( ^ω^)ブーンは英雄だったようです (メ^ω^)「魔王、覚悟するお!」 (メ'e';)「くっ……。」  まがまがしい力が流れる黒き巨城の最上階の一室、魔王の玉座の間にて繰り広げられる死闘。  その場で動いているのは勇者ブーンと魔王セントジョーンズ、ただ二人きりである。  二人ともボロボロの体で、肩で息をしていた。  周りには瀕死の重症を負ったブーンの仲間たちが苦しそうに倒れていた。 (メ^ω^)「行くお!! 輝きの剣よ! 今こそ悪を滅する力を!!」  ブーンが叫ぶと、その手に持った白銀の剣はまばゆいばかりの光を放ち、聖なる力をその身 に宿した。  ブーンはそれを振りかぶり、セントジョーンズへと駆ける。セントジョーンズはすでに満身創痍、 動くことすらかなわなかった。 (メ^ω^)「やああぁぁぁぁぁあぁあぁぁあぁっ!!!」  輝きの剣はその刀身で魔王の肉体をやすやすと引き裂いた。 (メ'e/ /';)「うわぁあぁぁぁぁぁ!!」  魔王最後の断末魔が城中に響き渡った。  今、戦いは終わったのだ。  世界は魔物の支配から解き放たれ、繁栄の一途をたどった。  恐怖から解き放たれた人々は、勇者ブーンを英雄とたたえ、神のようにあがめていた。  しかし、長い長い時の中で平和は少しずつ衰えていった。  ブーンの死後数十年後、人々は今度は人間同士で争い始めたのである。  世界の二大大国、ラウンジ帝国とニュー速連邦国は互いの領地や産業、人材を狙い十年に渡る 永きに渡り戦争を繰り広げていた。  そんな二国の戦争に干渉せず、中立を保っている、VIP王国の中央都市FOX。そこに住まう一人 の少女がこの物語の主人公である。 ――ドカァアアアァァン!!――  中央都市FOXの外れにある一軒の小さな家から激しい爆音が響く。  可愛らしい赤色の窓からはモクモクと煙が噴出し、さながら火事の起こった家のようだった。 (*‘ω‘ *)「ああ、またあの家の魔術師見習いの子、失敗したみたいだっぽ」 (;><)「いつもいつも失敗ばかりしていて、落ちこぼれです!」  近隣の住民たちは毎度のことと平然とした表情でその小さな家を見つめていた。 ξ;`凵L)ξ=3「ゲホッ!! ゴホッゴホッ!!」  玄関が勢い良く開かれると、そこから一人の少女が飛び出してきた。  顔中すすまみれだが、その状態でも可憐な顔つきをしていることが良くわかる。 ξ--)ξ「あー、また失敗しちゃった……。」  彼女の名前はツン・デーレ。さきほど、住民たちが話していたように、魔術師見習いの少女 である。しかし彼女には師匠と呼べる存在がおらず、独学で魔術を勉強しているという変わり 者だった。  またその美しい容姿とは裏腹に……。 (*‘ω‘ *)「また失敗したのかっぽ。いい加減あきらめるっぽ。」 ξ#゚听)ξ「何度言えばわかるの!? 私は絶対立派な魔術師になるの!! とめたって無駄 なんだからね!!」  かなりきつい性格なのである。  プンプンやプンスカと言った擬音がしっくり来そうな形相で怒っているツンはそのまま自宅 へと引き返していった。 (;><)「わからずやさんなんです……。」 (*‘ω‘ *)「しょうがないっぽねぇ……。」  それから時間は流れて翌日のことである。  ツンは自宅のリビングで紅茶を啜りながら優雅なお昼を過ごしていた。  可愛らしい調度品で彩られた部屋は、とってもファンシーでツンのイメージとは似つかわし くn―― ξ#゚听)ξ「だまれ小僧!!」  失礼いたしました。 ξ゚听)ξ「よぉし、今日は召喚術を勉強しよーっと!!」  唐突に思い立った彼女は、ガタンと音を立てて、今まで座っていたロッキングチェア勢い良 く立ち上がった。  ”思い立ったが吉日”が信条の彼女は早速行動に移す。  リビングのドアをけたたましく開き、早足で廊下を奥へと進んでいく。  突き当たりの壁の前で立ち止まり、瞳を閉じてなにやらつぶやきながら床に何度か指先を押 しつけると、床が音もなくぐにゃりとゆがみ、かと思うと穴が開きそこには階段が出現してい た。  ツンはそのまま硬そうな石で出来た階段を下っていく。  階段はらせん状に下に向かっており、階段と同じく石で出来た壁には勝手に火がつく松明 (魔術師御用達のジョルジュ通販で買ったもの)がいくつも並んでいた。  ツンが一番下まで降りるとそこには広々とした空間が広がっていた。  上下左右どこを見ても真っ白な壁面や床、天井があった。壁には棚がいくつも並んでおり、 中には分厚い本が大量に詰まっていたり、得体の知れない物体がおさまったビンがいくつも並 んでいた。  ツンはさらにおくのクローゼットを開くと中からこげ茶色のフード付マントを取り出すの手 早く身に着けた。  続いて本棚から「初心者でも出来る! 召喚魔法陣あれこれ」を取り出し、さらにその隣の 机から自動筆記羽根ペン(大)を取り出すと満面の笑みを浮かべた。 ξ゚ー゚)ξ「さぁ、早速やるわよ!」  自動筆記ペンを床に寝かせると、手に持った本を開き、簡単な召喚魔法陣の書き方の乗って いるページを開く。  そしてそこを3分ほど熟読すると、本をパタンと閉じて地面に放り投げた。しかしその本は スイッと浮かび上がると自動的に先ほどおさまっていた場所へと帰っていった。 ξ゚听)ξ「えっと、自動筆記ペンの起動呪文は……。」  またも怪しい呪文をボソボソと呟く。すると羽根ペンはひょこりと起き上がり、まるで自分 の意思を持つかのようにヒラヒラと舞い踊り始めた。  そしてツンが指をタクトのように振るうと、それにあわせて床になにやら魔法陣を書き始め た。  羽根ペンはスラスラと動き回り、あっという間に魔法陣を書き上げた。  描かれたラインは白く輝き、暖かな光を放っていた。 ξ゚听)ξ「よし、次は……。」  ツンはふところからナイフを取り出すと自らの人差し指にぷすりと突き刺した。  当然傷口からは赤い鮮血が流れ出す。指をつつーっと伝った血は、重力に従い手から離れ、 ピチャリと魔法陣の上に落下した。  魔法陣は血をすするかのようにあっという間に取り込んでしまった。血を取り込んだ魔法陣 は赤く輝き始め、その光を強くしていった。 ξ--)ξ「魔術師ツン・デーレが血の盟約の元に願う。異界の民よ、我が眼前へとその御身を 表したまえ!」  ツンが叫ぶと魔法陣はさらに輝きを増し、まるで生き物の血管のようにドクンドクンと脈を うちはじめた。  やがて目を開けていられないほどのまばゆさになり、部屋は赤一色に包まれていった。 ξ-听)ξ「う、うまくいったかしら?」  輝きがおさまったころ、ゆっくりと瞳を開くツン。  だが―― ξ#゚听)ξ「なによー! 何にも召喚出来てないじゃなーい!」  魔法陣は輝きを失いただの幾何学模様に成り下がっていた。  当然魔法陣の上には毛虫一匹も存在しておらず、その様が失敗を物語っていた。 ξ゚听)ξ「うーん。召喚の代償が血液だけじゃ不十分だったのかな……それとも召喚対象を明 確に設定していないのがいけなかったのかも……。」  ツンは一人失敗の原因をあれこれと思索してみたが、やがてそれにも飽きたのか、マントを脱 ぎ、その辺に放り捨てた。 ξ゚听)ξ「あーもーやめやめ! お腹空いたしご飯にしよーっと。」  ツンはさっさと部屋を出て行ってしまった。  静まり返った部屋の中、マントがひとりでにもといたクローゼットに戻ったころ。  部屋の中央に陣取って消されないまま残っていた魔法陣が今度は青く発光し始めていた。  その光が部屋を満たしたのち、部屋には一人の男が悠然と立っていた。 ???「……。」 続く