1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/05(木) 21:45:14.97 ID:F6kcurTT0
(穴)「さあ、直線に入って!ディープインパクト!ディープインパクトは持ったまま!」

一頭の小柄な馬が先頭にたち、他の七頭を突き放そうと懸命に走る。
しかし、その後ろにいた馬がものすごい勢いで迫ってくる。

(穴)「残り百!残り百!外からレイルリンク!ディープインパクトに並びかける!」

もう一度かわそうとするが、相手の勢いには敵わなかった。
小柄な馬に託した大きな夢が儚く散った瞬間だった。



まだ月が見える午前三時、茨城にある美浦トレーニングセンターではもう一日が始まっている。

( ^ω^)「F先生!おはようございますだお!」

(F先生)「おはよう。今日も寒いな」

( ^ω^)「さすが10月って感じだお」

(F先生)「そうだな。さて、そろそろ稽古始めるか」


2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/05(木) 21:46:36.00 ID:F6kcurTT0
(穴)「ディープインパクトは三着!!」

瞬きせず、かじりつくようにテレビを見ていた少年は肩を落とした。

( ^ω^)「・・・ディープは頑張ったお。日本の馬だって凱旋門でもひけをとらないお。いつか・・・」



(F先生)「内藤、馬に持ってかれているぞ!また学校からやり直すか!」

コースを三頭並んで回る予定の稽古だったが、一頭大きく突き放して走っていた。

( ^ω^)「すみませんだお!」

手綱を引くブーン。しかし馬は首を上げ、嫌がっていた。

(F先生)「・・・オーストラリアに修行にでもいかせようかな」




3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/05(木) 21:48:18.53 ID:F6kcurTT0
太陽がやっと仕事をし始めた午前九時、彼らホースマンは一仕事を終える。

(F先生)「勝ち鞍も少ない、調教もできない。オーストラリアに修行に行くか?」

( ^ω^)「ちょっwwwwwwwそれだけは勘弁だお」

(F先生)「あの馬は来週の新馬戦に出そうと思っている。騎手もお前で。
      でもあれじゃ高いお金出してくださっている馬主のIさんが許可をくれるか・・・」

( ^ω^)「ぬお!一億円の馬に乗れるチャンスのがしたくないお!どうすればいいんですお?」

(F先生)「いや、今回は特に何もしなくていい。許可はいただいている。でも、勝てなかったら乗り代わりだろうな・・・」

( ^ω^)「ぬお!頑張るお!ピザノブーンなら本当に何もしなくても勝てるお!」

(F先生)(・・・ピザノの高い馬だから怖いんだよな)
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/05(木) 21:48:52.86 ID:F6kcurTT0
金曜。
騎手は競馬場にある、外部から隔離された調整ルームに居なくてはならない。
しかし、隔離されているといっても窮屈な場所ではなく、人によってはここほど快適なところはないと言うくらい
リラックスできる場所である。

('A`)「内藤。お前明日、例の一億円の馬に乗るんだって?」

( ^ω^)「そうだお!ダービーだって夢じゃないお」

('A`)「俺なんて、明日は乗り鞍0だぜ」

( ^ω^)「でも、ドクオはGT勝ってるお。最近干され気味だけど」

('A`)「まあな、おたくのF先生も乗せてくれなくなったしな」

(´・ω・` )「そろそろ消灯なんだよね。明日も頑張ろう」

「へへ、あしたのメイン見てろよ」
「いうね〜。そんないいのあいつ?」

「ああ、眠!」

( ^ω^)「明日は伝説の始まりだお」

('A`)「まあ、頑張りな」

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/05(木) 21:49:28.48 ID:F6kcurTT0
(穴)「天候に恵まれた東京競馬場。第4レースサラ2歳、新馬戦が始まります。
    圧倒的一番人気はF厩舎、ピザノブーン。さあ、各馬ゲートに収まって!
    スタートしました!」
馬が綺麗に横並びにゲートに出たかと思いきや、一頭ポツンと離れてスタートしていた。

( ^ω^)「ぬお!出遅れたお!!!」

(F先生)「ああ、オワタ」

懸命に馬を追うブーン。馬郡の後方に取り付けたときはすでに2コーナーをでて、
向こう正面に入る頃だった。
そして、やっと馬郡後方にいた馬と並んだ。


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/05(木) 21:50:36.99 ID:F6kcurTT0
(´・ω・`)「派手に出遅れたね」

( ^ω^)「まずいお!このままじゃ乗り代わり濃厚だお」

(´・ω・`)「先頭はもう3コーナーに入る。僕らもそろそろ上がるべきだね」

( ^ω^)「よし!いくお!」

鞭を馬の顔の横で振るブーン。
馬がその行動の意味を理解し、ペースを上げる。
一頭、また一頭。ピザノブーンは次々と他の馬をかわしていく。
決して他の馬が遅いわけではなかった。
その証拠に一緒に上がっていこうとした(´・ω・` )の馬はピザノブーンについていけなかった。

( ^ω^)「ぬお!これは名馬の予感」


8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/05(木) 21:52:00.26 ID:F6kcurTT0
4コーナー手前、ついにピザノブーンは先頭に並びかけた。

(穴)「外からまくってピザノブーン!圧倒的一番人気の馬がやってきた!」

( ^ω^)「いけるお。手ごたえは抜群だお」

ブーンはもう一度馬に鞭を見せた。
ピザノブーンはさらにスピードを上げる。
トップスピードに達したとき、他の馬の蹄音のかわりに、歓声が聞こえた。
そして、影すら踏ませず、一着でゴールした。


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/05(木) 21:54:51.53 ID:F6kcurTT0
(F先生)「良くやった。あれで勝てると思わなかった。おつかれさん」

Fは愛馬を向かえ、鼻面を撫でながら言った。

( ^ω^)「ハアハア、ありがとうですお。ハア、この馬すごいお!」

興奮が冷めぬブーン。それとは逆に冷静なF。

(F先生)「いや、君には言ってないよ。本当に何もしなかったね」

僅かに微笑むF。
嫌味が絶好調だということは少し機嫌がいい証拠である。

( ^ω^)(こいつなら。もしかして・・・)

(F先生)「さっさとウィナーズサークルに行ってきなさい」

ブーンの頭をたたくF。
予想以上に強かった愛馬と、なんとか勝てた愛弟子。
両方に満足していた。


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/05(木) 21:55:42.35 ID:F6kcurTT0
ピザノブーン!圧勝!次走はいちょうステークスか!?

人気に答えたピザノブーン!暮れの朝日杯にまた楽しみな一頭が!

( ^ω^)「ぬお!ピザノブーンをべた褒めしている新聞ばかりなのに、
       ブーンは特に書かれていないお!。こっちには書かれていても
       弱点は騎手だけか!?だっておwwwwwwww。!!痛いお!!」

新聞を広げ騒ぐブーンにFはチョップをした。

(F先生)「当たり前だ。ただ馬の上で踊っていただけじゃないか」

( ^ω^)「先生まで酷いお」

(F先生)「次はあんなんじゃ勝てないぞ」

( ^ω^)「・・・出遅れないように注意するお」

(F先生)「次は東スポ杯をつかう」

( ^ω^)「なっ!いきなり重賞かお!」

(F先生)「特に目立って強い馬はいない。
     二歳のときからたくさんレースに出さない主義なのはわかっているだろう?」

( ^ω^)(重賞・・・騎手になって五年。やっと凱旋門賞への第一歩が踏み出せそうだお)

( ^ω^)「次も負けないお!」

(F)「うむ」
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