- 19 :第14話『従者の礼、臣下の礼』:2007/11/29(木) 01:08:01.14 ID:XzJJE/9j0
- 約束の時間まで1分。
ブーン家の正門前には季節を無視した半袖一枚に、色あせたジーンズを履いたハインリッヒが仁王立ちしていた。
拳にはテーピング、頭には鉢巻。長い赤髪が寒風になびくが、当人は全く気にしていない様子だった。
その傍らには先日とはちがい、黒の僧衣をまとったアサシンがたたずんでいる。背中に籠はなく、
その右手には彼の代名詞ともいえる、白柄の大薙刀が握られている。月の光を存分に浴びているのにもかかわらず
刃が暗く沈んでいるのはサーヴァント『暗殺者<アサシン>』の特性故のものだろうか───
从 ゚∀从「時間や」
屋敷の門に手をかける。鍵のかかってない扉を押し開き、二人はのっしのっしと無警戒に邸内へと入っていった。
('A`)「いらっしゃい」
ξ゚听)ξ「待ってたわよ」
- 20 :第14話『従者の礼、臣下の礼』:2007/11/29(木) 01:09:11.07 ID:XzJJE/9j0
庭の中央。そこにはポケットを膨らましたツンと、両手にライトセイバーを構えたドクオがが待ち構えていた。
(,,゚Д゚)「『バーサーカー』組か。いつぞやの再戦だな」
从 ゚∀从「先週は邪魔が入ってもうたが、今回は純粋なタイマンや。
4人のうち誰かが欠けるまで、戦りあおうやないか」
ξ゚听)ξ「望むところよ。魔術士の本髄をお見せするわ」
('A`)「(麻雀とかで解決しよう、なんていったら殺されるんだろうな……ツンに)」
両手の柄に力が流れ、青白い刃を生成する。口元を動かし、空間に魔力を蓄える。
ハインリッヒが魔力を込めた拳を握りしめ、ツンは羽織っていたストールを後ろに放り投げた───
…………
……
…
- 22 :第14話『従者の礼、臣下の礼』:2007/11/29(木) 01:10:40.93 ID:XzJJE/9j0
川 ゚ ?゚)「……見事だ」
(;^ω^)「ビックリだお……」
腕時計の針が11時をさしている。ツンとドクオを残し、二人は山腹のラウン寺へとつながる大石段。その入り口の鳥居まで来ていた。
林中のため、わずかにとどく月明かりの他に照明はない。だが二人と鳥居の間にははっきりと目視できる、青い魔力の膜が張られていた。
ツンやドクオの張った結界とはレベルが違う、バリアといってさしつかえのない密度の魔力結界である。
ここまで私服でやってきたクーはあたりを見渡して人がいないのを確認し、軽鎧やレイピアなどの武装を具現化する。
ついで、宝具『突撃槍<ランス>』を取り出す。両手で握ると気合を込め、青の結界を叩き斬った。
川 ゚ -゚)「よし、いくぞブーン」
( ^ω^)「わかったお!」
宝具をしまい、目をあわせて頷く。
遥か頂上を目指して二人は石段を登り始めた。
- 23 :第14話『従者の礼、臣下の礼』:2007/11/29(木) 01:14:08.28 ID:XzJJE/9j0
( ^ω^)「確か、『魔術士<キャスター>』は戦闘能力が一番低いサ−ヴァントだってツンから聞いたお。
ブーンがしっかり魔力を送ればクーも宝具を使えるし。きっと勝てるお」
川 ゚ -゚)「しかしあのレベルの結界を山全体にかける魔力や技術は並じゃない。油断していると足をすくわれるぞ」
(;^ω^)「うっ、ごめんだお」
川 ゚ -゚)「……まぁ、過度な心配は必要ないけれどな。私の『突撃槍<ランス>』とブーンの魔力が合わされば、怖いものなどない。
マスターのいないサーヴァントなんかに負けることはないさ」
ブーンをたしなめつつ、鼓舞するように強い言葉をかけながら石段を登っていく。
妨害や罠の類は全く見られず、視界が開けて門が肉眼で見て取れるようになる。
ツンやドクオのときとは違い、そこにアサシンの姿はない。ただ門が夜中にもかかわらず堂々とひらいているだけだった。
( ^ω^)「11時20分。少し早くつきすぎちゃったお」
川 ゚ -゚)「取り立てて困ることもあるまい。それより、この門をくぐればおそらく戦闘になるだろう。
ビーグルがいない場合、私はブーンと四六時中くっついているわけにもいかない。
できるだけやらせないようにするから、ブーンはまず自分の身を第一に考えてやってくれ」
( ^ω^)「……わかったお」
門をくぐる。空中に蕾が浮かんでいた。
- 24 :第14話『従者の礼、臣下の礼』:2007/11/29(木) 01:17:28.34 ID:XzJJE/9j0
無機質ではない、どこか生物めいた蕾のような物体。6つの蕾は全て、二人のほうを向いている。
その先が一瞬、膨らんだような気がした。先端の淡い光がクーに警鐘を鳴らす。
川;゚ -゚)「……ブーン!」
状況を読み込めていないブーンの手をつかんでクーが手元に引き寄せるのと、6つの蕾が同時に魔力弾を放つのは同時だった。
6つのうち4つを片腕のレイピアで弾き飛ばし、2つをすんでのところでかわす。
再び蕾が光る前に、クーはブーンの手を引いて走り出した。
( ^ω^)「(……ファンネルかお?)」
川 ゚ -゚)「(どこだ、キャスター!)」
蕾たちが追ってくる気配を感じながら、クーは方向をかえる。移動を開始してから気づいたのだが、
この蕾たちはそこまでのスピードと正確さはないようだった。走る軌道を変更すると、魔力弾の攻撃が一手後れてくる。
時折反撃にでようとするも、そのたびに蕾はふらふらと上空へと回避行動をとり、ブーンを守りながらの撃墜はできない。
- 25 :第14話『従者の礼、臣下の礼』:2007/11/29(木) 01:21:55.98 ID:XzJJE/9j0
- 川 ゚ -゚)「(キャスターは私達を目視するポイントにいない。 ……自動で私達を追うようになっているのか?
このままブーンをつれてこの界隈を探し本人を討つか、ブーンひとりを動かしてこれを撃墜するか……)」
思案しながらも当然足は緩めない境内を回り、いよぅ達が暮らしている母屋のほうへと進む。
母屋の軒先、白いものを視界にとらえる。人間離れした動体視力でクーはそれが何かを読み取り───
クーの動きが止まった。
6つの蕾が魔力弾を発射し、そのうちの2つがクーの肩と右足に当たる。
( ^ω^)「クー……?」
クーは動かない。なぜだか蕾も空中で静止し、追撃をする気配はない。
川;゚ -゚)「…………まさか……」
- 27 :第14話『従者の礼、臣下の礼』:2007/11/29(木) 01:24:10.78 ID:XzJJE/9j0
- (*゚ー゚)「その“まさか”みたいね」
白の少女──キャスターが空間を越え、二人の目の前に現れた。距離は2M。クーの『突撃槍<ランス>』でなら
すでに射程距離。レイピアでも一歩で懐まで潜りこめる位置にいるのに、キャスターは丸腰のまま笑っている。
(*゚ー゚)「ギコ君の話を聞いてなんとなく予想はしていたけど、あたっちゃった。うれしいな」
川;゚ -゚)「…………」
( ^ω^)「ク、クー……」
(*゚ー゚)「どうしたの、クー。久しぶりすぎてまさか私の顔を忘れちゃったとか?」
川 ゚ -゚)「………ま」
(*゚ー゚)「聞こえないよー」
沈黙が十数秒続き、クーはぽつりとその名前を口にした。
川;゚ -゚)「シィナ様……」
- 29 :第14話『従者の礼、臣下の礼』:2007/11/29(木) 01:27:35.50 ID:XzJJE/9j0
(*゚ー゚)「よかったー。本当に忘れられてたかとおもったよ」
本当にうれしそうに少女は笑い、それからはじめてブーンのほうをちらと見て、向きなおる。
(*゚ー゚)「君がクーのマスターだね。クーをここまでつれてきてくれてありがとう。
私はシィナ・リンゴール・ドヴァ。ギコ君の愛人で、クーの主で、ドヴァ帝国の王女です」
【第15話・終了】
→第16話へ続く
戻る