3 :第35話『復讐者<アヴェンジャー>』:2010/10/24(日) 14:40:08.73 ID:63t1wahv0

 舞台と時間は飛んで、阿部とツンが屋敷を後にして約束の午後9時00分。


 何者かによって人払いのかけられた空間を越えて、約束の川原に阿部が降りる。

いつぞや『槍兵<ランサー>』と相対した場所に、はたしてその男はひとり立っていた。


阿部「……未知なる魔術士か、はぐれサーヴァントか、はたまた思いもよらない黒幕が待っているかと思っていたが……」

阿部「……予想がはずれたな。まさか本当に生きていたとはな……」


 遠目から敵を確認してなお歩みを止めずに向かっていく。
相手から5Mほどの所で足を止め、阿部孝和は苦々しげに相手の名前をつぶやいた。


阿部「プギャー=ランボルギーニ」

( ^Д^)「おう。久しぶりだな、地獄から舞い戻ってきたぜ」


4 :第35話『復讐者<アヴェンジャー>』:2010/10/24(日) 14:43:03.03 ID:63t1wahv0

 黒のローブに赤いマントという、一般はもちろん魔術士基準にしても少々変わった格好。
手にしたロッドも顔に浮かぶ人を小ばかにしたような表情も以前とはかわらない。


阿部「さて、約束通りここまで来たぞ。アヤカスフィールを返してもらおうか」

( ^Д^)「あぁ、あのガキならあそこだ。簡単な迷彩をかけているけどな」


 プギャーが指差した川原のベンチ。空間が一瞬ゆらぎ、毛布をかけられた人影が現れる。


( ^Д^)「別に何もしちゃいねぇよ。ちゃんと俺に勝てれば返してやる?」

阿部「……何?」

( ^Д^)「言ったとおりだ。あのガキはお前を呼び出すための餌に過ぎない。
   あの晩の借りを返させてもらうぜ、『剣士<セイバー>』」


 手にしたロッドを傍に放り捨て、両手をあげてファイティングスタイルをとるプギャー。
仕掛けてこいとばかりに好戦的にステップをふむ相手に対して、阿部は大きく嘆息した。



5 :第35話『復讐者<アヴェンジャー>』:2010/10/24(日) 14:46:46.52 ID:63t1wahv0

阿部「……心配して損をしたな」

( ^Д^)「……おい、そういうどういう」

阿部「こういう事だ」


 言うが否や、相手との距離を一瞬でつめ、阿部の手刀がプギャーの首へと振り下ろされる。


阿部「じゃあな」


 気絶させる、なんて生ぬるいものではない。
一撃でその首を跳ね飛ばそうとしたサーヴァントの一撃。



 それを。


 魔術士・プギャーは右手一本で受け止めていた。
8 :第35話『復讐者<アヴェンジャー>』:2010/10/24(日) 14:49:49.09 ID:63t1wahv0

阿部「何……」


 右手を引いてハイキックを繰り出す。
体を逸らして阿部の一撃を交わし、プギャーは右手から生み出した光弾を発射する。


阿部「くっ……」


 普通の魔力攻撃なぞものとしないはずの『剣士<セイバー>』が顔をしかめる。


( ^Д^)「そろそろ行くぜぇ」

 マントを脱ぎ捨て、追撃をかけようとしてプギャーは明後日の方向に目を向ける。


ドクオ?「■■■■■■■──!!」

阿部「うれしい時にきてくれるじゃない」


9 :第35話『復讐者<アヴェンジャー>』:2010/10/24(日) 14:55:28.00 ID:63t1wahv0

 咆哮ともに、彼方より突貫してきた男──『狂戦士<バーサーカー>』のサーヴァント、ドクオ(?)。

 二対の魔力剣を懐から取り出した白い棒のようなものでガードし、プギャーは不敵と笑う。


( ^Д^)「『狂戦士<バーサーカー>』か……手間が省けたぜぇ」

ドクオ?「■■■■■■■──!!」


ξ゚听)ξ「大丈夫?」


 プギャーと『狂戦士<バーサーカー>』の攻防を見つめていた阿部のもとに、ツンがかけよる。


ξ゚听)ξ「橋から見てたら何だか変な感じだったからアイツを向かわせたけど……」

阿部「あぁ、問題ない。少し不意を突かれただけだ。だが……むっ」

ξ;゚听)ξ「!!!」


10 :第35話『復讐者<アヴェンジャー>』:2010/10/24(日) 15:00:22.65 ID:63t1wahv0

 一進一退の攻防を続けていた二人だが、一瞬の隙をついてプギャーの足がドクオを捉える。
2度、地面をバウンドしてから川に落ちていった『狂戦士<バーサーカー>』を見届け
プギャーは一息ついてからゆっくりと二人へ向きなおった。


ξ;゚听)ξ「ドクオっ!」

阿部「……貴様、本当にただの魔術士か?」

( ^Д^)「魔術士だ。あの時、お前にやられた雪辱を晴らすため。
   お前らごと聖杯戦争をぶち壊すためにこの世に舞い戻ってきた」



???「嘘はいけないお」


 突然、プギャーを中心とした地面に五芒星が浮かび上がる。
それぞれの光から生まれた紐状の魔力がプギャーの体にまとわり付く。


( ^Д^)「なんだ?」

ξ゚听)ξ「(この術式は東洋の……!)」


11 :第35話『復讐者<アヴェンジャー>』:2010/10/24(日) 15:05:38.58 ID:63t1wahv0

 ついで飛来する白黒二対の光条。
魔力と、魔力ではない何かが込められた飛び道具をプギャーは一言、
魔術を紡いで発生させた壁で打ち消す。



(=゚ω゚)ノ「五行結界・絡縄縛 。簡単には破れないよぅ」

(`゚ e ゚)「むぅん、あれを防ぐとは」

(´・ω・`)「なぁに、問題ない」



 土手の上に立つのは両手に神言の描かれた札を持つブーンの友達──羅雲いよぅ。
包帯を巻いた両腕に特徴的な弓形の武器を携えた彼の父──羅雲義流心。
聖杯戦争の管理人にしてブーンの後見人──ショボン・ノウレッジ。


 そして。



(主^ω^)「ようやく見つけたお」


 どこかで聞いたような声と語尾と似た顔の少年がプギャーを指差した。
13 :第35話『復讐者<アヴェンジャー>』:2010/10/24(日) 15:16:01.72 ID:63t1wahv0

ξ゚听)ξ「ブーン(っぽいもの)! ショボンにいよぅ君……」

(=゚ω゚)ノ「ツンさんこんばんわだよぅ。ワケあって助太刀するよぅ」


 続々と川原へ降りてくる4人。


(主^ω^)「ようやく見つけたお、FOXの手下。
   さぁ、DATを返してもらうお」

阿部「DAT?」

ξ゚听)ξ「FOX?」

( ^Д^)「……あぁ。お前、こっちのほうの関係者か」


 まとわりつくロープをあっさりとほどきながらプギャーはブーンによく似た喋り方をする少年に一瞥をくれる


ξ゚听)ξ「DAT?」

(主^ω^)「DAT……簡単に言えば、何でも叶えてくれる不思議なアイテムだお。
   僕は世界を取り戻すため、それを探していろんな世界を巡っているんだお」

阿部「(それなんて聖杯)」


14 :第35話『復讐者<アヴェンジャー>』:2010/10/24(日) 15:20:15.84 ID:63t1wahv0

(主^ω^)「さぁ、手下。僕は世界を救うんでいそがしいからさっさと返すお。
   さもないといよぅ君と義流心さんとショボンさんが黙っちゃいないお」

(=゚ω゚)ノ「(情けないよぅ…)」

( ^Д^)「FOX、ねぇ……お前何か勘違いしてないか
   俺はFOXの手下なんかじゃない。正真正銘、プギャーランボルギーニ。フリーの魔術士だ」

(主^ω^)「え?」

( ^Д^)「……あぁ、もしかして」


 訝しげにしていたプギャーがひとり納得したように頷く。


( ^Д^)「俺がDATの力で蘇った時、俺の邪魔したやつがいたなぁ。
   そいつがFOXの手下ってヤツじゃないのか? まぁ、もう俺が消滅させちまったんだが」

(´・ω・`)「……なるほど。主軸君→ の言うこととあわせてようやく合点がいった」

ξ゚听)ξ「どういう事なのよ」

(´・ω・`)「彼は死んだ直後、どういうわけか願望増幅器・DATを発見したわけだ。
   彼の殺された怨念にDATが呼応し、DATを狙うFOXの手下とやらを殺し、
   新たな肉体と力を得てこの世の中に舞い戻ってきたというわけだ」

(´・ω・`)「つまり……」
16 :第35話『復讐者<アヴェンジャー>』:2010/10/24(日) 15:26:27.90 ID:63t1wahv0

(´・ω・`)「プギャーはすでに死んでいて、DATの力で現界してるだけだ」

ξ゚听)ξ「何、ですって……」


聖杯。
DAT。
ルーツは異なるとはいえ、人智を超えた力に依り死んだ世界より現界する人外の存在。
それでは、まるで。


阿部「──サーヴァントそのものじゃないか」


( ^Д^)「あぁ、違いない。さしずめ俺は、第8にして最強のサーヴァント
   『復讐者<アヴェンジャー>』ってところかな」


17 :第35話『復讐者<アヴェンジャー>』:2010/10/24(日) 15:29:50.67 ID:63t1wahv0

( ^Д^)「てめぇらと違って生前の武功なんてないからな、俺には固有の宝具なんてない。
   俺にあるのは『槍兵<ランサー>』のもっていたコイツと、貴様らが束になってもかなわない……
   『剣士<セイバー>』阿部孝和、貴様を殺すための絶対的な『復讐のための力』だけだ」


 手にした白い筒──『贋作・知的魔術装置<バルディッシュ・クローン>』が刃を形成する。


(´・ω・`)「セイバー、使え」

阿部「ん?」

 ショボンが投げた漆黒の棒を受け取る。棒のくせに緩いS字カーブを描き、
両端にハート型のアクセサリのついたそれは阿部が手にした瞬間、巨大な赤い刃を形成した。

阿部「これは……」
(´・ω・`)「『赤を崩す真紅剣<レーヴァテイン>(偽)』。アヤカスフィールが倒れた今、武器がないんだろう。
   レプリカとはいえ、そこいらのものよりは仕えるはずだ。槍もあるが……こっちのほうがいいだろう」

阿部「あぁ、暫く借りるぞ。どうやら手を抜いて戦える相手でもなさそうだ」



18 :第35話『復讐者<アヴェンジャー>』:2010/10/24(日) 15:34:16.57 ID:63t1wahv0

( ^Д^)「さて、復讐を完遂させてもらうか。」

 右腕に力を込め、プギャー──アヴェンジャーは空を舞う。
大きな鎌を持ち、血走った目で阿部を見据えるその姿はさながら死神のようだった。









 1時間後。
火の海と化した川原にブーン達が到着したとき、そこに立っていたのは────




【第35話・終了】                 →第36話へ続く

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