37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 01:23:06.93 ID:SPTXA5EUO
【ヴィップ村】

真っ白な朝日が窓から差し込んでくる。

目覚めたばかりの僕にとっては少し眩しすぎるが、これ以上に旅立ちにピッタリの朝は無いだろう。

( >∀<)「んー、」

( ・∀・)「ふぅ。うん、いい朝だ」

軽く体を伸ばし、ベッドから出る。

体が軽い。旅立ちへの興奮からだろうか、何となく落ち着けないでいる自分を感じる。

まあ焦らなくてもいいさ、と、深呼吸をする。澄みきった朝の風が肺を満たしていく。

静かな朝の空気に耳をすますと、まだ見ぬ広い世界が僕を呼ぶ声が聴こえた気がした。
40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 01:26:24.73 ID:SPTXA5EUO



一年目『ヨーイドン』
“今旅立ちを告げるよ”



「1:旅立ち」




42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 01:27:27.85 ID:SPTXA5EUO
キャラバンの旅立ちは早い。一年もの時間があるとはいえ、それは同時に一年しか期限が無いとも言えるのだ。

( ・∀・)oO(昨日、あらかた準備は済ませたけど、最終確認をしとこう)

ふと窓の外を見ると、見慣れた村の景色が見えた。しばらくはこの景色ともお別れかと思うと、寂しいようなワクワクするような、なにか不思議な気分になる。

隣のシィの家の庭、眠たそうに仕事の支度をするハインの父さん、風に揺れるショボンの魔石型ボール、そして、大クリスタル。

まさに村の守り神とも言えるであろう、この大クリスタル。こいつが無ければ僕はここで呼吸をすることすら許されない。

( -∀・)oO(ありがたいことだ)

大クリスタルは、日の光を受けて強力な光源のようになっている。直視すると目がやられそうなので、軽く目を瞑って手を合わせた。

( -∀-)oO(僕の旅が成功するよう、お守りください…と)
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 01:28:41.35 ID:SPTXA5EUO
これからは、僕がキャラバンとして大クリスタルと村を守っていくんだ。

(;-∀-)oO(……うぅ、やっぱり緊張する)

というのも、今回は異例なことに僕一人しかキャラバンのメンバーが存在していないのだ。

その辺のことは……僕が頑張るしかないな。

( ・∀・)「さて、準備をさっさと終わらせるか」

何でもない事を声に出し、自分に語りかけてみた。緊張が少し解れた気がした。
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 01:39:54.14 ID:SPTXA5EUO
( ・∀・)「これはこの袋で、これは…いらないかな?」

旅立ってしまうと、ほんの小さな忘れ物が致命的なミスとなって襲ってくる。

ちなみに、以前までのキャラバンで一番大変だった忘れ物は「爪切り」らしい。

……地味に大変かもしれない。僕は気をつけよう。

( ・∀・)「やっぱ入れといて、うん。準備完了!」

日用品を入れた袋の口を閉じた時、部屋のドアがノックされる音が聞こえた。
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 01:41:10.71 ID:SPTXA5EUO
|゚ノ ^∀^)「おはよう、モララー。準備はできた?」

( ・∀・)「おはよう、母さん。ちょうど今終わった所」

入ってきたのは母だった。母は少し寂しそうな表情をしていたが、気付いてないフリをしておいた。

|゚ノ ^∀^)「そう。朝ごはんができてるから食べなさいね」

( ・∀・)「わかった、すぐ行く」

旅に持っていく荷物を両脇に抱え、僕は居間へと向かった。
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 01:42:19.90 ID:SPTXA5EUO
……………

テーブルの上には既に朝ごはんが並べられていた。

焼きたてのいなかパン、スクランブルエッグ、焼いたベーコン、ゆで卵、オムレツ、ポテトサラダ、温泉卵、ソーセージ、目玉焼き、卵スープ、

(;・∀・)oO(卵多ッ!)

|゚ノ ^∀^)「さあさ、冷めないうちに食べちゃいなさい」

やけに腹にズシンとくる朝ごはんを食べる。

どうでもいいが、僕はどちらかというと白身より黄身の方が好きだ。やはり卵のメインは黄身だと思う。
白身も嫌いではないけど、特にゆで卵に顕著に現れるあの何とも言えない臭みはあまり好ましくない。
53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 01:44:08.25 ID:SPTXA5EUO
(;・∀・)「うぇっぷ」

あらかた食べ終わり、牛乳で黄色い悪魔を流し込む。

ちょっと休んでから行こうかな、とか思ったが、気持ちは既に旅立ちに向かっていて。

荷物を馬車に積み込んでしまおうと思い、母に「ごちそうさま」と告げて、荷物を持ち、家を出た。

54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 01:46:10.79 ID:SPTXA5EUO
……………

( ´∀`)「やあモララー。おはようモナ」

( ・∀・)「あ、モナーさん。おはようございます」

家の前で村長のモナーさんに出会った。語尾が特徴的な恰幅のいいクラヴァットのおじいさんだ。

( ´∀`)「元気そうで何よりモナ。もう旅立つモナ?」

( ・∀・)「いえ…まぁそろそろかなとは思っていますが」

家の前に停めてある馬車をちらりと見る。武器やクリスタルゲージは既に積み込んであるから、食料などの積み込みが終わればいつでも出発できる。
55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 01:47:22.46 ID:SPTXA5EUO
( ´∀`)「……モナ。一人旅で大変だとは思うけど、アルフィタリアやファムの方にも支援を頼んでおいたモナ。だから、困ったことがあったらいろいろと助けてもらうといいモナ」

( ・∀・)「あ…色々ありがとうございます」

( ´∀`)「モナ。ご両親はいるモナ?」

( ・∀・)「はい、たぶんリビングに」

( ´∀`)「モナナ。ありがとう」

そう言って、モナーさんは僕の家に「おじゃましますモナ」と言って入っていった。

改めて考えたら変なのは語尾だけじゃないな、とか思いつつ、玄関に置いていた荷物を馬車に積み込んでいく。
58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 01:48:54.49 ID:SPTXA5EUO
( ・∀・)「……うーむ」

備えあれば憂いなしと、名も無き冒険家の伝記に書いてあったが、備えすぎるとそれもそれで憂いなんじゃあないか、と。
禍々しさすら感じる、『動く要塞』と呼んでも差し支えのない見てくれとなった馬車を見ているとそう思ってしまう。

……少し減らそう。今気付いたが、僕が乗るスペースが無い。
60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 01:52:01.06 ID:SPTXA5EUO
何を減らそうか考えつつ、ゴソゴソやっていると隣の家の扉が開く音がした。

( *-д-)「うあ゙ぁ〜」

( *-д゚)「あ?」

(;*゚д゚)「あ?」

( ・∀・)「あ」

何だ、シィか。どこかのオッサンかと思った。

( *゚д゚)「今、何か失礼なこと考えなかった?」

( ・∀・)「いや、別に。というか地の文を読むな」

このクラヴァットの女の子はシィ。いわゆる幼なじみというやつだ。

61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 01:53:23.05 ID:SPTXA5EUO
(;*゚ー゚)「ってか、コイツ一体何よ?魔物でも入ってきたのかと思ったじゃない」

( ・∀・)「見りゃ分かるでしょうよ。馬車だよ」

兄の前の代から使っているそれなりに年季の入った代物だ。当時では一番質のいいものだったらしい。

( *゚ー゚)「……でも、私の知ってる馬車に角は生えてないんだけどなぁ」

( ・∀・)「あぁ、あれはテントだよ」

( *゚ー゚)

( ・∀・)「テント」

( *゚ー゚)

( *゚ー゚)「馬車で寝ればいいじゃん」

( ・∀・)「違うなぁとは思ってた」

62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 01:55:02.87 ID:SPTXA5EUO
……………

シィと、途中から現れたショボンの手により、馬車は最終的に半分の大きさになった。

ちなみに僕はというと、わざわざ備え付けたキッチンを外されそうになったのを止めようと喚いていた所、「うるさい」と、シィにボコボコにされて大クリスタルに縛り付けられていた。
(#)・∀゚)「あの…」

( *゚ー゚)「うるさい」

(´・ω・`)「八割ぐらいは君が悪いよ」

しまった。ショボンにすら見捨てられてしまった。

とはいえ、かなりの知識人であるユークのショボンに否定されてしまったからには、やはり僕が悪いと認めるほかないのだろう。

……でも、少し癪だ。
64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 01:58:14.96 ID:SPTXA5EUO
( *゚ー゚)「さて、と。こんなもんだね」

(´・ω・`)「……タンスを妥協してあげた寛大さには頭が下がりますよ」

( *゚ー゚)「あれ?誉めてくれてるのかな?」

(´・ω・`)「嫌味ですよ」

「タンスは必要だ!」という僕の必死の抗議は無視されてしまうかと思っていたが、そこは妥協してくれたようだ。

「女神よ!」と叫んだら、にっこり笑いながら石ころをぶつけてきた。

気分は罪人だ。

65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 02:02:10.16 ID:SPTXA5EUO
( ・∀・)「それでさ、そろそろおろして欲しいんだけど」

石ころの砲撃が終わったころに、ささやかな提案をしてみた。が、

( *゚ー゚)「いや、たぶんむり」

の一言にあっさりと却下されてしまった。

( ・∀・)「……えー」

(´・ω・`)「ゴブリンみたいな顔して怒りに任せて結んでましたから。たぶん結び方を覚えてないんじゃないですかね」

( *゚ー゚)「お前逆さ吊りな」

(´・ω・`)「やれるものならどうぞ」

( *゚ー゚)「ファック」

( ・∀・)「おいこら、お前ら」

二人はぎゃあぎゃあと喚きながら取っ組み合いを始めてしまい、僕はおろしてもらうタイミングを見失ってしまった。

66 :ねむい:2009/04/26(日) 02:04:27.85 ID:SPTXA5EUO
( ・∀・)oO(困ったなあ)

しかし、大クリスタルからの眺めはなかなかで、これはこれで悪くないんじゃないかな、とも思う。

ははっ。ィョゥのやつ、また親父さんに怒られてる。

……。

いやいや、あんまりのんびりしてもいられない。

( ・∀・)oO(あの二人はアテにならないとして…)

( ・∀・)oO(ん…あれは)

( ・∀・)「おーい、そこの君ぃ!ちょっと来てくれー!」

ぴょこぴょこと動いている赤毛が見えたので、これはチャンスだと思い、声をかけてみた。

……お、気付いてくれたみたいだ。
70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 02:06:38.19 ID:SPTXA5EUO
ノハ*゚听)「やっほー!どうしたんだー!?」
  _,
( ・∀・)

ぱたぱたと駆けてきたのはリルティのヒートだった。
…彼女に頼むのは些か不安だが、この際仕方ない。
  _,
( ・∀・)「ん、いや、ちょっとね。その、こいつを、いや、ロープをさ。『ほどいて』ほしいんだけノハ*゚听)「わかったぞぉぉ!」

そう言うと、ヒートは道端に落ちていた石ころを拾って
(#;・∀・)「『ほどいて』くれっつったんだよぉ!」

ノハ#゚听)「とうっ!」

大きく振りかぶって僕に向かって投げつけた。

真っ直ぐに飛んできた石ころは僕の体すれすれの位置でロープにぶつかり、固く結ばれていたはずのロープは意外にすんなり、ぷつんと切れた。
しかし、そのまま石ころは勢いを殺さず大クリスタルに直撃した。石ころは砕け散り、大クリスタルは欠けた。
僕はロープという支えを失ったことにより落下を始める。
ヒートは満足気な表情でガッツポーズをし、ショボンはぽかんとした表情を浮かべ、シィは大爆笑した。

(;-∀・)oO(ちくしょう、だから嫌だったんだ)

尻に鈍痛を感じ、身体中に痺れが走る。

朝の空にシィの笑い声が響き渡った。

71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 02:07:36.53 ID:SPTXA5EUO
……………

(♯´∀`)「まったく君たちは、大クリスタルを何だと思ってるモナ」

ノハ ;;)*-д-);´・ω・`)「すみません…」

(;・∀・)oO(ううむ)

まぁ二人は仕方ないとして、ショボンはとばっちりだなぁと思う。

クリスタルが欠けたことについては、バレたら彼女らはモナーさんご自慢の剣で叩き斬られることになるだろうから、そこは黙っておいてあげた。
欠片は、今は僕のポケットの中に入っている。

モナーさんのモナモナという怒り声が響き渡る。

すでに日は高くなり、旅立ちに予定していた時間より少し遅くなってしまった。そろそろ出発したいところなんだけどな。
74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 02:08:33.77 ID:SPTXA5EUO
( ・∀・)「あのー、そろそろ…」

( ´∀`)「…モナ。そうモナね。家族のみんなを呼んでくるモナ」

( ´∀`)「あー、君たちはここに残ってモララーの見送りをするモナ」


( *゚ー゚)「ちぇー」

(´・ω・`)「言われなくてもそのつもりでしたけど」

ノハ ゚听)「はーい」

( ・∀・)「一人対応のおかしいやつがいた」

( *゚ー゚)「気にしちゃダメだよ」

( ・∀・)「自覚はあるんだね、よかった」
76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 02:09:40.89 ID:SPTXA5EUO
……………

|゚ノ ^∀^)「……そろそろ出るのね?」

( ・∀・)「うん、もうすぐ」

|゚ノ ^∀^)「わかったわ、皆を呼んでくるわね」

母さんの目元が腫れていた。さすがに気づいてない振りはできなかった。

兄さんがあんなになってしまったから無理もない。
本当は僕だって行かせたくないのかもしれないけど、そうしたら村を守る人が居なくなってしまう。
仕方のないことなんだ。

77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 02:10:33.47 ID:SPTXA5EUO
もちろん、死ぬつもりはない。絶対に村にミルラの雫を届けるんだ。
一人は不安だけど、僕は絶対にこの役目をやりとげてみせる。
だから、心配しないで、僕の旅立ちを見守っていてほしいんだ。

( ・∀・)oO(我ながら臭いセリフだ)

面と向かって言うのは照れ臭いから、心の中にしまっておく。

だからせめて、旅立つ時には僕は笑顔でいよう。

台所のしましまリンゴを一つ掴み、かじりながら家を出た。
79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 02:11:43.78 ID:SPTXA5EUO
( ´∀`)「旅立ちの儀というのは、いつでも派手に行われるものではないモナ」

( ・∀・)「慰めなどいらぬ」

( *゚ー゚)「強がらなくてもいいんだよー」

(´・ω・`)「ぐりノハ*゚听)「ぐりーんだよー!」

|゚ノ ^∀^)「あらあらうふふ」

(´・_ゝ・`)「……」

旅立ちの前にはその家族や友人が見送りに来る「旅立ちの儀」というものがある。
儀式と銘打ってはいるものの、何のことはない、ただの見送りだ。

普段はキャラバンのメンバーの家族やら友人やらを含めて、かなり賑やかなものになるのだが、残念なことに今年はモナーさんと奥さんのペニサスさんを含んでも七人しか居なかった。

別に村人総出で「いってらっしゃい!」とまでは必要ないが、強がってみたもののちょっと寂しい。

80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 02:12:46.59 ID:SPTXA5EUO
( ・∀・)「兄さんは…?」

|゚ノ ^∀^)「呼んだんだけど、ね…」

( ・∀・)「そっか…」

予想していたこととはいえ、やはり身内がこないのはつらい。
…とはいえ、兄の抱いているであろう感情や葛藤も、分からない訳ではない。

81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 02:14:04.39 ID:SPTXA5EUO
( ・∀・)「…ん、まぁとりあえず頑張ってくるよ」

(´・ω・`)「あ、ちょっと待ってください」

そう言って、ショボンはポケットから何かアクセサリーのような物を取り出した。

(´・ω・`)「これ。家に資料があったから試しに作ってみたんです。テストも兼ねて使ってみてください」

( ・∀・)「テストって…まぁ、ありがたく受け取っておくよ」

見たところ時計細工のようだ。守りの魔法がかかっているのか、ほんのり魔力を感じる。
84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 02:16:32.21 ID:SPTXA5EUO
( *゚ー゚)「あ、じゃあ私もついでに」

( ・∀・)「……?なんだい、こいつは」

( *゚д゚)「あー、ひっどいなぁ。見りゃ分かるでしょうよ。お守りだよ、お守り」

( ・∀・)「……でも、僕の知ってるお守りに角は生えてないんだけどなぁ」

( *゚ー゚)「ああ、それは縫い針だよ」

( ・∀・)

( *゚ー゚)「縫い針」

( ・∀・)

( ・∀・)「処理ぐらいしとけよ」

( *゚ー゚)「裁縫なんかできねーんだよ」

…いや、魔物払いという面から見たらこれは正しい姿なのかもしれないな。
掌サイズのくせにいやに重い。呪われてるんじゃねーのか。

捨てても呪われそうなので、一応ポケットに入れておこう。
…チクチクする。

85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 02:17:24.36 ID:SPTXA5EUO
ノハ;゚听)「しまった、何も用意してなかった!」

( ・∀・)「ああ、いいんだよ。そんな気を使わなくて大丈夫だから」

ノハ ゚听)「いや、私も何か役にたちたいぞ!」

役に、ってもこいつらのは役に立ちそうにもないんだけどな。
シィのに至っては痛いし。むしろ邪魔をされている気分だ。

「ちょっと探してくる!」、と言ってヒートはどこかに行ってしまった。

……ホントに別にいいのに。

86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 02:18:25.90 ID:SPTXA5EUO
( ´∀`)「モナ…。すまないが、モナからは餞別を用意してやれなかったモナ。代わりにと言っては何モナが」

( ・∀・)「いえいえ、これは?」

渡して貰ったのは、地図のようなものだった。この大陸の略図と、「火」「水」といった文字が書かれている。

( ´∀`)「この大陸の随所にある『瘴気ストリーム』というものの属性を表した地図モナ。そう遠くまで行くことはないと思うが、いずれは通る道モナ。持っていきなさい」

( ・∀・)「はい、ありがとうございます」

('、` 川「たまには家族に顔を見せておやり」

( ´∀`)「君の働きに期待しているモナ」

ぺこりと頭を下げ、肩に下げたカバンに地図を入れた。

87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 02:21:03.57 ID:SPTXA5EUO
|゚ノ ^∀^)「モララー…」

(´・_ゝ・`)「母さん、モララーももう立派な大人なんだ。笑顔で見送ってやりなさい」

父さんが母さんをなだめている。いつもは寡黙な父だが、こういう時は頼りがいがあるなぁ、と思う。

|゚ノ ^∀^)「……そうよね、うん」

|゚ノ ^∀^)「はい、モララー。少ないけれど持っていきなさい」

母さんが、紙に包んだギルを渡してくれた。
今まで持ったことのない金額だが、旅にはきっと入り用なのだろう。ありがたく受け取っておく。

( ・∀・)「ありがとう。……行ってきます」

(´・_ゝ・`)「また、手紙を送るから。困ったことがあれば何でも言いなさい」

( ・∀・)「わかった、ありがとう」

改めてみんなの顔を見渡す。家族、友達、村のみんな。

皆の平和な日常を守るため、僕は旅立つんだ。
89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 02:22:35.72 ID:SPTXA5EUO
( ・∀・)「じゃあ、もうそろそろノハ#゚听)「ちょっと待ったぁぁぁ!」

村の出口の前にある坂を転がるようにヒートが駆けてきた。

ノハ ゚听)「さっきたまたま空から降ってきたんだ!」
そう言ってヒートは右手に握りしめていた燃えるように赤い羽を僕に差し出してきた。

ノハ ゚听)「たぶんお守りだ!」

( ・∀・)「…うん、ありがとう」

正直、何と言っていいかはわからないが、気持ちは分かるから受け取っておこう。
91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/26(日) 02:24:23.69 ID:SPTXA5EUO
( ・∀・)「それじゃあ…行ってきます」

( *゚ー゚)「がんばってね〜」

(´・ω・`)「死なないでくださいね」

ノハ*゚听)「おみやげ期待してるぞ!」

( ´∀`)「村の未来を頼むモナ」

('、` 川「たまには家族に顔を見せておやり」

(´・_ゝ・`)「楽しんできなさい」

|゚ノ ^∀^)「元気で帰ってくるのよ…」

( ・∀・)「ありがとう、行ってきます」

馬車に乗り込み、肩のカバンを下ろす。
パパオに軽く鞭をうつと、馬車はゆっくりと動きだした。

村を出る瞬間。瘴気と清浄な空気を分かつ、不可視の壁を通りすぎる感覚がした。

ここから先は、クリスタルケージ無しでは生きていけない世界だ。

それでも、今まで憧れてきた世界。僕が見たかった世界なのだ。

父の言葉通り。この旅を楽しんでやろうと、そう思った。

「1:旅立ち」 終

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