夜の校舎。その雰囲気は昼間とはがらりと違い、何者をも寄せ付けない白い巨城のよう だ。  ショボンに呼び出されて学校へとやってきた。そういえばこうして夜に呼び出されるの は2回目だ。プギャーに呼び出されるまでは高校生にもなって夜の学校に近寄るなんてこ とはしたことがなかった。  校門に手をかけると当然のことながら鍵がかかっているので、僕はそのそばの柵をよじ 登って敷地内に入り込んだ。  小学生のころは肝試しだなんていって友達と潜入して後でこっぴどくしかられたもんだ。  あのころから自分は変わってないんだな、とちょっと苦笑する。 ( ^ω^)「さてと……。」  ショボンは教室で待っていると言っていたので、さっさと教室に向かうことにしよう。 あまり長居をしたい気分ではない。嫌なことばかり思い出すからだ。  幸いなことに玄関の鍵はかかっていなかった。おそらくショボンが外したのだろう。僕 は自分の上履きを取り出してさっさと履くと教室へ向けて駆け出した。 (´・ω・`)「やぁ、ようこそバーボンハウs――」 ( ^ω^)「ねーよwwwww」  教室に入ったとたんにショボンお得意のバーボンハウスネタが飛び出してきたので、 速攻で切り伏せてやった。 (´・ω・`)「最後まで言わせろよ、ぶち殺すぞ」  まったく怒っていない表情で言われても怖くもなんともなかった。  ああ、やっぱりこいつは僕の友達なんだな。こんなやり取りがとても楽しい。 (´・ω・`)「なんか言えよ、ぶち殺s――」 ( ^ω^)「もういいおwwwww」  月明かりの差し込む教室はなんだか神秘的な雰囲気で、神々しさみたいなものを感じた。 そこにたっている自分とショボンは何か神聖なもののように思えた。 ( ^ω^)「ところで話って何だお?」  お互いにネタに走っていては話が始まらないので本題を切り出してみた。  するとショボンは僕に背を向け、窓の外を静かに眺め始めた。 ( ^ω^)「なんなんだおw」 (´・ω・`)「話っていうのはね、ツンさんのことなんだけど。」  瞬間、僕は固まってしまった。いくら自分に言い聞かせていても、気の緩んでいるとき にその話題を振られると体は反応してしまう。ショボンが外を向いててくれてよかった。 ( ^ω^)「どうしたんだお、改まって。」  平静を装って、話しかける。声のトーンがおかしくないか少し心配だったが、ショボン はなんとも思ってないようだ。 (´・ω・`)「ツンさんが、君に病室に来て欲しくないって言ってたんだ。」 ( ^ω^)「え……。」  これは効いた。ツンの話題となるとショボンとツンの関係の話をされるのかと思ってい たがそういうわけではないようだ。  ツンが僕に病室に着て欲しくないと言っているってことは要するに邪魔だってことだ。  今日会っている時はツンも楽しそうにしてたけど、もしかして僕に気を使ってたんだろ うか。  なんだ、だったらこんな回りくどいことせずに直接僕に言ってくれればいいのに。 (´・ω・`)「うん、そういうことなんだ。」 ( ^ω^)「わかったお。ツンがそう言うなら……行かないお。」 (´・ω・`)「それから……。」  まだ何かあるようだ。なんなんだろう。 (´・ω・`)「これは僕の個人的なお願いなんだけど……。」  そう言って懐から何か取り出す。それは長さ70cmくらいの棒状のものだ。断面は楕 円形で、表面はつやつやしている。  それは鞘に納まった刀のようだった。 (´・ω・`)「君に死んで欲しいんだ。」  そう言って、ショボンは視界から消え去った。 (;^ω^)「な? どういう! っていうかどこだお!?」  唐突に視界から消えたショボン。ブーンはあわてて教室のあちこちに目をやるがどこに もその姿は見受けられない。  瞬間、ブーンの肩に激しい激痛が走った。ブーンは痛みのあまりひざから崩れ落ちた。  ブーンの肩には、何か堅く長い棒状のもので激しく殴打された後が残っていた。 (;^ω^)「なんなんだお……これはショボンの仕業なのかお!?」  ブーンは急いでその場から離れる。が、今度は後ろから激しい衝撃が襲った。  ブーンは前のめり地面に倒れるとゴロゴロと教室内を転がっていった。当然途中にあっ た机やイスには何度もぶつかり、体中をなんども打ち付け、最終的に教卓にぶつかって勢 いがやっとおさまった。。 (メ´ω`)「う、うぐぅ……。」  激しいダメージを受けたブーンはうまく体を起こすことが出来なかった。  背中には靴跡があり、それは学校指定の上履きと型が一致している。となればけった相 手は必然的に一人しかいなかった。 (メ´ω`)「死んで欲しいって……どういうことだお。友達じゃないのかお……。」  ブーンの左側からガタリと音がした。瞬間、ブーンの目の前に誰かが飛び出したかと思 うと耳をつんざくような金属音が響き渡った。 (;^ω^)「だ、誰だお?」 川#゚ -゚)「そんなところでボーっとして! 死にたいのか!?」  刀を構え、黒髪をなびかせた少女が目の前にいた。  まったくなんてことだ。やっと奴を見つけたとおもったら……。  なんでこのブーンという少年がここにいるんだ!? 川 ゚ -゚)「……やっと見つけたぞ、ショボン。」 (´・ω・`)「ふん、見つかったか。」  飛び上がりながら私から離れていくショボン。  ショボンが声を発した瞬間、ブーンは驚きの声を上げていた。  何をいまさら……さっきからそこにいたではないか。 川 ゚ -゚)「その刀、返してもらうぞ。それは外にあってはまずいものだ。」 (´・ω・`)「返せって言われて返してたら最初からとらないよね、うん。」 川 ゚ -゚)「ならば……力づくでも返してもらおうか!」  一気に跳んで切りかかる。机が邪魔だが奴との直線状に今は机はない。  奴もそれを読んでいたようで目の前に黒く沈んだ刀身を持つアレを構えた。  鞘は壁際に放り捨ててあった。早く鞘にアレを戻さなければ。  私は振りかぶった刀を思い切り振り下ろす――と見せかけて足でアレを思い切り蹴飛 ばし防御姿勢を崩させた。  あせる奴の表情が視界にちらりと映った。  そのまま着地した私は上を向き、握った刀を思い切り振り上げた。 (;^ω^)「なんなんだお……。」  ブーンにはわけがわからなかった。突然少女が飛び込んできたかと思うと、その向こ う側には少女を刀をぶつからせるショボンが唐突に現れたのだから。  その後少女とショボンが二言三言言葉を交わすといきなり戦い始めたのだから。  少女は飛び上がったかと思うとそのままけりを放ち、ショボンの防御の姿勢を崩した。  そのまま着地してさらに切りかかったが、ショボンはすんでのところでそれをかわし ていた。 ( ^ω^)「いったい何なんだお! ショボン、どうして僕を殺そうとするんだお!」  ブーンが大きな声で叫ぶと、二人の意識はそちらに向いたようだ。  戦闘態勢を解いたショボンはにやりと口の端をゆがめた。 (´・ω・`)「ふむ、そんなに聞きたいかい?」 ( ^ω^)「当たり前だお!」 (´・ω・`)「じゃあこれを見せればわかるかな?」  ショボンはそういうと右手の甲をブーンに見せ付けた。  そこにはブーンと同じように三角形が刻み付けられていた。 (;゚ω゚)「そ、それは!!」 (´・ω・`)「そう、こういうことさ。」  静かに微笑むショボン。ショボンと向き合った少女はなんのことかわからないようで 眉をひそめていた。 (´・ω・`)「僕の願いはね、ブーン。ツンさんを手に入れることだったんだ。だけど その願いはもう叶ってしまった。だから今度は君を消すことにしたんだ。災いの目は早 めにつんでおかないとね」 (;^ω^)「そんな……そんなの嘘だお!!」 (´・ω・`)「アハハハハハハハッ!! 嘘だと思おうと思うまいと君の勝手だよ? だけどこれは真実なのさ。さて、死んでもらおうか!」  そういうとショボンは目の前の少女を吹き飛ばし、ブーンへと跳んだ。少女は隙をつ かれたためか、とっさの反応が出来ずにモロに攻撃を受けてしまった。  そのまま崩れ落ちてしまった。どうやら気を失ってしまったようだ。ショボンはそれ にはいっこうにかまわず、刀を構えるとブーンに向かって振り下ろした。 (;^ω^)「うおぉぉぅ!!」  叫びながら必死に転がってかわすブーン。寸でのところでかわすことが出来た。  ショボンが振りかぶった刀はブーンの後ろにあった教卓をやすやすと切り裂いた。 (´・ω・`)「ちっ……動いてもらっちゃ困るな。」 (;^ω^)「こ、殺されそうなのに逃げないやつは死にたいやつぐらいだお!!」 (´・ω・`)「まぁそのとおりだね。」  地面に先端が突き刺さってしまった刀を引き抜くとショボンはブーンに向かってゆっく りと歩き始めた。 (´・ω・`)「この刀はね、昔江戸を騒がせた人斬りの魂が宿ってるんだって。その人斬 りは何でもこの刀で30人を斬り殺したらしいよ? 今でも血を求めて、夜な夜な刀が ”鳴く”んだ。まぁいわゆる妖刀って奴さ。」  実に楽しそうにショボンは語る。 (´・ω・`)「今宵も刀は血に飢えておる……なんてね。」  茶化しながらもじっくりとブーンに接近している。 川 ゚ -゚)「や……奴はどこに行った!?」  ようやく目を覚ましたのか、立ち上がった少女は室内をキョロキョロと見回している。 (;^ω^)「何言ってんだお! 僕の目の前に刀を構えて立ってるお!」 川 ゚ -゚)「本当か? ……私には誰にもいないように見えるが……。」 ( ^ω^)「……まさか!? ショボンの能力って!!」 (´・ω・`)「やっとわかったようだね。そのとおり、僕の能力は相手から見えなくなる のさ。ただ見えなくなるだけじゃなくて、自分への相手の五感すべての情報をカットする んだけどね。対象者が一人なのが難点だけど。」  淡々と語りながらも切っ先はブーンへと向けていた。  ブーンはその場から一歩も動けずにその刃を見つめていた。 川 ゚ -゚)「(よくわからんが……そこにショボンがいるようだな)」  クーは振りかぶって先ほどよりも素早く跳んだ。 川 ゚ -゚)「はぁっ!!」 (´・ω・`)「ふん……。」  飛び掛ったクーの一撃は見当違いなところに突き刺さった。  当然ショボンはダメージを受けず、冷酷な瞳で隙だらけのクーを見つめていた。 (;^ω^)「危ない! 右だお!」 川;゚ -゚)「くっ!」  ブーンの声を聞くや否や、目にも留まらぬスピードでその場から跳躍した。  ふわりと飛び上がったクーの髪が鮮やかになびくのを見て、ブーンは場違いながら綺麗 だなんて思っていた。  先ほどまでクーがいた場所にはショボンの蹴りが空を切っているところだった。 川 ゚ -゚)「どういうことだ! ブーン君よ!」 ( ^ω^)「何で僕の名前を……。」 川 ゚ -゚)「そんなことは今はどうでもいいだろう!!」 (´・ω・`)「おしゃべりしてる暇はあんまりないよ。」  ショボンはクーへと走り出す。今度はクーにも姿が見えているようで、正確に剣戟をはじ いていた。 (´・ω・`)「ちっ、リミットも鬱陶しいな……。」  ショボンはゆっくりとクーと距離をとると、そのまま廊下へと駆け出していった。 川 ゚ -゚)「っ!! 待て!!」  あわててショボンを追いかけて飛び出していく。まるで獲物を追う肉食動物のように素早 く、獰猛な勢いだった。 ( ^ω^)「あっ! ちょっと待つお! 1人じゃ危険だお!!」  ブーンもそれに負けないくらいのスピードで廊下へと二人を追って出て行った。  教室には静かな輝きを放つ、妖刀の鞘がぽつりと残されていた。 12話END