涼やかな風が吹き抜ける田園風景。射す日差しは赤々としており、一面を紅に染めていく。
夏の夕暮れ、あぜ道を歩く二人の人影。ひぐらしの鳴き声に後押しされるようにゆっくりと歩を
進めていく。
ここは雛兄沢。これといった特徴もない、静かな村だ。普段は濃緑の自然が目に眩しいくらい
だが、今は赤や橙に視界が染まっている。
道を行く二人は若い男女。男のほうは手をポケットに突っ込み、やる気がなさそうにトボトボと
歩いている。一方女のほうはと言うと、楽しそうに男の数歩前をスキップ気味に歩いている。
从 ゚∀从「おい、早く帰ってなんかしようぜ!」
('A`)「えー、だりぃ・・・」
男は名をドクオ、女は名をハインリッヒと言う。
二人は同じ日、同じ時間、同じ病院で、別々の親から生まれた。その縁もあってか、家族ぐる
みの付き合いが幼いころからあった。いわゆる幼馴染と言う奴だ。
今は、この村唯一の小中合同の学び舎から自宅へと帰宅中。二人の家は隣同士――と言っ
ても田舎なので10m以上離れているのだが――のため、一緒に帰っているというわけである。
从 ゚∀从「今日の晩飯の準備はドクオの当番だからな。キシシシッ! ちゃんとつくれよ?」
('A`)「お前よりはましな料理がつくれr」
从#^∀从「あんだって?」
(;'A`)「ナンデモナイデス」
二人の両親は電車で10駅以上離れた街まで働きに出ているため、家に帰ってくるのはいつも
深夜である。そのため両親たちの提案でお互いの親が帰ってくるまでどちらかの家で夕食や風呂
などをすごしているのである。
しかし、ドクオもいくら小さい時から一緒とはいえ、相手は同い年のうら若き乙女(?)である。時
々劣情を催し、それを抑えるのに苦労することがある。ハインは大雑把な性格なため、風呂上りに
パンツ一丁なんてことはざらである。しかも
从 ゚∀从「ほれほれー、みてみろー」
などと言い出したりするものだから、ドクオとしてはたまったものではない。
まあそれは今はまったく関係ないのだが。
从 ゚∀从「なぁ、ドクオ。お前なんか俺に隠し事してねぇか?」
唐突に足を止めたハインが尋ねてくる。表情は硬く、目はギョロリとドクオをにらみつけている。
ドクオは瞬時に脳みそを働かせ、思い当たる節を探してみた。
たとえば幼少期にハインがかわいがっていたカマキリを逃がしてしまったこと。
たとえば小学生のころにハインよりテストの点数が良かったことを隠していたこと(ハインはドクオに負けるとなぜか怒る)。
たとえば最近ハインの部屋にこっそり入ってベッドにダイブして匂いをかぎまわったこと。
思い当たる節がありすぎる。
この間の思考時間おおよそ0.5秒。そのすばやい回転を勉強にもっと役立てられればいいのにな、
とドクオは常々思っている。
(;'A`)「し、してねぇよ」
とりあえず隠し事はやましいので隠す必要があると判断した彼は、嘘をついた。
ハインは前述のとおり大雑把な性格なので大抵嘘はバレない。ドクオは今までハインにかなりたくさ
んの嘘をついている。それこそ幼少期のころからだ。
しかしハインは殆どドクオの嘘を見破ることはなかった。
(;'A`)「大体なんで俺がお前に隠し事なんかしなきゃいけないんだ? 俺とお前の仲だろ?」
信頼関係。それに訴え出ればなんとかなるのもいつもの常套手段だった。
从 -∀从「そうか・・・」
(:'∀`)「そうだよ」
今回もいける。ドクオはそう確信していた。
――しかし・・・
:... : :
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突如、烈火のごとく怒り出すハイン。
ドクオはその鬼のような形相に驚いてつい尻餅をついてしまった。ドクオはハインに今まで嘘を見抜
かれたことがない。しかし今、初めてバレてしまった。
さらにハインは結構見た目が怖い。金髪で目つきもキツいため、田舎によくいるDQNにもよく絡まれ
ている。そしてそいつらを軽くのしてしまうほどの実力もある。
その怒りがすべて自分に向けられている、その驚きでドクオは腰が抜けてしまったのだ。
从#゚∀从「正直に言えば今ならまだ許すぞ・・・もう一度聞く。隠し事してんじゃねぇか?」
ハインがじりじりとドクオににじり寄ってくる。
(;'A`)「いや、本当に知らない・・・ヒィッ!?」
とっさに口をついた嘘を聴いた瞬間にハインがドクオの胸倉につかみかかった。
从#゚∀从「おめー! 昨日俺が晩飯の後で食おうと思ってたプリン食っただろーが!」
(;'A`)「げぇ!? あれお前のだったのか!? てっきりお袋が買ったのかと・・・」
ていうかそれ隠し事じゃなくて、勘違いジャン! とドクオは内心思っていた。
さっきムダに色々心配してしまって損した気分だったが、今はそれどころではない。ハインの怒りはま
だまだ収まっていないのだから。
从#゚∀从「どっちにしろ俺のプリンを勝手に食ったこと、極刑に値するぜ!! 死んで詫びろやー!!」
振りかざされるナタ。ドクオはそれを食らう前に「お前それどこから持ってきたんだよ!!」と心の中で
吼えた。
(゚A゚)「ギャー!!」
その後、ドクオは超高級プリン30個を買わされるハメになった。
雛兄沢は今日も平和である。