- 3 :第5話『負荷交力』:2007/07/25(水) 00:36:36.69 ID:MmGNniDW0
- ξ゚听)ξ「ふわぁぁ……寝過ごしたぁ」
時計はすでに11時。休みとはいえ、ここまで寝過ごすのも珍しい。
ベッドから這い出て冷たい風に思わず体を震わせる。そろそろ10月。炬燵が恋しい季節が近づいてきていた。
ξ゚听)ξ「着替えよっと」
箪笥を開き、家着をとりだしてベッドに放る。半分はだけていたパジャマのボタンに手をかけて脱いでいく。
つめたい風にひたされる白い腕。
そこに刻まれた、聖杯戦争のマスターたる証拠、元は三画だった令呪は、ひとつその線を減らし、
漢字の『八』をさかさにしたような二画模様になっていた。
ξ゚听)ξ「(まぁ、いつかはやらなきゃいけないとは思っていたんだけどね)」
- 4 :第5話『負荷交力』:2007/07/25(水) 00:39:13.08 ID:MmGNniDW0
- アヤカスフィールとそのサーヴァント・阿部を撒いて屋敷に帰還。部屋に戻ってからツンは令呪に指を這わせ、
その一画と引き換えに自らのサーヴァント・ドクオに対する強制命令権を行使した。その内容はいたって単純。
Be Brave.
勇猛であれ。
流石に男相手に絶対的な優位性を持つ阿部高和は難しいとしても、それ以外の相手にもこの体たらくでは
生き残るのもおぼつかない。これ以上、不安定で未完成なクーとブーンに戦いを任せ続けるわけにもいかなかった。
令呪はサーヴァントの手綱である。3つ使ったマスターはサーヴァントとの契約を自動的に解除され、
マスターではなくなる。それまでの対応次第ではお礼参りにあうことも珍しくないという。
実質2回しか使えない奥の手を“戦闘する”ためだけに使うのはかなり痛手なのだが、ツンはそこまで深刻には考えていなかった。
召還した夜、ドクオは曰く本業の魔術も使わずに素手でクーを無力化している。哨戒能力や頭の周りも悪くない。
自分の作戦、それを忠実に実行するドクオ。これにブーンとクーを足せば、ほかのマスターとの戦いを
勝ち抜くのは不可能ではない。阿部高和も無力化させてアヤカスフィールも本国に強制送還させてみせる。
ツンは本気でそう信じていた。
ξ゚听)ξ「よし、それじゃあ今日も動きますか」
赤のリボンでツインテールを結わえ、ツンは居間へ向かった。
- 5 :第5話『負荷交力』:2007/07/25(水) 00:43:05.99 ID:MmGNniDW0
居間ではブーンとクーがテレビを見ていた。ツンがやってきて軽く挨拶を交わす。
川 ゚ -゚)「マスター・ツン。昨日はすまなかった。自分から任せろといっておきながら、結局は
相手を倒せず、ドクオに助けてもらった。ふがいない事この上ない」
ξ゚听)ξ「いいって。むしろ不足気味の魔力で連戦させたブーンが問題よ」
( ^ω^)「う……申し訳ないお」
戦いを放棄した自分のサーヴァントの事は置いて、いけしゃあしゃあとブーンを切り捨てる。
ξ゚听)ξ「安心なさい。今日からちゃんとマスターとしての魔術を教えてあげる
クーも安心なさい。ドクオも次からはちゃんと戦いに参戦させる」
川 ゚ -゚)「それはうれしいが、大丈夫なのか? どうもドクオは戦いを嫌っている節がある」
ξ゚听)ξ「だから令呪を使ったの。阿部が相手ならともかく、ほかの相手ならきちんと戦ってくれるわ」
川 ゚ -゚)「む……」
クーの表情が僅かにゆがむ。同じサーヴァントとして、ドクオの意思が無碍にされたのが気にくわないらしい。
- 6 :第5話『負荷交力』:2007/07/25(水) 00:50:42.28 ID:MmGNniDW0
- (;^ω^)「だ、大丈夫だおクー。ブーンは、クーに命令なんてしたりしないお」
川 ゚ -゚)「いや、気にしないでくれ。私たちサーヴァントは確かにマスターあっての存在だ。
それくらい承知で、私たちは聖杯に呼ばれて現界している」
( ^ω^)「でもクー。やっぱりブーンはクーに絶対令呪は使わないって約束するお」
川 ゚ -゚)「そうか。じゃあブーン、何か困ったときは私に“お願い”してくれ」
( ^ω^)「オッケーだお」
ξ゚听)ξ「(ま、令呪は強制命令権以外にも使い道があるんだけどね……)」
('A`)「焼けたよー」
そんな話をしていると、ワッフルが盛られた皿を持ったエプロン姿のドクオが現れた。
( ^ω^)「おおっ!」
川 ゚ -゚)「いい匂いだな……サーヴァントなのに料理もできるとは、すごいな」
('∀`)「ぜ、んぜんすごくなんてないよ。冷蔵庫にカスタードクリームを冷やしてるからとってくるね
ついでにお湯も沸かしてくるよ」
- 8 :第5話『負荷交力』:2007/07/25(水) 00:56:15.68 ID:MmGNniDW0
( ^ω^)「それじゃあブーンはティーポットを取ってくるお」
川 ゚ -゚)「私は……そうだな。何か手伝えることはないか、ドクオ?」
('∀`)「大丈夫だよ。もうだいたいできてるし、昨日の戦いで疲れてるんだからゆっくりしてて」
川 ゚ -゚)「そうか。じゃあお言葉に甘えさせてもらおう」
皿を置いたドクオが台所に戻りかけて、ギギギと首を180度回転させる。
('A`)「あ、ツン」
ξ゚听)ξ「あ、ツン……じゃないわよ」
('A`)「……ボンジョルノ」
ξ゚听)ξ「遅い」
川 ゚ -゚)「……すまない。ツンがなかなかおきてこないので、私たちだけで食事をとってしまった」
ξ;゚听)ξ「(いや、別にアタシだけご飯食べてないから怒ってるんじゃないんだけど……)」
- 10 :第5話『負荷交力』:2007/07/25(水) 00:58:35.53 ID:MmGNniDW0
ξ゚听)ξ「あら、おいしいわね……」
('∀`)「でしょ? いい砂糖を使ったんだ。卵もさっき市場で買ってきたんだよ」
ξ#゚听)ξ「って、何?! アンタ一人で姿出して買い出しにいったワケ?!
ほかのマスターがいるかもしれないのに」
( ^ω^)「実は卵も牛乳も切れてたんだお。だからブーンが買いにいこうとしたら、二人がついてきてくれたんだお」
ξ゚听)ξ「ったく、朝っぱらからどこの仲良し家族よ、アンタ達……」
('∀`)「(仲良し家族……ボクがお父さんで、クーがお母さん……これは!!)」
( ^ω^)「まぁまぁ、行かず後家の叔母さん、そんなに怒ったらダメだお」
Ξ#゚听)ξ「だれが行かず後家よっ!」
ツンの分も追加して焼きあげ、4人のお腹がほどよくたまったところで話はブーンの魔力に移った。
ξ゚听)ξ「さて、時間もないしちゃっちゃと説明しちゃうわよ。クーが魔力的にヤバイ、って話は前話したわね?」
( ^ω^)「(したっけ……)」
- 11 :第5話『負荷交力』:2007/07/25(水) 01:01:19.17 ID:MmGNniDW0
- ξ゚听)ξ「下っ端の悪魔や使い魔と違って、本来高位な霊体であるサーヴァントを受肉させてで活動するのは
人間には不可能。でも、理屈は知らないけど聖杯はそれを可能にする。マスターから送られる
微力な魔力は霊呪から聖杯で増幅され、サーヴァントに流れ込む。もし、マスターからの供給が途切れたら
サーヴァントは自分の体内の魔力だけで戦わなきゃいけなくなってしまうの。その状態だったら
現界するのも大変だし、戦闘。ましてや『宝具』の使用なんて不可能に近いのよ」
逆に、魔力の供給が円滑に進めば、サーヴァントはどんどん戦えるし、『宝具』の使用も
用意になるわ。もっとも、『宝具』を打ちっぱなし、なんてのはなかなか難しいみたいだけどね。
ま、クーが自由に動けてドクオが戦闘に出れば戦術は格段に広がるわ。わかる?」
川 ゚ -゚)「(なんという長文……)」
( ^ω^)「長文は目に悪いお。三行で頼むお」
('A`)「現在、クーは「どく」状態でどんどんHPとMPが減っている状態
MPがないから戦えないし、ほっといたらクーはHPが尽きて死んじゃうう
もしブーン君が魔力補給できるようになれば、逆にクーは常時HPMPはリジェネ状態に」
( ^ω^)「把握」
ξ゚听)ξ「(これ以上にわかりやすい説明もないかもね……)」
- 14 :第5話『負荷交力』:2007/07/25(水) 01:06:35.38 ID:MmGNniDW0
ξ゚听)ξ「ま、体系的には物に魔力を通すのと一緒かな。難易度はツーランクくらい上だけど
とりえずやってみなさい」
( ^ω^)「行くお、クー! さっきみたアニメの要領でいくお」
川 ゚ -゚)「ああ。来い、ブーン!」
クーが立ち上がり、両手を上げた。ブーンも左手を翳す。
川 ゚ -゚)「ブーンよ、私にほんのちょっと元気をわけてくれ!」
( ゚ω゚)「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ξ゚听)ξ「……何やってんの?」
('A`)「(……元気玉か)」
- 15 :第5話『負荷交力』:2007/07/25(水) 01:09:55.21 ID:MmGNniDW0
- ('A`)「ブーン君、手を握ってみようよ」
5分ほど元気玉のポーズをとったところで無駄と悟った二人にドクオが近寄った。
( ^ω^)「……こうかお?」
('A`)「いや、ボクじゃなくて……」
もう片手でクーの手をとり、ドクオは二人の手を合わせた。
('A`)「いきなり抽象的な事をいっても難しいからね。体の中に魔力を通すつもりでやってみて。
クーは自然にしてて。目をつぶって……そう。冷たいスープを喉に流すような感じでね」
川 ゚ -゚)「……わかった。それじゃあ、やってくれ」
( ^ω^)「いくお」
ブーンも目を閉じる。普段、体内で練りこんで変質化させる魔力を体の隅々。心臓から頭、頭から肩、
肩から左腕、左腕から指先。そこで手のひらに伝わるクーの少し硬く、暖かな指へと伝わっていく感触。
川 ゚ -゚)「……わかる。ブーンの魔力が私にきている」
('A`)「うん、この調子。慣れていけば距離が離れても送ることができるようになるよ
ツンみたいに常時、一定の魔力をこっちに送りためるようにするのは難しいけどね」
- 17 :第5話『負荷交力』:2007/07/25(水) 01:11:15.01 ID:MmGNniDW0
ξ゚听)ξ「で、あたしが送った魔力をドクオはポンポン射出して使っちゃうのよね」
('A`)「うっ、ごめん……」
ξ゚听)ξ「冗談。そんなところで遠慮されたら逆にこっちが怒るわよ」
ξ゚听)ξ「(にしても……)」
人によってはこの魔力伝達の取得にはかなり手間取る。聖杯と霊呪という魔力変換・増幅装置が
あったことを踏まえても、ブーンの能力より数段上の魔術をあっさり取得させてしまったドクオ。
妙にくわしいアニメの知識もそうだが、あきらかに『バーサーカー』とは違う資質を発揮している、底のみえないサーヴァント。
ξ゚听)ξ「(ドクオについてももっと調べないとね……)」
('A`)「それじゃあ、そろそろ手を離してみよう。ちょっとずつ距離をとって、どこまで魔力を
送れるか試してみるよう」
( ^ω^)「…………あっ」
二人の手が離れた瞬間、クーへ流れ込んでいたブーンの魔力供給が途切れた。
(;^ω^)「失敗だお……」
- 18 :第5話『負荷交力』:2007/07/25(水) 01:14:49.82 ID:MmGNniDW0
ξ゚听)ξ「気にしちゃダメ。はじめてでそれだけできたら十分よ」
川 ゚ -゚)「そうだ、ブーン。また始めたばかりだ。一度や二度の失敗であきらめるわけにはいかないぞ」
( ^ω^)「もちろんだお! それじゃあもう一回……」
('A`)「無理だよ、ブーン」
( ^ω^)「おっ…?」
フラついたブーンをドクオが片手で支える。
('A`)「オーバーワーク。まだ慣れてないし……ブーンの魔力が回復したらまたやってみればいいよ」
( ^ω^)「う……わかったお」
やる気はあっても体がおいつかないという感覚。ここで無理をして3人に迷惑をかけては元も子もない。
心惜しいが、ブーンはその忠告をうけいれることにした。
- 20 :第5話『負荷交力』:2007/07/25(水) 01:16:30.50 ID:MmGNniDW0
('A`)「クーもツンも、それでいいよね」
川 ゚ -゚)「ああ。ブーンに無茶をやらせるわけにもいかない」
ξ゚听)ξ「……アンタにいわれるのもシャクだけど、正論ね。日中、ブーンはゆっくり休みなさい
夕方、回復したらまた練習しましょう」
('A`)「決まりだね」
ξ゚听)ξ「ええ、それじゃあ……」
('∀`)「クー。よよよかったらこれからどこかに遊びにいかない?」
ξ#゚听)ξ「アンタはあたしと一緒に町の探索!」
('A`)「…………」
ツンに引っ張られてドクオは外へ連れ出されていった。
- 23 :第5話『負荷交力』:2007/07/25(水) 01:20:02.90 ID:MmGNniDW0
- ( ^ω^)「行っちゃったお」
川 ゚ -゚)「ブーン、体は大丈夫か?」
( ^ω^)「魔力がからっぽになっちゃったお」
川 ゚ -゚)「私もブーンからもらう魔力の量を調整できるよう、がんばってみるつもりだ。
お互い、ちょっとづつ成長していこう」
(疲^ω^)「もちろんだお……」
川;゚ -゚)「……だいぶ疲れているな。ツン達が戻ってくるまで昼寝でもしていたらどうだ」
(疲^ω^)「そうするお」
いっしょに行くと申し出るクーを断り、ブーンはひとり部屋に戻ってゆく。
ブーンの足音が聞こえなくなり、クーは立ち上がってテレビを消した。
川 ゚ -゚)「さてと。ブーンからもらった魔力を試してみようか……」
そういってクーは縁側に移動し、ブーツだけ具現化させて庭に降りた。
- 25 :第5話『負荷交力』:2007/07/25(水) 01:25:21.40 ID:MmGNniDW0
戻ってすぐに眠ってしまっていた。時計をみると時刻はもう5時。外はほのかに暗くなりはじめている。
部屋を出て居間にいくとドクオの姿は見えず、クーとツンが話していた。
川 ゚ -゚)「気配はナシ、か」
ξ゚听)ξ「さすがにこんな時間から動くマスターはいないって事ね。
ドクオにも探ってもらったけど、遠い位置で身をかくしているサーヴァントはさすがに確認できないみたい」
川 ゚ -゚)「では、本格的に探索するのは相手も行動を始める夜ということか」
ξ゚听)ξ「本当はブーンの魔力供給が安定するまで潜みたいけどね。アヤカスフィール以外なら制限つきのクーと
ドクオがいれば、十分戦える。万全な状態じゃないとしても無為に待ってる時間はないわ」
川 ゚ -゚)「確かに、宝具の戦闘使用をするには少々魔力が……おはよう、ブーン」
( ^ω^)「おはようだお」
- 26 :第5話『負荷交力』:2007/07/25(水) 01:27:06.18 ID:MmGNniDW0
( ^ω^)「もうこんな時間……なんか一日損した気分だお」
川 ゚ -゚)「おはよう、ブーン。もう少しおきてこなかったら起こしにいこうとおもってたところだ」
ξ゚听)ξ「ご飯そろそろできるわよ」
日曜夜の料理当番はツンだ。昨日の朝といい、聖杯戦争の間はドクオに当番をまかせるようだった。
( ^ω^)「(こうしてヒトは堕落していくのかお……)」
ξ゚听)ξ「どうしたのよブーン、あたしの顔に何かついてる?」
(;^ω^)「な、なんでもないお」
夕食もつつがなく終了し、その後、昼間のように魔力供給の練習をしようとクーに声をかけると、
クーはブーンを庭へと連れ出した。
- 27 :第5話『負荷交力』:2007/07/25(水) 01:29:46.45 ID:MmGNniDW0
川 ゚ -゚)「ブーン、昨日の私の戦いを見てどう思った?」
( ^ω^)「お?」
鎧をまとったクーの言葉にブーンは首をかしげる。
昼間と同じ要領で両手を合わせ、魔力を供給していく。昼に比べて少しの慣れを感じることはできたのだが、
手がはなれるととたんにプツンと二人のつながりはきれてしまう。
一端間をおくことにして縁側に座って空を眺めていると、クーはポツリとそんな事をもらした。
川 ゚ -゚)「昨日あれだけいい口をたたいておいて、私は阿部を相手にかなり苦戦をしいられた。
正直に言うと、あのまま戦っていたらおそらく、先に倒れたのは私だろう」
( ^ω^)「そうなのかお……でも、仕方ないお。ブーンのせいでクーは全力を出せなかったんだお?
ブーンがうまく魔力を供給できるようになれば、きっと阿部さんや他のサーヴァントにも勝てるお」
川 ゚ -゚)「そこまで期待されると、間違ってもその期待を裏切れないな……
よし。ブーン、今から私の力を見てくれないか?」
- 29 :第5話『負荷交力』:2007/07/25(水) 01:32:01.43 ID:MmGNniDW0
( ^ω^)「クーの力?」
川 ゚ -゚)「どっちみち、信頼を回復させるために見てもらおうと思っていたんだ
まぁ。楽しみにしてくれ」
立ち上がって数歩前へと進む。地面に魔方陣が出現した。
紫色、電流のように魔力が陣をかけめぐる。次元と、世界をこえた召還術。
ツンがドクオを呼び出したときと同じように光は陣の中央へと収束し、クーの相棒を呼び出す。
川 ゚ -゚)「……来い、ビーグル・ワン!!」
▼・ェ・▼ < ワォォォォォォン!!」
- 30 :第5話『負荷交力』:2007/07/25(水) 01:35:07.63 ID:MmGNniDW0
( ^ω^)「(ちょwwデカスwwww)」
川 ゚ -゚)「これが我が愛戌、ビーグル・ワンだ」
クーが呼び出した“イヌ”。シェパードを足だけ1.5倍に伸ばし、そのまま大きくしたような、
現代では存在しないとされる生物“イヌ”。皮の鞍、手綱。現代でいうところの馬的生物なのだろう。
大きさはだいたい大型のサラブレッドといったところか。その艶のかかった黒い毛並みは愛玩犬でも
これ以上はないというほど、整えられていた。
▼・ェ・▼ < ブルォォォォォォ
川 ゚ -゚)「ひさしぶりだな、ビーワン。元気にしてたか?」
まるで犬をあやすかのように、かがんだイヌの首をかかえて撫で付けてやる。
鞍に手をかけて飛び上がり、易々とその背中に収まるとその手をブーンに向けた。
川 ゚ -゚)「さぁ、夜の散歩と洒落込もうか」
- 32 :第5話『負荷交力』:2007/07/25(水) 01:36:32.51 ID:MmGNniDW0
(;^ω^)「だ、大丈夫なのかお?」
川 ゚ -゚)「ビーアンはそんなにヤワじゃないさ」
( ^ω^)「(いや、そうじゃなくて……)」
常識を超えた大きさのイヌに戸惑いながらもクーの手をかり、ブーンも騎戌ビーワンにまたがった。
川 ゚ -゚)「ほら、もっと詰めて私にしがみつくんだ」
( ^ω^)「わかったお」
川 ゚ -゚)「よし、軽く試乗といこうか。移動中は口を開くなよ。舌を噛むぞ」
ブーンの手が腰に回ったたのを確認していから手綱を手にとり、かるくビーアンの体を叩いてやる。
大きくビーアンは息をはくと、体を縮め、低い咆哮とともに大地を蹴って屋敷の外へ飛び出した。
- 33 :第5話『負荷交力』:2007/07/25(水) 01:38:04.26 ID:MmGNniDW0
- ( ^ω^)「はぁ……死ぬかとおもったお……」
ミルナ大橋。オオカミ川にかかっている中で最も大きな橋。真ん中あたりにそびえる外環柱のてっぺんに
ふたりは座っていた。ちなみにビーワンは二人を置いて夜の山へ走りにいっている。
川 ゚ -゚)「どうだ、すごいだろう。生前のビーワンもすごかったが、サーヴァントの騎戌となったためか
格段にパワーアップしている。これなら、あの阿部にも当たり負けはしないさ」
立ち上がり、両手を前に突き出す。その両手には柄だけで2メートルはある、巨大な騎乗槍があった。
川 ゚ -゚)「これが私の宝具『ランス』だ。騎乗兵がランス、などというのもおかしな話だがな」
( ^ω^)「そういえば……最初の夜、クーはこれを使って助けてくれたのかお」
川 ゚ -゚)「そうだ。最も、ただ重力にまかせて投げ落とすので精一杯だったがな……おっと」
手にしたランスが光となって夢散する。
- 34 :第5話『負荷交力』:2007/07/25(水) 01:40:49.24 ID:MmGNniDW0
川 ゚ -゚)「ちょっと出しただけでこの始末……やはり戦闘ではまだ使えないな」
( ^ω^)「……よし、決めたお!」
座ったクーと入れ替わりにブーンが立ち上がる。
川 ゚ -゚)「お、おい。気をつけてくれよ。これだけ高いと風がきついぞ」
( ^ω^)「大丈夫だお」
川 ゚ -゚)「(……の割には……)」
クーの頭にしがみついていたまま固まり、やっぱり元どおり腰を下ろした
- 35 :第5話『負荷交力』:2007/07/25(水) 01:41:50.48 ID:MmGNniDW0
- ( ^ω^)「こんなにスゴい武器があるのに、使う魔力が心もとないなんてもったいないお。
さすがにツンみたいに魔術攻撃で相手を狙うなんてことはできないけど、魔力供給だけは
きっちり覚えて、しっかり一人前のマスターになるお」
川 ゚ -゚)「そうか。なら私は一人前のサーヴァンとして、ブーンを守り、敵を倒そう」
ブーンは戦う覚悟を、クーは護る覚悟をあらためて互いに確認した。
( ^ω^)「よし、さっそく帰って特訓だお!」
で、その結果…….
( ゚ω゚)「遅刻だおぉぉぉぉぉ!!!!」
翌月曜日、張り切りすぎて遅刻寸前だった。
- 37 :第5話『負荷交力』/36修正:2007/07/25(水) 01:46:11.98 ID:MmGNniDW0
- キーンコーンカーンコーン
( ゚ω゚)「セーフ!」
(=゚ω゚)ノ「珍しいね。ブーンがギリギリだよぅ」
( ^ω^)「ちょっと昨日遅くまで起きてたから……」
(;^ω^)「(さすがに魔力切れで倒れてたとはいえないお)」
そんな事を話していると教室の扉が開き、担任の高槻ではなく、禿げ上がった頭の教頭がのそりと現れた。
教頭「みなさん、おはようございます。突然ですが、高槻先生は昨日付けで学校をやめました」
生徒D「ええっ!」
生徒B「高槻先生、どうしたんですか?!」
教頭「昨日、『うっうー、私やっぱり夢をあきらめきれないです!』って校長室に辞表を出して
その足で東京に行ってしまいました」
生徒たち『ねーよwwww』
教頭「そこで、今回臨時の先生を招聘しました。先生、どうぞ」
????「はーい」
- 41 :第5話『負荷交力』/40訂正:2007/07/25(水) 01:50:27.08 ID:MmGNniDW0
从'ー'从「はじめましてー。わたしはアヤカスフィール・フォン・ワタナベルン。10さい。
今日からこのクラスの担任さんになりました。気軽にワタナベ先生、って呼んでください」
そう言って教卓に向かって歩いていく。何もないところでコケるというお約束も忘れていない。
最前列のブーンの席を通り過ぎるとき、さりげなく一枚の紙をブーンの机の上に乗せていく。
『わたし(のコートを)を焦がした責任、とってもらうよぉ
アヤカスフィール・フォン・ワタナベルン』
(;^ω^)「(………なんてこったい)」
【第5話・終了】
→第6話へ続く
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