2 :全体的なあらすじ :2008/11/18(火) 00:06:30.30 ID:Wfh6lOA0
 聖杯。それは手に入れた者のどんな願いをもかなえるといわれる伝説の魔術道具。これを求め、7人の魔術士がそれぞれ
7人の使い魔“サーヴァント”を従え、命懸けの戦いを繰り広げる“聖杯戦争”がVIP市で行われようとしていた。

 魔術士見習いの中学生ブーンはある日、ふとした事から死んだ母親によく似た女性、『騎兵<ライダー>』のサーヴァント
クーに命を救われる。魔術の師匠である従姉妹のツンや聖杯戦争の管理人ショボンの説明を受け、
亡き母の復活を夢みてブーンは聖杯戦争への参加を決意する。

 幼い容姿の天才魔術士アヤカスフィールに最強最悪の『剣士<セイバー>』、阿部孝和。
研究肌の魔術士プギャーに、悲劇の複製少女『槍兵<ランサー>』。
老獪陰湿なロマネスクと、伝説の狙撃手『弓兵<アーチャー>』。
裏社会に生きる格闘家ハインリッヒに戦闘狂の『暗殺者<アサシン>』“ギコ”。
ツンやそのサーヴァント『狂戦士<バーサーカー>』ドクオに助けられながら、ブーンはクーとともに聖杯戦争を戦い続ける。

 そんな中現れた最後のサーヴァント『魔術士<キャスター>』シィナ。自らを召還した魔術士を殺したギコに惚れ、
行動を共にするという変り種の彼女は、実はクーの生前の主だった。幾度かの衝突やギコの死もあり、決別する二人。
 その後、町中を巻き込んで暴走を開始したシィナ。ショボンやアヤカスフィール達と組んで敵の根城に突入し、
シィナを倒したブーン達だったが、直後、彼女の残留思念ともいえる魔道兵器・ガットゥーゾが町中に突如あらわれた。
 町の平和を取り戻すべく奮闘する一同。主人公の出番は? ツンの秘密兵器とは? そして聖杯を手にするのは一体誰なのか──


 あと1話ですべての伏線が回収できるかだろうか。それは書いてる作者にもわからない。
ともあれここに『聖杯戦争』シリーズ、1部より先に第2部完結ッ!
3 :主に『Fate』を知らない人のための用語解説:2008/11/18(火) 00:08:52.57 ID:Wfh6lOA0
魔術士:魔術を操る人間。基本的に祖先に魔術士がいないと魔術士になることはできない。“魔法使い”ではないので注意が必要。
魔法使い:現代の技術で不可能な事(例:時間跳躍)を魔術で実現できる魔術士のこと。
聖杯:あらゆる願いを叶えるといわれている、伝説の魔術道具。早い話がドラゴンボール。
   現在は“長門由希”の姿をとり、現界している。
聖杯戦争:7人の魔術士(マスター)が聖杯をめぐり、サーヴァントとともに繰り広げる殺し合い。早い話がバトロワ。
マスター:サーヴァントを召還した魔術士。マスターでないと、聖杯を使役することはできない。
管理人:聖杯を管理し、勝ち残ったマスターに与える事が仕事。管理人は聖杯を使用できない。
サーヴァント:全ての時間軸・全ての世界から“英雄”と呼ばれる存在を聖杯の力を用い、基本無作為に現世に召還したもの。
     サーヴァントを呼び出したマスターと主従関係を持つ。正体を敵に知られぬよう、基本的に彼らは兵種で呼ばれる。
『剣士<セイバー>』:剣士の英雄。本編では「セイバー=阿部孝和」
『槍兵<ランサー>』:槍使いの英雄。本編では「ランサー=フェイト=テスタロッサ」(敗北済)
『弓兵<アーチャー>』:弓兵の英雄。本編では「アーチャー=エルヴィン=ケーニヒ」(敗北済)
『騎兵<ライダー>』:騎兵の英雄。本編では「ライダー=川 ゚ -゚)=クー」
『魔術士<キャスター>』:魔術士の英雄。本編では「キャスター=(*゚ー゚)=シィナ」(敗北済?)
『暗殺者<アサシン>』:暗殺者の英雄。本編では「アサシン=(,,゚Д゚)=弁慶」(敗北済)
『狂戦士<バーサーカー>』:狂戦士の英雄。本編では「バーサーカー=(‘A`)=ドクオ」(敗北済?)
令呪:サーヴァントと契約した魔術士がもつ、サーヴァントに対する強制命令権。最大3回まで行使が可能。
     サーヴァントの嫌がる命令を通したりできる。最大回数使い切ると、マスターとしての資格を失う。
宝具:サーヴァントがそれぞれ持っている切り札。壮絶な威力を持つものも多いが、魔力を膨大に消費する。
固有結界:基本的に魔術士のみしか使えない、魔術のひとつの到達点。自分のおもいままになる空間を形成する。

原作:TYPE-MOON制作のエロゲー『Fate/stay night』のこと。
   当ブーン小説の基本設定、主な話の展開はこのゲームおよび同名のアニメから拝借されているものが多い。
4 :簡易登場人物紹介 :2008/11/18(火) 00:11:01.93 ID:Wfh6lOA0
('A`) ドクオ:正体不明のサーヴァント『狂戦士<バーサーカー>』。いちおう主人公。
十話くらい前に阿部に敗北し、それ以後出番がない。
ξ゚听)ξ ツン:ブーンの従姉妹で、一流魔術士女子高生。サーヴァントは『凶戦士<バーサーカー>』ドクオ。

( ^ω^) ブーン:亡き母に似た『騎兵<ライダー>』クーとともに聖杯戦争に参加している見習い魔術士中学生。
川 ゚ -゚) クー:宝具『突撃槍<ランス>』をもち、巨大な“イヌ”を駆るサーヴァント。生前はキャスターに仕えていた騎士だった。
▼・ェ・▼ ビーワン:クーの愛イヌ。ブーン達の盾となり、消滅した
从'ー'从 アヤカスフィール:ロリロリ魔術士。ブーンに惚れた。ツンとは腐れ縁。サーヴァントは『剣士<セイバー>』阿部孝和。
阿部さん:『くそみそテクニック』からの出演。肉弾戦を得意とする優勝候補。男には滅法強い。

('、`*川 伊藤ペニサス:アヤカスフィールに仕えるメイド。人間。高岡貴子は恩師。
从 ゚∀从 ハインリッヒ高岡:関西弁を操る格闘家。元聖杯戦争のマスターで、現在はブーン達に協力中
从*゚∀从 高岡貴子:ハインリッヒの叔母。『黄金家政婦<ゴールドメイド>』。ペニサスに頼まれて駆けつけた助っ人その1
(*゚∀゚) つー:本名は十六夜咲夜。『黄金家政婦<ゴールドメイド>』助っ人その2で、時間を操る程度の能力を持つ。ナイフ投げが得意。
(´・ω・`) ショボン=ノウレッジ:半人半霊の聖杯戦争管理人。ブーンの後見人。めっちゃタフ
lw´‐ _‐ノv 長門有希 :対魔術願望増幅用ヒューマノイドインターフェース、“聖杯”。

(*゚―゚) シィナ:マスター不在の『魔術士<キャスター>』。惚れていたアサシンの死によって暴走。
   街の住民を犠牲にして魔力を蓄え、神殿「シィナ城」でブーン達を迎え撃ち、消滅するも……
ガットゥーゾ:キャスターに召還された全長10Mの魔道兵器。街中なのにミサイルとか魔力ブレスとか撃ってくる。
   召還者(キャスター)の魂の一部が宿り、そこに蓄えられた魔力が尽きるまで暴走可能。

5 :その3 [sage]:2008/11/18(火) 00:14:18.56 ID:Wfh6lOA0
 これで何度目だろうか。
阿部の投げつけたスパナがミサイル群にぶつかって誘爆をおこし、爆風の中へクーが飛び込んでいく。
『突撃槍<ランス>』をガットゥーゾの膝(?)部分にたたきつけ、そのまま相手の背後へと駆け抜ける。
その攻撃を意にかえさずに足をあげ、阿部を狙うガットゥーゾ。踏みつけと同時に無造作に放たれた魔術兵器のうち
三人の魔術士、二人のメイドが撃墜できずにいたものが街中に着弾し、大気をゆるがしていた。


从 ゚∀从「……もう何がなんだかわからん」

('、`*川「全くです。多少は攻撃もゆるくなってきましたが……」

(´・ω・`)「先は長いな……いや、短いのか……」

ξ゚听)ξ「短くなきゃ困るでしょうに」


 魔力攻撃に対して高い抵抗力を持つ『剣士<セイバー>』、阿部孝和。
高機動、高威力の武器を持つ『騎兵<ライダー>』クー。
人間離れしたスペックを持つメイドに元サーヴァント。極東屈指の魔術師二人。その他。


 これだけの人材がいてなお、さほど遠くない未来に魔力切れでの消滅が確定している
魔道兵器に対し、彼らは劣勢を強いられていた。
6 :その3 [sage]:2008/11/18(火) 00:16:31.81 ID:Wfh6lOA0
从'ー'从「やっぱりあの時間止めれるメイドさんに残ってもらったほうがよかったんじゃない?」

ξ゚听)ξ「さっきみたいな野次馬に出てこられるよりはマシでしょ。
   あの人に町中の一般人を避難させてもらってるから、こうして私たちは……」

从*゚∀从「来ますよ!」


 高岡の声で一同、地に伏せる。彼らの後方数十Mに着弾した魔力弾がまたひとつ家を半壊させていった。


(;^ω^)「……あ、あれはマルタニスムの家だお……」

ξ゚听)ξ「家はともかく、本人はメイドが避難させてるから大丈夫よ。多分」

(;^ω^)「う……とんでもないことになってきたお」


 見れば見るほど、視界に入る町並みは30分前のそれとはまるで別物になっている。
何処かの侵略者が攻撃をしかけてきたと聞かされたとしても、信じてしまうかもしれない。



(´・ω・`)「現状、二人のサーヴァント以外にあれに対してダメージを与えられるものはいない。
   僕たちじゃせいぜい弾幕を張って敵の攻撃を防ぐことくらいしかできないからな……
   聖杯、少しは手伝ってくれないか?」

lw´‐ _‐ノv「……それはできない。私に可能なのは、この聖杯戦争を見届け、勝者に然るべき権利を与える事」

从'ー'从「……じゃあさ。もし今ここでブーン君のサーヴァントが死んで阿部さんだけが残ったら、私は聖杯の力を使うことができるの?」
7 :その3 [sage]:2008/11/18(火) 00:18:08.56 ID:Wfh6lOA0
(;^ω^)「ちょ、アヤカさん殺しちゃダメだお」

从'ー'从「例えば、の話だよブーン君。私が聖杯に『ガットゥーゾをこの世から消してくれ』ってたのんで
   消えてくれるのなら。それもアリかもよ」

lw´‐ _‐ノv「残念だがそれは不可能。『魔術士<キャスター>』の魂が一部欠けている。
   仮に今、『剣士<セイバー>』『騎兵<ライダー>』のいずれかが倒れたとしても、聖杯の力は発動しない。
   それに……」

ξ゚听)ξ「で、この町の惨状をどうするのよ?」


 なおも続けようとする長門を遮り、ツンがあたりを示す。


ξ゚听)ξ「一軒や二軒ならともかく、流石にここまで破壊された町はどうしようもない。
   でも、聖杯を手に入れることができれば、廃墟もすぐに元に戻るはず……」

(´・ω・`)「ツンは、聖杯で町を元に戻すのかお?」

ξ゚听)ξ「ええ。あたしにとって聖杯って手段じゃなくて目的だもの。正直、何に使ってもかまわないわ」

(´・ω・`)「……(だよなぁ。本当に肉体改造のために、命は張れないし)」

ξ゚听)ξ「……(さらば、私のナイスバディ……)」

ξ;゚听)ξ「……ともかく! 聖杯の力が仕えない以上、あれは私たちでなんとかするしかないわ!
   人として魔術士として。この異変を世の中に知られるわけにはいかない」

从'ー'从「そうだねぇ」


 声は暢気に聞こえるが、アヤカスフィールとて魔術士。
その視線と思考回路は、目前の脅威とこれからの事にはっきり向いていた。

8 :その3 [sage]:2008/11/18(火) 00:19:44.86 ID:Wfh6lOA0
ξ゚听)ξ「ともあれ対策よ。アヤカ、あんたたちの調子はどう?」

从'ー'从「体はとくに問題ないよぉ。ただ、阿部さんの宝具じゃアレに大ダメージは無理かなぁ

从 ゚∀从「前、屋敷でウチにつこうたアレを、あのデカブツにキめるっつーのはどうや?

('、`*川「……『メイド・イン・ヘブン』ですか? あの巨体相手ではちょっと無理ですね」

从*゚∀从「(……こんな事になるのでしたら、単純に火力のある『黄金家政婦<ゴールドメイド>』にも声をかけるべきでしたわ)」

(´・ω・`)「(……半人のままじゃあ流石にレバ剣は使えないよなぁ)」

(;^ω^)「……くそっ」


 これまでハインリッヒの背中で静観に徹していたブーンが口惜しさを漏らす。
度重なる緊張感に彼のサーヴァント・ライダーの連続の宝具の使用。
ブーンの精神は魔力ともども極度に消耗し、それは連動して肉体にも影響を及ぼしていた。


(;^ω^)「ブーンは何もできないのかお・・・・・・」

ξ゚听)ξ「今いってもしょうがないわ。それよりも、今は体を休めてクーを信じてなさい」

(;^ω^)「そうは言っても……ああっ!」
9 :その3 [sage]:2008/11/18(火) 00:22:25.05 ID:Wfh6lOA0
 相手の懐にもぐりこんで腕の付け根に一撃を入れ、離脱しようとしたクーに頭部からの悪意の光が突き刺さる。
腕から『突撃槍<ランス>』が落ち、彼女自身も地上数Mから地面にむけた落下する。


( ゜ω゜)「!!」


 しかしそこはサーヴァント。
落下しならがら体勢を戻し、地面に横たわる『突撃槍<ランス>』を持ち上げると
気合一閃、元来の膂力と残った僅かな魔力にまかせて頭上に投擲する。
追撃のつもりで放たれたであろう弾幕を突き破り、『突撃槍<ランス>』の切っ先は
先刻からの連撃で脆くなっていたでろう、ガットゥーゾの体に突き刺さった。
 苦悶の呻きをあげるガットゥーゾ。
これを機とみたのか、阿部は半分に折れた電柱を踏み台にして『突撃槍<ランス>』の柄に飛びつくと、
その慣性のままガットゥーゾの体内に押し込む。合成音のようだった叫びはより大きくなり、そしてどこか人間めいたように変化していく。


( ゜ω゜)「………………」
10 :その3 [sage]:2008/11/18(火) 00:25:22.85 ID:Wfh6lOA0
从 ゚∀从「よっしゃ! 入った」

从'ー'从「やったぁ!」

ξ#゚听)ξ「やったぁ、じゃないわよ! アヤカ、クー……ライダーが!!」

从'ー';从「……あっ!」


 ツンの叱咤と爆心地へ走っていくショボンを見てアヤカが、そして他の3人も状況を把握する。


从'ー'从「ツンちゃん、アレをやるよっ!」

ξ゚听)ξ「ええ、よくってよ!」


 二人の魔術少女から放たれた赤と青の魔力光線。二条は螺旋を描きながら遠く離れた敵の右肩
──ガットゥーゾが今まさに抜こうとしていた『突撃槍<ランス>』が刺さった部分へと直撃する。
ガットゥーゾの意識が自らの傷、自らを傷つけた敵から離れた、その一瞬の隙をついて地面に伏せたままのクーの下にショボンはたどり着いた。


(´・ω・`;)「(……これは……)」
11 :その3 [sage]:2008/11/18(火) 00:28:17.60 ID:Wfh6lOA0
 二発目の同時攻撃はガットゥーゾの腕の一振りで四散される。


(´・ω・`)「セイバー、援護を!」

阿部さん「おいおい、俺を便利な盾と勘違いしてるんじゃないのか?」


 不満を口にしながらも阿部が巨漢へ飛びかかり、クーを抱えたショボンはその場を離脱した。



(´・ω・`)「……ただいま」

(;゜ω゜)「クーは、クーはどうなったお!!」

(;´・ω・`)「…………見ての通りだ」


 静かにおろし、クーをそばの壁へともたれさせる。壁と地面はすぐに赤に染まった。


从*;゚∀从「ッ! ペニサス、手伝って!」

('、`;*川「は、はい!」


 全力投擲で隙だらけになってたとはいえそこはサーヴァント。回避はできずとも急所はきちんと守っている。
だが頭部、心臓、利き手以外のほぼすべてに魔術の弾痕が残っている。その半分以上が対魔力障壁を、彼女の体を貫通していた。
12 :その3 [sage]:2008/11/18(火) 00:34:38.30 ID:Wfh6lOA0
 自らのメイド服のエプロンをちぎり、高岡が傷口を抑えて応急処置をはじめる。
その様子をブーンは黙ってみていた。遠くから聞こえる激しい戦闘音も、聞こえていても頭には入っていない。
流れ弾一発でこの場の全員が簡単に死んでしまうという現実離れした状況など、
母親の姿をした女の、実の親のように接した仲間との離別に比べてしまえば何ということもない。



( ゜ω゜)「……」

川 - )「…………」



川 - )「…………すまない、ブーン」
( ゜ω゜)「!!」

从;゚∀从「しゃ、しゃべって大丈夫なんか?」

('、`;*川「ダメに決まってるじゃないですか!! ほら、静かに……」

从*;゚∀从「……ペニサス、もういいでしょう」


 血にそまったエプロンを新しくとりかえ、高岡が3歩、ブーンの後ろへ下がる。


从*゚∀从「避けられえぬ主従の離別に、私たちがでる幕はありません」
13 :その3 [sage]:2008/11/18(火) 00:37:53.90 ID:Wfh6lOA0
 無言でアヤカスフィールが放った魔力弾が流れてきた攻撃を遊爆させる。
そして、静寂があたりを支配した。





川 - )「ブーン……ありがとう。そして、すまなかった。
   一緒に戦うと言っておきながら、君を置いて相手と敵対し、その結果がこれではな……」

( ;ω;)「い……イヤだお! そんなのどうでもいいんだお!」


川 - )「ブーン…………」

( ;ω;)「ブーンは……」





               「ブーンは、ただ………」

14 :その3 [sage]:2008/11/18(火) 00:39:14.83 ID:Wfh6lOA0
        _,、=:ニ;‐、、--――‐y、,_     ,,r;;;;''''=―--、、,_
       /´  ヽ,ヽ,.゙'l,.゙Y;--',r'゙'ヾ;'V.j   /∠,,.r_;'゙-‐-,<゙゙ヽ,'i、'‐、,
      ./_   .,,_j ゙l l,. Y/゙'ヾ、;、ノ,r;'|  /jフ,r-、ヽ、  _,,>.゙'ー;゙' ーi,. |'i,
      j.ヾ!  ト‐! | .| .|,_ ./,.〈. 〉| ./ .(゙   _>゙'゙ r''゙´'i,゙l, ,j レ! .|:|
      .|il,  __  j .j゙ .l  ト,゙',/ j.゙ r;| .レ'゙''‐ニ'''゙r''゙´ .゙l,ヽ,. ,ノ ゙ r''1.jノ
      .|.l,゙l, ゙ー゙.ノノ  / / ゙l ゙l,ヽr',r'l ゙;| .ト、,. /./´゙ヽ;.、 ノ ,゙rッ  .,Y';V
      | l,.゙ヽ--'゙ ,ノ  /  l, ゙'゙,,.l, ,j ゙| l,ヾ,、--、,,,、'_, r''゙ l   / li,;)
      l,. ゙'i,  /  ,rシ-、,ィ) l,゙i,V/゙j゙ /゙,,、、、,_  ゙\!.レ゙  .| Y゙
       ゙l゙i,・ヾi, ,/ィl、・_ノ ,;:: ゙シ'i.l,ノ ./゙    \  ゙Y:   .l /
       | `ラ´゙'''´ ''"'´  .|  |:.r'`V'''" ̄`゙ヽ、 ゙'i,  |.   ' /
       ゙'i,         .j  |./ ∧、, ゙̄ヽ、. \ ゙l. |\ ./
        ゙i,. r、,,,.、,_   / ノメ、 .j |ヾヽ,゙'ー---‐'''''ヾ-、,‐'
         .゙i,ヾ'-'ニワ.  / ./ノ .V j゙ |'i,. ヽ;-‐-、,_::::__ ::..>
        /:::l,〈`   //‐'´ ./.ヽ/ .j.ノ  .:ヾ、;:) ゙'i    `ヽ、
       /::::::::|ヾ‐;<;/__,、r'´ ./ .)='゙  ..::  ,ソ  .(:: _,,r‐''゙⌒`゙ヽ、,
      / l;::::::::::Y゙人゙l;:.    .,/,r'ニ゙   _,、r''´  ..:: ゙ヾ、     ::  ヽ,
     l  /,r:| j‐゙''l; ゙ニー‐'゙ (`l.(_,r‐'''゙´__,, ....:::::   .`ヽ、,....:::::..  ゙l,
     .!. .l゙l゙レ'>‐゙ | ト;゙i,l、ノ,r;;'ニ゙/´゙Y .,r'゙ ̄    .....::::::::::::::::::::::::.゙ヽ、:::    l,
     | 'ー;l.'i,.l゙  ,j 'シ'‐-ヘ;'V゙./  ゙l, ヽ, ......:::            ::::..ヽ,   ゙l
     .|._,rラl,.|  / ,i l,   .ノ , ゙i,   .゙ィ,.レ'                :.゙l,  .|
     / / ゙l l,゙l,/./ .l, l, ././ .゙l,゙l、  /.,ィ´ ,.r''ニ'' ヾ,            .:l, j゙
   .,rl´.'-‐ニ, .,、 L,,,,,゙l, V /   ヽ,゙'´/.|  .l゙/;=iミ;゙'i,. [        .:::::::::::::::Y゙
  .,r',、 「゙´  | .| jヾ、--、ヾl,    /,、 ゙l,.゙l、-';j;ノ::::::゙レ゙lj゙   ........::::::::::::::::::::::::::|
 / ./.| .レ-‐' 'ソ::l,゙l, ./.∧、ヽ、,,/,/,,゙'i,,゙L、‐'゙::/::://     :::::::::::::::::::::::::::::j゙
 レ:'二i .i''゙゙´| .|:::::::)、V.l゙  ゙l,.゙'V /   ゙'i, ゙V゙ /ノ゙ /゙L,___,,,_   : : :: :::::l
..゙T´ .| |  ,.| .|::::::/ ゙'i,゙l,  `i , l,    〉,,.〈/  .ヽ、,,,,,、、-―‐-、ヽ、  ..:: .:/



   キング・クリムゾンが発動した!!


ξ゚听)ξ「ブーン、一つだけクーを助ける方法があるわ」

( ;ω;)「………」


( ;ω;)「…………お?」
15 :チラシの裏 [sage]:2008/11/18(火) 00:40:20.89 ID:Wfh6lOA0



(-_-)「ヒッキーです。何でこんないいシーンでキンクリなんですかね……」

从'ー'从「おはわったーWATANABEだよー。
   ほら、きっと“本編(アヤカスフィールルート)”のネタバレ防止だって」

(*゚∀゚)「十六夜咲夜です。私の出番がまったくない本編ですね、わかります)」

ξ*’ワ’)ζ「うっうー、高槻やよいです。そんなわけで続きをお楽しみください



16 :その3 [sage]:2008/11/18(火) 00:43:34.84 ID:Wfh6lOA0
ξ゚听)ξ「ブーン、あんたまだ令呪があるでしょ?」

( ^ω^)「確かに、まだあと1画あるお」

ξ゚听)ξ「最後の1画に込められた力を使えば、完全復活といわなくてもそれなりに回復するはずよ。
   もちろん、その瞬間にあんたたちは「サーヴァントとマスター」という間柄じゃなくなるわ。
   そしてあの『魔術士<キャスター>』みたいな術を使えないクーは近いうちに魔力切れを起こして消滅する。
   それでもいいのなら──願いなさい。『騎乗兵<ライダー>』の回復と、これからの運命を……」

从'ー'从「ねぇねぇ、ツンちゃん」

ξ゚听)ξ「何よ。今大切な話の最中なのよ」

从'ー'从「明後日の方向を向いてシリアスに語るツンちゃんも素敵だけど……」






从'ー'从「ブーン君、ツンちゃんが1行目言い終わる前に令呪使っちゃってる」

Σξ;゚听)ξ「え」


 振り向いた先では血にまみれた姿のままで、しかし生気を取り戻して立ち上がったクーをブーンが抱きしめていた。


ξ゚听)ξ「…………」
  ↓  このときのツンの心中
ξ;凵G)ξ「(な、泣いてないもんね! 無視されて悲しくなんかないんだから!!)」
17 :その3 [sage]:2008/11/18(火) 00:46:52.53 ID:Wfh6lOA0

ξ;゚听)ξ「……ま、まぁいいわ。今ので決心ついた。うん、大丈夫。みんな聞いて」

从'ー'从「ふぇ?」

( ^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「さっきのクーの決死の攻撃でガットゥーゾははじめて目にみえるダメージをうけたわ。
   あとはあの穴を広げるだけ……いい、これからあそこにむけて総攻撃をかけるわよ」

(´・ω・`)「総攻撃……か。アテはあるのかい?」

ξ゚听)ξ「もちろんよ。見て」


 ツンが指しめした先──雨あられと続いていたガットゥーゾの砲撃は現在止まっている。
体中から機械機械した管が生え、阿部を狙うも攻撃を捨てた阿部にほとんど通じている様子はない。


ξ゚听)ξ「アイツは今省エネに徹してる。セイバーが近くにいなければ、すぐにでも傷の修復をはじめるわ」

从'ー'从「うん。さすがは阿部さんだね」

ξ゚听)ξ「でもこれまで見たとおり、あれだけじゃあいつを倒しきることは不可能よ。
   やっぱりここは『騎乗兵<ライダー>』──クー、あなたしかいないわ」
18 :その3 [sage]:2008/11/18(火) 00:50:59.73 ID:Wfh6lOA0
川 ゚ -゚)「確かに、宝具を傷口に直接叩き込めば突き破ることは不可能じゃないだろう。
   ただ……今の私にはビーワンがいない」

(;^ω^)「あ……」


 ブーンが使った令呪の効果は「クーの復活」。そこにビーワンは含まれて居ない。
そもそも、すでに消滅して存在しない物を呼び出すのに令呪ひとつでは到底無理である


川 ゚ -゚)「……もちろん、私一人でも戦える。ここまでの手ごたえを見るに、『突撃槍<ランス>』を用いての
   『一点突破<ゴー・マイ・ウェイ>』でも、今のあれに致命傷を与えるのは可能だろう。
   だが、あの攻撃を突き破りつつとなると…………正直、難しい」

ξ゚听)ξ「問題ないわ。そこまでは私達が連れて行く」

(´・ω・`)「……だが、僕とセイバーだけじゃそこまではサポートしきれないぞ。
   君やアヤカスフィールも、あれを止めるレベルの魔術をそう連発できないだろうし」

ξ゚听)ξ「アテはあるわ。クー、確かあなたの宝具は自分以外のヒトガタを連れて突撃できるのよね」

川 ゚ -゚)「あぁ。私を除いて2人程度なら何とかなる。
   ビーワンがいればここにいる全員を守り抜くこともできるが……」

ξ゚听)ξ「ひとりで十分よ。ショボン、あなたは普通に援護をお願い。
   アヤカはセイバーにありったけの魔力を供給。間違っても途中で戦闘不能にならないようにね」

从'ー'从「了解だよぉ」

ξ゚听)ξ「それで……クー。私を連れて行ってちょうだい」

( ^ω^)「お?」
19 :その3 [sage]:2008/11/18(火) 00:54:35.52 ID:Wfh6lOA0
川 ゚ -゚)「それはかまわないが……何故だ。もちろん守り抜く自信はあるが、危険に変わりはないぞ」

ξ゚听)ξ「ショボンと阿部さんがいれば懐にもぐることはおそらく、容易にできるわ。
   でも。もしアレに肉薄した時にもうひとつ防衛ラインがあったら面倒よ。あたしなら……いいえ」


 そこで一度言葉を止める。


ξ゚听)ξ「あたし達なら、あなたを邪魔するものを排除できる」


 言いながら服の袖をたくしあげ、まかれた包帯を勢いよく引きちぎる。
そこにあったのは消えたと思われていた聖杯戦争に参加するマスターの証──二画の令呪だった。


从;'ー'从「!!」

(;^ω^)「な、何でそれがあるんだお?」

从;゚∀从「せや。ウチかてアサシンが消えてしばらくした後、令呪は消えたのに……」

ξ゚听)ξ「簡単よ。アヤカの家での戦闘で、ドクオは一命をとりとめた。
   そして今までずっとあたしの家の地下で治療に専念していた。それだけの話」

川 ゚ -゚)「(やはり、か……)」

(´・ω・`)「(というか、ワタナベルンは把握しておくべきだろ。常識的に考えて)」
20 :その3 [sage]:2008/11/18(火) 00:58:31.84 ID:Wfh6lOA0

ξ゚听)ξ「何かがあったらすぐに令呪で『狂戦士<バーサーカー>』ドクオを召還する。
   邪魔がなくなったら──後はたのんだわよ、クー」

川 ゚ -゚)「……任せてくれ。残るすべての魔力を注ぎ、あの巨体の急所を打ち穿とう」

( ^ω^)「……ちょっと待つお」


( ^ω^)「今、クーは魔力をどこからも補充できないお。
   なのに、ここで魔力を大量に消費する宝具を使っちゃったら……」

川 ゚ -゚)「……その通りだ。私は消滅する他ないだろう」

( ^ω^)「…………クー」

21 :その3 [sage]:2008/11/18(火) 01:01:29.81 ID:Wfh6lOA0
ξ゚听)ξ「ブーン、あんたも知っての通りクーはサーヴァント。人間じゃない。ましてや、母親でもない。
   令呪があろうとなかろうと、いつかはいなくなる存在。聖杯戦争に参加するときめたときからそれはわかっていたはずよ」

( ^ω^)「………知ってるお。だから、クー」


 両手を硬く握り締め、決意をひめた表情でブーンは顔をあげる。


( ^ω^)「クー、頼むお。ブーンを、ブーンが暮らしたこの町を。
   ブーンとクーが一緒にすごした町を、あのロボを倒して救ってくれお!」 

川 ゚ ー゚)「任せろ、相棒」


 赤のついた手袋もそのまま、二人は拳を重ねあった。






从 ゚∀从「……で、ウチらはどうすればええんや」

('、`*川「戦力外ですしね。さっさと退散しましょう」
22 :その3 [sage]:2008/11/18(火) 01:11:10.89 ID:Wfh6lOA0
ξ゚听)ξ「それが懸命ね。アヤカ、ブーンを頼むわ。もしもに備えて、できるだけ遠くへ逃げてちょうだい」

从'ー'从「りょーかい!」

从*゚∀从「……話はまとまったようですね。内藤君、ワタナベルン様、ペニサス、ハイン。依存はありませんね?」


 メイド長高岡の言葉に4人が頷いた瞬間、彼らはその場から消え去った。


ξ゚听)ξ「…………」

(´・ω・`)「…………消えた、」

川 ゚ -゚)「一瞬“メイド奥義〜”という声が聞こえた。ハインリッヒの親戚のメイドの仕業だろう」

ξ;゚听)ξ「(今の高岡といい、つーといい、黄金家政婦ってチートじゃね?)」


 ちなみに、こう彼らが話しているその間も(といっても、そう言っていいのかどうかは甚だ疑問ではあるが)もうひとりの
『黄金家政婦<ゴールドメイド>』、つーこと十六夜咲夜は時間停止の技能を使い、文字通り一瞬たりとも休むことなく
町中の人間の避難作業に追われていた。「彼女の力があればラクに敵を倒せる」というツッコミは、この際聞かなかったことにしよう。
23 :その3 [sage]:2008/11/18(火) 01:13:47.87 ID:Wfh6lOA0

ξ゚听)ξ「ま、まぁ。みんなが非難できたのでよしとしましょう。
   何よりブーンを遠ざけることができたのは大きいわ」

川 ゚ -゚)「……確かに。私の予想が正しければ“狂化”したドクオ──よりオリジナルに近い彼の姿が
   ブーンに与える葛藤は計り知れない。後はツン、貴女に任せる」
(´・ω・`)「(まぁ、忘れているかもしれないけどね)」


从'ー'从『ツンちゃん、阿部さんもオッケー
だって。いつでもあわせるってさ』

ξ゚听)ξ「よし、それじゃあ……行くわよっ!」


 ショボンが先行。『突撃槍<ランス>』を手元に取り寄せ、魔術で脚力を強化したツンにあわせてクーが続く。戦略は完璧だった。
十秒後、キャスターの魂ごとガットゥーゾを打ち砕くシナリオも問題なく遂行されることになる。

 ただひとつ彼女の計算が間違っこと。それは──


…………
……

24 :その3 [sage]:2008/11/18(火) 01:15:45.03 ID:Wfh6lOA0
…………
……



从'ー'从「ツンちゃんがんばれー!」

( ^ω^)「クー、いくお!!」


 高岡が連れ込んだ空間から、ブーンたちが戦場の一部始終を覗くことが可能であった事である。


 ガットゥーゾはいつのまにか羽が生え、腕が4本になっていた。
各部砲門から飛んでくる攻撃をまず阿部が砲門ごとから破壊し、飛んできた最小限をショボンが叩き落す。
懐にもぐりこんだところでショボンが下の二本の腕に叩き落されるも、ついで向かってきた片腕を阿部が破壊。
ツンの手をとってクーが高く跳躍。展開された弾幕は『突撃槍<ランス>』の一撃でいともたやすく消滅した。


从 ゚∀从「いける、ドンピシャや!」

从'ー'从「うんうん。もう相手の魔力もきっと切れかけてるんだよ」


 数百条の繊維が重なり合って隠そうとしているさきほどの傷跡。
クーが狙いを定めた瞬間、そのちょうど下の部分がパカリと開いて、これまでで最大級の魔力を携えた砲門が顔を出した。

25 :その3 [sage]:2008/11/18(火) 01:18:30.56 ID:Wfh6lOA0
('、`*川「……ツンさんの言ったとおりです!」

( ^ω^)「大丈夫だお。きっとドクオが防いでくれるお」

从'ー'从「やっぱりツンちゃん頭いいなぁ」


 もちろん、ブーンはドクオが阿部との戦いの中で“狂化”した、という話は聞いている。
だが、あの臆病で心優しいサーヴァントが狂化した結果──本来の姿を取り戻すというところまで頭がまわっていない。
最も仮にそこまで考えていたとしても、結論までたどり着くことはかなわなかったであろうが。

26 :その3 [sage]:2008/11/18(火) 01:19:40.36 ID:Wfh6lOA0

 高性能メイド結界・『ピュア・キャキャロット』。その性能は周囲の展望のみならず集音も可能とする。
展開主の高岡貴子も含め、結界内にいた全員がクーの宝具名を、ガットゥーゾの主砲の発射音を、
そしてツンの令呪の発動を耳にした。


ξ゚听)ξ「来なさい、『狂戦士<バーサーカー>』ドクオ=ナティウ──いや」






ξ゚听)ξ「義兄さん、内藤徳雄ッ!!!」

从'ー'从「(……内藤ってブーン君と同じファミリーネームだよねぇ)」

( ^ω^)「(……内藤徳雄…………ハッ!!)」


 義兄さんとよばれた男が瞬間的にそこに現れ、敵の砲撃を身をもって受けきった瞬間。
クーの突撃宝具『一点突破<ゴー・マイ・ウェイ>』は僅かに残った『魔術士<キャスター>』の魂ごとガットゥーゾを完全に消滅させた。
28 :その3 [sage]:2008/11/18(火) 01:20:59.83 ID:Wfh6lOA0

















 その後、完全に『狂戦士<バーサーカー>』を失ったツンはマスター不在となったクーと再契約。
直後の戦闘でアヤカスフィールの『剣士<セイバー>』阿部孝和を打ち破り、最終的な聖杯戦争の勝利者となった。
ガットゥーゾの一斉射撃とクーの宝具によって半壊した町は聖杯の力で何もなかったように
元の姿を取り戻し、長門こと聖杯はどこか別の世界へと旅立った。


 戦いは終わったのだ。

  【その3・終了】
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