- 5 :
◆VR2ifOI46E :2009/11/07(土)
17:41:19.34 ID:KDmpE48bO
- 「8:カトゥリゲス鉱山」
ぼくのおじいさんの、そのまたおじいさんの、
そのまたおじいさんが、まだ子供だった頃。
この大陸はリルティの民が支配していた。
リルティ達は鉄の武器を使い、
その力によって、すべてのものを従えていった。
だけど、無限に思えたその力も、
鉱山から鉄がとれなくなるとともに、徐々に衰えていった。
鉄が消え、そして、リルティの野望までが消えてしまい、
残されたこの鉱山は、魔物たちの絶好の棲みかとなった。
――Cathuriges Mine――
- 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 17:45:05.71 ID:KDmpE48bO
- ……………
昔はきっちりと整備されていたであろう、そこそこ大きな街道の先に、すっかり腐って所々が壊れた木製の大きな門がある。
その門の先にはぽっかりと大きなトンネルが開いていて、そこがカトゥリゲス鉱山の入り口である。
かつて、リルティ達が栄華を極めた頃の名残はほぼ無いといっていいほどに荒れ果てていて、
昔、モナーさんがこういうのを「諸行無常」と言うのだと教えてくれたことを思い出した。
しかし、僕は思う。
永久に変わらない物だってあるし、それはきっと、意外に身近な所にあるものだろう、って。
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 17:48:09.22 ID:KDmpE48bO
- ……………
( ・∀・)「暗いなぁ…」
(>д ・)「いて、なんかぶつけたぞー」
坑道の中は、入り口から少し進んだだけで自分の足下さえ見えなくなってしまうほど真っ暗だった。
さらに、いやに埃っぽく、瘴気と関係なく空気が汚れているのを感じる。
このような環境で働いていた人はどんな気持ちだったのだろう?
ふとそんな事を思った。
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 17:50:45.71 ID:KDmpE48bO
- ( ・∀・)「…うーん」
さらに進むと、とうとう入り口からの光さえ届かなくなり、辺りは完全な暗闇になってしまった。
特に松明などを用意していないし、魔石も拾っていないので、人工的に明かりを作るのは不可能である。
クリスタルの放つ僅かな光だけが、ギリギリで辺りを照らしているのみだ。
このまま下手に進んで魔物に襲われました、ではシャレにならない。
一旦引き返そうかな。
(・∀ ・)「モラ…魔物の臭いがするぞー」
(;・∀・)「え、この状況でそれはマズくないか?」
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 17:54:27.88 ID:KDmpE48bO
- (・∀ ・)「だいじょーぶだ、暗いとこがダメなのはオークも一緒だぞー」
マタンキが言うには、オーク達は襲いにくるなら灯りを持って、待ち伏せるなら少し明るい所で、という動きをするそうだ。
つまり突然の光に注意しつつ進んでいけば、大抵は何とかなるらしい。
魔石を持っていないのに少々不安は残るが、ここはあえて進んでみることにした。
( ・∀・)「いくぞっ」
(・∀ ・)「おー」
盾を構え、周りの気配に注意をしつつ歩みを進める。
以前みたいに景色を楽しむ余裕はないなぁ、と、少しガッカリしつつ、
いやいやそんな悠長なことを考えている暇はないぞと首を振って、今は目下の問題を解決することに集中することにした。
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 17:57:57.54 ID:KDmpE48bO
- ……………
( ・∀・)「…ん?」
しばらく歩いていくと、前方に微かにオレンジ色の光が見えた。
近くにオークの群れが居る、ということだろう。
( ・∀・)oO(待ち伏せされてる…かな?)
剣を構え、いつでも戦闘が行えるように気を引き締める。
足音を立てないよう慎重に進み、
そして少し急なカーブにさしかかった所で、近くに何かが動く気配を感じた。
( ・∀・)oO(来るかっ!)
突然、目の前に影が躍り出た。素早くバックステップで攻撃を避け、剣を影の体に突き立てた。
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 18:01:07.89 ID:KDmpE48bO
- 「ギァァァ!」
影は紫色のもやになって消えた。予想的中、魔物の群れがこの先に居る。
あいにく魔石は拾えなかったが、ともかく明るい所に出るとしよう。
一気に走って角を曲がると、明るく開けた場所に出た。
天井から籠のついた紐がぶら下がっていて、その籠の中にボムという火の玉のような姿の魔物が入れられている。
おそらく、こいつが明かりの役目をしているのだろう。
その下にはオークが三匹立っていて、それぞれの得物を持ってこちらを睨み付けている。
餓鬼のような肉体に、醜悪な豚のような顔。いかにも魔物らしい見た目をしているな。
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 18:03:34.98 ID:KDmpE48bO
- …まぁ、別にどうでもいいことかな。
さぁ、戦闘開始だ。
( ・∀・)「いくぞ…っ!」
剣と盾を構えて、相手の出方を待つ。
両サイドのオークが僕を挟むように駆けてきて、真ん中のオークは真っ直ぐに僕に向かってきた。
リバーベル街道の時と同じだ。魔石が無いから、より注意深く立ち回る必要はあるかな。
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 18:06:38.73 ID:KDmpE48bO
- ( ・∀・)oO(ターゲットを絞ろう)
ここはあえて真ん中から狙ってみるか。
真ん中の奴の向こう側に細めの通路がある。あそこに誘い込めれば落ち着いて一対一に持ち込めそうだ。
サイドの二匹に注意を払いつつ、必殺技のチャージをする。ベルベット君の剣で、一気に突破口を作りにかかるという寸法だ。
サイドの二匹がそれぞれに斧を振り上げたタイミングで、一気に足のバネを解放する。
(♯・∀・)「『払い抜け』っ!」
真ん中のオークに一気に距離を詰める。一瞬、敵の怯えたような表情が見えた気がした。
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 18:10:51.73 ID:KDmpE48bO
- オーク達の振りかぶった斧は空を裂くのみに終わり、サイドの二匹は突然消えた僕の姿を探してキョロキョロと辺りを見渡している。
僕は、スッと真っ直ぐに体勢を戻し、無言で剣を鞘にカチリとしまう。
真ん中の、真っ二つになったオークはもやになって消えた。
仲間の亡骸と僕を見つけた二匹のオークは激昂し、連携など微塵も感じさせない無防備さでこちらに向かって来る。
冷静さを欠いた者に勝利は無い。それは相手が魔物でも言える話だ。
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 18:16:55.84 ID:KDmpE48bO
- 重なるように倒れ込んだオーク達に急いで近づき、剣を逆手に持ちかえて思い切り突き立てる。
鈍い感覚と共に剣は二匹の身体を貫通し、彼らもゆっくりと消滅した。
僕は、ふぅ、と大きく一つため息をついて、魔物達の居た辺りを見つめて、こう呟く。
( -∀・)「カッコよすぎだろ、常考……」(ごめんな、生きる為なんだ…)
_,
(・∀ ・)
(;・∀・)そ
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 18:23:02.06 ID:KDmpE48bO
- ( ・∀・)「……いいじゃんよ、別にさ」
(・∀`・)「……うん」
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 18:23:52.47 ID:KDmpE48bO
- ……………
( ・∀・)「ん…道が塞がれてるぞ?」
(・∀ ・)「いかにもなバリケードだなー」
戦闘後にケアルとファイアの魔石を拾い、しばらく順調に歩みを進めていた。
あの広間の後の通路にはボム行灯がそこそこにぶら下がっており、多少は薄暗いながらも難なく進むことはできた。
事前に見取り図でチェックしておいた最短ルートを正しく進んでいたため、道に迷うということはなかったのだが……
だいたい半ば辺りまで来た所だろうか、そこにはオークお手製と見えるバリケードが築かれていた。
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 18:30:50.41 ID:KDmpE48bO
- ( ・∀・)「困ったなぁ」
というのも、この道が通れなければ、別の入り口から出直さなければならなくなるのだ。
その別の入り口からのルートは非常に複雑なため避けていたのだが……
そもそも数時間かけてきた道のりを今さら引き返すのはバカらしい。
見たところ、腐った木材や土くれ、破棄されたものであろうツルハシやスコップが乱雑に積み上げられた杜撰な造りをしているので、そこそこの衝撃を加えてやれば崩れてくれるだろう。
( ・∀・)「よっし、壊そう」
(・∀ ・)「どうやるんだー?」
( ・∀・)「そう、だなぁ…」
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 18:35:03.50 ID:KDmpE48bO
- 脆そうとはいっても、僕が打撃や魔法を何度もぶつけた程度で壊れる代物には見えない。
……そういえば、ここに来る途中にトロッコがあったな。
ちょうど足元まで線路が引かれていることだし、アレを思い切りぶつけてみたらどうだろう。
( ・∀・)「……どうかな?」
(・∀ ・)「やってみるかー」
- 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 18:39:05.78 ID:KDmpE48bO
- 少し戻った所にあったトロッコを軽く押してみる。線路も車輪も少し錆び付いてはいるが、まずまずの動きだ。
( ・∀・)「うん。なかなか重いし、いけるかな」
剣と盾をしまい、トロッコの後ろに回る。
強く押してやると、トロッコはゴトゴトという重い音を立てて動き出した。
(♯・∀・)「うおぉぉぉ!!!」
(・∀ ・;)「まってくれー」
押したまま徐々に走る速度を上げてやる。
勢いのついたトロッコは破壊力を徐々に増して、バリケードへと向かう。
- 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 18:41:57.06 ID:KDmpE48bO
- (♯・∀・)「そぉい!」
バリケード直前でトロッコを離し、その直後にダメ押しでトロッコを蹴飛ばしてやった。
バコォン、という爽快な音を立てて、完全に道を塞いでいたバリケードは崩壊した。
……とはいえそれは上半分が崩れた程度で、バリケードの跡を乗り越えてやる必要はある訳だが。
トロッコもバリケード跡に埋まってしまって、使い物にはならないだろう。
( ・∀・)「……うん。このシステムは前からおかしいと思ってたんだ」
(・∀ ・;)「……何言ってんだー?」
( ・∀-)「気にしちゃいけない。さぁ、行こう」
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 18:45:37.71 ID:KDmpE48bO
- ……………
さらにしばらく歩いていくと、埃臭い中にじわじわと清浄な空気を感じるようになってきた。
ミルラの木までもう少し、という所まで来た。
……訳なのだが。
( ・∀・)「……ま、こうなるんだよなぁ」
(・∀ ・)「これでラストだ、がんばろー」
坑道最深部の、僅かに手前の大広間。
そこには、オークの親玉、オークキングが君臨していた。
左右には、お供だろうか、斧を持ったオークと杖を持ったオークがニヤニヤとこちらを見ている。
一対三。お供の二匹から倒していくことになるかな。
- 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 18:49:24.62 ID:KDmpE48bO
- ( ・∀・)「…いくぞ」
魔法攻撃にせよ物理攻撃にせよ、相手の攻撃にカウンターするのが、最近得意としている戦闘スタイルである。
今回もその手法でいくことにした。
……しかし、僕の姿を捉えているにも関わらず、オークキング達は一向に動こうとしない。
( ・∀・)「あっちから動く気は無い…のか?」
とりあえず剣と盾を構えて、相手との間合いを注意深く取る。
…右側の杖を持ったオークと目が合った。オークの中でも魔法を使う個体だ。確かオークメイジとかいったか。
そいつは薄汚いニヤニヤとした笑みを顔面に貼り付けていた。
- 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 18:53:09.17 ID:KDmpE48bO
- ( ・∀・)oO(……?)
『何か企んでいる』。
……その可能性に気付いた時にはもう遅く、
(・∀ ・;)「…モラ、うしろ!」
後頭部に、ガツン、という強烈な衝撃を受けて、
(; д )「う…っ」
僕は固い地面に叩きつけられていた。
オーク達の汚い笑い声が大広間に響いた。
- 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 18:55:29.41 ID:KDmpE48bO
- ……………
(;-д・)「ぐ…ッ」
クラクラとする意識を何とか押さえ、フラフラと立ち上がって背後を見ると、そこには巨大な体躯を誇る魔物、オーガが居た。
右手にハンマーを持っていて、アレで殴られたというのは何とか理解できた。
僕が構えるより先に、オーガは左腕を振りかぶって殴りかかってきた。
(;-д・)oO(!)
考えるより先に身体が動き、何とか紙一重でパンチを避けた。
しかし、覚束ない足取りでは反撃などできようもなく、そもそもいきなり現れた予想外の敵に戸惑いが隠しきれないでいた。
- 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 18:59:51.04 ID:KDmpE48bO
- (・∀ ・;)「『サンダー』!」
バチン、と、紫色の光がオーガの目の前に炸裂した。
マタンキが放ったそれは目眩ましになってくれたようで、オーガが目をゴシゴシやっている隙に僕は何とか正気に戻り、間合いをとることに成功した。
(;-∀・)「さんくす、助かった」
(・∀ ・;)「ゆえるかむー」
魔物め…何とも卑劣な手段を使うじゃないか。
まんまと引っ掛かった自分が恥ずかしい。
…まだフラフラするが、何とか戦闘は行えそうだ。
今は、なんとかやるしかない。
というか、やらなければ、やられる。
- 48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 19:00:35.43 ID:KDmpE48bO
- オーク達は事の成り行きをニヤニヤと見ている。
…悪趣味な奴らだ。まぁ、手出ししてこないならそれでいい。
コイツの次は、お前らの番…なんだからな。
(;・∀・)「マタンキ、何発撃てる?」
(・∀ ・)「3発…だなー」
(;・∀・)「…上等だ。パイル、サンダー×ソード」
(・∀ ・)「らじゃー!」
今回の僕は一味違う。ちゃんと敵の弱点を調べて来たのだ。
オーガの弱点は雷。強力な雷の力で痺れさせて、そのまま勝負を決めてしまおう。
- 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 19:03:36.97 ID:KDmpE48bO
- 「オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛……!」
妙に間延びした、地の底から響くような咆哮がオーガから発せられた。どうやら奴も回復したようだ。
…いや、僕は回復していないな。後頭部が少し生暖かい。
おそらく血が出ているのだろう、早くケアルをかけないとマズい。
オーガがドタドタと巨体を動かし、こちらに迫ってくる。
…肉質はなかなか固そうだ。こちらの剣を選んだのは正解だったな。
(・∀ ・)「いくぞ、『サンダー』!」
(;・∀・)「『パワーソード』!」
- 53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 19:08:51.53 ID:KDmpE48bO
- 再びオーガの目の前に紫光が炸裂する。
学習能力はあまり無いのだろう、オーガは驚いた表情を見せた。
その紫光に剣が迫ると、それは刀身に引き寄せられるようにまとわりついて来た。
妖しい紫に輝く刀身が、オーガの眉間を捉えた。
(♯・∀・)「『サンダー剣』っ!」
バチィン、と、強力な雷がほとばしり、オーガの巨大な身体を包んだ。
- 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 19:14:57.13 ID:KDmpE48bO
- (;・∀・)「…っ」
僕も突進の勢いを受けて少し体勢を崩してしまった。
が、オーガの方はというと膝を地について、痺れた身体を動かそうと躍起になっているという、かなりこちらに有利な状況だ。
急いで体勢を戻し、オーガに接近する。
(;・∀・)「やられてくれ…!」
頭を二回、三回と斬りつける。だが、オーガはなかなか倒れてくれない。
(・∀ ・;)「…! モラ、はなれて!」
(;・∀・)「!?」
- 56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 19:15:37.31 ID:KDmpE48bO
- マタンキの声に反射するようにバックステップをすると、目の前に火の玉が出現した。
横を見ると、杖を持ったオークが少し残念そうにニヤニヤとこちらを見ているのが確認できた。
汚ない奴らだ。相手は魔物、そう分かっているが、それでも怒りを覚えずにはいられない。
「オ゛オ゛オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛!!!!!」
痺れの消えたオーガが激昂してこちらに突進してきた。
(;・д・)「くそ…!」
先程の回避のせいで、せっかくのチャンスを無駄にしてしまった。
次の作戦を考えなければ……
- 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 19:19:05.54 ID:KDmpE48bO
- オークの拳が迫る。この間合いでは回避は無理だ。盾で攻撃を受ける。
(;>д・)「うぁ……」
構えた腕に凄まじい衝撃が走り、僕の身体は大きく吹き飛ばされて、
(; д )「が…はっ…」
固い壁に強かに打ち付けられた。
まさかこんなにパワーがあるとは、予想外だった。
(; д-)「……っ」
口の中に鉄の味が広がる。
頭がクラクラする。手負いのまま戦ってきたため、血が足りなくなっているのだろう。
- 61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 19:22:22.56 ID:KDmpE48bO
- オーガは勝利を確信したのか、ハンマーを放り出してオーク達と笑い合っている。
(・∀ ・;)「モラ!」
(; ∀ )「……」
大ピンチ。このままでは間違いなく死ぬ。
でも、まだ死んじゃいない。
負けてやるつもりは、ない。
(;-д・)ゲフッ
(;-∀-)「……」
(; ∀・)「……ファイアだ」
(・∀ ・;)「!」
そうだ。何も僕まで正攻法で挑んでやる必要は無いのだ。
(;-∀・)「目標は――」
(・∀ ・;)「……!? 正気かー?」
魔物ども。
人間も、あなどってはいけないぞ。
- 63 :※仕様を完全に無視しております:2009/11/07(土) 19:24:46.72 ID:KDmpE48bO
- (・∀ ・;)「……いける、ぞー」
(; ∀・)「おう…」
ヨロヨロと、危なっかしくも何とか立ち上がる。
オーガはこっちを見ると、ニヤッと笑った…気がした。
そして、のそのそした動きでハンマーを拾い上げた。
(;-∀-)「……」
(; ∀・)「……」
オーガから目標へと視線をずらす。そこそこ距離がある。作戦を成功させるのはかなり厳しいだろう。
しかし、やるしかない。
(;-∀・)「頼む…!」
僕は右手に剣を掴み、大きく振りかぶって、
(;# д・)「いけ…っ!」
天井へと力強く投げつけた。
いや…正確には、天井にぶら下がっているボム籠に向けて、である。
- 65 :※ボムにファイアは効きません:2009/11/07(土) 19:29:14.46 ID:KDmpE48bO
- 「!?」
オーク達はぽかんと剣の行き先を見つめている。
剣はくるくる回転しながらボム籠へと飛んでいく。
そして、刀身はボム籠を吊るしている錆び付いた紐の部分に見事に当たり、紐はぷつりと切れた。
(;-∀・)「よし…!」
広間のちょうど中心部。
籠は落下を始め、オーガの頭上に迫る。
(; ∀・)「着火」
(>д ・;)「『ファイア』ー!」
火の玉が籠を包むように現れる。
炎を吸ったボムは一気に巨大化。
そして、ドォン、というものすごい爆音と共に、
「カ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!」
ファイラの比ではないほどの熱量を持つ火球が発生した。
- 68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 19:32:48.84 ID:KDmpE48bO
- 炎の向こうには、オーガが黒焦げになっているのが見える。
(; ∀-)「う…ッ」
強烈な熱風と爆風は、広間の隅に居た僕にも容赦なく襲いかかってきた。
盾で防いでいるが、それでも手負いの身体には非常に辛い刺激である。
また、炸裂した籠の破片が散ってきているようで、それが皮膚を裂いていくのも感じられた。
満身創痍。今の僕はもはや精神力のみで立っているといっても過言ではない。
が、間違いなく敵にも大ダメージが与えられた。
このままこちらに有利な展開に持ち込むんだ。
(; ∀ )「……」
炎が次第に消えていく。
オーガの姿は無く、オークのお供二匹が身体に着いた火を消そうと躍起になっているのが見えた。
- 72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 19:36:55.50 ID:KDmpE48bO
- (; ∀ )oO(チャンス、だ)
剣は二本とも手元に無い。
…が、先ほど投げつけた剣は、爆風に飛ばされたのか、ちょうどオーク達の近くに落ちている。
いける、大丈夫だ。
覚束ない足取りで、必死に距離をつめていく。
オーク達の威嚇を無視して剣を拾い上げ、
(; ∀ )「……『払い抜け』」
バックステップからの必殺技で二匹を一気に斬り倒した。
(; ∀=)「……ぅぁ」
頭がクラクラする。
血が足りない。指先がいやに冷たい。
(・∀ ・;)「モラ、回復しよう」
(; ∀ )「お、う…」
- 74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 19:43:18.90 ID:KDmpE48bO
- キングから離れて魔法を詠唱する。キングは激昂した様子で、斧とハンマーを手にして威嚇を始めた。
しかし、そんなものに気を取られている暇は無い。
(; ∀・)「…『ケアル』」
柔らかい光が僕を包む。後頭部の傷や、その他の細かい傷が消えていくのが分かった。
(;-∀-)「……ふぅ」
なんとか、これ以上に状況が悪化するのは防げた。
しかし、無くなった血までが戻ってくる訳ではない。相変わらず頭はぐるぐるとして、視界も微かにぼやけている。
(・∀ ・;)「大丈夫かー?」
(;・∀・)「……わかんね」
ともかく、これで一対一だ。心おきなく戦うことができる。
- 76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 19:46:43.21 ID:KDmpE48bO
- (∩-∀・)ゴシゴシ
流れた血をぬぐって、剣と盾を構える。
こいつを倒して、生きて村に帰るんだ。
(〃・∀・)「いくぞ…!」
「ガァァァァ!」
キングが動いた。
さぁ、今年最後の大勝負だ。
- 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 19:47:35.57 ID:KDmpE48bO
- ……………
右手にハンマー、左手に斧。
破壊力の高い二つの武器を手に、なかなか素早い動きで攻撃を繰り出してくる。
オーガよりも巨大な身体からは想像できないスピードだ。
武器が武器なので、一撃すら盾で防ぐのは難しい。
だからといって、こちらがジリ貧になっている訳ではない。
その武器の質量ゆえに、攻撃の後に少しよろけるのだ。
その生まれた隙をついて、こちらは少しずつながらも攻撃を通していけている。
- 80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 19:49:03.07 ID:KDmpE48bO
- (〃-∀・)oO(でもなぁ…)
以前から思う所に、僕は攻撃力不足だ、というものがある。
普段の戦闘なら難なくこなせるが、例えばオーガやボス達などの大きな質量を持った敵には目立ったダメージが与えられないのだ。
魔法にしても、確かに詠唱は早いが、それでも一発の威力は高くない。
良く言えば何でもできる優等生、悪く言えば全部が中途半端。一人で戦うには不向きな体質だと、最近は切実にそう思う。
やはり仲間が欲しい。誰でもいいから助けてくれ。
なんて叫びは誰に届く訳でもなく、
(〃;・∀・)「うわっ」
……余計なことを考えてる場合じゃなかった。
危うくハンマーにぺちゃんこにされてしまう所だった。
- 84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 19:52:30.50 ID:KDmpE48bO
- ……斧をかわして、剣を振る。体勢を立て直したキングは右足を軸に身体をぐるぐる回し始めた。横薙ぎのハンマー、斧、ハンマー、斧、ハンマー……目を回した隙に斬り付ける。
離れて戦う、という選択肢もあるのだが、ビコーズさん曰く「オススメしない」、だそうで。
というのも、ユークでもない限りは魔法での勝負はかなりリスクを伴うらしい。
キングの放つ青魔法『フレア』がその理由である。
これは属性を持たない熱の魔法で、僕らの放つファイアやサンダーの比でないほど強烈な威力を持っているようで、一発でも食らえば命に関わるらしい。
詠唱には少し時間がかかるため、詠唱をさせないよう接近して立ち回る方が幾分戦いやすい、とのことだった。
- 88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 19:59:39.03 ID:KDmpE48bO
- が。
(〃-∀・)oO(……動くのが辛くなってきた)
疲労が貯まって、息が切れてきた。身体中に鉛をぶら下げて動いているような感覚がする。
このまま戦い続けるのはかなり辛い。
ここいらで一発、強力な一撃でもお見舞いして、怯ませた隙に息を整えるとしよう。
……そうだな。キングに学習能力があってくれればいいのだが。
(〃・∀・)「ラスト…ファイア×ソードだ」
(・∀ ・)「りょーかい!」
キングがよろめいた隙にバックステップ。そして剣を天井に投げつけるようなフォームをとる。
- 90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 20:00:52.92 ID:KDmpE48bO
- キングが慌ててこちらに駆けてくる。
(〃・∀・)oO(かかった!)
(・∀ ・)「『ファイア』!」
(〃・∀・)「『払い抜け』…」
投擲のフォームから無理矢理に体を前に飛ばす。
そのままキングの目の前に現れた火球を斬り付けた。
(〃#・∀・)「『ファイア剣』!」
「グ、ガァァァァ!!!」
強烈な斬撃と爆発がキングの脳天に炸裂した。
決まった。致命的な一撃と言っても過言でないほどのクリーンヒットである。
- 93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 20:06:17.31 ID:KDmpE48bO
- (〃・∀・)「よし…!」
キングは頭を抱えて苦しんでいる。
回復か、トドメか…?
(〃・∀・)oO(回復…かな)
体力は大幅に削れた。後は多少ジリ貧でも大丈夫だろう。
(〃-∀・)「っ、ふぅ……」
キングが立ち上がる頃には、ほぼ息は整った。
こちらをものすごい眼で睨み付けてきている。
強がって睨み返してみたものの、そろそろ肉体的には限界である。
もう、終わらせてしまいたい所だ。
- 96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 20:12:29.79 ID:KDmpE48bO
- (〃-∀・)「……ん?」
立ち上がったキングは魔法の詠唱をしているようだった。
フレアを撃たれてはマズい。一刻も早く中断させなければ。
(〃;・д・)「この…っ!」
キングを力強く斬り付ける。が、一向に倒れる気配を見せない。
こちらを見据えて、淡々と詠唱を続けている。
((〃;・д・))oO(……!?)
感覚が告げる、といった物だろうか。魔物らしからぬその眼に、僕は底知れぬ恐怖を覚えた。
(〃;・д・)「! コイツ、まさか…?」
- 98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 20:13:40.92 ID:KDmpE48bO
- 嫌な予感はしていた。しかし、その時の僕は冷静さを失っていたのだろう。
(〃;・д・)「……逃げ、なきゃ」
(・∀ ・;)「モラ…?」
キングの身体から光が射してきた。
足が動かない。手が震える。またしても剣を落としてしまった。
(〃;・д・)「マタンキ、逃げろ…」
(・∀ ・;)「え…、あ、あぁ…?」
- 100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 20:15:48.22 ID:KDmpE48bO
- 光が、より強くなっていく。
混乱した頭が弾き出した答えは、マタンキに全てを託すという訳の分からないものだった。
震える身体を無理矢理動かしてマタンキを掴み、
(・д ・;)「おわぁぁぁ!」
僕達が来た方の通路へと投げ飛ばした。
ケージは足元に転がっていた。丈夫な作りだからきっと衝撃に耐えてくれる。
網膜を焼き尽くすような光が、長く、僕の影を作った。
振り向いた先にキングの姿は無く、ただ凶悪な熱を孕んだ白い闇が広がっているだけだった。
- 102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 20:18:21.99 ID:KDmpE48bO
- ……………
白い光の中に、真っ赤な鳥の姿が見えた。
僕に向かって飛んできたソイツは大きく羽根を開いて、僕の身体を包んだ。
心地よい温もりを身体中に感じた。
気持ちがよくて眠たくなってくる。
目を閉じて、温もりに身を委ねた。
心臓の鼓動の音が聞こえる。
血液が身体中を巡っている。
そこに僕の命の存在を知る。
ふと薄く目を開くと、そこに鳥の姿は無かった。
起きなさい、という優しい声が聞こえた気がした。
- 105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 20:20:38.06 ID:KDmpE48bO
- ……………
(;д ;)「モラ、モ゙ラ゙ァァァ!」
( ∀ )「………」
(;д ;)「……っく、モ、ラァ……」
( ∀ )「………う、ん」
(・д ;)「……! モラ!?」
……気がつくと、僕は固い地面の上に寝転んでいたようだった。
( -∀-)「……うん」
腹部に妙な重みを感じる。マタンキが乗っかっているのだろう。
(・∀ ;)「モラ…!」
( -∀・)「……うん、僕だ」
- 107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 20:22:53.85 ID:KDmpE48bO
- 両手をついて、上体を起こした。
身体が妙に軽く、スッキリしている。
埃臭い空気を吸い込み、僕は先ほど僕に起こった出来事の全てを思い出した。
( ・∀・)「……!」
そうだ。僕はキングの捨て身の『自爆』をモロに食らったのだ。
そう。その寸前にマタンキを投げ飛ばした。で、振り向いた。で、強烈な爆発を食らって……
( ・∀・)「……死んでない」
(・∀ ;)「生きててよかったぞー」
……そうだ。あの後、僕は夢を見たんだ。
真っ赤な鳥の夢……
( ・∀・)「そうか、フェニックス……」
- 111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 20:28:29.88 ID:KDmpE48bO
- 話してくれたのは、確か母だったか。
鳥の姿は、僕がまだ小さかった時に、母が眠る前に読んでくれた絵本に描かれていたそれだった。
伝説上の存在とばかり思っていたが、ヒートが拾ってきたあの赤い羽はもしかして、不死鳥フェニックスのものだったのだろうか。
…でもなければこの状況に説明がつかない。
( ・∀・)「……」
(・∀ ;)「……?」
……また、助けられた。
ありがたい、と思うと同時に、悔しい、という感情を覚えた。
結局、僕一人では皆を守れなかったのだ。
誰かの助けが無ければ、生きて帰ることさえできなかった……
そう思うと、無謀にも一人で旅立つと言った自分が恥ずかしくなる。
- 113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 20:32:34.55 ID:KDmpE48bO
- ( -∀-)「……」
(・∀ ・)「……モラ?」
( ・∀・)「……聞いて、くれるか?」
(・∀ ・)「……おー」
さっきまで考えていたそんな色々なことを、マタンキに話してみた。
マタンキは、うんうんと頷きながら僕の話を聞いてくれた。
( ・∀・)「……」
あらかた話し終えると、マタンキはふわふわと僕の頭の上に座って、こんなことを話し始めた。
- 116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 20:37:02.32 ID:KDmpE48bO
- (・∀ ・)「……モラ、そんなことで悩んでたのかー」
( -∀・)「そんなこと、って…」
(・∀ ・)「俺さ、モラはさ、凄いって思ってるんだぞー」
( -∀-)「…よしてくれよ」
(・∀ ・)「普通のキャラバンはさ、最低でも2人で動いてるし、それに、モラは今年が初めてって、凄いことなんだぞー?」
( -∀・)「……」
(・∀ ・)「モラは、もっと皆を頼っていいんだぞー?」
( -∀-)「……頼ってるさ」
(・∀ ・)「村をさ、守りたいって気持ちは皆同じのはずだぞー? きっと皆はモラを助けたいって、そんな気持ちでいると思うぞー」
( ∀ )「! ……あぁ」
- 117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 20:38:03.39 ID:KDmpE48bO
- (・∀ ・)「だから俺ももっと頼ってくれよなー」
( ∀ )「あぁ、あぁ。そう、だよな……」
(・∀ ・)「モラ……」
( -∀-)「……なぁ」
(・∀ ・)「?」
( -∀-)「ちょっとだけさ、泣いても、いいよな?」
(・∀ ・)「……いっぱい泣けばいいさー」
( -∀-)「………」
( ∀ )「……っ、あぁ……」
- 119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 20:40:09.63 ID:KDmpE48bO
- マタンキ、ショボン、シィ、ヒート、モナーさん、ビコーズさん、シブザワさん、ポッポちゃん達、ロマネスクさん、アニジャさん、それから、父さんと母さん。
皆が、僕を助けてくれていた。さりげなく、でも、しっかりと。
僕はきっと、彼らの優しさに甘えていてはいけないと、心のどこかで強がっていたのだろう。
マタンキの言葉で、ようやくその自分に気付く事ができた。
そして、皆の気持ちにも気付くことができた。
- 121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 20:44:31.12 ID:KDmpE48bO
- ( ∀ )「……ありがとう」
(・∀ ・)「……よせやい、照れるじゃねーかー」
滲んだ視界の隅に、青緑色の光……ミルラの木の姿を捉えた。
薄暗い中に輝いているそれは、僕の心の澱みをスッと溶かしていくようで、とても、とても美しかった。
- 124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 20:49:40.39 ID:KDmpE48bO
- ……………
【マール峠】
( ・∀・)「……色々とお世話になりました」
( ФωФ)「気にするでない、また来年もよろしく頼むぞ」
あの後は特に目立った出来事は無い。
雫を手に入れ、無事にカトゥリゲス鉱山を脱出。マール峠にたどり着き一週間の滞在、今はマール峠の入口でロマネスクさんに見送って貰っている所だ。
- 126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 20:52:02.41 ID:KDmpE48bO
- ( -∀・)「ありがとうございます。 来年は一人増えてると思いますが…」
( ФωФ)「おお、それは頼もしい限りであるな。期待しておるよ」
今まで無料で泊めてくれていたロマネスクさんにお礼を告げ、馬車に乗り込んだ。
( ・∀・)「それじゃあ…ありがとうございました」
( ФωФ)「うむ、気を付けて帰るのだぞ」
会釈をして、パパオに鞭をうつ。
カラカラという音を立てて、ヴィップの村に向けて、馬車はゆっくり動き出した。
- 129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 20:54:37.43 ID:KDmpE48bO
- ……………
モク〒´ω`)゙「クポポ、『もららー』さーん」
( ・∀・)「……あぁ、わざわざこんな所まで来させてごめんね」
マール峠を出て数時間。モーグリ君が手紙を届けに来てくれた。
手紙は二通。ヒートと……
(;・∀・)「兄ちゃん!?」
まさか兄から手紙が来るとは……
とりあえず、こちらが気になる。
ここはヒートの手紙より先に読ませてもらおう。
- 133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 20:58:51.27 ID:KDmpE48bO
- ( ,メ∀ )《無事に、してるか?なぁ、死ぬなよ。お前にまで死なれたら、俺はもっと、行かなきゃならなくなる。死ぬなよ。》
(;・∀・)「……」
何だか、支離滅裂な文章だ。利き腕でない腕で書いた為だろうか、字も雑で読みづらい。
兄は何を思っているのだろう。
……とりあえず返事だ。
(;・∀・)「『無事だから心配しなくていいよ、もうすぐ帰るから…』…と」
かけがえのない身内からの手紙だというのに、妙にうすら寒い気持ちになった。
まぁ、次はヒートだな。そうだ、お礼もしなきゃな……
- 135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 21:05:02.00 ID:KDmpE48bO
- ノハ*゚听)《元気かー!?私は元気いっぱいだ!
こないだシィに手紙を見せてもらったんだけど、そろそろ帰ってくるころ、なんだよな?
皆モララーの帰りを楽しみに待ってるぞ!
ついしん:お守り役にたったか!?》
( ・∀・)「……ははっ」
雑だけど、彼女らしい手紙だな。
訳もなく、元気になった気がしてくる。
( ・∀・)「『もうすぐ帰るよ。パーティーよろしくね。追伸:とても役に立ったよ』…と」
( ・∀・)「……じゃあ、よろしくね」
いつも通り、手紙とナッツをポーチに入れてやる。
モク〒´ω`)゙「ありがとうだクポ〜」
モーグリ君は僕の頭上をくるくる回り、「行ってくるクポ!」と言って、ヴィップ村の方へと飛んで行った。
- 139 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 21:10:44.07 ID:KDmpE48bO
- モーグリ君を見送って、ふとあることが気になった。
( ・∀・)「……なぁ、マタンキ」
(・∀ ・)「なんだー?」
( ・∀・)「来年から僕はもう一人旅じゃなくなる訳だけど、マタンキはどうするの?」
そう。彼は一人旅のサポートとして僕についてきて来てくれていた訳だが、仲間の加わる来年以降はどうするのかが気になったのだ。
(・∀ ・)「あぁ、それなら、ビコは『お前の好きなようにしろ』って言ってたぞー」
( ・∀・)「ふぅん……」
好きなように、か。
( ・∀・)「なぁ、」
(・∀ ・)「?」
( ・∀・)「来年からもさ…キャラバン、手伝ってくれないか?」
- 142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 21:17:49.60 ID:KDmpE48bO
- (・∀ ・)「……もちろん、だぞー」
( ・∀・)「……ありがとう、助かるよ」
……最高の仲間っていうのは、意外に身近に居るものだな。
……来年からは、シィがキャラバンに入るらしい。
まぁ、あれはあれでなかなかできるヤツだ。頼りになるし、道中もきっと騒がしくなるだろう。
来年の旅に少しの不安と、沢山の希望を抱きながら。
( ・∀・)「さぁ、帰ろう」
皆の待つ場所へ。
僕の帰る場所へ。
今は、歩みを進めるとしよう。
「8:カトゥリゲス鉱山」 終
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