暗い夜道を走る二人の人影。人通りはなく、生き物の気配はない。  走る二人のスピードはそんじょそこらの人間には真似できない速さだ。 (;><)「先輩、どこへ行くんですか!? 総合病院はそっちじゃないですよ!?」  背負ったちんぽっぽがずり落ちないように何度も背負う位置を調整しながら走るビロード。  その少し前をツンを背負ったブーンが走る。 (;^ω^)「でっかい病院に連れて行くと色々と騒ぎになりかねないお!!」  ビロードは言われてから自分たちの姿にいまさらながら気づいた。ボロボロの衣服に痛々しい傷跡。 むせるような死のにおい。明らかに自分たちは怪しい人物だ。 (;^ω^)「コッチに僕がよくいく小さな医院があるお!! そこならきっとなんとかしてくれるはず だお!!」 (;><)「わ、わかりました!」  それからまた静かになり、二人の呼吸の音と、足音しか聞こえなくなった。  ブーンが立ち止まる。それにならってビロードもその場にとどまった。  ブーンの見据える先には「指賀医院」なる看板をかかげた診療所がたたずんでいた。 (;><)「しがいいん……ここですか?」 ( ^ω^)「だお。」  看板を見ると診療時間はとっくに過ぎている。当たり前だ。もう夜の12時を回っている。 (;><)「もうしまってますよ?」 ( ^ω^)「大丈夫だお。なんとかなるお。」  そういうとブーンは玄関へ向かって歩き出す。ビロードはあわてて後を追う。  ブーンは玄関の前に立つとドアを激しく叩いた。 (;><)「ちょwwwww 先輩!!」 ( ^ω^)「急患だお! 開けて欲しいお!!」  近所迷惑など顧みず、ブーンは激しく戸を叩き続ける。幸いこの医院の周りにはあまり住宅はなく、 それほど神経質になる必要はないのかもしれない。 (*-ω-*)「すー…すー…」  背負ったちんぽっぽはそんな状況でも未だに目を覚ますことはない。 ???「うるさいぞ、こんな時間に!! せっかく人がエロ画像でオナニーしてたっていうのに!」  医院の奥から怒鳴り声が響いてくる。診療所にどんどんと明かりがともっていく。 ( ^ω^)「やっぱり起きてたお!」  ブーンはしてやったりという顔をしている。  ガチャっと音がして中から医者らしき風体の男が出てくる。 (#´_ゝ`)「誰だ!! 俺の娯楽の邪魔をするビッチ野郎は!?」 (;><)「うわぁ!?」  そのどぎつい怒声にビロードは思わず腰を抜かしてしまった。 ( ^ω^)「兄者!! ちょっと助けて欲しいんだお!!」 ( ´_ゝ`)「……なんだ、ブーンか。いったいどうしたんだこんな時間に。」  自らの邪魔をしたその正体がブーンだとわかった瞬間、兄者はその怒りを静めたようだ。 ( ^ω^)「この子の怪我を見てやって欲しいんだお!!」 (;´_ゝ`)「ううむ、頭をやられたのか……よし、今すぐ中に運べ!」  ツンの状態を見て、ことの深刻さがわかったのか。すぐさま奥へときびすを返していった。 ( ^ω^)「ビロード、急ぐお!」 (;><)「あ、は、はい!」  驚きのショックから立ち直ったビロードは急いで中へと駆け込んでいった。 (;´_ゝ`)「おい、弟者! 急患だ!」 (´<_`;)「何!? わかった、今すぐ準備しよう!」  二人はあわてて診療室に入っていく。ブーンはツンを背負ったまま後を追う。さらにビロードも続く。  ブーンはツンを診療台にゆっくりと横たわらせる。  兄者はツンの瞳孔や傷口をくまなくチェックし、弟者は包帯や消毒液などをテキパキと準備していく。 ( ´_ゝ`)「ううむ、ほかの擦り傷はともかく、頭の傷口がちょっとでかいな。これは後が残るかもしれ ん。」 (;^ω^)「そ、そんな! ツンは女の子だお? なんとかならないのかお!?」 (´<_` )「大丈夫だ、ブーン。兄者はやればできる男だからな。」  あらかた準備が終わったのか、兄者の傍らにいつの間にか弟者が立っていた。 ( ´_ゝ`)「ブーン、ここからは医者の領分だ。外で待っていて欲しい。」 ( ^ω^)「わ、わかったお。」 (´<_` )「そっちの君もな。」 (;><)「あ、はい。あの、この子も。ちんぽっぽさんも診てあげてください。怪我はしてないみたいな んですけど、一応お願いします。」  ビロードはそういうと背負っていたちんぽっぽを手近にあったいすにゆっくりとおろした。 ( ´_ゝ`)「お前らは待ってる間に風呂にでも入ってろ。妹者に聞けば俺たちの昔の服でも出してくれる だろう。」 (´<_` )「まぁ、事の顛末に関しては後でじっくり聞かせてもらうからな。」  そういうと二人の背中を押し、外へと追いやった。 (;^ω^)「……とりあえず風呂借りるお。」 (;><)「……そうですね。」 ( ^ω^)「はぁぁ、いいお湯だお。疲れが取れるお。」 (;><)「ぅぅ、ちょっと傷口にしみますね。」 (;^ω^)「そこは我慢だお……。」  二人ばらばらに入るのも面倒なので、一緒に入ることにしたブーンとビロード。湯船は二人で入るの にも十分な広さを誇っていた。  それぞれの体には先ほどの戦いでついた傷がまだ痛々しかった。人外の力を手に入れていても、元々 は人なのだ。 l从・∀・ノ!リ人「湯加減はどうなのじゃー?」  洗面所では妹者が愚痴ひとつ言わずにせっせと着替えを用意していた。  お客への気遣いも忘れない。 ( ^ω^)「問題ないお! ありがとうだお!」 l从・∀・ノ!リ人「ゆっくり浸かっていくのじゃー。」  そういうと奥へと去っていった。 (;><)「あんなに小さいのに良く気が利く子ですね。」 ( ^ω^)「まだ10歳くらいだったかお。」 (;><)「そういえば先輩はここの人とは仲がいいんですか?」 ( ^ω^)「そうなんだお。僕が小さいころから怪我や病気をしたときはいつもここで診てもらってる んだお。」  そういうブーンの顔は昔を思い返しているのか、柔らかにほころんでいた。 (;><)「へぇー。」 (*^ω^)「いいお湯だったおー。」  二人は風呂をあがり、診療所の待合室に戻ってきていた。ボロボロになっていた衣類は妹者がまとめて 洗濯機に放り込んだようだ。今は兄者と弟者のお古に身を包んでいる。  待合室のイスにどっかりと座り込み、診療室のほうを気にしながら時を過ごしている。 (;><)「明日が休みでよかったですね……。ああ、でも制服どうしようorz」 (;^ω^)「がんばって繕うしかないのかお……あれ?」  ブーンは自らの額をぬぐっていた手に目をやった。 (;><)「どうしました?」 (;^ω^)「またここの数字の数が減ってるお……。」 (;><)「え? あ、僕のも減ってます。……まさか!!」 ( ・∀・)「そのとおり、この試合の残り人数が表示されているのさ。」 (;^ω^)そ (;><)そ「「モ、モララー!?」」  あまりにもさりげなく、あまりにも唐突な登場で二人は完璧に不意をつかれてしまった。 ( ・∀・)「ようよう、久しぶりだな。」  異質。そう、彼は今この場で異質な存在だ。何もかもが「普通」と違っている。  ブーンは最初に彼と出会った時は気にも留めていなかったが、やはり彼は普通ではないと思い知らさ れた。 (#^ω^)「何しに来たんだお!?」 ( ・∀・)「ご挨拶だなぁ。俺はただ読者に忘れ去られないように出て来ただけだってのに。」 (;><)「読者?」 ( ・∀・)「ああ、気にしない気にしない。」 (;><)「やっぱりプギャーは死んだんですか。」 ( ・∀・)「ああ、死んだよ。君らが言う5人目の手によってね。」 (;^ω^)「あいつ、死んだのかお……。」  ブーンはいくら自分たちをひどいめに合わせてきた相手とはいえ、プギャーの死にショックを受けてい るようだ。  しばし、沈黙が場を支配した。 ( ^ω^)「で、本当は何のようなんだお?」  その沈黙をブーンはゆっくりと引き裂いた。 ( ・∀・)「俺がここに来たのはブーンに芽生えた能力について教えてやろうと思ったのさ。」  わざとらしくあごに左手を当て、左ひじを右手で抱え込むようなポーズを取るモララー。 ( ^ω^)「僕の能力? いつ芽生えたんだお?」 ( ・∀・)「おやおや、自分じゃ気づいてなかったのか。まぁあの状況じゃ仕方ないだろうね。」 (;><)「やっぱり見てたんですか……。」 ( ・∀・)「当たり前だろ。ちゃんとジャッジしてないとな。」  さも当然というように、今度はやれやれというジェスチャーをする。いちいち身振り手振りが大げさな 男だな、とビロードは思っていた。 ( ・∀・)「で、だ。さっき一度プギャーに突き刺されて倒れた後にもう一度起き上がったろ? あの時 に能力が目覚めたんだよ。いったいなんだと思う?」 ( ^ω^)「う〜ん。」  ブーンは必死に頭をひねっているが思い当たる節がないようだ。ビロードも同じように考え込んでいる。 (;><)「もしかして……。」 ( ・∀・)「わかった?」 (;><)「あの異常なまでのスピード、でしょうか。僕の目でも捉えるので精一杯でした。」 ( ・∀・)「そうだ、それだよビロード。ブーンの能力は”超速”。音の早さも超えるスピードで動けるの さ。」 ( ^ω^)「”超速”……。」 ( ・∀・)「どうだ? ついに芽生えた新しい能力の感想は?」  期待を込めた眼差しでブーンを見つめるモララー。wktkという言葉がすごく似合う。  当のブーンはというと…… ( ^ω^)「なんか地味じゃないかお? しぃの言霊とかプギャーの合成とかビロードの空間接続とかに 比べると。」  少し不満があるようだ。 ( ・∀・)「地味、か。しかしシンプルな能力ほど実はすごかったりすることもあるぞ?」 ( ^ω^)「うーん……。」 ( ・∀・)「おっと、あの子の手当ては終わったみたいだな。じゃあ俺はそろそろ失礼するよ。」 ( ^ω^)「あ、ちょtt――」  ブーンが言いかけたときにはもう、はるか虚空のかなたへと飛び去っていってしまっていた。  飛ぶといっても武空術のように空を飛ぶわけではなく、屋根から屋根をジャンプしているだけなのだが。 ( ´_ゝ`)「おい、終わったぞ。」  モララーが去っていくのとほぼ同時に兄者が置くから現れる。 ( ^ω^)「どうだったお!?」  ブーンの関心はもうツンへと移ってしまったようだ。 ( ´_ゝ`)「ふむ、思ったよりもきれいに縫合できたぞ。あれなら傷もキレイに消えるだろう。」 ( ^ω^)「良かったお……。」  ブーンはほっと胸をなでおろす。 (´<_` )「だから言ったろう、兄者に任せておけばすべてうまくいくと。」 ( ´_ゝ`)「うむ、その通りだ。流石俺。」 ( ^ω^)「なにはともあれうまく行って良かったお。」  三人は喜びを分かち合っていた。 (;><)「……あのー。」  その三人から少し離れたところでビロードが声を上げていた。 (´<_` )「む、これはすまない。つい浮かれてしまっていた。」 ( ´_ゝ`)「ちんぽっぽ君とか言ったかな? 彼女の容態は問題ないぞ。眠りがやたらと深いのは睡眠薬の せいだろう。彼女の血液から薬の成分が検出された。」 ( ´_ゝ`)「で、だ。いったい彼女たちやお前たちはどうしてボロボロなんだ?」  兄者は唐突に核心を突いた話題を振ってくる。 (;^ω^)「そ、それは……。」 (;><)「(何か考えがあったんじゃないんですか!?)」 (;^ω^)「(それどころじゃなかったお……)」  まったくこの人は気が利いてるんだかいないんだか……、とビロードは頭が痛くなる思いだった。 (´<_` )「どうした、説明できないのか? まさかお前らが何k――」 (#^ω^)「そんなわけないお! ブーンたちは二人を助けるために戦っただけだお!!」  思わず口をついて出てしまった真実。  言ってしまった直後、ブーンは自分の行ったことの重大さに気づき、顔を青くした。  ビロードのほうを見れば、彼もいつものさえない顔をいつも以上に青くしていた。 ( ´_ゝ`)「ほうほう、なるほどな……大体読めたぞ。」  兄者は額に人差し指を当て、うんうんと一人うなずいている。  そしてその口から ( ´_ゝ`)「つまりお前は暴力を振るわれそうになっている二人を悪漢から救い出したわけだな。」  半分当たってるような当たってない様な推測が繰り出されるわけである。  二人は互いに顔を見合わせてアイコンタクトを送る。  それから兄者と弟者の方を向き直りゆっくりと語る。 ( ^ω^)「…………そうだお!!」 (;><)「え、ええ。僕たちは悪い人たちに絡まれていた二人を助けたんです!!」  まぁ間違ってはいないだろう。なんとか兄者の推測の方向に持っていくことにしたようだ。 ( ^ω^)「今日はちょっと遅くまで、学校に残る用があったんだお。そしたら。」 (;><)「二人が絡まれていたんです!!」 ( ´_ゝ`)「なるほどなるほど。それで助けに入ったわけだな。」  二人はあせりながらしゃべっているが、兄者は特におかしいとは思わなかったらしい。  恐らく隠し事を打ち明けているからどもってしまうのは仕方ないと思っているのだろう。 ( ^ω^)(;><)「そうなんだお(です)!」 (´<_` )「流石兄者。推理が冴え渡っているな。」 ( ´_ゝ`)「ふっふっふっ、そうだろうそうだろう。」  またも得意満面の笑みを浮かべている。  ブーン達二人は安堵の吐息を漏らしていた。 ( ^ω^)「とりあえず今日のところは家に帰るとするお。」 ( ´_ゝ`)「そうか? では、彼女はこちらのほうで面倒見よう。親御さんへの連絡をしたいんだが。」  兄者はブーンを見るが、そこまで期待はしていなさそうだ。  だが予想に反して、ブーンは手近にあったアンケート用紙と、ペン立てにおかれていた、消しゴム付鉛筆を とりだし、そこにツンの家の電話番号を書き込んだ。 (´<_` )「なんで電話番号知ってるんだ?」 ( ^ω^)「前に携帯でアドレス交換したときに一緒に入ってたんだお。」  兄者はそのメモを持って奥へと消えていった。 ( ^ω^)「さて、明日お見舞いに来るからよろしくだお。」 (´<_` )「わかった。あんまり騒がしくするんじゃないぞ。」 ( ^ω^)「大丈夫だお! さ、ビロード帰るお。」  しかし返事がない。振り返りビロードを見ると。 (;><)「すぅ……。すぅ……。」  待合室の長いすに倒れこみぐっすりと眠っていた。よほど疲れていたのだろう。 (;^ω^)=3「しょうがないやつだお。弟者、ビロードの面倒もついでに見てやって欲しいお。あとちんぽっ ぽさんも。」 (´<_`;)「やれやれ、ここは診療所であって下宿じゃないんだぞ……。」  そういいつつ奥に消え、ゴワゴワしてそうな毛布を持って戻ってきた。その毛布をビロードの体にそっとか ぶせ、ブーンのほうを見る。 (´<_` )「とりあえずお前は家に帰ったほうがいい。おばさんも心配しているだろう。」 ( ^ω^)「わかったお。あ、ついでにビロードとちんぽっぽんのご両親にも連絡しておいて欲しいお。」 (´<_`;)「あのなぁ。」  弟者が苦言を繰り出そうともまったくの無関心で、ビロードのポケットから携帯を探り出し、そこから自宅 への連絡先をメモする。電話帳をさぐりまわし、ちんぽっぽの自宅番号を見つけ、同じように書き足した。 ( ^ω^)「じゃ、そういうことで。」  書き終えるや否やダッシュで医院を飛び出していった。 (´<_`#)「あの野郎……。」 ( ´_ゝ`)「ブーンは帰ったのか?」  兄者がワイヤレス電話の子機を片手に奥から現れた。  弟者は今起こったことをかいつまんで説明して聞かせた。それを聞いた兄者はやれやれといった表情で肩を すくめる。 ( ´_ゝ`)「あいつは小さいころからせわしないやつだからな。」 (´<_` )「そういえばそうだったな。」  弟者は兄者から子機を受け取るとダイヤルボタンをピポパポと押していく。 (´<_` )「なぁ、兄者。気づいていたか?」 ( ´_ゝ`)「ん。ああ、あいつらがうそをついてるってことか。」 (´<_` )「ヤハリ気づいていたか。」  子機を耳にあて、コール音が流れているのを聞きながら会話を続ける。 ( ´_ゝ`)「誰しも知られたくないことの一つや二つはあるだろう。それにあいつらが話していた中には恐ら く真実も混じっているだろう。信用してやろうじゃないか。」 (´<_` )「流石兄者、寛大な心だな。」 ( ´_ゝ`)「ふふふ、そうだろう。」 l从つ∀-ノ!リ人「なにを楽しそうに話しておるのじゃー? 妹者も混ぜて欲しいのじゃー。」  奥からとことこと妹者がやってきた。あの後自室に戻って眠っていたはずなのだが騒がしくて起きてしま ったようだ。  パジャマ姿で寝ぼけ眼をこすりながら、手には枕を持っている。 ( ´_ゝ`)「おや、起きてしまったか。ホラホラ、兄者が子守唄でも歌ってやるから寝なさい。」 l从-∀-ノ!リ人「わかったのじゃー。」  兄者は妹者の手を引き、またも奥へと消えていった。  と、同時に弟者の持った電話がつながる。この時間だ、すぐに出ないのは予想できていたようだ。 (´<_` )「夜分遅くに申し訳ありません。指賀医院(さすがいいん)のものですが……。」 8話END