- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 00:18:29.20 ID:xnCYoyQIO
- 「4:瘴気ストリーム」
【ヴィップ街道】
一昨日降り始めた雨は今朝にはすっかり上がり、しっとりと濡れた木々の葉は朝日を受けてキラキラと輝いている。
雨上がりの空に小鳥が二羽舞い上がり、くるくると踊るように飛び回る。
遠くの空には虹が見え、あちらの山からそちらの山へ、まるで橋のようにかかっている。
そんな美しい光景の中。僕らはというと、
( ・∀・)「ひーまだ、ひまだ、ひーまだ」
(・∀ ・)「ォゥィェァ」
( ・∀・)「るーるーるーるー、ふふっふー」
(・∀ ・)「ォゥィェァ」
頭のネジが数本吹っ飛びそうなぐらいに暇を持て余していた。
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 00:19:41.49 ID:xnCYoyQIO
- ……………
次の目的地はマール峠。
大陸の中ほど、メタルマイン丘陵に位置している、主にクラヴァットとリルティの暮らす宿場町のような所だ。
町の中心部から三本の道が延びており、それぞれ北東の道はアルフィタリア盆地へ、西の道はジェゴン川をはさんでファム大平原へ、南の道は僕らの住むヴィップ村のあるヴィップ半島へと通じている。
その町の構造から、昔は多くの旅人で賑わっていたらしいが、今は少し寂れてきつつあるらしい。
それでも、キャラバンの憩いの場としては申し分のない所である。
( ・∀・)「ひーまひーまひま、さかなのこ」
(・∀ ・)「なんだそれー」
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 00:22:15.83 ID:xnCYoyQIO
- リバーベル街道からだと、ヴィップ街道まで戻る時間も含めて約二週間で到着する。
少々長丁場になるのだが、マール峠に着けば、そこを拠点としてしばらく滞在する予定としている。
それまでの辛抱だ、と、自分を鼓舞しつつ、何とか前進を続けている。
……とはいえ、まだリバーベル街道を発ってから三日しかたっておらず、このままの調子でやっていけるのだろうかと少し不安になる。
( ・∀・)「やってらんねーぞー!」
(・∀ ・)「うるせー!」
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 00:23:07.59 ID:xnCYoyQIO
- ここからヴィップ―マール間の瘴気ストリームまでは特に分かれ道も無く、パパオに任せておけば何の問題もない。
暇を持て余しているついでに、以前から気になっていたことについてマタンキに聞いてみることにした。
( ・∀・)「そういや瘴気ストリームってなんなの?」
(・∀ ・)「知らないのかー?」
( ・∀・)「詳しくはね。瘴気が特に濃い、竜巻みたいに渦巻いてる所だとは聞いてるんだけど……」
(・∀ ・)「あー、それじゃダメだなー」
( ・∀・)「ダメかー」
(・∀ ・)「ダメだー」
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 00:27:40.43 ID:xnCYoyQIO
- ……………
ダメな僕がマタンキから聞いた話をまとめると、こんな感じであった。
そもそも瘴気ストリームと切っても切り離せないものに、『四大属性』というものがある。
そのため、まずはそちらから話をすることにする。
四大属性とは、自然界に存在する、『火』『水』『風』『土』の4つの属性の総称のことだ。
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 00:32:32.15 ID:xnCYoyQIO
- この属性の力を受容できるものの一つに、クリスタルがある。
クリスタルケージを『ホットスポット』という属性エネルギーが密集している所に近付けることで、クリスタルが以前持っていた属性に上書きする形でそのホットスポットの持つ属性を付加させることができるのだが、
属性の力を得たクリスタルは瘴気払いの力に加えて、それぞれの持つ属性に合わせた加護の力を持つようになるのだ。
例えば、火属性ならばファイアの威力を弱めたり、風属性ならサンダーの威力を弱めたり…という感じだ。
- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 00:34:00.48 ID:xnCYoyQIO
- とりあえず、ここまでの話を簡潔にまとめるとこうなる。
……………
クリ火゚∀゚)「僕は火属性のクリスタル!」
( ・∀・)「ファイアー」
クリ火゚∀゚)+「ファイアなんかきかねぇんだぜー」
( ・∀・)「なら、ブリザドー」
クリ火;゚∀゚)「あっ、冷たい冷たい、やめてくれー」
( ・∀・)「しょうがないなぁ」
( ・∀・)つ【水】「ほーら、ホットスポットだよー」
クリ火゚∀゚)「あーれー」
↓
クリ水゚ -゚)「私は水属性のクリスタルだ。どんとこいブリザド」
( ・∀・)「そーれ、サンダー」
クリ水;゚ -゚)「え、おいちょっと待て、ブリザドはどうした」
( ・∀・)「ファイアー」
クリ水////)「ひゃあぁっ、らめぇ!熱いのらめなのぉぉぉっ!」
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 00:36:20.36 ID:xnCYoyQIO
- ……………
こんな所だ。お分かり頂けただろうか。
ちなみに、ホットスポットはミルラの木付近にしか存在しない。
何でも、その地形の持つ属性をミルラの木が増幅、凝縮させることで作られるものであるかららしい。
さて、ここで話を瘴気ストリームに戻そう。
瘴気ストリームとは、この大陸に全部で四ヶ所存在する、瘴気の濃度が極端に濃い地域の総称である。
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 00:38:29.41 ID:xnCYoyQIO
- 濃度が濃いとはいえ元は瘴気。クリスタルの力にかかれば払う程度なら楽勝である。
しかし、厄介なことに瘴気ストリームも四大属性のいずれかの属性を持っているのだ。
瘴気に属性が付加されることにより、クリスタルの加護のみでは瘴気を払えなくなってしまう。
そこで、属性の加護を受けるのである。
クリスタルとそのストリームの持つ属性を一致させることで、ストリームの持つ属性の力をクリスタルの属性による加護で中和し、クリスタル本来の力で瘴気を払うことができるようになるのだ。
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 00:39:13.91 ID:xnCYoyQIO
- 補足程度に言っておくとすれば、
ストリームと違う属性のクリスタルを持ち、ストリームを通過しようとした場合、クリスタルとストリームの属性同士が反発し合い、白いもやのような壁を生じる。つまり、通過することが不可能になるのだ。
と、このような、ある種の関所とも呼べるような場所が、瘴気ストリームである。
……とは言ったものの、まだ瘴気ストリームには特徴がある。
ここでは簡単に触れておく程度にするが、瘴気ストリームは一年毎に自身の持つ属性を変えるのだ。
これがさらに旅人を悩ませる要因となるのだが……
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 00:40:03.40 ID:xnCYoyQIO
- ( ・∀・)「まぁとりあえず、瘴気ストリームっていうのはこんな感じの面倒くさい行程を践んでから通過しなきゃならない難所、ってことだけ覚えておけば問題はないかな」
(・∀ ・)「誰に向かって言ってんだー?」
( ・∀・)「気にするな」
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 00:44:25.66 ID:xnCYoyQIO
- ……………
( ・∀・)「ふぅん」
マタンキからの説明を受け、何となく瘴気ストリームについての理解はできた。
あくまでも何となく、である。
(・∀ ・)「ちなみに、今のクリスタルの属性はクリスタルを見てやれば色でわかるぞー」
( ・∀・)「あぁ、それなら分かるよ。確か『火』だったね」
(・∀ ・)「そういやそうだなー」
以前にも、リバーベル街道でこのような話をしていたのを思い出した。
水属性ホットスポットの前で属性加護の話をしていて、その際に「寒いのは我慢できるから属性はそのままにしとこう」的な会話をしたのだ。
(・∀ ・)「あ」
今まで馬車の隣をふわふわと飛んでいたマタンキがいきなり止まった。
僕も手綱を引っ張り、パパオの歩みを止める。
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 00:45:15.44 ID:xnCYoyQIO
- ( ・∀・)「どうした?」
(・∀ ・;)「……ちょっと気になったんだけどさー」
( ・∀・)「なーにー?」
(・∀ ・;)「次のストリームの属性、確認したかー?」
( ・∀・)
(;・∀・)「いや、まさか、ね」
笑いを浮かべつつも、頭の中には絶望の二文字しか無かった。
去年のことに、兄が帰って来た際のクリスタルの属性が『火』。
また、兄は襲われてからは、ホットスポットに近寄る余裕など無かったはずである。
ここまできたら単純な計算の問題だ。
ストリームは一年がたったことで自身の属性を変化させる。
……もちろん、『火』以外の何かに、だ。
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 00:45:58.66 ID:xnCYoyQIO
- (;・∀・)「……」
(・∀ ・;)「……」
恐る恐る、モナーさんに貰った大陸図に目をやる。
大陸の南部、つまりこれから向かう先の瘴気ストリームがある所には、あの特徴的な文字で『水』という文字が書かれていた。
( ・∀・)
(・∀ ・)
(♯・∀・)「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」(・∀
・#)
パパオの手綱を強く引き、元来た道の方向へUターンさせる。
不満そうに鳴くのも気にせず鞭を振るい、僕らは猛スピードでリバーベル街道へと引き返した。
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 00:49:19.91 ID:xnCYoyQIO
- ……………
(ヽ゚∀゚)「……」
(≡∀ ≡)「……」
あの後、僕らは咽び泣きながら引き返し、リバーベル街道にてクリスタルの属性を『水』に変えた。
それからの旅路は、想像に難くないだろう。
リバーベル街道から再び出発し、
2日過ぎた頃に会話が無くなり、
4日過ぎた頃に目から光が消え、
6日過ぎた頃に頬が痩けだした。
そして今日、7日目に至って、ようやく一つの山場である瘴気ストリーム付近にまで到着した。
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 00:51:01.14 ID:xnCYoyQIO
- (ヽ゚∀゚)「……これが瘴気ストリーム」
(≡∀ ≡)「……それはただのハムだぞー」
(ヽ゚∀゚)「…………」
瘴気ストリームを口の中に放り込み、咀嚼する。
(ヽ゚〜゚)ムグムグ
(ヽ゚−゚)ゴクン
∩(ヽ゚∀゚)「やったー、越えたぞー」
(≡∀ ≡)「突っ込まないからなー」
∩(ヽ゚∀゚)「………」
スッ
(ヽ゚∀゚)「………」
( ゚∀゚)「………」
( ・∀・)「………」
( ・∀・)「ちくしょう」
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 00:54:15.61 ID:xnCYoyQIO
- 自分の不甲斐なさに、無性に腹が立った。
とにかく、これは間違いなく言える。
究極に暇を持て余すと、人は発狂する。
少なくとも、僕はそうである。
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 00:57:57.71 ID:xnCYoyQIO
- ……………
( ・∀・)「……ん?」
それからしばらく、太陽がちょうど空のてっぺん辺りに来た頃、何か空気が変化したような気がした。
目に映る景色はいつも通りなのだが、なぜだろうか、少し息苦しい。
( ・∀・)「……ストリーム?」
(・∀ ・)「おー、この距離で分かるかー」
いつの間にか復活していたマタンキが、丸っこい体を微妙に伸ばしながらそんなことを言った。
(・∀ ・)「ストリームの近くは空気が違うんだけど、それに気づける人間はあんまいないからなー」
それから「俺はもうちょい前に気づいてたけどなー」と付け加えて僕の頭の上に乗った。
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 00:59:14.09 ID:xnCYoyQIO
- ( ・∀・)「微妙な能力だなぁ」
(・∀ ・)「無くて困ることはないだろー」
( ・∀・)「……まぁ、ね」
と、そんなとりとめのない事を話しているうちに、ストリームが目に見えるまで近くに至った。
( ・∀・)「来たか」
僕は、汚い字で書かれた『この先瘴気ストリーム、注意!』の看板を一瞥し、馬車を降りて、クリスタルケージを手に取った。
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:01:19.42 ID:xnCYoyQIO
- ……………
水の属性を受けて、暗い青色をつけた瘴気が竜巻のようにいたるところに発生している。
瘴気は目に見えることでここまで禍々しく見えるのかと、そんなことを考えながら、街道をちょうど真横に分断しているストリームと対峙する。
(・∀ ・)「馬車に乗っててもいけるのにー」
( ・∀・)「いいじゃん、歩きたいんだよ」
ケージを抱え、深呼吸を一回。
キッと目を開き、瘴気ストリームの中に足を踏み入れた。
- 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:02:25.54 ID:xnCYoyQIO
- ケージからちょうど十歩程度。それぐらいの大きさの半球が瘴気を完全に払っているのが目に見える。
強い風に押し戻されそうになりながら、力強く歩みを進める。
すると、ある所を境に一気に抵抗が無くなった。
一瞬つんのめりそうになったが、体制を立て直し、辺りを見渡してみた。
どうやらストリームの内部に入ったようだ。
この半球の外では瘴気が渦巻いているのかと思うと、恐ろしいような、それでいてワクワクするような、不思議な気分になる。
- 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:03:30.82 ID:xnCYoyQIO
- ……でもまぁ、あまり気分のいいものではない。さっさと出よう。
さらに歩みを進めると、次はある所を境に一気に強い風が後ろから吹き付けてきて、僕は前へと押し出された。
( ・∀・)「……越えたのかな」
(・∀ ・)「そうだなー」
あっという間だったようにも思えたし、すごく長い間だったようにも思えた。
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:05:54.06 ID:xnCYoyQIO
- ともかくストリームを越えたということだけは強く感じていた。
先人達が通ったこの道を僕も通ったのだ、という事実に、涙が出そうになるほど感動していた。
(・∀ ・)「泣いてんのかー?」
(;う∀・)「バッ、誰が泣くか!」
パパオが後からのそのそと現れ、僕らの横で止まった。
僕とマタンキは馬車に乗り込み、ケージを馬車の中に置いた。
こういう感動があるから旅はやめられないのだろう、と思い、シブザワさんの顔を思いうかべた。
今度会ったら話してみようか。「若ぇなw」なんて言われるかもしれないけど。
- 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:07:11.89 ID:xnCYoyQIO
- ……………
「キー!キー!」
(*‘ω‘ *)「こらー、待つっぽー!」
( <●><●>)「アナタが逃げられないのはワカッテマス」
(;><)「二人とも待ってくださいなんですー!」
瘴気ストリーム通過から3日。
日が少し沈んできたころ、マール峠のキャラバンとおぼしき三人組のリルティがゴブリンを追いかけているのを見かけた。
そろそろマール峠が近いのだろうか?
そう思えば今後の旅路にも力が入るというものである。
- 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:08:32.72 ID:xnCYoyQIO
- ズベン
つ;><)つ「あぅ」
( ・∀・)「あ」
微笑みながらほのぼのと三人の様子を眺めていたら、目の前で一番小柄な男の子がつまづいて転んでしまった。
「待つっぽー」
「逃がしませんよー」
だが、二人はケージを持ったまま、男の子に気付かずに、そのままどこかに行ってしまった。
- 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:09:54.42 ID:xnCYoyQIO
- (;><)「うわぁ、置いてかれたら死んじゃうんですー!待ってください!ポッポちゃん!ベルベット君!」
(;><)「わぁぁん!苦しいんです、痛いんです!死んじゃうぅぅ、苦しいんで……す……?」
( ><)「……苦しくないんです」
(;><)「…?はっ、もしや僕は瘴気の中でも生きられる力を手に入れたのでは!?」
(*><)「そしたらすごいんです!多分僕一人が選ばれた者的な感じで英雄になれるかも……!」
(;><)「いやでも逆に、シェラのユーク達に『これは世界初の例だ、非常に珍しい』とか言われて連れてかれて、解剖されたりするかも……」
(((;><)))「うわぁぁぁ、嫌なんですー!死にたくないんですー!!」
何と妄想の激しいリルティだろうか。少し、故郷のィョゥを思い出した。
(・∀ ・)ボソ「お前、正直楽しんでないかー?」
( ・∀・)ボソ「……まぁ、うん」
- 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:10:45.15 ID:xnCYoyQIO
- ……………
( ><)「助かったんです!ありがとうなんです!」
( ・∀・)「いや、僕はたまたま通りかかっただけだから……」
予想通り、彼らはマール峠のキャラバンであった。
ちなみに彼はビロードという名前で、今年で14歳になるらしい。
( ><)「それでもありがとうなんです!」
( ・∀・)「いやいや。それにしても、マール峠では14歳からでもキャラバンに入れるんだね」
……彼の見た目からはとても14歳とは思えないのだが。
まぁ、そもそもリルティという種族自体が小柄な方であるから、一概にそうとも言えないだろうな、とは思う。
- 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:11:41.12 ID:xnCYoyQIO
- ( ><)「お兄さんの所では、キャラバン入りに歳が関係あるんですか?」
( ・∀・)「うん。16歳からじゃないとキャラバンになれないんだ。だから、僕はギリギリ今年から大丈夫なんだ」
( ><)「へぇ、変わってるんですねー。僕は一昨年から入ってるんですよ!」
ふぅむ。そしたら彼の方が、キャラバンとしては先輩になるんだな。
そのことを話すと、
(*><)「年上の後輩なんて、変な気分です!」
とのことだった。
- 48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:12:42.29 ID:xnCYoyQIO
- ……………
「……貴女がわるいんですからね!」
「元々ケージを持ってたのはお前だっぽ!」
( ・∀・)「お」
その後色々と話をしていたら、先程の二人がぎゃあぎゃあ言いながら、ものすごいスピードで帰ってきた。
まぁどれだけ急いで戻ってきても、これだけの時間放って行かれてたんだ。
僕が居なければ間違いなく彼は死んでいただろう。
- 50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:13:30.57 ID:xnCYoyQIO
- (;*‘ω‘ *)「ビロードォォォ!!!」(<●><●>;)
( ・∀・)「うわ」(・∀ ・)
(*><)「おかえりなんですー」
(;*‘ω‘ *)「何ぃぃ!?ビロードが瘴気の中で普通に生きてるっぽ!」
(;<●><●>)「もしやビロードは瘴気の中でも生きていられる力を手に入れたのでは!?」
(*‘ω‘ *)「そしたらすごいっぽ!多分ビロード一人が選ばれた者的な感じで英雄になれるかもしれないっぽ!」
(;<●><●>)「いやでも逆に、シェラのユーク達に『これは世界初の例だ、非常に珍しい』とか言われて連れてかれて、解剖されたりするかも知れませんよ……」
(;*‘ω‘ *)「うわぁぁぁ!ビロード、死ぬな(っぽ)ー!!!」(<●><●>;)
(・∀ ・)「……」
( ・∀・)「言葉もねぇや」
- 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:15:12.28 ID:xnCYoyQIO
- ……………
(*‘ω‘ *)「アンタのおかげで助かったっぽ!ありがとうっぽ!」
( <●><●>)「クラヴァットのくせに中々やりますね……まぁ、ありがとうございます」
( ・∀・)「くせにって…まぁ、たまたま通りかかっただけですから。気にしないでください」
残る二人の、女の子の方がポッポちゃんで、男の子の方がベルベット君だそうだ。
こういう呼び方ではあるが、一応彼らの方が歳上である。
彼ら曰く「こっちの方がいい」とのことであるので、こう呼ばせてもらっているのだが。
- 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:16:00.97 ID:xnCYoyQIO
- ちなみに、ベルベット…君は、ビロード君の兄であるらしい。
( ・∀・)oO(あんま似てないな)
(*‘ω‘ *)「ともかく、アンタのおかげで助かったのは事実だっぽ!何かお礼をするっぽ!」
( ・∀・)「あぁ、ホントに気にしないで大丈夫ですから……」
( <●><●>)「いえ、形はどうあれ、貴方はうちのかわいいビロードの命の恩人ですから」
(*‘ω‘ *)「うーん、何かあったかっぽ……?」
ううん、ここまで言われてなお断るのは逆に失礼かもしれない。
ここは素直に受け取っておこうかな。
- 53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:17:28.97 ID:xnCYoyQIO
- ( ><)「ポッポちゃん、こないだの剣とかはどうですか?」
(*‘ω‘ *)「! それっぽ!ベルベット、取ってくるっぽ!」
( <●><●>)「なんで私が……」
ブツブツ言いながらも、言うことを聞いて馬車へと向かうベルベット…君。
( ・∀・)oO(力関係がはっきりしてるなぁ)
(*‘ω‘ *)「それにしても、ビロードはすごいっぽ!よく覚えてたっぽ!」
ビロード君をべた褒めしながら彼の頭を撫でまわすポッポ…ちゃん。
( ・∀・)oO(ほのぼのの極み)
(*><)「へへっ、照れるんです!」
ビロード君の様子から、彼は二人から凄まじい愛情を受けているのが見てとれる。
( ・∀・)oO(なら何で転んでも気付かないかなぁ)
- 55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:20:54.70 ID:xnCYoyQIO
- (♯<●><●>)「こら、ビロードの独り占めは許しませんよ。……ほら、こいつでしょう?」
(*‘ω‘ *)「おぉ、それっぽ。えーと……」
( ・∀・)「あぁ、モララーです。ヴィップ村の」
(*‘ω‘ *)「モララー君っぽね。はい、これはお礼っぽ」
( ・∀・)「ありがとうございます」
渡されたのは一本の剣だった。
今使っているものよりかなり軽く、若干細身の刀身である。
今までの剣では叩き斬るという戦い方をしていたが、この剣では断ち斬るという戦い方が主になるだろう。
( ・∀・)「……でも、本当にいただいちゃって大丈夫なんですか?」
- 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:25:50.06 ID:xnCYoyQIO
- (*‘ω‘ *)「あぁ、そのことなら……材料が余ったから試しに作ってみたんだっぽ。結構出来はよかったんだけど、ほら、ウチらはみんな槍使いだから、剣を使う機会がないんだっぽ」
( ・∀・)「はぁ、なるほど」
確かに、大半のリルティは自分の身長よりも長い槍を使うことが多い。
攻撃のリーチの短さを補う為である。
( <●><●>)「私が作りましたから、品質は保証できますよ。
見たところなかなかいい剣をお持ちのようですが、旅は何があるか分かりませんからね。もう一本ぐらいあっても損はありませんよ」
( ・∀・)「あぁ、お気遣いまで、ありがとうございます」
今までの剣に加えて、新しい剣を背負う。
二刀流はやめて、使い分けることに重きをおこう。
( ><)「こちらこそ、ありがとうなんです!」
( ・∀・)「どういたしまして」
- 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:28:26.09 ID:xnCYoyQIO
- ……………
日が暮れてきていたのでキャンプを張り、そのまま4人(とマタンキ)で談笑しながら眠りについて、そして夜が明けた。
空は相変わらず透き通るような青色をしていて、朝の清々しい風が街道に吹きわたっている。
( ・∀・)「……それじゃ、色々とお世話になりました」
(*‘ω‘ *)「こちらこそっぽ。モララー君はこれからマール峠に向かうっぽね?」
( ・∀・)「ええ。しばらく拠点にしたいなと思ってます」
マール峠では大体1週間ほど、観光を兼ねて旅の疲れをとる予定にしている。
- 59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:29:35.82 ID:xnCYoyQIO
- (*‘ω‘ *)「それなら、宿は『ラウンジ亭』ってとこに行くといいっぽ。手紙を送っておいたから、ウチの名前を出したら安くしてくれるはずだっぽ」
( ・∀・)「あ、何から何までありがとうございます」
旅は何かと入り用なので、とても助かる。
よき出会いに感謝しなければ。
( <●><●>)「こんな危険な旅です。助け合いの心、ですよ」
( ><)「ありがとうなんです!」
ベルベット君がぺこりと頭を下げ、ポッポちゃんとビロード君がぶんぶんと手を振る。
( ・∀・)「それじゃ、また。ありがとうございました」
( ><)「またね、なんです!」
( <●><●>)「ご縁があれば、また」
(*‘ω‘ *)「頑張れっぽー!」
- 61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 01:32:57.10 ID:xnCYoyQIO
- 馬車に乗り込むと、パパオはのそのそと動き始めた。
三人の姿が次第に遠くなってゆく。
(・∀ ・)「いいやつらだったなー」
( ・∀・)「また、会えたらいいね」
マール峠へはもう3日を切った。
晴れ渡った空の下。あの三人の顔を思い出しながら、マタンキが居るとはいえ、やっぱ仲間が欲しいな、とか、そんなことを思っていた。
「4:瘴気ストリーム」 終
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