンさんに良い様に吹き込んでさ。 (´・ω・`)「後は大体想像つくと思うよ……ふぅ、長々と話してつかれちゃったな。」  長い長い、独白を終えたショボン。その顔は蒼白だったが、何か憑き物が落ちたよう な晴れやかさもあった。 (´・ω・`)「……いまさらこんなことを言うのは卑怯だってわかってる。でも言わせ て欲しい。」  一呼吸おいてからブーンを見据えてはっきりと言った。  その瞳はキラキラと潤んでいて、今にもその心の奥底にある感情があふれ出しそうだ った。 (´・ω・`)「ごめん…………。」 (´;ω;`)「ごめんなさい……。」  一度溢れ出した涙はショボンの意思とは関係なく、流れ出していた。 ( ^ω^)「……。」  ブーンは何も言わずにショボンのほほをつたう涙を見つめていた。 (´;ω;`)「僕は……本当にひどいことをした。」 ( ^ω^)「……。」 (´;ω;`)「本当は罪を背負ってそのまま、死ぬつもりだったんだ……でも!!」  一言一言、言葉を、感情を吐き出すたびに、涙は勢いを増していた。 (´;ω;`)「ブーンに嫌われたまま死んでいくのが嫌だったんだ!!」 ( ´ω`)「うんお。」 (´;ω;`)「自分でも最後まで最低な奴だと思う……自分のことしか考えてない ……でも……それでも……。」 ( ´ω`)=3「……もう、なんでそんなこと言うんだお。」  ブーンは、フゥとため息をつくとにっこりと微笑んだ。 ( ^ω^)「そんな事言われたら許すしかないじゃないかお。」 (´;ω;`)「ありがとう……ありがとう……。」 ( ^ω^)「なにいってんだお、僕たち友達だお!」 (´;ω;`)「うん……うん……。」  ゆっくり、ゆっくりとショボンの体は足元から灰になって崩れていく。  時間がやってきたようだ。  いつの間にか、ショボンの瞳から涙は消えていた。 (´・ω・`)「じゃあ、もう、さよならだ。」 ( ^ω^)「違うお。ショボンは先に行くだけだお。だから、”また”だお!!」 (´・ω・`)「……そうだね、それじゃあまた会おう。」  もうショボンの体は半分以上が灰になっていた。 ( ^ω^)「まただお!!」  ショボンは最後にずっと微笑んでいた。  そしてその笑顔もさらさらと灰になって消えていった。 ショボン死亡、残り二人―― ( ;ω;)「うっ、うぅ……おおぉぉぉおおぉぉぉおぉおお!!」  叫びが天に木霊した。  その叫びはしばらくやむことはなかった。 14話END