5 名前:あらすじ :2007/12/21(金) 00:11:05.98 ID:AdKwWMjE0

 聖杯。それは手に入れた者のどんな願いをもかなえるといわれる伝説の魔術道具。これを求めて7人の魔術士がそれぞれ
   7人のサーヴァントを従えて命をかけて戦い抜く、通称“聖杯戦争”がVIP市で行われようとしていた。

 そんなある晩、魔術士見習いの中学生ブーンは自宅の庭で死んだ母親によく似た女性に命を救われる。
彼女はライダー。聖杯戦争で召還されるサーヴァントのひとりで、なぜかブーンに召還されたのだという。


 魔術の師匠である従姉妹のツンや聖杯戦争の管理人ショボンの説明を受け、ブーンは決意する。
 自らの母親と同じ名と容姿を持つ『騎兵<ライダー>』、クーとともに聖杯を手に入れ、母親をよみがえらせることを……
8 名前:一行登場人物紹介 :2007/12/21(金) 00:14:36.98 ID:AdKwWMjE0

( ^ω^) ブーン:聖杯戦争に巻き込まれた見習い魔術士。サーヴァントは亡き母に似た『騎兵<ライダー>』クー。
川 ゚ -゚) クー:宝具『突撃槍<ランス>』をもち、巨大な“イヌ”を駆るサーヴァント。生前はキャスターに仕えていた騎士だった。

ξ゚听)ξ ツン:ブーンの従姉妹で、一流魔術士女子高生。サーヴァントは『凶戦士<バーサーカー>』ドクオ。
('A`) ドクオ:なぜかクーを慕う臆病なサーヴァント。魔術師としての戦い方を好む。その正体は誰にもわからない。

从'ー'从 アヤカスフィール:ツンと同期なロリロリ魔術士。ブーンの担任でもある。サーヴァントは『剣士<セイバー>』阿部孝和。
阿部さん:『くそみそテクニック』からの出演。肉弾戦を得意とする優勝候補。男には滅法強い。やらないか

从 ゚∀从 ハインリッヒ:強い相手を求めて流離う拳闘士。たまたま聖杯戦争にまきこまれ、『暗殺者<アサシン>』のサーヴァントと契約する。
(,,゚Д゚) アサシン:その正体は豪傑・武蔵坊弁慶。『暗殺者<アサシン>』のくせに、タイマンでの打ち合いを望む。
(*゚ー゚) しぃ:マスターに飼い殺しにされていた所をアサシンに救われ、一目ぼれした『魔術士<キャスター>』。クーの生前の主。

(´・ω・`) ショボン:バーボンハウスを営む聖杯戦争の管理人。ブーンの後見人でもある。
(=゚ω゚)ノ いよぅ:ブーンの親友で、ラウン寺の息子。ハインリッヒ達と暮らしているが、正体には気づいていない。
高槻やよい:ブーン達の前担任。元『アイドルマスター』。本編には登場しないが、BADENDになると登場する。


【今北三行】
クー、かつての主であるしぃ(=キャスター)と袂を分かつ
ブーン、ラウン寺を抜けてひとり自宅にむかって逃走開始
ドクオ、アサシンと戦闘再開。
11 名前:第16話『栄枯流水』 :2007/12/21(金) 00:18:09.34 ID:AdKwWMjE0

 突然だが、ここでサーヴァントという存在について言及してみようと思う。

 死してなお“英雄”と現世でもてはやされる彼らを一時的とはいえ現界させ、人間が使役するのは
普通は不可能である。そこで聖杯戦争の参加者は、7つのクラス──聖杯が定めた7つの兵種に値する英霊を
「勝利すれば望みを叶える」という誓いの下に呼び寄せ、未だ現界しない聖杯と土地。そして自らの魔力をもって
彼ら彼女らの魂を、魔力で作られた仮初の体につめこみ、サーヴァントという形で使役するのだ。

 その体を構成する魔力はもちろん、魔術式や令呪。サーヴァント・システムは人間の限界を軽く超越している。



('A`)「(作者も多分、自分で何書いてるのかわかってないんだろうな……
   つまり、簡単にまとめると……)」

('A`)「(サーヴァントには普通の攻撃や、生半可な魔術は通用しないって事だね)」



 基本的にサーヴァントは魔術士ではない普通の人間にも視認できるし、握手をしたりすることもできる。
だが、高度の霊体である彼らの肉体を傷つけようとするならば、通常の打撃などの効果は、全くといっていいほどない。
魔力を、それもある一定以上の魔力を込めた攻撃でないと、彼らは傷つきもしないのだ。

15 名前:第16話『栄枯流水』 :2007/12/21(金) 00:21:13.39 ID:AdKwWMjE0

 戦闘技量や魔力容量、宝具の存在もさることながら、人間がサーヴァントに敵わない理由のひとつにはこの点があげられる。
普通の魔術士が何百人集まったところで、丸裸のサーヴァント相手に一撃を加えることすらできない。
一流の魔術士であるツンやアヤカスフィール、拳闘士のハインリッヒでさえ、アイテムなどで魔力を増幅してようやく
小石をぶつける程度の攻撃を行うことができるといったレベルなのだ。焼け石に水。戦闘になるはずがない。


(,,゚Д゚)「…………ゴルァ……」

('A`)「……行けっ!」


 対峙した二人のサーヴァント。先に動いたのはドクオだった。呪をとなえて4条の赤い光を生成、ギコへと発射する。
普通の魔術士も使う一般的な放出魔術。ただし、込められた魔力はその比ではない。一発一発が、サーヴァント相手でも
十分なダメージを与えられるだけの力を備えている。


(,,゚Д゚)「ふんっ!」
18 名前:第16話『栄枯流水』 :2007/12/21(金) 00:24:07.43 ID:AdKwWMjE0

 その攻撃をアサシンはものともしない。大薙刀『一凪<イチナギ>』一振りで光を四散させると
黒く光る刃をドクオに向け、突進してくる。ドクオによって隆起させられた地面をものともせずに踏み込み、突き、上へと凪ぐ。
数歩引いてその攻撃をかわし、ドクオは再び魔力弾を発射。アサシンは体を横に傾けるだけの最低限の動きで回避する。

 先ほどに比べて狭まった間合い。大上段に構えた大薙刀を持ち、そのままアサシンがドクオに迫る。
再度放たれた弾丸を身に受けるも、その勢いはとまらない。完全にドクオを間合いに捕らえ、『一凪<イチナギ>』を振り下ろす。


('A`)「……バリアー」


 二人の間に3枚の赤い魔力の盾が生まれ──


(,,゚Д゚)「ゴルァ!」


 まるで豆腐のようにあっさりと切り裂かれた。

22 名前:第16話『栄枯流水』 :2007/12/21(金) 00:27:10.87 ID:AdKwWMjE0
(‘A`)「うっ……」


 3枚の魔力盾をあっさり切り裂いたアサシンの攻撃を、ドクオは手にもったライトセイバーで受け止めた。
魔力を刀身に変化させるこのマジックアイテム。元は普通の魔術士用のものだが、ドクオの手によって改造が施されている。
サーヴァントが相手でも“ある程度”打ち合える武器で受けると、攻撃を流して再び距離をとるドクオ。

 続けざまに大振りになったアサシンの攻撃を十分にひきつけて回避した後、ドクオは相手の間合いの内に入って自らの射程をつくりだす。
薙刀では防げない、ライトセイバーでの一撃を、アサシンは魔力を込めた左腕の篭手で受けとめた。


('A`)「ちいっ」

(,,゚Д゚)「もらったぞ」


 ライトセイバーを弾き返す。その勢いで、両手で打ち込んでいたドクオの体が軽く浮き上がり、薙刀の有効距離が生まれる。
地に足をついてないまま状態から7枚の魔力盾を生成し、ライトセイバーを構えなおす。そのままの状態でドクオはアサシンの斬撃を真っ向から受け止めたものの、そのまま十数メートル離れた外塀に叩きつけられた。


ξ;゚听)ξ「!!」

28 名前:第16話『栄枯流水』 :2007/12/21(金) 00:31:14.99 ID:AdKwWMjE0
(,,゚Д゚)「今の打ち込みはなかなか面白かったぞ。おかげで篭手が使いものにならな」


 アサシンが言い終わらないうちに、崩れた塀の白煙の中から魔力の飛礫とライトセイバーが姿をあらわし、
アサシンに向かって飛んでいく。壊れた篭手をなげつけて飛礫を破壊し、ライトセイバーの刀身を大薙刀で真っ二つに斬り捨てるアサシン。


('A`)「いっけぇぇぇぇぇぇ!」


 半拍遅れでドクオがその懐にもぐりこみ、低い体勢から、渾身の右ストレートを放つ。この時間差での攻撃を、
アサシンはそれでも腕でガードする。続けざまに新しいライトセイバーで胴を薙ごうとするドクオを
『一凪<イチナギ>』の柄で受け止める。アサシンが反撃に入ろうと構えなおしたとき、ドクオはすでに射程から外れていた。


('A`)「5本目、やられちゃった……」

ξ;゚听)ξ「(今まで散々バカにしてきたけど、やっぱりアイツ、サーヴァントなだけあるわ……
   地の利があるとはいえ、あの武蔵坊弁慶と互角に戦っている……)」

从 ゚∀从「アサシン、大丈夫かいな?」

(,,゚Д゚)「問題ないぞゴルァ」



(,,゚Д゚)「(とはいえ……)」

35 名前:第16話『栄枯流水』 :2007/12/21(金) 00:36:23.01 ID:AdKwWMjE0

 アサッテの方向からドクオが打ち出してきた魔力弾をあっさりと左手で弾きつつ、アサシンは考える。


(,,゚Д゚)「(この野郎、本当に避けるのが上手ぇ……直接打ち合えば俺の薙刀のほうが有利。
   それを知ってか、わざと俺の打ち込みに破られるのを覚悟で盾を作り出し、威力を殺いできやがる……)」

ξ゚听)ξ「ドクオー、あんた大丈夫?」

('A`)「うん。ツンが心配してくれてるなんて……なんか不思議な感じ。ありがと」

ξ////)ξ「べっ、別にアンタの心配してるんじゃないわよ。アンタに倒れられたらあたしが困るな、って思ってるだけなんだから!」

(,,゚Д゚)「(……甘く見ていたつもりはないが……)」


 突如、アサシンが立っていた地面に穴が開く。気配を察していたアサシンは飛び上がり、そのままドクオへと向かう。
ドクオは牽制のそぶりもみせずに横へ走り、アサシンが追ってくるのを確認して塀に登ると、
その上を移動し母屋の屋根へ飛び移った。魔術という飛び道具を使うドクオにとって、最適なポジショニングである。


(,,゚Д゚)「(その認識自体が甘かったという事か)」


 ドクオに続いて屋根へ飛び上がろうとしたアサシンは、不意にその動きをとめた。


('A`)「?」
39 名前:第16話『栄枯流水』 :2007/12/21(金) 00:40:01.73 ID:AdKwWMjE0

(,,゚Д゚)「おい、女」

 アサシンはドクオを見上げるのをやめ、離れたところで見ていたツンに問いかける。


ξ゚听)ξ「………………………………………………ハッ!」

ξ;゚听)ξ「な、何かしら。アサシン」

('A`)「(今、完全に気を抜いていたな……)」

(,,゚Д゚)「この屋敷の主はあの丸い小僧か? それともお前か?」

ξ゚听)ξ「何よ、藪から棒に……」

(,,゚Д゚)「いや、な。このまま俺が攻撃すると……」


(,,゚Д゚)「たぶん、この屋敷が真っ二つになる」

ξ゚听)ξ「…………」

('A`)「…………」




ξ;゚听)ξ「「な、なんだってー!!」」('A`;)
45 名前:第16話『栄枯流水』 :2007/12/21(金) 00:45:18.77 ID:AdKwWMjE0


ξ#゚听)ξ「ちょっと! 何勝手な事言ってるのよ!!」

(,,゚Д゚)「黙って真っ二つにしたらもっと怒るだろ?」

ξ#゚听)ξ「それ以前に、人の家壊さないでよ! 普通に戦いなさい」

(,,゚Д゚)「普通にやってたら埒があかないんだよ。それに、ここはお前らの敷地だ。
   魔術に疎いハインリッヒがマスターでは、続ければ続けるほどそちらに天秤が傾いていくからな」

从 ゚∀从「(……正直、相手マスターを倒せへんウチってただの枷やなぁ……)」


 腕を前に出して、手にした大薙刀を地面につきたてる。アサシンの真言に反応するかのうように
刃から黒い煙がのぼりたち、『一凪<イチナギ>』、刀身から鍔、柄、石突にいたるまでその大きさを肥大化させていく。


('A`)「(これはまさか……卍解?!)」

(,,゚Д゚)「ドクオ、この一撃で終まいだ。全ての策と、術と、魔力と、気合でぶつかってこい。俺はそれを……」




(,,゚Д゚)「家ごとまとめて凪いでやろう」
50 名前:第16話『栄枯流水』 :2007/12/21(金) 00:50:24.07 ID:AdKwWMjE0
('A`)「……ボクの策と、術と、魔力と、気合は別に凪いでもいいけど…」

从;゚∀从「(いやいや、あかんやろ……)」

('A`)「ボク自身と、それからこの家は困るなぁ」


 懐からアニメ柄の扇子を取り出し、開いてアサシンに投げつける。
弁慶は避けもしない。扇子は弁慶の左腕に当たり、ぽとりと地面に落ちた。




('A`)「アサシン。今からボクは全力であんたに討ちかかる。だからひとつお願いだ。
   あんたへの攻撃と、ボクだけを狙え。家ごとを破壊するのはやめてくれ」


 今度はちゃんと二本のライトセイバーを懐からとりだし、ドクオはこれまでで一番強い光を放つ刃を生成する。


(,,゚Д゚)「俺の提案に乗ってくれたんだ。それくらいかまわないぞゴルァ」

('A`)「ありがとう」

ξ゚听)ξ「(……あれ?)」


53 名前:第16話『栄枯流水』 :2007/12/21(金) 00:54:57.58 ID:AdKwWMjE0

ξ;゚听)ξ「(……力が……あたしの魔力が、強引にドクオに吸い取られていく……)」


 マスターであるツンだけでない。屋敷のいたるところに設置された魔力溜から魔力が抜け落ち、
ドクオの周囲へと収束していく。やがて彼の背後に無数の、これまで以上の魔力のこめられた光球が浮かび上がった。



('A`)「いくよ、アサシン………ボクは勝つ。勝ってクーを迎えに行くッ!」

(,,゚Д゚)「来いっ! 扇子はしぃへの土産にしてやるぞゴルァ」

('A`)「I can fly!!」


 ライトセイバーを一本投げつけ、ドクオは高く、夜空へと舞いあがった───


59 名前:第16話『栄枯流水』 :2007/12/21(金) 01:00:49.83 ID:AdKwWMjE0

 ドクオが跳躍すると同時に、屋根に滞空していた魔力球がまっすぐ、一斉にアサシンに襲い掛かる。
同時に、アサシンは地面に泥濘を感じる。外れるとわかったライトセイバーの投擲には何の反応も示さない。


(,,゚Д゚)「(また時間差攻撃か……)」


 薙刀に限らない話だが、人間同士の決闘に用いられる武具の中に、対空に秀でたものは存在しない。
なぜなら人間は空を飛ばないのだから。今回のドクオのように、一騎打ちで高いところから攻撃するという状況自体、本来はありえないのだ。


(,,゚Д゚)「(迎撃しないとマズいレベルの飛び道具(=魔術)で隙を誘おうってか。
   家を破壊するなという条件──魔術とドクオ本人をまとめて攻撃させないような条件をつけてきたのはこういう事か)」




(,,゚Д゚)「(だが!)」
63 名前:第16話『栄枯流水』 :2007/12/21(金) 01:05:06.44 ID:AdKwWMjE0

 踏ん張りの利かない地面。あえて泥の中に具足を深くつっこむと薙刀を突き出し、刃を上に払いあげて
魔力光をこれまで以上に簡単に破壊する。その刃に込められた力はいささかも衰えていない。むしろ、さらに増加している。


(,,゚Д゚)「終わりだゴルァ!」


 大薙刀の振り上げられたタイミングは、飛び上がったドクオにぴったりと合っている。
四散する光の中向かってくるドクオを撃墜すべく、アサシンは『一凪<イチナギ>』を振り下ろし────




(,,;゚Д゚)「……なっ!」


 ドクオのおよそ1メートル下で、アサシンの大薙刀は豪快に空振った。

68 名前:第16話『栄枯流水』 :2007/12/21(金) 01:09:32.70 ID:AdKwWMjE0

(;,,゚Д゚)「(あれだけの舌戦略と魔力を使って、攻撃ではないだと?!)」

('A`)「…………」

(;,,゚Д゚)「くっ!」



 攻撃をするでもなく、ただ向き直りながらアサシンの後方にドクオは着地し、ライトセイバーを構えて大地を蹴る。
泥濘の中でアサシンの振り向きが一瞬遅れた。それで十分だった。
71 名前:第16話『栄枯流水』 :2007/12/21(金) 01:12:08.76 ID:AdKwWMjE0















 英雄の口元から血が流れ、密着したドクオの服を赤く染める。
大豪傑、武蔵坊弁慶────アサシンの背中からは、青白いライトセイバーの刀身が生えていた。


【第16話・終了】
                 →第17話へ続く

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