立ち並ぶ木々の色が変わり始める季節、たいそうあわてた様子で道を一人走る青年がいた。  表情は笑っているが、彼はいつもこんな表情なので、別に今の状況を楽しんでいるわけではな い。  むしろ危機的状況におかれているといえる。 (;^ω^)「やばいお、遅刻するお!! 新学期早々遅刻はまずいお!!」  彼の名は内藤ホライゾン。入速高校の2年生である。2学期始まりの今日、寝坊をしてしまい 学校に向かって一目散に走っているところだった。 ( ^ω^)「よし、ちょっと本気出すお!!」          /⌒ヽ    ⊂二二二( ^ω^)二⊃         |    /        ブーン           ( ヽノ          ノ>ノ      三  レレ ――ガラガラガラッ  目の前の扉を勢い良く開く。汗で湿った背中がぬるぬるしていて気持ち悪い、なんて思いながら。 (;^ω^)「なんとか間に合ったお。」  教室に駆け込んだ時間はチャイム3分前。まだ教師は来ていなかった。 ('A`)「よお、ブーン。新学期早々にギリギリとはやるじゃねぇかwwww」  ぼさぼさ髪の冴えない――僕はちゃんと髪型や眉やらを整えたらもっといい男になると思っている ――少年、ドクオが話しかけてきた。 (´・ω・`)「からかうなよ、ドクオ。ブーンおはよう。」  それに続いて優しいまなざしを瞳にたたえた少年、ショボンが話しかけてくる。  二人とも僕の友達だ。 ( ^ω^)「ドクオ、ショボン、おはようだお」  ガタガタと音を立てながら席に着き、前のドクオと右のショボンに挨拶する。  ちなみに僕の席は左から2列目、前から5番目だ。 ( ^ω^)「ん? なんか教室が騒がしいお?」 室内を見回してみればあっちでもこっちでもひそひそと話す声が聞こえてくる。 みんな神妙な面持ちをして議論に白熱しているようだ。 ( ^ω^)「なにかあったのかお?」 (´・ω・`)「ああ、なんでもうちの学校の生徒が意識不明の重体で病院に運ばれたそうだ。」 (;^ω^)「ほ、ほんとうかお!?」 ('A`)「ああ、マジモンだ。今朝学校に来たときに救急車が出て行くのを見たからな。」 (´・ω・`)「先生たちが遅いのは臨時の職員会議をしているからなんだってさ。」  それでか…でもそれにしては遅すぎる気がする。 ( ^ω^)「もしかしてその生徒は誰かにやられたのかお?」 (´・ω・`)「みんなそうなんじゃないかって噂してるよ。」  ガラガラと扉の開く音がして、先生が教室に入ってきた。 / ,' 3「君たち、HRもはじめるから早く席につきなさい。」  生徒たちはいそいそと席に着き、まだかまだかと好奇の目を向けている。 / ,' 3「まぁ、その様子じゃもう君たちも知っているだろうけど、今朝のことについて話をしますね。」  先生はゆっくりとことの概要を話し始めた。 / ,' 3「と、いうことなんで詳しくはまだわかって無いんだ。」  先生の話をまとめると、生徒は教室で傷だらけで倒れていたそうで、そばには「早く出てこい」と書かれた 紙が置いてあったらしい。このことから確実に事故ではなく事件と決まったわけで、警察も捜査に乗り出すか もしれないそうだ。  ちなみに犯人はもちろんわかっていなく、犯人が残したと思われるものはその紙しかないらしい。 (;^ω^)「物騒なことがあるもんだお」 ('A`)「よくこれで休校にならねえな。」 (´・ω・`)「おそらく警察は学校関係者が犯人だと睨んでるんだろう。今朝不審者がいたなんて話も無いし。 だから休校にすると都合が悪いわけだ。」 ( ^ω^)「お前頭いいな。」 / ,' 3「じゃあそろそろ授業を始めましょうか。一時間目は私の授業ですからね。」  僕たちはまだこのときはまさかあんな目にあうなんて思ってもいなかった。  時は流れて放課後。  まだ夏があけたばかりの教室は夕日とは縁遠い明るさに包まれていた。 ('A`)「授業やっと終わった……マンドクセ。」 (´・ω・`)「僕はこれから用事があるから先に帰らせてもらうよ。」 ( ^ω^)「わかったお、また明日だお。」  去っていくショボンの背中を二人して見送った。 ( ^ω^)「さてドクオ、僕らもかえr――」  そう言いかけたとたん、僕の声は女の子の大きな声でかき消されてしまった。 ξ#゚听)ξ「ブーン! ブーンいる!?」  教室の外から大きな声を出して飛び込んで来た巻き毛の少女はツン。彼女も僕の友達である。  5、6時間目のの選択授業では違う授業をとっていたので、彼女は違うクラスで授業を受けていたので ある。 ( ^ω^)「あ、ツンだお。」 (;'A`)「よ、よう。」 ξ#゚听)ξ「あ、ツンだお。……じゃないわよ!! あんた今日の昼休みの委員会さぼったでしょ!?」 (;^ω^)「あ」 すっかり忘れていた。そしてなぜ彼女がそれで怒っているかというと……。 ξ#゚听)ξ「おかげで委員長の私の仕事が増えちゃったじゃない!! あんたちょっと手伝いなさいよ!」 ('A`)「じゃあしょうがないな。ブーン、俺は先に帰るぜ。じゃあなwwww」 (;^ω^)「ちょwwwwwおまwwwwwwヒドスwwwwwww」  それから僕は過酷なハードワークにヒートアップしそうな脳にムチをうってペンを滑らせていた。  隣で同じようにツンも作業をしていたが、時折そちらを見るとギロリとにらみつけてきたので、僕は一 所懸命に作業をするしかなかった。  作業開始から二時間ほど過ぎただろうか。一通りの作業が終わり、僕はペンを置いた。 (;^ω^)「ふぅ、やっと終わったお」  凝り固まった背筋をほぐすようにググっと伸びをする。 ξ゚听)ξ「お疲れ様、これ飲む?」  ツンがどこからかスポーツドリンクを差し出す。 ( ^ω^)「うはwwwwwアリガトスwwwwww」 ξ///)ξ「べべべべつにあんたのためじゃないんだからね!! たまたまあっただけなんだから!」  顔を真っ赤にしながら否定されても説得力がないんだけど……それにたまたまあったわりだけには良く 冷えていた。 ( ^ω^)「ゴクゴクゴクゴク……プッハーwwwww」  美味い。労働の後の一杯は最高だ。喉をひんやりとした感覚が伝っていくのがわかる。 ( ^ω^)「ありがとう、おいしかったお。」 ξ゚听)ξ「じゃあそろそろ帰ろうかしらね。」 ( ^ω^)「じゃあ途中まで僕が送って行くお。」  最近は物騒だから女の子に一人歩きさせるわけには行かない。学校で事件を起こしたやつだって この近辺をうろついているかもしれないわけだし。 ξ*゚听)ξ「え、いいの?」 ( ^ω^)「元はといえばこうなったのも僕のせいだし。」 ξ*゚ー゚)ξ「じゃ、じゃあお願いしようかな。」 ξ*゚听)ξ「でね、私はこう言ってやったの! 『その宿題は先週のうちに終わらせたわ!』ってね。」  ツンは僕の隣でとても楽しそうに話している。今日あったこととか昨日見たテレビのこととか。  その話を聞いてるだけで僕はすごく穏やかな気持ちになれる。ずっとこうしていられたらいいなと思う んだけどそうもいかなくて……宿題……宿題!? (;^ω^)「し、しまったお!! 学校に宿題を忘れてきちゃったお!!」  机のもの入れに忘れてきた白い数枚のプリントの姿が頭をよぎった僕は思わず叫んでしまった。 ξ;゚听)ξ「なにやってるのよ!」 ( ´ω`)「ツン、ごめんお。ここまでしか送ってあげられないお。」  ツンはやれやれといった表情で肩をすくめていた。 ξ゚听)ξ「しかたないわね、今日はこの辺でバイバイするわ。また明日ね。」 ( ^ω^)「ごめんお! この埋め合わせは必ずするお!」 ξ#゚听)ξ「いいからさっさと取りに行きなさい!!」 (;^ω^)「ひぃぃ!!」  ブーンは何度も振り返り謝りながら走り去っていった。 ξ--)ξ「はぁ……ブーンの馬鹿。」 ( ^ω^)「ふー、あったおあったお。忘れてたら明日荒巻先生に”ブワッ!”されるところだったお。」  自分の机の中から宿題を取り出す。そのときだった。 ――ガシャーン――  もう誰も残っていないはずの校舎で大きな音が響く。 ( ^ω^)「一体何の音だお?」  音は上の階から聞こえてきた。僕はその音を頼りに二階にあがってみることにした。  正直ちょっと怖かった。今日の事件の話も聞いていたし、自分はひとりぼっちだ。何かあったときに とても対処できるとは思えない。  でもそんなことがあるはず無い。そう自分に言い聞かせた。まさか自分がひどい目にあうはずは無い だろう。  上の階にたどり着き、手前の教室から順番に中をうかがっていくことにする。  一つ目、何も無い。二つ目、何も無い。三つ目、ここも特におかしなところは無い。  やっぱり自分の思い過ごしだったんだろうか。でもとりあえずと思い、最後の教室のドアを開く。 ( ^ω^)「……え?」  そこには確かにあった。血みどろになって倒れている元は人だった塊が。  そこには確かにいた。それを見つめ恍惚の表情を浮かべる人が。  そしてそこには確かにいた。奇怪な形状をした”何か”が……。  その”何か”は実に奇妙な形をしていた。固い殻に覆われていて、脚は六本。そのうち2本は鋭い鎌に なっている。長い首と鋭利な牙を持ち、目玉は3対ある。尾は二本生えており、しなやかにうごめいている。  僕は何がなんだかわからなくなっていた。目の前の見たこと無い生き物もわけがわからなかったが一番 わけがわからないのは死体である。ここは日本だ、しかも学校だ。死体なんてものとは縁遠い世界のはず。  それが平然と転がり、「私は死体です」と自己主張するかのように赤々と血で濡れている。  僕が呆然としていると先ほど恍惚とした表情を浮かべていた人物がこちらに気がついたようだ。振り返 ってこちらを見て、一瞬驚いた表情をした後、にたりといやらしい笑みを浮かべた。 ( ^Д^)「なんだ、まだ人がいやがったのか。おい、お前。」  そいつが突然僕に声をかけてきた。僕はますますわけがわからなくなった。 ( ^Д^)「おい、お前だよ。そこでポカーンとつったってる。」 (;^ω^)「ぼ、ぼくのことかお?」 (#^Д^)「お前以外に誰がいるって言うんだ!!」  僕の反応が悪かったので怒っているようだ。こっちはそんなどころではないのにキレられたって困る。 ( ^Д^)「とろくせぇ奴だな。まぁいいか。お前はドレくらい逃げてくれるか楽しみだ。」  逃げる? いきなりわけがわからない。何で僕が逃げなきゃいけないんだ? ( ^Д^)「こいつは3分も持たなかったからな。つまんねぇ奴だったよ。」  また先ほどのいやらしい笑みを浮かべて、そばに倒れている肉塊に目を向ける。 (;^ω^)「わ、わけがわからないお。」 (#^Д^)「ほんっとにとろくせぇな。お前はこれからこの化け物に殺されないように逃げるんだよ。」  横にたたずんでいる”何か”を指しながらこちらを睨む。  殺される? コロサレル? まずい、何とか時間を稼がないと。 (;^ω^)「そ、そいつはいったいなんなんだお。というかなんで君はそいつに襲われないんだお?」 (#^Д^)「いっぺんに質問するんじゃねぇよ、タコが。」 (;^ω^)「ごめんなさいだお。」  って、何で謝ってるんだ僕は。もう何もかもが変だ。 ( ^Д^)「こいつは俺が”造った”んだ。たしかカマキリとヘビを組み合わせたはずだ。」  造った? 組み合わせた? もはや理解不能だ。 ( ^Д^)「で、俺がこいつを造った。俺はこいつの創造神ってわけだ。だから俺の命令に忠実。俺に歯向かっ たりしねぇ。これでOKか?」  OKか? と言われても彼の答えはなぜ? と思うところがいくつかあった。  もう少し会話を引っ張ってスキをつくらせないといけない。 ( ^ω^)「と、とりあえずはわかったお。でもまだわかんないことがあるお。」 (#^Д^)「ああ? 今度は何だ。」  いい加減にしろと言いたげな目でにらみつけてくるが、こちらは生死がかかっているのでそれどころではな い。 (;^ω^)「君は何でそんなものを造ることが出来るお?」 ( ^Д^)「もらったんだよ、この力をな。最初から使えたわけじゃねぇ。もう説明は終わりだ。」 (;^ω^)「ちょ、ちょtt――」 ( ^Д^)「さぁ、逃げろよ。」  その言葉を合図にするかのように化け物はこちらに飛び掛ってきた。僕はすんでのところで廊下に転がり出て 事なきをえた。  化け物はドアが邪魔でこちら側に出て来れないようだ。僕は急いで走り出した。足には自信がある。とにかく 走って安全なところまで逃げないと。でも安全なところってどこだろう。  後ろの方でガシャーンと大きな音がした。振り返らなくてもわかる、奴がドアをぶちやぶったんだ。  ガサガサガサガサと足音がする。やばい、めちゃくちゃ速いぞあいつ。とりあえず階段を駆け下りた。段差は 奴にとって動きにくいに違いない。 ???「ギシャァアアアァァア!!」  咆哮をあげながらさらに迫ってくる。が、思惑通り階段で突っかかったみたいだ。なんとか逃げれそうだ。 (;^ω^)「や、やばいお……息が、苦し……いお」  心臓が早鐘を打っている。極度の緊張感とフルパワーで動いてる体に酸素を送るためと。二つの原因のせいで 心臓はいつもの2倍くらいに膨張収縮を繰り返しているんじゃないかと思えるぐらいきつかった。  とりあえず落ち着くために目の前の実験室に飛び込んだ。アルコール臭が鼻をつくがこれなら匂いで見つけ出 されることはないだろう。ヘビはにおいに敏感な生き物だから、僕の匂いを見つける前にここの刺激臭で近づか ないだろう。 (;^ω^)「ハァハァ…クッ、ハァハァ。」  一時的に安全なところに逃げ込んだせいか、どっと疲れが沸いてくる。呼吸も乱れたままだ。 (#^ω^)「クソ、一体なんなんだお。なんで僕が殺されなきゃいけないお!」  事の理不尽さになんだかとても腹が立ってきた。 ???「そんなに死にたくないか?」 (;^ω^)「!?」  振り返った先には誰かが立っていた。全然気配なんて感じなかったのに。  その姿は珍奇、珍妙だった。グレー一色に染まったボディスーツのようなものをまとい、ところどころに鎧と 思しき装甲を装着していた。 ( ・∀・)「死にたくないかって聞いてんだよ。」  軽々しい口調で彼は言う。その軽々しさにもだんだんと腹が立ってきた。 (#^ω^)「そ、そんなの死にたくないに決まってるお!! 大体、誰なんだあんたいったい!?」 ( ・∀・)「そんなことどうでもいいよ。死にたくなければ俺と契約しろ。俺がやれって言ったことに必ず従う ってな。」  契約?またわけがわからない。 ( ^ω^)「契約したら絶対助かるのかお?」 ( ・∀・)「ああ、保障してやろう。」  いきなり現れてめちゃくちゃ怪しいんだけど……このさい贅沢は言ってられない。 ( ^ω^)「……わかったお。契約するお。」 ( ・∀・)「話が早くて助かる。じゃあちょっと待ってろよ。」  そういうと彼は部屋からつかつかと出て行き、一帯は静かになった。  と、突然声が聞こえてくる。結構小さいが何とか聞き取れる。 ( ・∀・)「おい、プギャー。」 ( ^Д^)「なんだモララーか。何のようだ。俺は今狩りで忙しい。」  だからなんで僕は殺されなきゃいけないんだ。こんなふざけた奴に。 ( ・∀・)「ふ、お前のそれが狩りといえるものか。お前のはただの道楽だ。」 ( ^Д^)「はん、どうだっていいんだよ。俺の邪魔はするなよ。俺の邪魔をするならたとえお前だろうと!」 ( ・∀・)「そんなことを言っていていいのか? 俺がルールだってことを忘れたようだな。」  とたんにプギャーと呼ばれたあいつは静かになった。 ( ・∀・)「わかったらさっさと帰るんだな。お前は騒ぎを起こしすぎる。今朝の事件だって生徒の間に広まって るじゃないか。」 ( ^Д^)「……気にくわねぇ野郎だったからちょっと痛めつけてやっただけだ。死んで無いし別にいいだろ。さ っき殺したのはもう処理したよ。」  あの事件はプギャーの仕業だったのか。 ( ・∀・)「まぁとにかく今日のところは帰れ。まだ5人揃って無いんだしな。」 ( ^Д^)「……けっ、仕方ねぇな。おい化け物、お前にもう用は無い。ばらけろ。」  プギャーがそういうとブシャアっという音がした。あの化け物は死んでしまったのだろうか。 ( ^Д^)「なんでも合成できるのはいいんだが一日しか持たないのは厄介だなぁ。」  と、なにやらぶつくさ言う声が遠のいていった。本当に帰って行ったらしい。 ( ・∀・)「おい、奴ならもう帰ったぞ。」 (;^ω^)「と、とりあえず助かったお……。」  全身の力を抜いてどっかり座り……こみたいところだけどまだ安心は出来ない。モララーの正体を見極めるまでは 命の危険は相変わらず続いている。 ( ・∀・)「そんなに気張らなくても大丈夫だぞ? 俺はお前を殺したりしない。少なくとも今はな。」  そう言うとくるりと身を翻しこちらに顔だけを向けた。 ( ・∀・)「俺がお前に命令することはひとつだけだ。           ……殺し合いをしろ。」 (;^ω^)「わ、わけがわからないお。もうちょっとちゃんと詳しく説明するお。」  殺されそうになって、契約させられて、今度は殺し合いをしろ?  もう今日はわけのわからないことのバーゲンセールだ。  どんなに安売りしてたって欲しくないけど無理やりに押し付けられてるような感じがする。 ( ・∀・)「しょうがねぇなぁ。これで説明するからちゃんと聞けよ?」  どこからともなくホワイトボードを取り出すモララー。 (;^ω^)「ちょwwwwwおまwwwwwwどっからwwwwwww」  そんな僕のつっこみを華麗にスルーしつつ、取り出した油性ペンでホワイトボードに文字列を書き始める。 (;^ω^)「ってwwwwおまwwwそれ油性wwwww」 ( ・∀・)「あれ、水性じゃないとだめなんだっけか? まあいいけど。」  と、まだまだ書き込んでいく。もはやホワイトボードは比率で半分ぐらい黒くなっていた。 ( ・∀・)「んじゃ、説明するからな。ちゃんと耳の穴かっぽじってよーく聞けよ。」 ( ^ω^)「ホジホジ」 (;・∀・)「ちょwwwww本当にかっぽじんなwwwww」  一通りコントが終了したところで本題に入るようだ。一体殺し合いってなんなんだ。 ( ・∀・)「さっきのプギャーの能力は見てたな。」 ( ^ω^)「うん、なんか合成とかなんとか言ってたお。」 ( ・∀・)「そうだ。あの力は俺が与えたものだ。」  与えた? ということはそもそもの原因はこいつにあるわけか。やっぱり危ないやつっぽい。 ( ・∀・)「俺はこの世界とは別の世界からやってきた、いわば異界人だ。その世界はそういう能力が発達している 世界だった。ここからは説明長いけど寝るんじゃないぞ?」 (;^ω^)「わ、わかったお。」 ( ・∀・)「その能力のことを俺たちは”異能”と呼んでいる。異能を使うものは”異能者”と呼ぶ。そしてその異能を 使って俺たちは生活を豊かにしていった。だけど基本的に異能は一人にひとつだ。だがそれでは人は飽き足らなくなった。 そこで人々は一人に複数の異能を持たす方法を探したんだ。その実験体ってのが俺だ。俺はおかげで3つの能力を得るこ とに成功した。でも俺はそんな奴らの玩具になるのが嫌で逃げ出したんだ。丁度同じ実験施設で物体転移装置の実験中だ ったんでな。それを拝借してこの世界に逃げてきたってわけだ。ここまではわかったか?」 (;^ω^)「信じられない話だお。……でもアレを見たからには信じないわけにはいかないお。」  つい先ほどまで自分が対峙していた―― 一方的に襲われていたとも言うが――力のことを思い返していた。 ( ・∀・)「んじゃあ続き行くぞ。俺の持っている異能には他人の願いをかなえるってのと、他人に異能を与えるって のがあるんだ。それで俺はこの能力を使ってちょっとしたゲームをすることを思いついた。それがさっき言った殺し合い だ。」 (;^ω^)「な、何でそれで殺し合いになるんだお。」 ( ・∀・)「ああ、こっちの世界ではそれはおかしいんだったな。でも俺の世界では異能を使った殺し合いは一種のスポ ーツとして普通に浸透していてな。こっちの世界でも同じことをやろうと思ったんだ。」  そりゃあそっちがいた世界ではそれが普通だったのかもしれないけど……だけど。 ( ^ω^)「僕は殺し合いなんてやりたくないお。」 ( ・∀・)「でもお前には決定権なんてない。俺との契約だからな。」 (#^ω^)「どっちにしろ死んじゃうなんて全然契約になって無いお!!!」 ( ・∀・)「お前が生き残れば問題は無い。それに生き残れば俺が願いをかなえてやるんだからな。良いこと尽くめだぞ? まぁ命に関することはいじくりまわせないんだけどな。」  簡単に言ってくれる……のほほんと平凡に育った高校生の僕に何が出来るって言うんだ。 ( ・∀・)「で、だ。今からお前に能力を授けようと思う。目を閉じて体の力を抜け。」 ( ^ω^)「僕はそんなもの――」 ( ・∀・)「目を閉じて力を抜け。」  お前に決定権は無いって言ってるだろ? そんな意味を込めた強い言い方だった。仕方が無いのでいやいや目を閉じた。 ( ・∀・)「ちょっときついけど我慢しろよ。」  瞬間、頭の中が真っ白になる。ぐるぐるぐるぐる回っている。と、思ったら今度はずぅっと下に落ちていく感覚がする。 自分の意識が形になって頭っていう空間の中をぐるぐるごろごろと動きまわっているみたいだった。  だんだん気持ち悪くなってくる。僕の体が遠くに行ってしまったように感覚がまるで無いのに、脳みそはフル回転して いる。  そしてフッと手に感覚が戻ってくる。続いて胴体、腰、足まで感覚が行き渡って最後に視覚が回復する。そこはさっきの 実験室だった。 ( ・∀・)「よし、終わった。あと2〜3日もすれば能力が開花するだろう。」 (;^ω^)「なんかすごい吐き気がするお。頭がぐるぐるするお。」 ( ・∀・)「まぁ副作用みたいなもんだ。1時間ぐらいすれば直るさ。」  そう言うとモララーはすくっと立ち上がり部屋から出て行く。 ( ^ω^)「ちょ、ちょっと待つお!! 僕の能力ってなんなんだお!!」 ( ・∀・)「それは俺にもわからない。能力はそれぞれ違うからな。開花するまでは誰にもわからない。あと異能者は通常 の人間より身体能力が高くなるから開花する前でもそれなりに戦える。」  結構無責任なものなんだなぁ、異能っていうのは。と、もう順応している自分が恐ろしい。 ( ^ω^)「異能者は他に何人いるんだお?」 ( ・∀・)「ルール上お前を含めて5人だ。手を組んでもかまわないぞ。そんな奴がいるかどうかは知らないが。ちなみに お前は5人目だからな。」 ( ^ω^)「あ、あと!」 ( ・∀・)「まだなにかあるのか?」 ( ^ω^)「……ホワイトボードは結局なんのために出したんだお?」 ( ・∀・)「あ」  それから30分かかって家に帰った僕はもうすでにへろへろだった。晩御飯に目もくれずさっさと着替え、自分の部屋の ベッドに寝転がった。部屋は電気をつけないままにしていたので真っ暗でしんとしている。  したから聞こえる母さんの「ご飯いらないのー?」という声も無視して一人黙々と思考をめぐらせる。僕にこれから戦い をうまくやっていくことが出来るだろうか。別段かなえたい願いがあるわけでもないし、他の相手がどんな奴なのかもよく わからない。 あの後色々と詳しくモララーから聞き出したルールを簡単にまとめると ・異能者は5人。総て学生。それぞれ違った能力を持つ。自分で見つけ出すしかない。 ・戦闘フィールドは学校内のみ。逆に学校ならどこでもいい。 ・特に期日はない。一人になるまで戦い続ける。 ・戦闘による異能に関する情報の漏洩はモララーがなんとかするから気にしなくていい。 ・ジャッジはモララーなので、モララーがOKなら反則気味の行為を相手に取られる可能性もある。  こんなところだろうか。  誰かに相談するわけにもいかないしなぁ。僕はそんなことを考えながらだんだんと眠りに落ちていった。 1話END