- 66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:46:36.45 ID:xnCYoyQIO
- 「5:マール峠」
【マール峠】
リル`・д・)「らっしゃいらっしゃい、ウチは向かいの宿より一割安いよ!」
クラ*´ー`)「ウチは今日取れたばっかりの新鮮なキノコ料理が自慢です!ぜひどうぞ!」
リル*'')「ウチはマール峠一安い宿だよ!もちろん夕食、朝食付き!いらっしゃいませー!」
( ・∀・)「……景気がいいなぁ」
(・∀ ・)「不景気なんじゃないのかー?」
寂れつつある、と噂に聞いていたが、そんなイメージを払拭するかのような元気な声が町中に響いている。
村を出てからだいたい一月。ようやく、当初から目的地としていたマール峠にたどり着いた。
- 67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:48:02.79 ID:xnCYoyQIO
- ( ・∀・)「さて、じゃあ早速だけど宿を探そうか」
とりあえず荷物をおいて腰を落ち着けたい所だ。
観光はその後でいいだろう。
(・∀ ・)「俺が探してくるー」
( ・∀・)「あ、じゃあお願いしてもいいかな。『ラウンジ亭』ってとこね」
(・∀ ・)「はいはーい」
小さな羽をぱたぱたと動かし、宿屋街の方へマタンキは飛んでいった。
まぁ、宿なら360度どこを見渡しても視野に入ってくるほどあるのだが、ポッポちゃんに教えてもらった『ラウンジ亭』という所に泊まった方がよさそうだろう。
- 69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:50:38.81 ID:xnCYoyQIO
- 旅人さんいらっしゃい、という誘いをやんわり断りつつ、町を見渡してみる。
いろんな土産物の店があり、珍しいものが沢山売っているなぁとか、そんな暢気なことを考えたり、そんな感じでのんびり過ごしていた。
すると、マタンキがふわふわと戻ってくるのが見えた。
(・∀ ・)「モラ、あったぞー」
( ・∀・)「お、ないす。じゃあ行こうか」
マタンキ先導のもと、宿屋街を先へ先へと進んでいく。
しばらく歩くと、ある一件の宿屋にたどり着いた。
- 70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:52:52.33 ID:xnCYoyQIO
- (・∀ ・)「ここだぞー」
(;・∀・)「これは…ッ!」
(・∀ ・)「でかいよなー」
今までの宿屋より、見た目に倍ほどの大きさがある建物が目に入った。
田舎には珍しい二階建ての造りになっていて、とても立派である。
普通に泊まれば、間違いなく1000ギルは下らないだろう。
ちなみに、僕が旅立ちの際に母から貰った餞別が5000ギルである。
(;・∀・)oO(こんな所に泊まって大丈夫なのだろうか……)
どうしようかと立ち尽くしていると、宿の中から立派な髭を生やしたリルティの男の人が出てきた。
男の人はこちらに気付いたようで、ゆっくりと近付いてきた。
- 71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:55:12.67 ID:xnCYoyQIO
- ( ФωФ)「おう、クラヴァットの。お泊まりであるか?」
(;・∀・)「あ、ええ。ここって『ラウンジ亭』でいいんですよね?」
男の人は髭を一撫でし、
( ФωФ)「いかにも。ここが、今年で創業120年を誇る老舗旅館『ラウンジ亭』である」
と、堂々と言い放った。
(;・∀・)oO(老舗旅館ッ!)
しばらく呆気にとられていると、男の人は怪訝そうな顔をしてこちらの顔を伺ってきた。
( ФωФ)「どうした?泊まられないのか?」
はっと我にかえり、今一度考え直してみる。
- 73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:58:36.51 ID:xnCYoyQIO
- こういう所にも泊まってはみたいが、長期滞在ともなるとやはり金銭的に苦しくなってくる。
だが彼女の好意を無駄にはできないので、不安ではあるが、一応彼女の名前を出してみることにした。
(;・∀・)「ええと、その、ポッポ…ちゃんから、こちらに泊まるとよいと言われたもので……」
男の人は一瞬「ん?」という表情をして、
( ФωФ)「む、ではお主が『もららーくん』とやらか?」
と聞いてきた。
( ・∀・)「ええ、モララーです」
と答えると、男の人はそれまでの厳格そうな表情から一気に顔を綻ばせた。
(*ФωФ)「そうかそうか、君が『もららーくん』か。姪から話は聞いているぞ、さあさあ中へ入りなさい」
(;・∀・)oO(ォゥ)
ものすごい笑顔と共に、とても簡単に宿に通されてしまった。
だが、本当にいいのだろうか、今後の懐具合が心配である。
- 75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 02:02:10.09 ID:xnCYoyQIO
- ……………
( ФωФ)「我輩はロマネスク。ポッポの叔父にあたる者であるだ」
( ・∀・)「どうも、ヴィップのモララーです」
握手を交わしてから、フロントに設えてあるソファーに腰かける。
(;・∀・)oO(フカフカだッ!)
( ФωФ)「何でもビロード君の命の恩人だとか。いやいや、本当にありがたいことである」
(;・∀・)oO(命の恩人、ねぇ)
ポッポちゃん、いったいどこまで話を膨らませた手紙を送ったんだろうか。
- 76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 02:04:59.77 ID:xnCYoyQIO
- (;・∀・)「いえ、僕は特に何も……」
( ФωФ)「謙遜せずともよい、アヤツらは本当にお主に感謝しているのだ」
そして「無論、我輩もである」と付け加えて、髭を一撫でする。
( ・∀・)「はぁ……」
( ФωФ)「私からの礼と言っては何だが、ここに好きなだけ泊まっていくとよいぞ」
(;・∀・)「はぁ……へ?」
今、何かすごく重要なことをサラッと言われた気がしたんだが、僕の空耳だったのだろうか。
ここは落ち着いて、確認を取ってみよう。
(;・∀・)「あの、それって……」
( ФωФ)「? 宿泊代はいらぬから何泊でもしてゆけという意味であるが……」
何と太っ腹な申し出だ、と、大いに驚き、次にそれはあまりにやり過ぎではないだろうかと思った。
慌てて、そこまでの好意は受け取れないという旨を説明する。
- 77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 02:06:03.27 ID:xnCYoyQIO
- (;・∀・)「そんな、それはあまりに、何というか……」
( ФωФ)「なんじゃ、不服か」
(;・∀・)「いやいやいや、不服っていう話じゃなくて、そこまでしていただかなくても大丈夫っていう感じでして、」
( ФωФ)「遠慮するでない。若いうちは、好意は素直に受け取っておくものだ」
(;・∀・)「ああ、もうっ!」
話の分からないタイプの人間か、と思いつつ苦心して話した所、無料というのは心苦しいということだけは伝えることができた。
先程のような感じでしばらく話し合った挙げ句、宿泊代を無料にしてもらう代わりに、僕が旅館の業務を手伝うという話に落ち着いた。
- 79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 02:08:57.37 ID:xnCYoyQIO
- ( ФωФ)「そんなに遠慮せずともよいのだが…」
(;・∀・)「いえ、そうでもないと何か落ち着かなくて」
( ФωФ)「そうか……では、部屋に案内しようか」
( ・∀・)「はい、お願いします」
偶然に偶然が重なったおかげで、条件付き(僕が付けたのだが)とはいえこんなにいい宿屋に無料で泊まれることになった。
正直な所、話している間もずっと、タナボタだったなぁと心の中で考えていた。
……帰ったらシィに自慢してやろう。
- 80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 02:10:01.40 ID:xnCYoyQIO
- ……………
( ・∀・)「これって何ですか?」
セル,゚Д゚)「お、兄ちゃんなかなかいいのに目をつけたね。コイツは『ファイアリング』って代物さ」
働くのは明日からでいい、とのことなので、今日はマール峠の観光をすることにした。
今は、宿に行く前から気になっていたアクセサリー店を覗いている所だ。
ちなみに、マタンキは「かわいい女の子がいた!」とか言ってどこかへ飛んでいってしまっている。
( ・∀・)「ファイアリング?」
- 81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 02:11:33.36 ID:xnCYoyQIO
- 古代文字が彫られた指輪に、赤い魔石……ファイアの魔石が嵌め込まれている。
見た目にもとても綺麗な指輪だ。
セル,゚Д゚)「あぁ。普通、魔法はミルラの木の側でしか使えないだろ?でも、コイツがあればいつでもどこでもファイアの魔法が使えるようになるんだ」
( ・∀・)「本当ですか!?」
何と魅力的なアイテムだろうか。これがあれば街道で魔物に襲われた時の対処の幅が広がるし、魔石を体内に取り込む手間も省ける。
- 82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 02:12:31.75 ID:xnCYoyQIO
- セル,゚Д゚)「あぁ。何なら実演してやろう」
そう言うと、商人さんは指にリングをはめてしばらく念じ、『ファイア』と唱えた。
空中に火の玉がボウッ、と現れて消えた。まさにファイアのそれだった。
(*・∀・)「おぉー」
セル,^Д^)「どうだい、すげぇだろ」
商人さんは上機嫌そうにハハハ、と笑った。
( ・∀・)「いやぁ、すごいですね。それって一体どんな構造になってるんですか?」
セル,゚Д゚)「さぁな。昔のユークが作った代物らしいが、今はレシピが残っていないんだと」
「ふーん」と相づちをうち、もう一度ファイアリングを眺める。
値札には『8000ギル』と書かれている。
- 84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 02:14:29.30 ID:xnCYoyQIO
- 僕が昔から貯めてきたお小遣いをちょうど3000ギル持ってきているのだが、それと併せれば手が届く金額である。
しかし母からの餞別を使うのは忍びないし、どうしようか、と決断できずにいる。
しばらく悩んでいると、それを見かねたのか商人さんが、
セル,゚Д゚)「しゃあねぇな。どうだい兄ちゃん、今ならちょいとまけて、こんだけでいいぜ」
と、五本の指をぴんと伸ばした形で僕に見せてきた。
(;・∀・)「う、うーん……どうしよう……」
確かにここまでまけてくれれば、買えない金額でなくなる。
しかし、こんなに大きい出費は……
- 85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 02:15:43.05 ID:xnCYoyQIO
- セル,゚Д゚)「うーん…これ以上はまかれないけどよ。コイツは消耗しないし、一生モンになるぜ?買っときなよ」
(;・∀・)「う……」
頭の中の僕が、「いいじゃん、買っちゃえよ」と語りかけてくる。
大事に使えば……いいかな、買っても。
(;・∀・)「じゃあ…買いま( ´_ゝ`)「ちょいと失礼」……え?」
財布からギルを出そうとしていた所に、いきなりクラヴァットの男の人が横から入ってきた。
そして、僕が買おうとしていたファイアリングを手に取ってしげしげと眺めだした。
セル,゚Д゚)「ちょっと、兄ちゃん。そいつはこっちの兄ちゃんが……」
男の人は、止めに入る商人さんを制して、なおもリングを注意深く見つめる。
そして、ふっと顔を上げて、
( ´_ゝ`)「何だ、ニセモンか」
と言った。
- 86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 02:17:01.93 ID:xnCYoyQIO
- (;・∀・)「え?」
セル#゚Д゚)「ちょ……ちょっとちょっと兄ちゃんよ、言いがかりはよしてくれ。さっきだってちゃんと魔法を出したじゃねぇか」
慌てて商人さんが男の人に文句を言う。
まぁ、いきなり偽物だなんて言われたら、誰だって怒りを覚えるだろう。
しかし、偽物……?
( ´_ゝ`)「あぁ。お前は、な。でも、俺は使えるのかな?そのファイアリング」
セル#゚Д゚)「あぁん!?……当たり前だろ!」
( ´_ゝ`)「じゃあちょいと借りるぜ」
男の人は指にリングをはめて、軽く目を瞑った。
- 88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 02:18:19.19 ID:xnCYoyQIO
- ……と思いきや、一秒もたたぬ間にいきなり、
( ´_ゝ`)「『ファイア』」
と唱えた。
しかし、当たり前だがそんなに早く魔法が打てるはずもなく、結果、何もおこらなかった。
( ´_ゝ`)「ほら、ニセモンじゃねぇか」
(;・∀・)oO(……何言ってるんだコイツは)
セル#゚Д゚)「兄ちゃん、バカにしてんのか?ユークじゃあるめぇし、そんなに早く魔法が打てる訳ねぇだろ!」
商人さんは語気を荒げて男の人に突っかかる。
しかし、男の人はあくまで冷静に、フッと笑ってから商人さんを注視する。
( ´_ゝ`)「それがな、できるんだよ。ファムのアニジャ、って名前に聞き覚えは無いか?」
- 90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 02:22:51.51 ID:xnCYoyQIO
- (;・∀・)oO(ごめん、聞き覚えないや)
と、僕は思ったのだが。
セル;゚Д゚)「ッ!お前があのアニジャか…」
(;・∀・)oO(えぇぇぇぇ!?)
男の人は意外に有名人のようだった。
田舎暮らしは情報弱者。そんな言葉が頭の中に浮かんだ。
( ´_ゝ`)「まぁそれはそれとして。で、どうなんだいソイツ、ニセモンだろ?」
セル,゚Д゚)「……チッ。あぁ、ソイツはニセモンだ」
(;・∀・)「……えぇー」
ちょっとショックを受けたが、アニジャさんとやらの言う通り、あのファイアリングは偽物だったようだ。
そういえば、と、セルキー商人はこういうのが多いというギコの話を思い出した。
……ギコよ、お前はこんなことはしてないだろうな。
- 91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 02:24:16.19 ID:xnCYoyQIO
- ( ´_ゝ`)「……ふぅむ。でも、それなりな鉱石も使ってるみたいだし、普通の指輪としたら上出来じゃないか。どうだい、500ギルなら買ってやってもいいぜ?」
( ・∀・)「あ、れ?」
いつの間にか僕を差し置いて話を進めるアニジャさん。
いつの間に僕は空気になったのだろうか。
セル,゚Д゚)「……あぁ、それでいいぜ」
( ・∀・)「え、ちょっと」
アニジャさんは財布から500ギルを取りだして商人さんに「ほら」と手渡し、代わりにリングを受け取った。
- 92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 02:26:04.43 ID:xnCYoyQIO
- と思いきや、アニジャさんはフッと僕の方に向き直りって、
( ´_ゝ`)「ほらよ、兄ちゃん」
と言って先程のリングを僕に手渡してきた。
(;・∀・)「……え?」
( ´_ゝ`)「え、じゃねぇよ。元々はお前さんが買おうとしてたモンだろ?」
何だろう。この人も話が分からないタイプの人間なのだろうか。
- 93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 02:27:10.34 ID:xnCYoyQIO
- (;・∀・)「いやいや、お金を払ったのは……アニジャさん、の方ですし、それに……」
( ´_ゝ`)「騙されそうになった所を助けていただいて……だろ?別にいいんだよ。
見たところ旅に慣れてなさそうだから、老婆心からちょっと助けてやりたくなっただけさ」
(;・∀・)「はぁ……」
何と心の広い人だろうか。僕も将来はこんな感じの人になりたいものだ。
( ´_ゝ`)「礼ならいらないからさ、今度会った時にでも、酒でも飲んで話そうぜ。じゃあな」
そう言うと、アニジャさんは片手をスッと挙げて、背を向けて宿屋街の方に歩いていってしまった。
( ・∀・)「あ、ありがとうございました!」
挙げられていた手が下がり、アニジャさんの後ろ姿は人混みの中に消えてしまった。
( ・∀・)「カッコいい……」
先程の話から、ファムのキャラバンであることは分かった。
いずれどこかですれ違えたらいいな、とか、そんなことを思った。
- 94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 02:28:40.45 ID:xnCYoyQIO
- ……………
(・∀ ・)「おー、ファムのアニジャかー」
(;・∀・)「……やっぱそんな有名なんだ」
宿に帰ってからマタンキにその事を話すと、そんな答えが帰ってきた。
(・∀ ・)「おう、ファムのアニジャとオトジャのコンビは有名だぞー」
何でもアニジャさんにはオトジャさんという双子の弟が居て、二人は『魔法のアニジャ』と『剣のオトジャ』という名前で通っているらしい。
- 97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 02:34:23.71 ID:xnCYoyQIO
- アニジャさんは魔法詠唱の能力がユーク以上に強く、大陸一の魔法の使い手として名が通っているのだという。
ちなみにオトジャさんの方は、大陸一の剣の使い手らしい。
何とも凄まじい双子だが、小さいときにその能力をシェラのユークに知られて、「これは世界初の例だ、非常に珍しい」などと言われて解剖されそうになった経験があるらしく、それ以来ユークがトラウマになっているのだとか。
( ・∀・)「へぇー」
(・∀ ・)「有名人に会えてラッキーだったなー」
( ・∀・)「ああ」
- 98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 02:36:12.49 ID:xnCYoyQIO
- しかし、ラッキーなんてものではない。
素晴らしい宿屋が提供されるわ、詐欺にあわずに済むわで、今日はとてもツイていると思った。
フカフカのベッドに身を委ね、明日からのスケジュールを確認する。
僕の仕事は、フロントで受付をすることらしい。
それ以外は基本的に自由だから、午前中はミネでも飲みに行こうか、と思案をめぐらせる。
(・∀ ・)「! いい匂いがしてきたぞー」
( ・∀・)「ああ、そろそろ夕食かな」
一応、僕は従業員扱いになるため、夕食は少し早めにまかないを頂くことになっている。
「おーい、モララー殿。そろそろ降りてきなさい」
( ・∀・)「今行きますー!」
下からロマネスクさんの声が聞こえた。
荷物を簡単に片付け、部屋を出る。
(・∀ ・)「早く早くー」
( ・∀・)「だから急かすなって」
部屋に鍵をかけて、階段を降りてゆく。
この旅が、こんな感じで順調に進むといいな、なんて、欲張りなことを考えながら、まずは空腹を充たすことに集中することにした。
「5:マール峠」 終
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