('、`*川「それで・・・・宝物庫の剣の話でしたね」  一通り再会の喜びを分かち合った後、話題は先ほどブーンが申し出た輝きの剣 らしき剣の話になった。  ブーンとツンは首肯し、女王を見据えている。 ('、`*川「娘の恩人の願いですし、かなえて差し上げたいのですが・・・」 ξ゚听)ξ「何か問題でもあるのでしょうか?」  ペニサスは難しそうに眉をひそめる。 ('、`*川「アレは一応国の財産ですから・・・国の者たちが納めてくれた税を貯め ているわけですからね。はい、どうぞとは差し上げるわけにはいかないのです」 ξ゚听)ξ「ああ・・・そうですよね」  少し考えればわかることだった。ツンは自分の考えなしの発言を恥じた。  一同はみんな考え込んでしまっていた。たった一人ブーンを除いては。 ( ^ω^)「女王陛下。それでは私がこの国のために働きましょう。その功績と して剣をいただくというのはどうでしょう。幸い私には多少ながら剣の心得があ ります」  どこが多少だ、とツンは内心毒づいていた。かの英雄ナイトホライゾンだ。多 少どころかかなう者などほとんどいないだろう。 ('、`*川「・・・そうですね。それなら良いと思います。・・・しかし、あなたはなぜ あの剣のことをご存知なのですか? そして何故それを必要としているのでしょ うか?」  これは答えにくい質問だ。なるべくならブーンはこの時代で素性を隠したほう がいいのは当然のことだ。  偽者だと迫害される可能性が高いし、仮に信じてもらえたとしてもそれはそれ で何かしら後世に悪影響を与えてしまう可能性が高い。  ツンはどうするのかと言った目でブーンのほうをちらりと見る。 ( ^ω^)「・・・それは、言えません」  ブーンは苦渋に満ちた表情でそう告げた。 ('、`*川「そうですか・・・。実はあの剣なのですが。はるか昔、初代の王の頃か らこの国にあるのです。そして必ず必要とするものが現れるはずだからと、宝物 庫に保管されているのです。・・・多分それがあなたのことなのでしょう」  そういうとペニサスはニコリと微笑み、剣をあなたにお譲りしましょうと言い 放つ。 ( ^ω^)「ありがとうございます・・・・!!」  ブーンは深く、深く頭を垂れた。 ('、`*川「では・・・あなたにはある厄介ごとを解決していただきたいのです」  先ほど申し出た"国のために働く"という条件の話だ。その厄介ごととは、つま りは悪党退治であった。  最近、国内最北の村付近で不審な輩が時々発見されるらしい。そいつらは武装 をしているため、恐らくは隣国からやってきた賊ではないかと噂されているそう だ。  その近辺では収穫物が荒らされていたり、空き巣に入られ金品を奪われたりし ているらしい。  今はまだないが、今後強盗や略奪行為がないとも限らない。だから国としては なんとかしたいところなのだ。  隣国2国から微妙な立ち位置にあるこの国としては大々的に兵を動かすと不審 がられてしまうため、兵を派遣することも難しいのだという。  しかも賊たちは中々の実力者らしく、少数の兵では抑えるのが精一杯のようだ。 ( ^ω^)「その少数の兵士たちとともに賊を討伐して欲しいということですね」 ('、`*川「ええ、そういうことになります・・・。よろしいでしょうか?」 ( ^ω^)「もちろんですとも! 是非、そのお役目私にお任せください!」  こうしてブーンはこのVIP王国のために戦うことになったのである。  「向こうの兵にはこちらから連絡しておく」との事なので、今日のところは下 準備のために城を去ることになったのである。ネコみたいな目をした門番がまた 来いと声をかけてきたのがブーンには印象的であった。  そしてツンと二人で並んで歩く帰り道。夕焼けに伸びる影を後ろに置きながら 二人はてくてくと歩いていた。 ξ゚听)ξ「ねぇ・・・」 ( ^ω^)「んー?」  ツンは前を向いたまま並んで歩く英雄に声をかけた。 ξ゚听)ξ「いつ行くの?」 ( ^ω^)「んー・・・わかんないお。でも早いほうがいいお」 ξ゚听)ξ「そう・・・」  そして黙り込む。何かを言おうとして迷っているように見えた。 ξ゚听)ξ「ね、ねぇ・・・」 ( ^ω^)「なんだお?」  ツンは少し思案した後、告げた。 ξ゚听)ξ「私もついて行っちゃダメ、かな?」 ( ^ω^)「ダメだお」  即座にキッパリと。否定の言葉を返したブーン。 ξ;゚听)ξ「ど、どうして?」 ( ^ω^)「だって危ないお。ツンには立派な魔法使いになるって夢があるでし ょお? 僕についてきたらきっと命の危険がいっぱい待ってるお」  ツンはブーンが自分を心配して言ってくれているというのが痛いほどわかった。 まだ知り合ってから数日しか経っていないが、それでもブーンはツンのことを大 切に思ってくれている。  だが。それはツンも同じだった。ブーンのことをとても大切に思っているのだ。 英雄としてではなく。ただ単純に一人の人としてだ。  自分でもこんな感情を経った数日で抱くのはおかしいと思っていた。  自分以外の誰かのために戦って英雄になった人。それが実はこんなにも人間臭い 人なんだと知った。  普通の人と同じように笑ったり怒ったり焦ったり悩んだり。とても身近に感じら れた。  そして、とても優しくて。いや、優しすぎると思った。  だから自分がつらかったりしても、きっと普段はそれを見せたりなんかしなかっ たのだろう。あの夜のことはきっと特別だったのだ。  だからこの人は、誰かが支えてあげなくちゃいけないんだと思った。そしてその 誰かはすぐに私に変わっていった。 ξ゚听)ξ「お願い! 絶対邪魔にならないようにするから!」 (;^ω^)「ダメなものはダメだお・・・こればっかりは譲れないお」  それから、ツンは何度も何度も頼み込んだがブーンは頑として譲らなかった。ブ ーンはそれから一週間、武具の手入れや生活道具の収集、食材の調達や保存用の加 工などで忙しく動き回っていた。  ツンはそんなブーンに声をかけることなく、地下の実験室にほとんど引きこもっ ていた。  そして出発の日。 ( ^ω^)「馬車、ありがたくお借りいたしますお」 ('、`*川「そのぐらいしか出来なくてごめんなさいね」  城の門前、小型の馬車の運転席に座ったブーンはペニサスや渡辺、門番たちに見 送られていた。  しかしそこにツンの姿はなかった。それがブーンにはほんの少しだけ、残念であ った。 从'ー'从「お気をつけて、行って来てくださいね〜」 ( ^ω^)「必ずや、賊どもを討ち取ってきて見せますお」  ブーンは一通り挨拶を終えると前を見据え、手綱を引く。 ( ^ω^)「では、行ってまいります!」  力強く馬がいななき、蹄を鳴らして歩き始める。  ブーンは遠ざかっていく城を後ろにながめ、彼らの姿が視界から消えるまで手を 振っていた。  馬車は街中を抜けるとそのまま街道へと繰り出していく。昇る日差しがまるで旅 路を祝福するかのように淡く輝き、ブーンを照らしていた。  ここから国境までは3日はかかる。 ( ^ω^)「がんばるおー!」  一方その頃ツンはというと、地下の実験室で何か怪しげなものを作り出してい た。 ξ゚听)ξ「よーし、出来たわ! 完成ね!」  自分の手で作り出した魔道具(魔力のこもったアイテムのこと)を見てほくそ えんでいた。 ξ゚ー゚)ξ「これは私が作った中でも最高傑作になりそうね・・・」  それをつかみ、外へと駆け出す。その足取りは軽く、まるで羽が生えたかのよ うで、ツンの今の心情を表していた。  そしてそのままリビングへと駆け込んでいく。 ξ゚听)ξ「さぁ、ブーン! これがあれば私はお荷物にならないわよ!」 ξ゚听)ξ「ってアレ?」  部屋の中はもぬけの殻。昨日までまとめていた荷物もすっかりなくなっていた。  そう、ツンは出発の日が今日だという事をすっかり失念していたのである。 ξ川 )ξ「ガーン・・・やってしまった」  そのまま床に崩れ落ちる。ああもう私のバカバカバカバカ! 彼女の脳内では ずっと其の言葉が反響し続けていた。 ξ゚听)ξ「・・・しかしいつまでも落ち込んでられないわ! 今からでも追いかけ なきゃ!」  落ち込んだ状態からすばやく立ち直ったツンはすっくと立ち上がるとそのまま 家を飛び出していた。  向かう先はただ一つ、城門前である。あそこにいけばブーンがいつごろ出発し たのかわかるだろうし、うまくいけば馬を貸してもらえるかもしれない。  ツンは移動速度上昇呪文を駆使して街中を駆け抜けた。途中で人にぶつかりそ うになりながらもなんとか城門前にたどり着いた。 (=゚ω゚)ノ「ぃょぅ、お嬢ちゃんじゃないかょぅ。どうしたんだょぅ?」  門番は出発の見送りに現れなかったツンが今頃やってきたことに少し驚きつつ も、気さくに声をかけてきた。  隣に立っている無口な門番はチラリとツンに目をやると興味をなくしたかのよ うに視線を戻してしまった。 ξ゚听)ξ「あ、あの! ブーンはもういってしまいましたよね!?」 (=゚ω゚)ノ「ぁぁ。今から4時間は前だったょぅ」  ツンはやはりそうか、と渋い表情をしている。 ( ФωФ)「追いかけるのかに?」  突然、あの無口な門番はツンに声をかけてきた。驚いたツンは門番を見るが、 先ほどまでと変わらない佇まいでそこにたっている。 ξ゚听)ξ「え、あ、はい! 追いかけます! でも、どうしたらいいか・・・」 ( ФωФ)「なら我輩に任せて欲しいに。こう見えても馬車の扱いは得意に」  ツンは二度目の驚きを経験した。眼前の人物の意外な能力に、ではなく意外 な協力者が現れたことに。  ツンは二、三度目を瞬かせた後、是非お願いしますと頭を下げていた。 (=゚ω゚)ノ「ぉぃぉぃ、仕事はどうするんだょぅ!」 ( ФωФ)「誰かに交代してもらうに。有休余ってるから大丈夫に」  驚く相方に淡々とした表情で答える其の姿はなんだかコントのようでツンに は少し笑える光景だった。 (=゚ω゚)ノ「ふぅ、しょうがない。俺もついていくょぅ! お前だけじゃ心配だ ょぅ!」  こうして頼もしい(?)二人の門番のおかげでブーンを追いかけられること になったツン。  果たして彼女はブーンに追いつくことが出来るのだろうか。 続く